鷲尾英一郎の発言 (本会議)
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○鷲尾英一郎君 私は、民進党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する等の法律案につきまして質問をいたします。(拍手)
先月の経済財政諮問会議に提出された中長期の経済財政に関する試算によりますと、財政健全化の指標である基礎的財政収支、プライマリーバランスは、経済再生ケースであっても、二〇二〇年度の赤字額が国、地方を合わせて八・三兆円となり、昨年七月時点の試算から二・八兆円悪化すると見込まれました。
今回、赤字幅が拡大したのは、企業業績が悪化し、一六年度の税収見通しが当初想定より下振れしたことを試算に反映したためとされています。安倍総理は、ことし年頭の記者会見で、鳥が大空をかけるように颯爽と三本の矢を打ち続けるとおっしゃいましたが、税収減となり、デフレ脱却が遠のいている現実に鑑みれば、アベノミクスという言葉自体が空洞化していると言わざるを得ません。
政府は、二〇一八年度にプライマリーバランスの赤字幅をGDPの一%に抑え、二〇二〇年度にプライマリーバランスを黒字化するという目標を掲げています。しかし、今回の税制改正、さらには平成二十九年度予算案の内容を見ても、政府が財政健全化に向けた取り組みを強化する気配はなく、達成への意思を感じることができません。
他方で、平成二十九年度予算案の見出しだけは、経済再生と財政健全化を実現する予算となっています。びほう策を重ねて、歳入を大きく、歳出を小さく見せていますが、財政健全化を実現する予算は言い過ぎではありませんか。空疎な言葉は政治の信用を失うことにつながります。
もはや言葉に力を失ったアベノミクス、三本の矢を幾ら打ち続けると言ってみても、絶望的な財政健全化を実現すると宣言することも、国民に誠実な姿勢とは言えません。
壮大な社会実験であるアベノミクスがどうやらうまくいかないようであれば、違う方法、やり方にバージョンアップするか、別の戦略を打ち出すべきです。それとも、このまま実現不可能なことを言い続けるのでしょうか。本当に財政健全化目標を達成できるというのでしょうか。あわせて、総理にお尋ねいたします。
表面的には失業率は低下し、完全雇用の状態と言えます。完全雇用の状態で実質成長率がゼロ%近傍であることを考えれば、今回の完全雇用はほぼゼロ成長のもとで実現してしまっていて、日本の労働市場の観点に立つと、日本が安定的に実現できる成長率はゼロ%ということになります。
安倍首相は、アベノミクスが成功した暁には実質二%成長が実現するとしていたはずであり、もはや違う処方箋を書くしかないと考えます。
中身を見ると、人手不足の主体が圧倒的に非製造業となっており、労働生産性の低い非製造業主導の人手不足のもとでは、実質賃金の上昇ペースは鈍くなります。
団塊の世代が六十五歳を超える中、男性の労働参加率が今後高まる余地は限られ、二〇一二年ごろから労働参加率の上昇が女性のみで、ついに日本の女性労働参加率はほぼ米国に並んだ状態です。もはや、日本の女性の労働参加率を、国際比較の観点で低いと言うことはできません。
完全雇用であり、実質賃金が上がらず、したがって消費が伸び悩む日本経済において、政府が書かなければならない処方箋はアベノミクスの加速化という空疎な言葉ではないと思います。
特に、自身の経済政策はうまくいっているといいながらも、新しい判断として消費税増税を二度も先送りしました。これは、消費が伸び悩むというアベノミクスが解決できていない問題により、消費税増税が可能な経済状況をつくり出すことができなかった結果です。これにより社会保障の充実は滞り、かえって消費抑制、生活防衛の影響が出ています。
次は必ず消費税を上げるのでしょうか。これまで、アベノミクスの矢を打ち続けても、消費増税が可能な経済状況をつくり出すことができなかったのに、平成三十一年十月までにどうやって経済状況を好転させるのでしょうか。
実質賃金を上げ、消費を拡大させ、消費税を上げるための方法について、総理の明確な答弁を求めます。
次に、所得税法の改正内容である配偶者控除、配偶者特別控除の見直しについて伺います。
昨年九月、安倍総理は、政府税制調査会総会で所得税について、多様な働き方に中立的な仕組みをつくる必要があると表明しました。しかし、議論が進むにつれて尻すぼみになり、結局、控除対象配偶者の年収要件を百三万円以下から百五十万円以下に広げるびほう策となってしまいました。
そもそも配偶者控除の見直しは、女性の働き方改革の一環として提起されてきたはずです。しかし、この改正は、百五十万円という新しい壁をつくったにすぎず、働き方に中立や、所得控除から税額控除という方向性に全く逆行するものです。
パート主婦等控除対象配偶者の就労拡大を妨げているのは、所得税法上の年収制限だけではありません。年収が百三十万円以上になると、社会保険料を納めなければならなくなる百三十万円の壁があります。加えて、昨年十月からは、五百一人以上の企業で働くなどの条件を満たすパート主婦には百六万円から社会保険料負担が生じていますから、新たに百六万円の壁ができています。
こうした社会保険料負担と税の調整もせずに配偶者控除対象配偶者の年収上限を単純に引き上げても、その就労拡大の効果は余り期待できません。
当初、総理や与党幹部が明言していた、働き方に中立という仕組みをつくれなかったのはなぜでしょうか。あわせて、社会保険料の適用によってできる壁を、事業者及び配偶者本人の給与収入に給付金を補填することで就労調整が起こりにくくなると考えますが、この点、御考慮いただけないでしょうか。麻生大臣に御所見を伺います。
総務省統計局の調査によれば、アベノミクスを境にして、所得分布の変化、特に年間収入階級の四百万円から七百万円の階級が減少し、上下に二極化していることが見受けられます。所得や世代、地域、性別など、その格差の拡大に伴って、社会の中で分断が起こり始めています。
我が党は、進みつつある社会の分断化を食いとめ、全ての人を包摂する社会を実現していきたいと考えています。税制もその目的に資する改革を目指さなければならないと考え、そのための対案を用意しております。
税制における所得再分配機能を強化し、実質的に全ての人に基礎的な所得を保障することにつながる所得税改革、無年金者、生活保護世帯を減らし、社会保障制度再編の起爆剤にしていく日本型ベーシックインカム構想です。
その第一段階として、まずは従来の所得控除を税額控除に変えます。所得控除では、税率が高いほど控除額が上がりますから、所得の高い人の方が減税額が大きいのです。これを税額控除にすると、累進税率を変えなくても、所得の再分配機能は大きく強化されることになります。
具体的には、基礎控除を税額控除に変えます。配偶者控除、扶養控除は廃止、縮小、統合し、新たに世帯控除を創設します。これにより、百三万円の壁は極めて低くなり、税制はライフスタイルにほぼ中立になります。
次の段階としては、給付つき税額控除の導入です。給付つき税額控除とは所得税減税と給付を組み合わせた制度で、諸外国では既に導入が進んでいるものです。具体的には、就労により得た所得に応じ減税額をふやすことで就労を促進する就労税額控除を、給与所得控除を再編成して導入します。勤労意欲の低下を防ぎつつ、中低所得者の手取りをふやします。しかも、現金給付ではなく社会保険料の支払いとして充てることで、年金保険料未納問題の解決、ひいては将来的に生活保護に陥る方々をなくしていくことにもつなげます。
我が党は、以上申し上げた日本型ベーシックインカム構想実現に向けた法案を準備しております。政府もこの提案を受けとめ、実現に向けて検討を進めていくべきかと考えますが、総理の見解を伺いたいと思います。
最後に、自動車関連税制について伺います。
自動車関連税制は、本来であれば、消費税率の一〇%への引き上げと同時に、自動車取得税の廃止を初めとする抜本的見直しが行われるはずでした。しかし、消費増税先送りにより、見直しが行われないどころか、エコカー減税、グリーン税制が縮小される方向性が打ち出されました。
自動車産業は非常に裾野が広い産業であることから影響が大きい上に、地方では自動車は生活の足となっています。そうしたところで負担をふやすということは、景気や消費の足を引っ張ることになるのではないかと懸念しますが、麻生大臣の御所見を伺います。
安倍内閣は、アベノミクスの成果を語るとき、都合のよい数字だけをつまみ食いし、間違った現状認識で間違った処方箋を出してしまっています。せっかくの高い支持率というポリティカルアセットをうまく生かし切れておりません。今こそ、迅速に、大きな税制改革を行い、時代に合った税制に変革することが、そのポリティカルアセットの使い道だと確信いたしております。
我々は、政府・与党に不都合な真実を突きつけるだけでなく、建設的に税制改革案を提示し、皆さんの共感を得て、結果として社会の分断化を食いとめ、日本の成長と全ての人を包摂する社会の実現を両立させることをお約束申し上げ、私の代表質問といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕