小西洋之の発言 (本会議)
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○小西洋之君 民進党・新緑風会の小西洋之です。会派を代表して質問いたします。
本法案は、会期延長後、一部与党サイドにおいても想定外で審議入りとなり、しかも、衆院で僅か五時間半のうちに強行採決されたものであります。
こうした前例のない強権的な動きの中、我が民進党は、統合型リゾート、IRによる経済振興などの検討の重要性を十分に認識しながらも、ギャンブル依存症対策の不備、刑法の賭博禁止の違法性阻却事由の不備など、本法案が抱える深刻かつ重大な問題を踏まえ、これに明確に反対することといたしました。
本法案で否定し得ない実体、それは、明治十五年の旧刑法の制定以来、違法とされてきた賭博行為をIR推進の名の下に解禁する、カジノ解禁法案であります。
刑法が賭博を禁止する理由について、最高裁は、賭博は国民に怠惰浪費の弊風を生じさせ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれがあるとしているところであります。
しかし、本法案は、このように日本社会に重大な影響を与えるものであるにもかかわらず、その内容と手続について極めて遺憾かつ断じて看過できない問題が存在いたします。以下、発議者に伺います。
まず、率直に申し上げて、本法案の規定からは制度の基本的な考えがさっぱり分かりません。法案第二条に規定するカジノとは一体何なのでしょうか。この法案には、カジノの定義、説明規定が全くありません。さらに、本法案によってカジノ施設で解禁が許容されたカードゲーム、ルーレット、スロットマシン等々の具体的な賭博の種別は一体何なのでしょうか。同様に何の説明規定もありません。
また、衆院では、クールジャパンの価値を発信するようなIRを整備するとも答弁されていますが、これは、外国のカジノにはないクールジャパンな賭博、日本ならではの新しい賭博もIRで解禁する、あるいは解禁が許されるというお考えなのでしょうか。具体的にお願いいたします。
このように本法案は、どのような規制の下、どのような賭博行為を解禁するのか、条文では一言も触れられておりません。他方、競馬法等の公営ギャンブル法、パチンコ等の風営法においては、解禁するギャンブルを個別具体に定義し、個々のギャンブルの特性に応じた詳細な規制が設けられております。
なぜ、本法案は、刑法の賭博の禁止の例外を定めるにもかかわらず、他の立法例に倣い、せめて個々の解禁する賭博の種別を明らかにするといったような立法措置すらも行わなかったのでしょうか。明確にお答えください。
こうした本法案における最重要事項の政府への丸投げは、三権分立における立法府の在り方そのものにも関わる深刻な問題を生じております。
なぜ賭博を禁止する刑法の下で競馬などの公営ギャンブルが許されているのでしょうか。それは、公営ギャンブルが個別法の規定により刑法第三十五条の正当行為とされているからであります。
そして、賭博がこの正当行為になる要件として、政府は、目的の公益性、運営主体などの性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体の公的管理監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止の八つの要件のいずれをも欠くことなく総合的に判断すると述べております。
ここで発議者に、最も根本的な事項であるにもかかわらず衆院で全く明らかにならなかった点を伺います。
本法案の各条文のどこの規定のどの文言が政府の示す賭博の八つの違法性阻却要件に該当するのか、すなわちIRのカジノであればなぜ刑法の賭博禁止との関係で合法となり得るのか、それぞれ具体的に分かりやすくお示しください。
しかし、今の私の質問は御質問申し上げるだけむなしいものであります。なぜなら、解禁される賭博の種別が何も明らかになっていないのに、それぞれの賭博行為が何ゆえにカジノにおいて刑法の違法性阻却事由に該当し得るのか判断できるわけがないのであります。
すなわち、こうした丸投げともいうべき立法を行った瞬間、立法府の存在意義そのものが失われることになります。なぜなら、刑法という法律を立法府で定め、賭博行為は禁止としているにもかかわらず、本法案はその要件や内容を全く明らかにせず、ある賭博の種別については違法性が阻却されると、言わば根拠もなく勝手に決めてしまっているわけでございます。
国会自ら定めた社会の最重要の基本法たる刑法のルールを、その根拠となる法理すら示さずに例外が認められると定めて、その立案を行政府に丸投げする、このような立法行為は立法府の責任放棄あるいは自殺行為ともいうべきものであり、決して許されるものではないと考えますが、発議者の見解を伺います。
また、本法案は我が国初の民間事業者による賭博行為を突如解禁しています。すなわち、既存の公営ギャンブルは全て地方公共団体などの公的機関が施行主体ですが、本法案においては、第二条でカジノ施設の設置、運営が民間事業者のみに委ねられているのであります。なぜ本法案でカジノの施行主体を民間事業者のみに限定したのか、言い換えれば、なぜ公的機関を排除しなければならなかったのか、その理由をお示しください。
また、先ほどの刑法の違法性阻却の要件には、目的の公益性、運営主体の公的管理監督など、かつて小泉改革において公営ギャンブルの完全民営化が断念されたように、施行主体は公的機関であるのが前提と考えられるところであります。民間事業者がカジノの施行主体となることは、これらの違法性阻却の要件に違反するのではないでしょうか。
さらに、政府にあっては、賭博を解禁する立法については、基本法である刑法が賭博を犯罪と規定している趣旨それ自体を没却するような立法がなされると法秩序全体の整合性を害するとしておりますが、我が国初の民間事業者による賭博を解禁する本法案は、我が国の刑法秩序全体をも害するものにならないのでしょうか。発議者の考えをお願いいたします。
また、この法秩序全体の観点について、例えば、日本中のパチンコで行われているいわゆるパチスロは、法律上は遊技に該当し賭博ではないとされておりますが、実体としてはパチスロとまるで同様のものである外国カジノのスロットゲームをIRで解禁すれば、それはまさに賭博になるわけでございます。また、パチンコについても同様の問題が生じます。
本法案は、事実上の賭博というべきギャンブル性を有するパチスロやパチンコとの関係で、我が国の既存の規制、法秩序をも大きく混乱させるものにはならないのでしょうか。発議者の見解を伺います。
また、本法案で最も重大な問題の一つが、ギャンブル依存症の発生であります。
およそこの世に、競馬やパチンコなど、何であれ、いわゆる賭け事、ギャンブルを許したならば、それによって何人かのギャンブル依存症の患者が生じてしまうのであります。そして、ギャンブル依存症は、WHOにおいて精神疾患と認定されております。
発議者に伺います。現に、我が国は公営ギャンブルやパチンコなどにより大勢のギャンブル依存症患者がおり、その事実は私たち立法府に集う国会議員全員が真摯に受け止めるべき課題であります。その上で、カジノ解禁によって必ず生み出されるであろう新しい依存症患者をめぐる倫理的な問題を、本法案全体の趣旨の中で、どのように考えていらっしゃるのでしょうか。
また、衆議院の議論では、世界百二十七か国にカジノが存在するのだからといった答弁がなされておりました。しかし、こうした我が国のカジノ禁止の状況は、国の在り方として言わば右向け右的に見直すべきことなのでしょうか。また、余りにも質問時間が余っているのでとの発言とともに、ある与党議員が般若心経を唱え、夏目漱石を語った衆議院の僅か六時間に満たない審議を通じ、こうした倫理的な問題について十分な国民的議論がなされているとお考えでしょうか。
依存症の問題について、更に伺います。
二〇一三年の厚労省の調査に関連して、我が国のギャンブル依存症患者は、その予備軍等も含めて五百三十六万人、人口の四・八%に該当すると推計されています。これは、人口一%前後の欧米などの他国の数字に比較しても桁違いに大きなものであります。公営ギャンブルに加えパチンコという遊技を抱える我が国は、実は世界最大のギャンブル依存症大国であると言っても過言ではありません。
こうした現状にもかかわらず、本法案では、依存症対策は第十条第一項第八号にカジノ施設の入場者が悪影響を受けることを防止するためと規定され、政府が講じる対策は条文上はカジノ利用者のみに限定されています。なぜ公営ギャンブルやパチンコなどの依存症患者や多重債務などの関連問題に一切の対策を講じることとしなかったのか、説明をお願いいたします。
実は、私は、民主党政権時代からのいわゆるIR議連の加盟議員でございます。我が国の観光や経済振興のためのIRの可能性とカジノの必要性などについて、先輩、同僚議員と真摯に検証しつつ、しかし、民主党政権時代のIR議連にあっては、カジノを解禁するのであれば、その前に、世界一のギャンブル依存症大国の深刻な問題を抜本的に解決しなければならない、そのためには、公営ギャンブルやパチンコなどあらゆるギャンブルを対象としたギャンブル依存症対策基本法の制定が必要であるとの真摯な議論がありました。
政権が替わり、国会で信念を持って追及する安倍総理が議連の最高顧問に就任するなどの状況の変化もあって、私自身は残念ながら議連の会合への出席を控えるようになっていたのでありますが、他方、このような課題の多い法案が修正もなく衆院で強行採決されるとは全く想定しておりませんでした。
こうした状況を踏まえ、実は急遽、先輩、同僚議員とともにギャンブル依存症対策基本法案の策定を行い、現在、民進党の党内議論の手続をお願いしているところでございます。
私は、衆院での発議者の方々の答弁にあるような、カジノを解禁する代わりに本法案によって依存症対策をするという発想自体が間違いだと考えます。既に世界一のギャンブル依存症大国ともいうべき我が国において抜本的対策を実行し、その上で、カジノによる新たな依存症の問題が初めて議論し得る、これがかつて民主党政権時代のIR議連の中にあった見解なのですが、政権交代後に大きく変容してしまったのでありましょうか。
本法案の衆院での採決をめぐっては、ある公党の党首の方から我が党に対し、品位を欠く誠に遺憾な発言もございました。
しかし、今、我々立法府に求められていることは、ギャンブル解禁法案の強行ではなく、患者団体へのヒアリングやギャンブル事業者に費用の負担を求めるなどの諸外国の対策、横断的なギャンブル規制の法制度などの研究に鋭意取り組み、世界で最も効果的なギャンブル依存症対策基本法案を立案し審議することではないでしょうか。平成二十五年にアルコール依存症の対策のための基本法が先輩、同僚議員のお力により議員立法で制定されているところでもございます。発議者の御見解を伺いたく存じます。
その他、カジノ解禁には、マネーロンダリングや暴力団対策、青少年への悪影響、地域の風俗環境や治安の悪化などの深刻な弊害への対策が必要となります。衆院の審議では、このそれぞれについて、世界で最高水準の規制を設けるといった趣旨の答弁がなされておりますが、闇カジノや闇金などが多数存在するなどの現状において、何ゆえに民間事業者が施行主体となるカジノをめぐるこれらの弊害が世界最高水準の規制によって阻止し解決し得ると単純明快にお考えになるのか、その根拠をお示しください。
最後に、本法案については、全ての主要紙が拙速かつ強行的な審議及び採決に反対との社説を掲げております。また、各社の世論調査においても、国民の圧倒的多数が同様の反対を示しています。他方、本法案では、第五条において、法律の施行から一年以内を目途に必要となる法制上の措置を講じるとされています。であるならば、このプログラム法を取り下げるなどして、その代わりに実施法そのものを議員立法や必要に応じて一部は閣法も含めて策定し、今から一年以内を目途に国会審議を受けるといった進め方で何か問題はあるのでしょうか。
これだけの国民世論の大反対がある中で、また、これまでの議員立法の審議の慣行に著しく反した形で、発議者として、どうしても本プログラム法案を今国会で成立させなければならないと考える具体的理由についてお示しください。
いずれにしても、かつて衆院内閣委員会の理事会で決定された参考人質疑、地方公聴会、国土交通委員会と法務委員会との連合審査等々を、良識の府と称されてきた本院で必要あるとお考えないのかどうか、御見解を伺います。
最後に、この度の法案について、私は、本法案を強行する首相官邸と一部与党の姿から、アベノミクスの異次元の金融緩和という史上最大の本物のギャンブルの強行、すなわち、日銀が抱えることになった四百兆円を超える国債が将来引き起こすハイパーインフレの危険に国民を巻き込んだ上で、そうした国民生活を破綻させるギャンブル政策の失敗をごまかすためのカジノ解禁法案、まさにカジノミクス法案であると思えてならないのであります。
私がこの演壇に最後に登壇をさせていただいたのは、一年前の九月十八日の夜、安保法制の特別委員会の委員長解任決議の賛成討論でありました。日付が変わって十九日の深夜、違憲立法の強行採決によって、良識の府と称されてきた我が参議院の歴史に消すことのできない汚点を残しました。一刻も早く安倍政権を打倒し、先輩、同僚議員の先生方の賛同を得て安保法制を廃止しなければなりませんが、まずは目前の本法案について、良識の府の名に恥じない対処をお願い申し上げ、私の代表質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔衆議院議員細田博之君登壇、拍手〕