小熊慎司の発言 (本会議)

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○小熊慎司君 民進党の小熊慎司です。
 私は、民進党・無所属クラブを代表いたしまして、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定、いわゆる日印原子力協定に対し、反対の立場から討論を行います。(拍手)
 昨年開かれた五年に一度の核拡散防止条約、いわゆるNPT再検討会議では、NPT体制の弱体化に大きな警戒感が示されました。その最大の要因は、核兵器国が約束した核兵器削減計画が進んでいないこと、また、核兵器保有国が実際どのくらい核弾頭を保有しているかも不明であって、それに対し、非核兵器国から大きな不満が出たためです。
 そうした中で、核兵器国を主要なメンバーとする原子力供給国グループ、NSGが、二〇〇八年九月、インドにNPT未加盟のまま核関連物質、技術の輸入を例外的に認めて、インドが査察対象とならない軍事用の核施設を合法的に持ち得たこと、さらには、民生用原発の核燃料の確保が保証されることで、結果的に、乏しい国内のウラン資源を軍事用に回すことが可能になったということは、幾ら強弁しても、NPT体制を強化するものであると言えるはずはありません。
 しかるに、NPT条約上の非核兵器国である日本までもが、インドとの原子力協定を、国際的な核不拡散体制にインドを実質的に参加させることにつながっていくと述べて、NPT体制をまるで強化するかのように主張して、インドに原発やその関連技術、部材を輸出しようとしていることは、NPTの信頼性を傷つける以外の何物でもありません。
 原子力協定とは、そもそも、原子炉などの輸出を解禁する一方、その関連技術や核物質を核兵器に転用しないことを確認する保障措置の受け入れを相手国に義務づける二国間協定を指す国際法上の用語です。
 しかし、インドは、確かに、二〇〇八年九月のムケルジー外相声明、いわゆる九月五日声明で、核実験のモラトリアムの継続、軍民分離の実施、厳格な輸出管理措置を含む約束と行動をうたっているわけですが、残念ながら、協定本文に、二〇〇八年九月の外相声明に違反した場合に協力を停止するとの内容は盛り込まれていません。
 さらに、委員会での質疑で、政府は核実験モラトリアムのみを強調し、核爆発を伴わない未臨界実験については、全てが把握できていないことが明らかとなりました。
 また、インドにおける将来の核先制不使用政策の方針転換の問いには、答弁に窮する事態となり、最終的に岸田外務大臣が、政策転換があれば協力終了すると明言をされましたが、これは今後において重大な事柄となります。
 インドの核先制不使用政策からの転換は、現実的な問題です。つまり、二〇一四年、インドでの下院総選挙で、モディ現政権のインド人民党は、党の選挙マニフェストにおいて、核政策見直しの中に核先制不使用政策の転換が含まれています。それは、核武装する隣国パキスタンは核先制不使用を宣言せず、現在は、パキスタンの核攻撃第一弾をインドが受け甚大な被害となり、核兵器で反撃する構図であるからです。これに対してインド人民党内、インド国内世論の反発は強いものがあり、核先制不使用政策転換が現実味を帯びています。
 さらに、政府は協定第十四条一項に基づいて協力を即時停止すると言っていますが、既に稼働している場合に、輸出済み、かつ稼働原発からの汚染資機材や使用済み核燃料、再処理や濃縮により生成されたプルトニウムを、最終貯蔵施設を持たず、中間貯蔵施設もほぼいっぱいになりつつある日本に国費を使って持ち帰るなど、実際上、できる話ではありません。
 インドの原子力損害賠償責任法では、万一の事故の際、発電事業者だけでなく、原子炉などの設備を納入した企業にも事故の責任を負わせる仕組みとなっています。そのために、アメリカとインドは、二〇一五年一月に事故の損害賠償はインド側がつくる保険制度で賠償することで合意をしています。
 仮に、インドとの合意なく、日本が一方的に協力を停止した場合、事故の場合よりももっと、インド側が日本の責任を追及する可能性が高いものと考えます。いずれにせよ、そうしたリスクに見合った協定であるのか、極めて疑問と言わざるを得ません。
 日本では、東電の原発事故によって国内の新規原発建設がとまり、さらに、東日本大震災以降停止した原発の再稼働も進まず、このままでは国内の原子力産業が衰退しかねないため、原子力技術や資材の輸出に新たな活路を求めようと、インドと原子力協定を結ぼうとしたものであります。
 しかし、世界進出を図った東芝が破綻の危機にあるように、原発の輸出は、事故もさることながら、建設工事の遅延や資機材の調達のふぐあいといったことで莫大なリスクを負うことが明らかになってきました。
 さらに、今回の東芝とアメリカ・ウェスチングハウスとの提携解消によって、これまでアメリカ・ウェスチングハウスが東芝との提携を前提として獲得した商談が今後破綻するようなことになれば、東芝がさらなる賠償責任を負わされる可能性もあるのではないかと考えます。
 このように、原発輸出が単純にもうかると考えること自体、非現実的であり、その意味でも、インドとの原子力協定を認めるわけにはいきません。
 我々民進党は、東京電力福島第一原発事故を教訓にして、あらゆる資源を投入して二〇三〇年代に原発ゼロを目指すと公約をしております。そのためには、省エネ技術を推し進めるとともに、再生可能エネルギーを最大限活用する必要があります。しかし、そのためには、我が国のエネルギー体系を、現在の大規模発電設備を中核に据えた集約型から、エネルギーの地産地消を基本とした地方分散型に大胆に変換する必要があります。
 日本は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現のために、包括的核実験禁止条約の締結に尽力するなど、核軍縮を積極的に推進するとともに、技術的にほとんど重複する核の平和利用についても、脱原発をてことして、できる限り縮小していくことが日本の国際的使命であるというふうに思います。
 この後、採決が行われますけれども、我々は原発としっかり向き合っていかなければなりません。
 たびたび、総理におかれては民進党の支持率に御指導いただきます。これは私は真摯に受けとめたいと思います。しかし、福島県内では、安倍政権の支持率は、一〇ポイント以上不支持率が上回っています。これはやはり、原発に対する向き合い方、その姿勢がその不支持率にあらわれていると言えるのではないでしょうか。
 原発を処理する際に、十万年という時間をかけて使用済み核燃料を保管しなければならない。実現をしていない高速増殖炉があったとしても、三百年です。三百年前はちょうど、この日本においては、江戸町奉行に大岡越前が就任をした年であります。大岡越前が、負の遺産を三百年も、責任を持って、政治の責任を全うするということが言えたでしょうか。我々は、歴史的な負の遺産ではなくて、次世代のために正しい遺産を残すことが政治家の使命であるというふうに言えます。
 ぜひとも、この協定の賛否を問う前に、皆さん自身が自分自身に問いかけていただきたい。そして、これからの日本のために、世界のために、責任ある行動で表決をしていただきたい。我々は、責任ある政治家として、原発と真摯に向き合って、この原子力協定に反対をいたします。
 最後に、会津武士道精神の一つである、ならぬことはならぬと申し上げて、反対討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 小熊慎司

speaker_id: 18041

日付: 2017-05-16

院: 衆議院

会議名: 本会議