阿部知子の発言 (本会議)

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○阿部知子君 民進党の阿部知子です。
 私は、民進党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました厚生労働委員長丹羽秀樹君解任決議案に対して、賛成の立場から討論を行います。(拍手)
 賛成する理由は、丹羽君が、厚生労働省や厚生労働委員会が最優先で取り組まねばならない国民的な喫緊の課題である長時間労働と相次ぐ過労死の現実を前にして、これを是正すべく野党が提出した長時間労働規制法案を放置したまま年金カット法案の審議を優先させたばかりか、基本となるはずの厚生労働省の試算も恣意的であり、かつ、十分な審議もせずに、強行採決によって幕引きを図ったことです。
 若者の非正規、不安定雇用と対をなす正社員の長時間労働や、パワハラ、セクハラの横行などによる自死、過労死問題は、実は年金の大事な支え手である次世代が著しく疲弊し、その役割を担うことができないという危機的な状況の反映です。このことにしっかりと対処しない政治は、そもそも未来を語ることができないはずであります。
 今回の内閣提出の法案が、専ら将来世代への給付増をうたいながら、現実には人間的に働くことすらかなわない生身の若者に目が注がれていないということは、実は、法案に盛り込まれた高齢者の年金削減でも全く同じ構造だと思います。
 そもそも、二〇〇四年に成立した年金のマクロ経済スライドの仕組みは、それまでの基礎的暮らしを支えるための給付を目指した年金体系から、少子高齢社会が進む中で、現役世代の保険料率に上限を定め、物価上昇にスライドをかけて給付を抑制することで世代間のバランスを保とうとしたものです。それが基礎年金部分にも及ぶことは大きな問題との指摘もある中で、二〇一四年財政検証においては、スライド調整期間が長期化し、二〇四三年にまで及ぶことが明らかになりました。
 加えて、今回の改正法案に盛り込まれた年金カットの新ルールが発動されると、物価が上がっても、賃金が下がれば、それに合わせて年金が下がることになってしまいます。新ルールが発動される都度、物価と年金の水準がどんどん乖離していってしまいます。
 こうして、物価上昇に見合う給付増はなく、賃金低下の分、さらに年金額が減っていくおそれがあるわけですが、そもそも、現在でも基礎年金だけで生活していくことは極めて難しいのが実情です。
 二〇〇九年から二〇一四年に至る五年間を見ても、税、社会保険料負担を勘案すると実質的な生活保護基準に及ばない貧困世帯高齢者数は、六百四十万人から七百九十一万人まで約百五十万人増加したとの推計があります。既に、生活保護を受給する高齢者は増加し続け、受給者全体の半数を超えております。にもかかわらず、マクロ経済スライドによって二〇四三年までに基礎年金の所得代替率は今よりも三割減ることになっております。加えて、年金カットの新ルールが適用されれば、高齢者の貧困化は一層加速し、さらに消費税負担増の影響も緩和される見通しがありません。生活困窮に陥るのは目に見えています。
 政府・与党は年金カット法案を将来年金確保法案と呼びますが、目前の高齢者の困窮にはあえて目をつぶったとしても、実は、将来世代の年金給付増に与える効果もあるかなしかのものであります。
 また、ここで使われるいわゆる所得代替率の話もあくまで絵に描いた餅にすぎず、夫が正社員として四十年間働き、妻は専業主婦という世帯をモデルにした比較でしかありません。現実にはふえる一方の御高齢者のひとり暮らし、とりわけ最も厳しい状況に置かれる女性の高齢者の問題は、全く検討の対象ですらありません。女性の多様な人生、シングルや離婚、母子家庭等の現実、あるいは男女間の賃金、雇用条件等の格差の実態を踏まえた年金と生活保障の検討も不可欠です。
 本来、年金試算とは、ジェンダーも含めてさまざまな属性や経歴を持つ高齢者のおのおのを視野に置くべきであり、政府とは独立した機関による推計にのっとり、労働力喪失の補填としての年金給付制度が設計されねばならないと考えます。あわせて、基礎的暮らしを保障するための政策パッケージもなくてはなりません。すなわち、年金制度の内外を問わず、現金給付と医療、介護、福祉、住宅等の現物給付をどう組み合わせていくかという政策こそが最も必要とされております。
 今、政府がやるべきことは、既にマクロ経済スライドで年金額が将来大きく毀損されることへの対応も含めて、これを一日も早く終わらせるために最も有効とされる非正規労働者への厚生年金適用の抜本的拡大を行うことです。適用拡大は、現在四十代、五十代の年金給付増には直ちに直結しませんが、若い世代の将来の年金を確保する、まさに将来世代年金確保のために一刻の猶予もありません。
 厚生労働委員会では、これからも、国民生活に重大な影響を及ぼす法案や案件の審議がメジロ押しです。
 例えば、過重な長時間労働を課し、過労死を促進する残業代ゼロ法案も俎上に上っています。この法案によって導入される高度プロフェッショナル制度は、企業の残業代等の支払い義務を免除して、合法的に過重な長時間労働を課すものです。
 さらに、残業代ゼロ法案には、事実上の残業代ゼロで長時間労働の温床となっている裁量労働制の対象者を拡大することも盛り込まれております。年収要件などがないため、中低所得の労働者、若年労働者も対象になってしまいます。残業代を払わず過重な長時間労働をさせるブラック企業を喜ばせるだけの法案です。
 厚生労働委員会の本来の役割を取り違える丹羽君が委員長にとどまれば、残業代ゼロ法案もいとも簡単に成立し、働く環境がますます悪化してしまいます。
 さらに、安倍政権は、働き方改革に関する法案を検討していくとしていますが、世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す安倍政権が、いかに耳当たりのよいキャッチフレーズを繰り返すとしても、真に働く者のためになる法律をつくるとは到底考えられません。まして、丹羽君のもとでは、十分な審議時間が確保されず、法案の問題点が精査されないままに打ち切られてしまうことが容易に想像できます。
 子供、若者から高齢者まで、その暮らし、仕事、そして命までをも左右する法案を審議する厚生労働委員会において、緊急課題を脇に置き、熟議の民主主義の原則も放り出すような丹羽君が委員長にふさわしくないことは明らかです。

発言情報

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発言者: 阿部知子

speaker_id: 26143

日付: 2016-11-29

院: 衆議院

会議名: 本会議