須藤泰人の発言 (農林水産委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○須藤参考人 皆さん、おはようございます。
このような立場に立たせていただきまして、関係各位の皆様に敬意と感謝を申し上げる次第でございます。
私は、群馬県赤城山というところの裾野で牧場を、もうかれこれ四十五年になるんですけれども、やっておりまして、今、千二百頭ほどの酪農業を営んでおります。メーンはそういう仕事をずっとやってきておりまして、参考にペーパーが皆さんのところに御用意されているかと思うんですけれども、本当に酪農一筋でやってきまして今があるというようなことで、大変幸せ者だなというふうに思っております。
またペーパーの方は後で見ていただいて、現在、酪農業界としても、酪農経営体、とりわけ零細家族経営が減少している一方で、私たちのような法人経営を中心とした大規模経営体のシェアが大変拡大しております。六次産業化等に取り組まれる経営体もふえています。シェアが拡大するということは、法人としての経営責任とともに、社会的責任も大変増していくということでございます。経営者みずからが酪農・乳業界の仕組みをもっと勉強していかなくてはならないな、そんなふうに考えました。
そこで、地域や生産規模、そして出荷先等にかかわらず、酪農を営む全国の法人が酪農業界の抱える課題を共有化して、日本の酪農の活性化に向けた活発な議論を行う場として、昨年六月に日本農業法人協会の中の酪農研究会というものを立ち上げまして、今、僣越ながら会長として活動しておるところでございます。
本題に入りたいんですけれども、現行のこの制度に対する考え方と新たな制度への期待ということで、まずお話しさせていただきます。
現行制度のもとでは、近年、牛乳が店頭から消えて国民生活に大混乱を来すような生乳流通が滞る事態は起こっておりません。現行制度が生乳の全体需給の安定に寄与しており、乳価も大きな変動なく、しかも、少しずつではありますけれども右肩上がりで推移してきたこと、乳価の安定が法人経営にとって不可欠であることを踏まえると、現行制度が酪農経営の安定化に果たす役割、機能は大変重要なものでございます。
ただ、生乳需要の量的拡大の時代は終わりました。一方で、バター不足の問題が生じたように、質的な変化、とりわけ需要の多様化が進む状況に現行制度は十分に対応できていないのではないか、そんなふうにも思っております。
指定団体の乳価交渉の過程、乳代から控除される手数料の根拠などが若干不透明であり、組織運営のあり方に疑念を持つ生産者の声も聞かれるなど、制度のあり方について今日的に見直すべき課題も大変多いと考えております。
また、大規模経営では、今、単体の経営体のみで集乳車一台丸ごと生産量があるなど、ほぼ全ての生産者の生乳を合乳せざるを得なかった制度発足時の小規模経営中心の時代の集送乳合理化とは異なる局面にあると思っております。経営の発展を考えまして、みずから生産した生乳のみを原料とした牛乳・乳製品の販売を行いたい、そういうふうに考える経営もふえてございます。
消費者に安全でおいしい牛乳や乳製品を安定的に供給するための制度であることが前提なのはもちろんでありますけれども、あわせて、酪農家が夢を持ってチャレンジできる素地を広げることで、酪農家の経営発展、所得向上につながる制度となることを大変期待しております。
また、今回の改正法案の内容についてですけれども、暫定措置法の廃止と補給金の畜安法への位置づけとして、今回の法改正により、畜安法が畜産経営の安定に関する法律として、その目的に畜産物の需給の安定が明記されたこと、補給金が特別法ではなく恒久法として位置づけられたことは、私たち酪農経営の安定に資するものと大変期待をしております。
また、加工原料乳の生産者補給金のあり方についてですけれども、補給金の原資は国民の税金でございます。誰に支払うのかという議論よりも、多くの国民に納得してもらえるルールのもとで交付していただけるのが重要でございます。
ただし、生乳需給は季節変動が大きいことから、年間を通じた生乳の安定供給には、不需要期の対応として、計画的な乳製品の製造が不可欠となります。そのために、加工原料乳と飲用乳の価格差を前提として、飲用として販売できずに加工用に処理するようなケースは認めない、当初からの計画に基づいた乳製品製造分の加工原料乳を対象とするのであれば、指定団体であるか否かにこだわらず補給金を交付することも当然これは検討してよいのではないかと考えております。本改正法案での補給金の交付対象の拡大は、おおむねこの考え方に即していると私は考えております。
また、部分委託についてでございますけれども、これは経営の選択肢の幅が広がる可能性があります。
現状では、指定団体に生乳を出荷する場合に、生乳の受託規程、受託契約において、全量を出荷しなければならない、ほかの販売先は選べない仕組みになっており、これは実質的に自由に選べる条件ではないように感じております。
制度として、最初から全量を出荷するのではなく、農協との交渉、協議のもとで出荷量を調整できる仕組みとしたり、生産者の判断により販売先を選択することも可能となる仕組みを導入することも検討してよいのではないかというふうに考えていました。
また、生産者の創意工夫ある取り組みを支援するものとして、いわゆる部分委託が認められているんですけれども、農業者みずから処理施設を所有し加工する場合や特色ある生乳を生産者がみずから販売する場合には、販売先が小規模処理施設を持つ乳業者に限られているなど、多くの生産者にはハードルが高いように思っております。また、生産者が製造加工を乳業者に委託する形で牛乳・乳製品を販売することも認められていません。
今回の改正によって、この部分委託の上限が撤廃されることは大きな意義があると思っております。指定団体に出荷しながらもほかの販売ルートを選択できる道が開かれたことで、酪農家が中小乳業メーカーと組むなどして新しい商品開発を模索するなど、新たな取り組みにチャレンジしやすくなることが期待されます。販売の選択肢が複数あることで、経営者にとっては、経営判断につながり、また比較対象ができることで指定団体の意識の変化にもつながっていくのではないかと考えております。
安全性の確保、そして過剰対策、需給調整についてですけれども、生乳は腐敗しやすく、その流通には高度な鮮度管理が求められるということになっております。安全性が確実に担保されていなければなりません。
また、生乳流通には、季節変動に対応した需給調整が不可欠でございます。将来的には、需要減少等により過剰が発生する場合も想定しておく必要があると考えております。
そのために、補給金の交付や全量委託のあり方といった流通制度の改革、見直しにおいては、それと同時に、安全性の担保、過剰対策を含めた需給調整の仕組みを整備することも不可欠だというふうに思っております。
また、生産者団体のあり方についてでございますけれども、指定団体制度が果たしている役割は、これはもちろん認めております。乳価交渉の過程や手数料の水準、根拠など、現行の指定団体の運営が若干不透明と感じられるところもございます。透明性を高め、酪農家に疑義を持たれないようにすべきであろうというふうに思っております。
組織の合理化や運営の見直しによって、酪農家の所得向上に向けて改善できる要素も多くあります。その改善を図っていくことが重要ではないでしょうか。
ただし、指定団体は、指定団体である前に生産者団体でもあります。農業協同組合です。私たち生産者、組合員が組織の運営に関心を持ち、その機能をより発揮できるように働きかけ、努力していく必要があると思っております。
終わりになりますけれども、近年、都府県を中心に酪農家戸数の減少が続いております。酪農の生産基盤の弱体化が大きく懸念されるところでございます。特に、国内の生乳生産の安定には、生乳だけでなく、乳用後継牛の需給を安定させることが大変重要でございます。そのための対策が急務であると今考えております。
私たち酪農経営体も、六次産業化、海外輸出、時代の変化に合わせて生産者みずからチャレンジしていかなくてはなりません。あわせて、ふん尿処理等の環境対策、耕畜連携のさらなる推進も含めた、より健全な経営環境の実現に向けて努力していく必要がございます。
また、農業高校などを卒業し、酪農経営がやりたいという若者も少なくございません。一方、酪農業界は畜産の中でも、労働時間が長い、休みがとりにくいなど、労働条件が厳しいというイメージがあるのが実情でございます。他産業並みの給与や休日取得を可能にすることができれば、優秀な人材を雇用していくことが可能でございます。生産者として収益性を上げ、従業員が働きやすい環境づくりや待遇をしていく必要がございます。
これらの課題に向き合いまして、消費者に安心、安全でおいしい牛乳・乳製品を安定的に供給する生産者としての責務をこれからも果たしていきたい、そのように思っております。
私の発言は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)