田中俊一の発言 (原子力問題調査特別委員会)
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○田中政府参考人 おはようございます。
本日は、三原委員長の御配慮により、このような場で御挨拶する機会をいただきましたこと、大変光栄に感じるとともに、皆様の非常に貴重な時間を頂戴することを恐縮しております。
原子力規制委員長をお引き受けしてから五年たちました。
東京電力福島第一原子力発電所の大事故を踏まえて発足した原子力規制委員会は、失墜してしまった原子力安全規制についての信頼をどうしたら取り戻せるかが始まりでした。
まず取り組んだことは、国会事故調査委員会により厳しく指摘された規制のとりこから抜け出して、国民から信頼されるための規制組織を目指すための議論で、委員だけではなく、規制庁の全職員が参加して意見を交わしました。その結果として生まれたのが、原子力に対する確かな規制を通して、放射線の有害な影響から人と環境を守ることを使命とし、独立性、透明性を堅持し、科学技術に基づく中立的判断を基本理念として、一人一人が強い向上心と責任感を持って取り組むという組織理念です。
その後は、この組織理念を基本に、防災指針や、原子力発電所、原子力施設の新規制基準の策定、福島第一原発の廃止に係る安全確保や原発敷地の破砕帯調査、新規制基準に基づく原子力発電所や各種原子力施設等の新規制基準への適合性審査など、目前の課題に昼夜を挙げて取り組む日々が続きました。
こうした実績を踏まえて、昨年の一月には国際原子力機関によるIRRSレビューを受けましたが、そこでは、日本は、実効的な独立性及び透明性を有する原子力規制委員会を設立したこと、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を新規制基準として迅速かつ実効的に反映させたという評価を得ることができました。
その一方、IRRSレビューでは多くの改善事項も指摘されましたので、それを積極的に受けとめて、この春には原子炉等規制法の改正もさせていただきました。改正の柱は、原発の再稼働を踏まえた検査制度の強化です。法改正に当たっては、先生方から強力な御支援と御助言がありました。改めてお礼申し上げます。
この五年間を振り返ると、私としては、原子力規制委員会、規制庁が我が国の原子力規制組織としてしかるべき役割をようやく担えるところまでたどり着きつつあるというふうに考えています。これは、原子力規制委員会が、国会の審議の中で三条委員会に位置づけていただき、独立性を堅持することができたことと、全ての議論が公開される中で、規制庁職員一人一人の力量が向上し、たくましくなってきたことにあると思っております。
原子力発電所の審査に加えて、さまざまな原子力施設等の審査はまだまだ続きますが、これからは、絶えず安全規制の見直しを図り、適切にバックフィット制度を活用しつつ、継続的に安全性の向上を図ることが重要であると考えています。
バックフィット制度は、安全神話を払拭し、最新の知見に基づいて安全性の向上を図る上で本質的に重要な制度で、法にこの制度を位置づけていただいた国会の見識に、改めて敬意とともに感謝する次第です。
最後に、原子力規制委員長の職責を少し超えるかもしれませんが、いただいた貴重な機会ですので、一言申し上げさせていただきたいと思います。
これまで、平成二十七年九月の川内原発一号機の再稼働を皮切りに、十二基の原子力発電所の審査が終わり、五基の原発が稼働するに至っていますが、原子力発電所の許可をすると、例外なしに、規制委員会が稼働の是非を判断しているとして、さまざまな意見が寄せられます。これは全くの誤解で、私たちの使命は、二度と住民が避難しなければならないような原子力事故は起こさせないという厳格な安全規制を行うことであり、原子力発電所の稼働を判断する役割や権限は与えられていません。
私は、こうした誤解が生じる背景には、原子力政策についての議論の不足があると感じています。安全確保は私たちが担わなければなりませんが、原子力の適正な利用を進めるためには、東京電力福島第一原発事故の反省に立ち、国内外の諸情勢、技術の進歩等を踏まえて、原子力政策がどうあるべきか、国会の場でぜひとも十分な議論を重ねていただく必要があると感じています。
さらに、どうしても申し上げておきたいことがもう一つあります。それは、原子力利用を進める観点から、人材と技術基盤を継続的に確保する方策について御配慮いただきたいということであります。今後の原子力利用のいかんにかかわらず、さまざまな分野の専門家や技術が必要とされますが、我が国の人材と技術基盤は極めて心配される状況にあると言っても過言ではありません。
福島第一原発事故から六年半経過しました。徐々にふるさとへの帰還も進んでいますが、生活や心の再建に苦慮しており、事故はまだ終わっておりません。私自身は、規制委員長を辞した後は、福島でふるさとの復興のお手伝いをしたいと考えています。
最後に、福島と原子力規制委員会への引き続きの御支援を賜りますようお願いして、挨拶を終わらせていただきます。
本日は、貴重なお時間をいただきましたことに改めてお礼の言葉を申し上げたいと思います。五年間にわたり御指導、御鞭撻いただきましたこととあわせて、心からお礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)