照屋寛徳の発言 (憲法審査会)
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○照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。
日本国憲法が施行された直後の一九四七年八月、当時の文部省が発行し、全国の中学一年生の教科書として使用された「あたらしい憲法のはなし」を改めて読み直してみました。「あたらしい憲法のはなし」の中では、天皇陛下について、次のように書いてあります。
「こんどの戦争で、天皇陛下は、たいへんごくろうをなさいました。なぜならば、古い憲法では、天皇をお助けして国の仕事をした人々は、国民ぜんたいがえらんだものでなかったので、国民の考えとはなれて、とうとう戦争になったからです。」「ですから、天皇は、憲法で定めたお仕事だけをされ、政治には関係されないことになりました。」「これからさき、国を治めてゆく仕事は、みな国民がじぶんでやってゆかなければなりません。天皇陛下は、けっして神様ではありません。国民と同じような人間でいらっしゃいます。」
以上、当該項目の一部のみを抜粋し、紹介しましたが、加計学園問題に見られる現在の文科省の隠蔽体質、政権べったりと違い、当時の文部省は、象徴天皇制の正しい認識のもと、すばらしい憲法教材を発行し、実際に生徒たちが使用しております。
明治憲法のもとで、天皇は現人神であり、天皇の地位は、アマテラスオオミカミの意思、つまり神勅に基づくものとされ、その権威に基づいて、天皇は統治権の総攬者であり、国家権力の全ての作用を一手にしておりました。これぞ天皇主権の国家体制です。
日本国憲法第一条は、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」と定め、国民主権と象徴天皇制は不離一体のものとして定めております。
日本国憲法前文には、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」とし、憲法の三大原理の一つである国民主権を宣言しております。国民主権とは、国を動かす力が天皇ではなく国民にあるということです。
日本国憲法第一条で、天皇の地位は、神勅に基づくものではなく、国民の総意に基づくものだとされました。神ではなくなった天皇は、国家権力を動かす根拠を失ったので、憲法第四条第一項に基づく形式的、儀礼的な国事に関する行為しかできないのです。
ところが、自民党日本国憲法改正草案第一条は、天皇が日本国と日本国民統合の象徴である点は現憲法と変わりませんが、新たに、「天皇は、日本国の元首」と規定しております。
社民党は、改憲の上、天皇を元首とすることには反対です。
自民党日本国憲法改正草案QアンドAによると、「我が国において、天皇が元首であることは紛れもない事実」と説明していますが、憲法学者の多数説は、日本で諸外国の元首に該当するのは内閣または内閣総理大臣との見解です。
自民党日本国憲法改正草案前文では、我が国は「天皇を戴く国家」であると規定しており、天皇の神格化と天皇を中心とした国づくりを目指すものだと強く批判せざるを得ません。
もしも自民党日本国憲法改正草案どおりに憲法が改正されると、天皇のお仕事が大幅に変わります。現憲法第四条では、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」と定めておりますが、自民党日本国憲法改正草案第五条では、「のみ」の文言が外れ、天皇は国事行為以外のことでもやりやすくなります。
また、自民党日本国憲法改正草案第六条第四項では、現憲法第七条において天皇の国事行為に内閣の助言と承認を必要と規定しているのを、「内閣の進言」に変更しています。進言とは、目上の者に対して意見することを指す言葉です。天皇が上、内閣は下。ここにも天皇を中心とした国づくりの意図が見え見えです。
自民党日本国憲法改正草案第六条第五項で、天皇の国事行為や私的行為ではない公的行為を明言していることも大問題です。内閣が関与しない公的行為の明記は、天皇の権限強化であり、国民主権に反します。
象徴天皇制とは、天皇が日本国の象徴としての役割を積極的に果たしていくことではなく、象徴としての非政治的行為しかできないという意味だとの憲法学者らの意見を肝に銘ずるべきであります。
天皇の公的行為との関連で思い出すエピソードがあります。
二〇一三年四月二十八日、安倍内閣は、サンフランシスコ講和条約が発効した一九五二年四月二十八日にちなんで、天皇陛下臨席の上、主権回復・国際社会復帰を記念する式典を挙行しました。ところで、その日は沖縄にとって屈辱の日であり、沖縄では、同時刻に抗議の県民大会が開催されました。政府式典では、臨席した天皇のお言葉もなく、式典終了直後に安倍総理初め出席者が天皇陛下万歳を唱道し、天皇の政治利用だと批判されました。
改憲の上、天皇の公的行為拡大を明確にすることは、このような天皇の政治利用を加速させるものであります。
最後に、自民党日本国憲法改正草案第百二条第二項は、現憲法第九十九条の天皇、摂政の憲法尊重擁護義務規定を削除しております。立憲主義に反し、天皇自身の憲法逸脱行為と天皇の政治利用をたくらむ権力者の野望に資するものだと社民党として強く批判をし、意見表明を終わります。