山下貴司の発言 (憲法審査会)
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○山下委員 自由民主党の山下貴司です。
立憲主義という根源にかかわるテーマで発言させていただくことを光栄に思います。
国民が憲法を制定し、憲法で定められた権利、自由の保障のもとで、そして三権分立の権限の中で各機関が立法、法執行、法解釈を行い、そして、憲法論についても、国民の代表から成る国会において議論し、必要があれば国民投票をもって憲法を改正する、これが立憲主義であり、国民が憲法制定権力たるゆえんであると思っております。
そうしたことに照らせば、私は、憲法上授権されていない権利や権限について憲法上の拘束力を認めるということは、むしろ立憲主義に反するのではないかというふうに考えております。
例えば、内閣による憲法解釈を一内閣で変更するのは立憲主義に反するという指摘でございます。というのは、最高裁による憲法判断と異なり、行政権による憲法解釈については法的拘束力を認める憲法上の根拠がないからであります。比較法で見ても、憲法上の根拠もないのに行政権による憲法解釈に拘束力を認めている国などはございません。
この点については、国会で明言されております。昭和二十九年四月、吉田内閣においてMSA協定が審議されている際、九条における自衛戦争の許容性について、この審議会でも出された資料にもある二十一年の六月の自衛戦争をも否定する吉田総理答弁を持ち出して批判したところ、言論人として朝日新聞副社長も務めた緒方竹虎副総理は国会答弁として次のように述べています。
「同じ吉田茂でありますけれども、内閣の閣議によつて公式にきめれば前と解釈が違つたつて差支えないと思います。今の我々がとつておりまする解釈は、これは昨年の総選挙にもこの解釈の下に選挙がなされております。国民の批判も受けておりますし、それによつて国民の判定も得た次第であります」「何か十年たつても云々と言われますが、内閣が変つておるので、その新らしい内閣が閣議を以てきめればその意見が前と違つておつても差支えない。」
この発言について、先日の審査会でも御紹介した佐藤達夫当時の法制局長官は、引き続く国会答弁において、「内閣々々において正しいこと信ずるとてその憲法解釈を打出すことは理論上は当然」と述べ、さらに次のように述べております。「神様の目を以て憲法を見ておるならば、神様が変りません以上は憲法の解釈というものは変らないはずだと思います。」「遺憾ながらその解釈に携る者は人間でございまして、人間というものには進歩があるわけであります。その進歩によつて解釈がだんだんと進化を遂げて行くということは、これはもう否定すべからざる事実であると思います。」
これが、この日本国憲法下において、内閣による憲法解釈の変更について、国会で明言された法制局長官の見解でございます。
これは法的安定性を無視するという議論ではありません。法的安定性は重要であります。しかし、法的安定性と法的拘束力は違うんです。従来の憲法の文言の枠内で、従来の法的論理の根幹を変更せず、根幹から導かれる副次的な論理や結論的な当てはめを変更することは、法的安定性を必ずしも害するものではありません。
御指摘の集団的自衛権の解釈変更については、我が国を防衛するため、限定的な集団的自衛権を昨今の国際情勢に即して解釈変更するものでございまして、最高裁砂川事件判決に反するものではなく、四十七年資料が示した基本的論理を踏まえつつ、安全保障の環境の変容を踏まえて当てはめを変更したにすぎず、これまでの解釈との論理的整合性と法的安定性は保たれております。
なお、積み重ね論議というものがございますが、従来の議論を積み重ねてきた法の番人とされる内閣法制局は、八十余名の職員のうち、現在、法曹有資格者はわずか六名の組織でございます。昔から数名しかいなかったんです。長官も十八名中七名しか法曹有資格者はおりませんでした。集団的自衛権を一律に否定するかのように見える答弁をされた長官の多くは法曹資格はありませんでした。もちろん、内閣法制局職員は官僚の中の官僚と言っていい優秀な方々であります。その解釈を行政府として可能な限り尊重することは必要であります。しかし、必ずしも法曹資格を持たない官僚の答弁に憲法上の法的拘束力を認めるというのは、かえって立憲主義にふさわしくないと考えます。
集団的自衛権を認めるための憲法改正または憲法解釈の変更の必要性については、二〇一二年の選挙に際してのアンケートで、現在の民進党所属の衆議院議員の約四割が賛成またはどちらかといえば賛成とおっしゃっており、さらに言えば、野田幹事長も岡田前代表も、過去の時点において同趣旨のことを言っていると考えております。それらは決して立憲主義をないがしろにしたものではないと信じます。
我々は共通の基盤において、この審査会において、与野党、党派を超えてしっかりと議論してまいりたいと思います。(発言する者あり)