平沢勝栄の発言 (憲法審査会)
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○平沢委員 自民党の平沢勝栄でございます。
先ほど来、五月三日、安倍総裁が新聞等のインタビュー記事等で憲法問題について述べられたことについて、いろいろと問題提起がありました。しかし、これはあくまで自民党総裁として国会外で自民党に向けて述べられたものでありまして、何が問題なのか、さっぱり、理解に苦しむところでございます。
これについていろいろ述べたいんですけれども、きょうのテーマは国と地方のあり方についてでありますので、このテーマに即して緊急事態と地方自治について私見を述べさせていただきたいと思います。
緊急時における国と地方のあり方については、当審査会の三月十六日の自由討議及び三月二十三日の参考人質疑において議論がありましたが、緊急事態においてこそ現場が極めて重要となってくるわけでありまして、したがって、国から基礎自治体に権限をおろすことについては当然のことであり、これについては異論がないと思います。
東日本大震災の際には、想定外のことがいろいろと重なり、そうした中で、基礎自治体に権限がなかったがために、権限を有する上位の行政主体との連絡調整に膨大な労力が割かれ、現場における対応が滞ったケースが見られたところでございます。
言うまでもなく、こうした基礎自治体に権限を付与するということは、首長が与えられた権限を的確に行使できるということが当然の前提となっています。しかし、この審査会の議論でも指摘されましたように、実際には、首長が、与えられた権限があっても自信を持って行使できない、あるいは、この権限の行使にちゅうちょしてしまうことがしばしば見られるところでございます。
確かに、法律レベルでは、災害対策基本法を初めとした多くの法律に首長の権限が明記されています。そこで、こうした法律で緊急時における対応は可能と言う人がいます。しかし、緊急時には想定外のことが起こり得るわけであり、また、法律で以上に人権を制限することは、それこそ立憲主義に反すると言えるのではないかと思います。
さらには、法律レベルで首長の権限が明記されていたとしても、実際に行政訴訟が起こされたときに被告となるのは現場を預かる市町村長や知事であり、そのような法律を制定した国会や当該法律の所管官庁である大臣や中央省庁ではありません。自治体が訴訟リスクを恐れて、たとえ法律で用意されている権限であっても、憲法上の明確な根拠がない場合には、その権限の発動にちゅうちょすることは容易に想像できることであり、実際、東日本大震災時の、既存の法律があったにもかかわらず必ずしも役立たなかったことを私たちは経験したところでございます。
よく、法律において、防衛、治安、防災などの権限が整備されているのだから、その法律を使いこなせば、あらゆる事態に十分に対応可能で、憲法改正の必要はないという意見があります。あるいは、緊急時における人権制限も、公共の福祉による制約で説明できるとか、あるいは、自然権として、平常時の憲法の例外として必要な措置がとれるなどといった意見もあるところでございます。
しかし、憲法に明確な根拠を持つことなく、法律のみに基づいて人権の制約などを行うことは、違憲訴訟が続発することを招きかねません。緊急時には平常時の想定を超える事態が発生することが考えられるところであり、緊急時に国や自治体が行える権限を憲法上明記しておくことこそが立憲主義にかなうと言えるのではないかと思います。
これらの点などを規定する緊急事態条項の設置については、戦前のドイツがワイマール憲法下でヒトラー独裁になったのと同じように独裁国家になるなどといった反対の意見もあります。しかし、これは全くためにする意見としか言いようがなく、もしそうであるなら、こうした規定が現在世界各国にあるわけでございまして、そうした多くの国は全て独裁国家ということになってしまいます。
緊急事態条項に反対する一部のマスコミや学者の中には、二十年以上も前に防犯カメラが街頭に設置され始めたときに、監視国家になる、あるいは、プライバシーの侵害で憲法違反になるなどといった反対の声を強く上げた人がいます。
今、当時よりはるかに多くの防犯カメラが街頭に設置されていますが、当時反対した一部のマスコミや反対の学者たちが今防犯カメラに強く反対の声を上げているという話は、寡聞にして聞いたことがありません。防犯カメラが大変に効果的ということがわかってきたからだと思います。
いずれにしろ、緊急事態条項は世界の憲法の常識で、日本も憲法上明記する必要が当然あると思います。
しかし、その場合でも、平時においても首長がその有する権限を的確に行使できるよう、国と広域自治体、基礎自治体が連携して下支えをしておくことが重要で、そのような平時の緊密な連携があってこそ、緊急事態における的確な権限行使が可能になるということを指摘させていただきまして、私の発言を終わります。