小熊慎司の発言 (本会議)
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○小熊慎司君 民進党・無所属クラブの小熊慎司です。
ただいま議題となりました原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定について質問いたします。(拍手)
初めに、政府に対し、日印原子力協定への基本的なスタンスをお聞きいたします。
まずお聞きしたいのは、今まさに核兵器不拡散条約、NPT体制が揺らいでいるときに、その揺らぎを加速する協定を結ぶべきかどうかということであります。
北朝鮮が小型核弾頭を搭載し、米国本土にも届く大陸間弾道弾を完成させることは目に見えています。その弾道ミサイルが実戦配備されたとき、NPT体制は崩壊したのも同然です。この現状の北朝鮮危機を前にしても、インドとの原子力協定をこの時期にあえて結びたいと考えるのはなぜなのか、岸田外務大臣にお伺いいたします。
二〇〇六年八月、原子力ルネサンスと呼ばれた世界的な原発増設の動きの中で、政府は、原子力立国計画を策定し、原発輸出を成長戦略と称し、官民一体となって推進してまいりました。
現在も、経産省出身者が中核を占め、アベノミクスの司令塔として内閣官房に置いた日本経済再生総合事務局が原発輸出を成長戦略と位置づける中、総理自身のトップセールスで、昨年十一月、核武装を続けるインドと原子力協定に署名をいたしました。
しかし、二〇一一年三月の東京電力福島第一原発事故で状況は一変いたしました。また、原発の海外ビジネスを政府と二人三脚で進めてきた東芝は、会社の存続さえ危ぶまれる危機的状況に陥っています。日本の原発を採用するはずだったベトナムも、財政難で昨年導入を撤回いたしました。建設途上の中止でなかったことは不幸中の幸いだったと思います。
インドとの原子力協定の締結は、それが即成長戦略であるとする楽観論に基づくものですが、そうした考えは今すぐ見直すべきではないでしょうか。政府の見解を外務大臣にお伺いいたします。
核兵器不拡散条約、NPTの未加盟国には原子力の平和利用でも協力しない、これがNPT体制の実効性を確保するための国際社会の原則であります。
その上、日本は、唯一の戦争被爆国として、みずから核兵器を持たず、他国の核武装に協力しないことを国の基本方針としてきました。その日本までもが、NPTに入らないまま核武装したインドに、原発やその関連技術、部材を輸出すれば、北朝鮮やイラン問題で弱まったNPTの信頼性がさらに空洞化することは必至です。
さらには、インドは、CTBT、包括的核実験禁止条約への加盟も拒否していることも問題です。
一方で、日本も原子力の主要輸出国として参加する原子力供給国グループ、NSGが、二〇〇八年九月、インドにNPT未加盟のまま核関連物質、技術の輸入を例外的に認めてしまったために、インドは、査察対象とならない軍事用の核施設が認められ、さらには、民生用原発の核燃料の確保にもめどがついて、乏しい国内のウラン資源を軍事用に回すことが可能となってしまいました。
また他方、ブラジルは、インドへの例外扱いを認める追加議定書に署名はしておりません。さらに、インドのライバルであるパキスタンは危機感を抱き、同様の例外扱いを求めています。これでは、NPTの空洞化と言わざるを得ない状況となってしまいました。政府の見解を岸田大臣にお伺いいたします。
インドへの原子力協力がNPTと両立し得ることを説明しようとして、安倍総理は、今回の合意が国際的な核不拡散体制にインドを実質的に参加させることにつながっていくと述べられました。
そこで、岸田外務大臣にお聞きいたしますが、パキスタンなどとの対立を抱え、さらには、例外扱いによる特権的立場を獲得したインドを国際的な核不拡散体制に実質的に参加させることを実現するためには、具体的にどのような方法で取り組むのか、お示しください。
本協定は、NPT加盟国と締結した協定よりも曖昧な内容となってしまっています。
例えば、原発建設に一旦合意していたベトナムとの協定では、第十三条に、核爆発装置を爆発させる場合には、協力停止や協定の終了ができることがしっかりと明記されています。しかし、今回署名された協定には、本文どころか、附属書、さらに、政府がこの文書をもってインドの責任ある行動を促すことができると主張する公文にさえ、核実験や核爆発という文言が出ていません。
政府はこれでどうやってインドが核実験を行わないように担保しようとしているのか、不明確です。担保する方法を具体的にお示しくださいますよう外務大臣にお聞きいたします。
また、協定の第十四条の二項によると、協定の中止、廃止には、安全保障上の環境の変化について考慮し合意が必要と規定してある以上、一方的な通告で協定を終了させることはできないのではないかと危惧するところです。
パキスタンが核実験を行い、対抗的にインドが核実験を行ったとき、それは自発的なものなのか、安全保障上の重大な懸念に対応するものなのか、判断を迫られます。この二項があるとしても、いかなる状況であれ、インドが核実験を行った際には協定を破棄することを明言できますか。外務大臣にお伺いいたします。
インドの例外扱いを認める際、日本は、インドが核実験を再開した場合には、例外化措置を失効、停止して、各国の原子力協力をやるべきとの立場を表明いたしました。インドは、二〇〇八年九月の外相声明で、核実験のモラトリアムの継続、軍民分離の実施、厳格な輸出管理措置を含む約束と行動をうたっているわけですが、残念ながら、協定本文に、二〇〇八年九月の外相声明に違反した場合に協力を停止するとの内容は盛り込まれませんでした。
協定第十四条一項に、「各締約国政府は、この協定の有効期間の満了前に、他の締約国政府に対して一年前に書面による通告を行うことによりこの協定を終了させる権利を有する。」とは規定はされていますが、終了を求める事由の要件は規定されていないので、インドがみずからの協定違反が理由であると認めるとは到底思えません。
それに、インドが核実験をしても一年間協力を続けるのでは、とても停止したとは言えないのではないでしょうか。仮にすぐに停止した場合には、インドに損害賠償を求められかねないと考えますが、政府の認識を岸田外務大臣にお伺いいたします。
ウラン濃縮及び使用済み核燃料の再処理に関しては、協定第十一条一項は、「同位元素ウラン二三五の濃縮度が二十パーセント未満である範囲で濃縮することができる。」とし、「濃縮度が二十パーセント以上になる濃縮は、供給締約国政府の書面による同意が得られた場合に限り行うことができる。」とされています。また、第十一条第二項では、「この協定に基づいて移転された核物質及び回収され又は副産物として生産された核物質は、この協定の附属書Bの規定に従い、インド共和国の管轄内において再処理することができる。」と規定し、条件つきでインドに対してウラン濃縮及び使用済み核燃料の再処理を認めています。
こうした軍事利用にもつながりかねない再処理は、平和利用のどのようなケースを想定しているのか、岸田外務大臣、明確にお示しください。
二〇一一年の東京電力福島第一原発事故を受け、国内での原発新増設は望めず、先進国の原発需要も頭打ちとなりました。今後の主戦場は新興国で、中でも二〇三二年までに原発を四十基新設するインドは、その中心と考えられています。
そうした状況下で、原子力協定がないと、日本企業は、二国間協定を持つ米国企業などを通じて参入機会をうかがうしかなく、みすみす商機を逸しかねないので、今回のインドとの原子力協定締結は、日本の原子力産業のビッグチャンスになると喧伝されております。果たして、そう単純なものなのでしょうか。
例えば、二〇一六年六月、米印首脳は、東芝傘下にあったウェスチングハウスがインドに二〇三〇年までに原発六基を新設することで合意いたしました。総事業費は推定二百億ドルと言われていますが、その前提であったと考えられる東芝との提携解消によって、東芝は利益配分どころか賠償責任を負わされる可能性もあるのではないかと考えますが、経産大臣に答弁を求めます。
日本では、沸騰水型軽水炉、いわゆるBWRが多く、東芝もBWRメーカーですが、世界の原子炉の七割は加圧水型軽水炉、PWRで、中国やロシアなど新興国も次々とPWRを採用しているので、世界に打って出るにはPWRへの対応が不可欠です。東芝がPWRメーカーであるウェスチングハウスを買収したのも、こうしたことを考慮したためであるとされています。
しかし、今となっては、日本の中核的原子力メーカーである東芝も日立もPWRに対応できない中で、中国や韓国と激烈な競争をしながら、どのように原発輸出を進めることができるのでしょうか。経産大臣、お答えください。
二〇一五年に発効された、国境を越えた原子力損害の賠償について国際的に共通のルールを定めたCSC条約では、原子力事業者が過失の有無を問わず賠償責任を集中して負うこととなっています。
他方、二〇一〇年に成立したインドの原子力損害賠償責任法では、万一の事故の際、発電事業者だけではなく、原子炉などの設備を納入した企業にも事故の責任を負わせる仕組みとなっています。
もちろん、万が一事故が起きた場合のリスクは、民間企業が負えるものではありません。そのために、米国とインドは、二〇一五年一月に事故のときの損害賠償はインド側がつくる保険制度で賠償することで合意しています。日印原子力協定の署名に際し、こうした措置はとられているのかお伺いしますとともに、政府は、それがない状態で協定を署名することが無謀だとは考えていなかったのか、外務大臣にお伺いをして、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。感謝します。(拍手)
〔国務大臣岸田文雄君登壇〕