橘川武郎の発言 (原子力問題調査特別委員会)
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○橘川参考人 東京理科大学の橘川と申します。よろしくお願いします。座らせていただきます。
それでは、原子力政策に関する意見を陳述させていただきます。
国会事故調の活動を踏まえまして、現在も残る幾つかの問題があると思いますが、私は、大きな問題が五つあると考えております。
一つ目は、国会事故調の時点で必ずしも立ち入った議論ができなかった点であります。これは、使用済み核燃料の処理問題、バックエンド問題ということになります。エネルギー基本計画で減容炉ないし毒性低減炉と位置づけられた「もんじゅ」が廃止された状況のもとで、どうやってこの使用済み核燃料の問題を根本的に解決していくかという道筋はまだできていないと思いますので、この点が一点目としてあると思います。
それから二つ目は、国会事故調でも大きく問題になりました国際基準の適用という点で、改善も進んだと思いますが、特にテロ対策ですね、アメリカ政府が同時多発テロの直後に発表しました、それを見てアメリカの原子力規制委員会が発表しました資料のB5条b項、特に航空機の突入に対する対策等について、なかなか、情報の性格上、内容がつまびらかにされていない点もありまして、もしこれがうまく対応できていたら福島の事故はとめられたかもしれないという意見も強いわけでありまして、この点も今後議論が必要かと思います。
それから三つ目は、規制委員会の機能であります。
個人的見解でありますが、規制委員会に対しては、原子力推進派からも原子力反対派からも批判があります。ということは、原子力規制委員会は頑張っておられるのではないかというふうに私は思います。
ただし、電力自由化の実際のマーケットの状況を見ますと、規制委員会の審査の時間のかかり方によって非常に競争条件に影響を与えているというような問題があります。もちろん、それによって危険性最小化という目標を全くゆがめてはいけないと思いますが、そういう市場の状況があるということは念頭に置いた方がいいのではないかと思います。
四つ目は住民合意の問題でありまして、いろいろありますが、一番これも国際基準との関係でそごがあると思いますのは、避難計画立案に対して、諸外国では国がもう少し前面に出てコミットしていると思いますので、この点を今後考えていく必要があるんじゃないかと思います。
そして五番目、何よりも強調したいのは、福島復興の問題であります。特に、これにかかわる国民負担等の問題ということで、残された時間、私はこの問題について集中的に議論したいと思います。
現行のエネルギー基本計画の冒頭ですけれども、福島の復興、再生に全力で当たるというのが基本計画の冒頭に入っています。それがエネルギー政策を再構築するための出発点であるというふうに書かれています。
この福島事故に対処する際に、私は二つ原則があると思います。福島の復興、再生を全力でなし遂げるという点が一点と、東京電力の供給エリアで電気の安定的で低廉な供給を確保する。この二つが問題でありまして、東京電力という会社がどうなるかというのは本質的な問題ではないんじゃないか、こういうふうに私は思っております。
その上で、既に、二十一兆五千億の事後費用がかかる、こういう話が出ております。この数字はもっとふえるのではないかという意見もありますが、私は、この福島の復興ということを考えますと、福島にお金が回らないと話にならないので、国民負担は最終的にはやむを得ないと思います。
しかし、そこに行き着くためには物事には順序がありまして、まず、事故を起こした東電が、やるべきことを全部やる、思い切ったリストラをやった上で、次に国民負担という議論にならなければ、国民が納得できないのではないかと思います。その思い切ったリストラというのは、端的に言いますと、柏崎刈羽発電所を含みます発電所の資産の売却、完全売却ということになると思います。
柏崎刈羽の後、いろいろ選挙はありましたけれども、原子力問題が前面に立って争点になった選挙というのは余り多くありません。代表的なものは、二〇一四年二月の東京都知事選、そして二〇一六年十月の新潟県知事選挙がありますが、結果が非常に逆の結果になりました。
私は、日本の国民というのは非常にリアリストなのではないかというふうに思っていまして、なぜそういう違いが生じたのか。もちろん、柏崎の地元であります新潟県民からすると、自分たちのところで危険性を伴いながらつくった電気が東京に売られていくというたこ揚げ地帯方式に対する批判はあったと思いますが、この二つの選挙が一番逆になった決定的な理由は、次のグラフにあると思います。
これはエネルギー価格なんですが、細かいことは申しませんが、ほかは天然ガスの価格ですけれども、緑の太い線が原油価格でありまして、二〇一四年二月の東京都知事選のころはバレル当たり百ドルだったわけです、新潟県知事選挙のときにはバレル当たり四十ドル台ということで、つまり、原子力が再稼働しないと非常に電力コストが上がって、貿易も赤字になり、国民負担が重くなるということが明確だったのが東京都知事選挙のときで、はっきり言って再稼働か再値上げかということが問われていたと思うんですが、新潟になるとその条件が消えまして、二酸化炭素の問題では原子力の位置づけは言うことができるかもしれませんけれども、コスト面では理由がはっきりしなくなった。ここが非常に大きな条件の変化があるというふうに思います。
私は、こういうことを考えますと、日本の国民というのはリアルに状況変化に合わせて判断しているんじゃないかと思いますので、その国民を信じて、原子力の問題について、きちんと言うべきことはちゃんと言う。例えば、原子力を何らかの形で使い続けるのならば、新しいものほど危険性は小さいに決まっているわけですから、リプレースの話をしないのはおかしい。逆に言うと、古いものはどんどん畳んでいって、私は、原子力依存度は今の計画よりももっとずっと下げるべきだ、こういうふうに思っていますが、そういう正面突破の議論がされていないというのがおかしいのではないかと思います。
柏崎刈羽のことについて言いますと、まずは東電が完全売却しないと、東電が残っていると福島のリスクとつなげられますからほかの電力会社が連携するわけにいかないので、完全売却して初めて柏崎刈羽の再稼働という話が出てくるのではないか、こういうふうに思っています。
具体的には、避難計画のこともありまして、地元の東北電力はかまざるを得ません。しかし、東北電力はキャッシュの問題で限界がありますから、原電が出てきて国がある程度バックアップする、こういう準国営の体制が必要か、そういうふうに思います。
そうしますと、準国営で原子力が運営できるようになりますと、中立的な値段で電力卸取引所に原子力から集まった電気を使うことができますので、自由化も進むと思います。さらには、柏崎刈羽を売るということは、東京電力の火力発電所も売ることになりますので、LNGが他社の手に東京湾で渡りますから、東京湾に石炭火力をつくる必要がなくなりますので、地球温暖化対策にもプラスになるのではないかと思います。
時間になりましたので、私の話はこれで終わらせていただきます。(拍手)