井出庸生の発言 (本会議)

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○井出庸生君 民進党、信州長野の井出庸生です。
 ただいま議題となりました性犯罪規定について刑法の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問させていただきます。(拍手)
 冒頭、先日の共謀罪の強行採決に断固抗議をいたします。
 性犯罪の罰則等については、平成十六年、第百六十一回国会で、衆参両院の法務委員会の附帯決議の中で、性的自由の侵害に係る罰則のあり方について、さらなる検討が求められました。また、平成二十二年十二月には、第三次男女共同参画基本計画が閣議決定をされ、強姦罪の非親告罪化、性交同意年齢の引き上げ、構成要件の見直し等を検討することとされました。
 さらに、本法案が法制審で議論されていた昨年から、性暴力の被害当事者の方々が、当事者の声を聞いてほしいと今日まで活動をされてきました。長い活動の御労苦に深く感謝を申し上げます。
 本法案の議論は、苦しみの中から声を上げられた方、さらに、声を上げることができなかった多くの方々、御家族、被害者に寄り添い、支援に当たってこられた関係者の方々の努力の結実です。その本法案審議よりも共謀罪を先行させた政府・与党に強く抗議をするとともに、私は、当事者の声を受けとめ、本法案に一層の改善を求めてまいります。
 フランスの学者ジョルジュ・ヴィガレロの書いた「強姦の歴史」という本には、画期的と評される一九七八年の強姦裁判、エクスの裁判に関する言葉として、被害者が、強姦、それは破壊でした、私たちそのものを破壊することでしたと、被害者の弁護人は、強姦の日から、彼女たちは内面に入り込んで離れない死を抱えて生きなければならないのですと、それぞれ述べていた旨書かれています。強姦が魂の殺人と言われるゆえんです。
 強姦罪は、制定当時、家父長制度を前提とし、夫に従属する妻の保護を目的としたと言われています。戦後、この価値観は否定され、判例、通説では、強姦罪の保護法益は性的自由の侵害とされています。
 今回の法改正で、強姦罪の構成要件から「女子を姦淫した」との規定が削除され、被害者の性別を問わないこととした点や、強姦罪の処罰対象となる行為を拡張した点は、実態に即したものと言えます。しかし、被害者が性交と同程度の深刻な被害を負ったとしても、男性の性器ではない、指や異物の膣、肛門への挿入行為は、強姦罪改め強制性交等罪になっても規定はされませんでした。
 そこで、強制性交等罪の保護法益は何か、伺います。
 本法案の保護法益は、性的自由のみにとどまるのか、それとも、先ほど提案理由説明で言及をされた、被害者の人格や尊厳、心身を守ることも保護法益とするのか、端的に答弁を求めます。
 被害者の立場に立てば、指や異物を膣、肛門へ挿入される行為は、性的な侵襲があったという点で、深い傷を負う強姦と変わりません。被害者の人格や尊厳、心身を守ることも保護法益とするのであれば、これらの行為も強制性交等罪とするべきとの立論も十分考えられますが、見解を求めます。
 本改正案においても、強制性交等罪は、暴行または脅迫が要件となっています。強姦は不同意だけでは成立をせず、被害者の抗拒を著しく困難ならしめる程度の暴行または脅迫を用いることが要件とされる、これまでの考え方が維持されてきました。
 十四歳の女の子が恐怖の余り抵抗ができなかったことをもって、暴行、脅迫要件を満たさず、強姦罪が成立しないとの判例があります。恐怖で身がすくむ、殺されるかもしれないと思って抵抗できない、これは被害者に起こる普通の反応です。恐怖の余りフリーズをする、あるいは解離症状が起きる、こうした反応と、強姦罪の構成要件に暴行、脅迫要件を課すことの合理性についてどのようにお考えですか。
 現行刑法は、百七十七条で強姦罪、百七十八条第二項で準強姦罪を規定しています。強姦と準強姦の違いは構成要件です。強姦は暴行、脅迫、準強姦は心神喪失もしくは抗拒不能に乗じる、またはそうした状態にさせることが構成要件です。
 しかし、強姦と準強姦の法定刑は同じです。強姦も準強姦も、ともに強姦です。強姦と準強姦を一つにして、暴行、脅迫を抗拒不能、心神喪失に陥らす行為の例示とし、強制性交等罪、準強制性交等罪の新たな構成要件として、抗拒不能を中心に一本化した規定をすることは十分検討に値すると提案をしますが、見解を求めます。
 十三歳と規定をされている性交同意年齢の引き上げについては、本法改正には盛り込まれておりません。問題としたいのは、同意とは何かということです。
 臨床心理士の藤岡淳子さんの本「性暴力の理解と治療教育」には、真の同意に必要な六つの要件が挙げられています。
 一つ、同意とは、年齢、成熟、発達レベル、経験に基づいて、指示された何らかの性行為が何であるかを理解していること。二つ、提示されたことへの反応について社会的な標準を知っていること。三つ、生じ得る結果や他の選択肢を認識していること。四つ、同意するのもしないのも同様に尊重されるという前提があること。五つ、自発的決定であること。六つ、精神的、知的な能力があること。まとめますと、同意する内容を理解し、対等性があり、強制性がないという条件がそろって初めて真の同意と言えます。
 性交同意年齢は、女性の身体的成長時期などから十三歳と定められたと聞いていますが、十三歳が、さきの六要件を満たす同意が可能と考えるかどうか、見解を求めます。
 同意に関連して、性教育は十分と言えるのか。私は、小中高校で、それぞれで広く使用されている教科書の性教育について文部科学省から説明を受けました。教科書には、主に男女の身体的特徴の観点からの記載があります。また、中学、高校では、お互いの理解、尊重についても多少の記述があります。
 性交年齢が低年齢化していると言われる中、本法案の改正を機に、同意や相手を尊重することなど、男女間の心の部分について、性教育で一層取り組むよう通達を出すことが、性犯罪、性暴力、性非行を少しでも減らすことにつながると考えます。通達を御検討いただけますでしょうか。
 本改正案では、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪が新設されます。本人からの被害申告や暴行、脅迫要件を満たさなくても、現に監護する者による性的虐待に対して刑事罰を問うことができます。
 現に監護する者の典型例として、実親や養親等が挙げられるとのことですが、先ほどの真の同意の観点から考えますと、子供は生活の全てを親に依存する存在です。対等性はなく、強制性があり、それらの行為について真の同意は考えられない関係です。本改正案には「影響力があることに乗じて」と規定がありますが、内縁も含めて、親であれば、その立場をもって影響力があることに乗じてと解釈をし、他の要素を必要としないと考えてもよろしいでしょうか。
 さらに、教師による、被害生徒等の意思に反した性交等も、逆らうこと自体が被害者の生活基盤を失うおそれがある場合には、この規定が適用される可能性はありますか。
 幼いころの近親者による性的虐待は、生涯にわたり大きな影響を与えます。現行法では、強姦罪の公訴時効期間は十年、強制わいせつ罪は七年ですが、未成年への強姦行為等については、成人した後に被害を認識できるようになる可能性もあります。時効を延ばすことについては、証拠の散逸等から否定的な考えもありますが、児童ポルノ被害の深刻化などに鑑みれば、被害者が成人もしくは自立してからでも被害申告ができるように、未成年者を対象に、時効を一定年数停止することも重要な検討事項と考えますが、見解を伺います。
 全く根拠のない、強姦神話と呼ばれるものがあります。例えば、強姦の加害者のほとんどは見知らぬ人であるという話です。しかし、平成二十六年の強姦の検挙件数に占める被害者と面識がある容疑者の割合は五〇・九%となっています。
 先月二十九日、東京霞が関の司法記者クラブで一人の女性が記者会見をしました。報道によりますと、女性は知り合いの著名なジャーナリストから性暴力を受け、警察が準強姦容疑で捜査をしたものの不起訴となったため、不起訴処分を不服として検察審査会へ審査を申し立てたということです。
 この事件を最初に提起した週刊新潮によると、著名なジャーナリストには準強姦容疑で逮捕状が出たものの逮捕に至らず、警視庁の当時の刑事部長が、私が決裁した、自分として判断した覚えがあるなどと週刊誌の直接取材に答えています。
 管轄の警察署を超えて警視庁幹部が判断をすることには元警察関係者からも疑問の声が上がっています。不起訴となっているこの事件は、警視庁の刑事部長が判断を下す特別な捜査本部体制が最初からしかれていたのでしょうか。国家公安委員長に答弁を求めます。
 検察審査会への審査の申し立ては、公正な捜査を尽くしてほしいという願いにほかなりません。
 被害者にとって、性暴力が犯罪であるかどうかは、被害者の回復に大きな影響を与えると言われています。有罪になれば、自分が悪いのではなくて加害者に責任があると、より明確に思うことができ、また、不十分ながらも公的サポートを受けることができます。刑事や検察官が頑張っている姿に力をもらえると、性暴力と刑法を考える当事者の会代表山本潤さんは著書の中でこのように述べています。
 会見を開いた女性には、励ましの声がある一方、会見時の服装など、事件と無関係の批判も見られます。性暴力や性犯罪の被害者への支援は、社会を挙げて取り組むべきものです。
 国家公安委員長には、この事件について、捜査のいきさつを検証し、説明する責任がございます。個別の案件にはコメントを控えるという答弁では、これまでの捜査の公正さを証明することはできません。国家公安委員長に、事実関係の確認と、捜査のいきさつを検証する意思はあるか、答弁を求めます。
 本法案では、強姦罪等が非親告罪となりました。被害者のプライバシーをどのように守るのか、答弁を求めます。
 また、幼い子供の性犯罪被害、虐待事案の際に、子供の負担にならないようにしつつ、正確な供述を得ていくための司法面接の導入の必要性について見解を伺います。
 性犯罪には、厳正な処罰と被害者への適切な支援が必要です。被害者支援のためのワンストップ支援センター設置を強力に推進する法案を、昨年、五野党で共同提案いたしました。本法案とともに、この性暴力被害者支援法案もセットで成立をさせていただき、両輪で被害者を支えるべきと考えますが、見解を伺います。
 性暴力被害の当事者として、多くの困難を乗り越えてこられ、また被害者支援にも取り組んできた山本潤さんは、被害者が認められていない社会の実態について、次のように述べております。彼らは知らないだけなのだ、そのような恐怖を感じる世界があることを想像もできないだけなのだと。
 この言葉と真摯に向き合って、性暴力、性犯罪が少しでもなくなるよう、本法案にとどまらず、教育、被害者支援など、多岐にわたって論点を深めてまいります。
 以上で質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣金田勝年君登壇〕

発言情報

speech_id: 119305254X03120170602_015

発言者: 井出庸生

speaker_id: 30597

日付: 2017-06-02

院: 衆議院

会議名: 本会議