山崎泰彦の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(山崎泰彦君) 最初に経緯について申し上げますと、平成二十四年八月に三党合意による年金機能強化法が制定されました。そして、翌年八月に三党合意によって設立されました社会保障制度改革国民会議が報告書を取りまとめます。そして、その国民会議の報告書を受けて、そこで掲げられました課題をそのまま社会保障制度改革プログラム法に位置付けております。そして、翌年に五年に一度の財政検証結果が取りまとめられまして、そして、併せてオプション試算というものが発表されたわけでございます。こういった流れの中で、社会保障審議会の年金部会の議論の整理が平成二十七年一月に取りまとめられております。
 ここで重要な役割を果たしているのは財政検証でございます。これをどう見るかということでございます。財政検証は経済前提八つ置いておりまして、五つが何とか所得代替率五〇%を確保できる、あと三つが非常に厳しい、確保できないという結果でございますが、いずれにしましても、あえて言いますと、所得代替率五〇%を辛うじて確保できるケースと非常に厳しいケースの二つに集約されると思います。たとえ前者であっても、基礎年金については、その機能が将来的に著しく損なわれるということが明らかになりました。そして、そうしたことからしますと、我々は、将来に向けた非常に厳しい見通しでございますが、そういった危機感を共有し、改革を急がなければならないという一点の結論に集約されるのではないかというふうに見ております。
 今回の改正法案は、五点ありますが、このうち保障機能に係る制度改正三点について申し述べたいと思います。
 この三点は、オプション試算で示唆された方向性に照らすと、物足りない、踏み込み不足というのが実感でございます。ただし、様々な制約がある中で、当面の実現可能性を追求すれば、現状ではこうならざるを得ないということも承知しております。そうすると、持続可能性を高め、かつ給付の十分性を確保するには、スピード感を持った更なる改革が必要だということになると思います。
 さて、まず第一点でございますが、五百人以下の企業も、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大を可能とするものでございます。
 平成二十四年の年金機能強化法附則では、平成二十八年十月からの五百人以上の企業での適用拡大の施行後三年以内に検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるという検討規定を置いております。
 今回の法案は、この検討規定を一部前倒しして実施するものとして、一定の評価をいたします。特に、国、地方公共団体、実際には市町村ということになりますが、について職員数に関係なく全面的に適用することについては、適用拡大が進まない中で公務が先導的役割を果たすものとして高く評価いたします。今後、附則の検討規定に従って、五百人以下の企業への本格的な適用拡大に向けて検討を急ぐべきだというふうに考えております。
 第二点は、国民年金第一号被保険者の産前産後期間の保険料免除と、これに伴う保険料の引上げでございます。
 社会保険制度の枠内での次世代育成支援は、雇用労働者に対する支援が先行し、自営業者等については長い間全く手付かずでありました。育児休業、産前産後休業が雇用労働者を対象にした制度であって、自営業者等にあっては、法制的な位置付けがないことや保険料引上げの負担感が非常に強いということもありまして、非常に困難な事情がありました。
 平成二十四年の年金機能強化法附則では、国民年金第一号被保険者に対する産前六週間、産後八週間の保険料免除措置について検討するよう検討規定を置きました。改正法案はこれを受けたものでありまして、次世代育成支援という観点からこの懸案事項にけりを付けるものであります。また、平成十六年改正により設定された保険料上限を更に百円引き上げるという財政規律を維持するものであることも評価いたしたいと思います。
 第三点は、年金額の改定、スライドルールの見直しでございます。
 平成十六年改正は、保険料上限設定とマクロ経済スライドにより年金財政の持続可能性の確保を目指すものでありましたが、年金額の特例加算の解消が遅れたことや、デフレ基調が続いたこともあって、マクロ経済スライドが発動したのはやっと平成二十七年度のことでありました。
 その影響をもろに受けたのが基礎年金であります。現在の高齢世代の所得代替率が一割程度上昇する一方、将来の所得代替率は当初の想定以上に低下いたします。基礎年金の調整期間は、平成十六年当時の想定では約二十年であったものが、平成二十六年の財政検証では、今後約三十年掛かり、所得代替率も約一割下がり、基礎年金としての機能が著しく低下することになります。
 現行制度は、保険料の上限が設定された限られた財源を現在と将来の高齢世代の間で分かち合う仕組みであります。現在の高齢世代の水準調整が遅れた場合、マクロ経済スライドの調整期間を延長し、調整の遅れにより財政が悪化した分は将来の高齢世代の水準をより引き下げることによって取り戻さざるを得ません。
 具体的には、今回の法案では、マクロ経済スライドにつきまして、年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金、物価上昇の範囲内で前年度までの未調整分を含めて調整するというのが一点でございます。もう一点は、賃金変動が物価変動を下回る場合に、賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底するものでございます。前者は、現在の高齢世代に配慮しつつできるだけ早期に調整する観点から、また、後者は、賃金・物価スライドについて、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とする観点から提案されているものであります。
 専門家の間では、景気後退期で賃金、物価の伸びが小さい場合や賃金、物価の伸びがマイナスの場合にもマクロ経済スライドによる調整を徹底すべきだという声が少なくない中では、国民合意を得る上でのぎりぎりの選択をされたものと思います。
 さて、国民会議報告書は、年金制度の長期的な持続可能性を強固にし、セーフティーネット機能を強化する改革に向けて、四つの課題を掲げていました。マクロ経済スライドの見直し、短時間労働者に対する適用拡大、高齢期の就労と年金受給の在り方の検討、高所得者の年金給付の見直しでございます。
 平成二十六年財政検証に関しては、単に法律で規定しております財政の現況と見通しを示すだけでなく、報告書に提示された年金制度の課題の検討に資するような検証作業、俗にオプション試算を行うべきとしたわけでございます。そして、平成二十五年十二月の社会保障制度改革プログラム法においても、国民会議報告書が掲げた課題を検討事項として列挙いたしました。
 オプション試算三つありますけれども、いずれも所得代替率の改善に効果があることが確認されております。八つの経済前提のうち、労働参加率が高まる高成長ケースのうち、最終的な所得代替率が五〇・六%で最も低くなるケースについて見ましても、被用者年金適用拡大千二百万人のケースでは五七・五%、基礎年金四十五年拠出六十五歳受給のケースでは五七・一%、退職年齢と受給開始年齢六十七歳のケースでは六八・二%、それぞれ単独の改善効果であります。これらを合わせて並行して推進するとすれば、現在の所得代替率程度の水準を維持することは言うまでもなく、上回ることも決して不可能ではありません。
 今回の法案では、こうした将来に向けて引き続き検討するように求めております。その検討に当たって特に考えていただきたい点を幾つか申し上げたいというふうに思います。
 第一点は、厚生年金の適用拡大は急務だということであります。
 本来は厚生年金の適用対象でありながら、適用漏れにより第一号被保険者となっている者が二百万人と推計されます。この二百万人の被扶養者になっている第一号被保険者を含めると、二百万人を相当上回る人が本来は二号グループあるいはその被扶養者として三号グループに移動するはずでございます。また、適用対象外である事業所への適用拡大も課題でございます。これらの事業所で働く被用者は、フルタイムに限定しても約六百万人にもなります。
 次に、短時間労働者の本格的な適用拡大は急務でございますが、実は極めて難易度の高い課題でございます。何度も挑戦してなかなか進んでこなかったわけでございますが、やはり経済界の理解を得ることが決定的な条件になります。もはや政府レベルの取組では限界があると思います。政治のリーダーシップが求められている分野だと思います。
 基礎年金拠出期間の延長による給付増の二分の一は国庫負担増になります。現在六十歳までの四十年間、これを六十五歳までの四十五年間を基礎年金の期間にいたしますと、それがそのまま二分の一が国庫負担増になります。約一兆円と言われております。社会保障の公費負担は消費税で賄うという原則からすれば、消費税率の更なる一〇%を超える引上げとセットで議論する必要がございます。基礎年金の水準低下に対しては、福祉的措置である年金生活者支援給付金による支援の強化も検討課題になるかと思います。
 総じて、低所得者対策に当たっては、年金だけでなく、医療や介護における保険料や利用者負担、年金税制の見直し等も併せて検討する総合的な検討が必要かと思います。
 以上で意見陳述を終えます。

発言情報

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発言者: 山崎泰彦

speaker_id: 32791

日付: 2016-12-09

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会