丹羽宇一郎の発言 (国際経済・外交に関する調査会)

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○参考人(丹羽宇一郎君) 私、少し切り口を変えまして、二十一世紀の半ばに向かって世界はどのように変わるだろうか、あるいはアジアはどうだ、あるいは日本の国の姿はどう変わっていくであろうかというようなことを念頭に置きながら、世界のグローバリゼーションの潮流はどうなるか、あるいは、その中でも非常に重要なのは、戦後のレジーム体制の変革の時期が来ているのではないかということで警察官不在の世界というふうに書いたわけであります。三つ目は、やはり日本のこれからの姿、その中で外交をどのように展開していくべきか、基本的な問題は何だろうかと。私は中国に二年半大使として行っておりましたので、この外交という問題につきましてもなかなか新聞等では出ないような話もあるかと思います。その一端でも少し触れながら、これからの日本の外交はどうあるべきかと、基本的な問題を少しお話ししたいと思います。
 最初に、グローバリゼーションが世界の潮流である。これにさおを差す動きが少し出ているようでございますけれども、特にトランプ大統領がツイートで動いておりまして、私の毎朝もこのトランプさんのツイートで始まる日々でございまして。そういう中での一つが、先ほどから出ておりますアメリカンファースト、それから保護主義支持者、あるいは反グローバリズムという極めて身勝手な政策が最近出ておりまして、QアンドAなしの百四十語のツイートで世界に混乱のつぶやきを、さえずりをばらまいているというのが現在の姿で、どの国も大変に迷っていると思います。
 安倍さんだけではなく、世界の各国が、この百四十字の言葉で、しかも中学生が理解できるような英語で分かりやすくこれを表すことは大変に難しい。皆さん、そのトランプさんのツイートを英語で御覧になっている方もおられると思いますが、非常に日本語に翻訳するのが難しい。裏と表でやはり英語を理解していかなきゃいけない部分があると思います。これをどのように日本語に訳して新聞が報道しているか、あるいはまた欧州の各国にどのように伝わっているか、大変に判断に迷うところがあると思います。そういう意味で、最近のスマホもインターネットもそうでございますが、真実はどこなんだ、ポストトゥルースという話が最近出ておりますけれども、やはりそういう目であらゆる情報をよく見ていく必要があるだろうということではありますけれども、どうも間違いなくグローバリゼーション、アンチグローバリズムというのが一つ入っているようでございます。
 それから、アメリカンファーストといいますけど、チャイニーズファーストとアメリカの大統領が言うことはありませんね。日本の首相がアメリカンファーストと言うこともありませんね。こんなものはごく当たり前のことでございまして、なぜこのフレーズがこれほど世界に広がって新聞の一面を飾るんだと、私にとってみますと極めて疑問であります。日本の首相がジャパニーズファーストと言って新聞の一面になりますかね。
 というふうに考えますと、アメリカンファースト、それは、重商主義だとかあるいは保護主義だといいますけど、こんなものは別に今に始まったことではなくて、どの国も自分の国益が第一であることは疑いのないことでありまして、これをもってトランプはアメリカンファーストでアンチグローバリズムだというふうに片付けるとか保護主義だとして片付けるというのは、やはりちょっと過剰反応ではないかと私は思っております。
 したがいまして、最初に申し上げたグローバリゼーションというのは避けられない世界の動きでありまして、なぜかと。
 これは過去、例えば江戸の時代から人口の増加というのは非常に顕著に続いてきているわけですね。これは世界的に見まして、例えば江戸幕府の開幕のときに世界の人口はどれぐらいあったかといいますと、三億人でした。そして、一七〇〇年になって六億人になりました。一八〇〇年、マルサスの「人口論」が出る少し後、この頃になりますと九億人。それで、マルサスは何を言ったかというと、幾何級数的に人口が増える、算術級数的には増えない、例えば食料とかいろんなものは二〇%、三〇%アップで来るでしょうけど人口は違うんだと言いました。そして、一九〇〇年になりましたら十六億人になった。なるほど、マルサスの言うとおりかと。それじゃ、一九〇〇年はそうでしたが、二〇〇〇年になったらどれぐらいになるか。六十四億人になりました。そうか、人口はその勢いで増えるのか。
 それじゃ、国連もいろいろ調べましたけれども、世界は二十一世紀の半ばに何億人になるだろうか。今、大体、平均的に見ますと百億人です。そこまで地球は耐えられるだろう。どういうことか。水と食料、自然現象、環境問題からいって百億ぐらいがいいところではないか。誰も正確な数字は分かりません。という姿を我々は頭に入れて考えなきゃいけない。資源は有限であります。これはローマ・クラブをまつまでもなく、依然として地球で続く問題です。
 人口はこのように大きく、江戸幕府のとき三億人が今や七十二億人になってきた。二〇〇〇年から二〇一七年までの間に大体毎年六千万とか七千万人増える。アフリカはこれから三十年で、今十億でありますが二十億人になるだろう、アジアの人口も増えるでしょう。ということを考えますと、世界のこれからの姿というもので何が一番大事なんだということは、やはり食料が安定するか、あるいは世界の水は大丈夫かということを我々は念頭に置いてこれからの姿を考えなきゃいけないだろう。
 その中で、日本というのはどういう立ち位置に今世界の中であるか。
 人口問題、水問題、人、物、金、これは人間が止めようとしても、トランプが止めようとしても絶対に止まらない。人口がこれだけ増えたからグローバリゼーションの動きは大変な勢いで進んでいるわけです。これを止めるわけにはいかない。人も金も物も、幾ら止めても、人は穴を掘ってでもモグラのようにメキシコから米国へ入ります。空からも来るでしょう、海からも来るでしょう。
 したがいまして、トランプさんがメキシコとアメリカの間の不法移民を帰すとか柵を造ると言っております。これは、私もアメリカに十年いまして、そんなものは昔からあるよと。アメリカも移民を停止したり廃止したり反対したりしていますけれども、アメリカの国家理念というのは移民合衆国家です。移民があってあの国はこのように発展をしてきたわけでありまして、この移民を止めるということはアメリカの国家理念を壊す、私はそんなことはできないと思います。そうやってアメリカが発展してきたことは、経済の歴史であろうと政治の歴史であろうと見れば分かるわけでありまして、大統領一人でこれを止めることはできないと思います。
 したがって、今動いているトランプ大統領のいろんなつぶやきも、やはり時間を掛けてもう少し冷静に物を見ていく必要がある。株式市場のように、翌日すぐ反応する。千ドル上がって千ドル下がるとか、千円ですか、上がって下がるとか、為替も飛んだり跳ねたりすると。私は経済界に長くいますから分かりますけれども、冷静に物を見なさい。一日、二日で世界は変わらない。一日、二日で政策は実行できない。そうすると、三日、四日、一か月、二か月待ちなさい。そうして、よく冷静に数字を見て、実際の行動を見て、各国の反応を見て動きなさい。それを一番やっているのはドイツのメルケルでしょう。あるいは習近平でしょう。じっとしていますね。アメリカへ行ってゴルフやるとか、アメリカへ行ってトランプさんと遊ぶとか、そういうことをやっている国はどこにあるかと。やはり冷静に見なきゃいけない。もし、あれがアメリカ国民の非難を相当浴びるようになると、日本は一体何なんだということになります。
 私は、国の姿を考えるときに、日本はグローバリゼーションから離脱することはできません。グローバリゼーションがあって初めて、日本の平和、日本の生活は守られているわけです。人、物、金が動かなくなったら、江戸の鎖国時代と一緒で、皆さん方は、鎖国時代、今、日本は生きていけないんです。あらゆるものが世界のどこかの国とつながっています。ボタンを押すと連続的につながっているわけです。
 そういうふうに考えたときに、日本の国是としては、やはりこの四海、海に囲まれて、あらゆる面から見て日本は世界のどの国とも仲よくしなきゃいけない、どの国とも平和で付き合っていかなきゃいけない、どの国とも自由に貿易できるような体制に持っていかなきゃいけない。根本のところはここです。したがって、あらゆる政策は、中国でもロシアでも、イーブン北朝鮮とでも、いずれはですよ、やはり仲よくやっていくということが、日本の地政学的にもあるいは経済的にも政治的にも、絶対に離れられない国是なんです。マストなんです、これは。けんかをやっていいことは、日本の国としてはあり得ません。今、全てのものを自給自活できるのは、アメリカとオーストラリア、ロシアぐらいです。資源がなくてはできない。そして、経済制裁とかけんかをして、日本は立ち位置ありません。
 また、もう一つの問題は、資源も有限と知って、私が申し上げましたけど、アメリカでさえも、今地球上で未開発の資源はどこにあると思われますか、北極海です。北極海を支配しているのは誰ですか、ロシアです。だから、トランプさんがロシアに非常に近いティラソンを国務長官にしたと。全く理にかなっていると私は思っています。もしそうであるならば、中国の習近平も恐らくロシアとは面と向かっては戦えないでしょう。しかも、太平洋を中国から欧州へ行けば四十日掛かります。北極海を行けば多分半分以下でしょう。その間の経済的な利益は大変なものであります。
 そういうことも頭に入れて、二十一世紀の半ば、果たして世界はどのように変わるか。そして、日本は、立ち位置は平和と自由でしょう。平和と貿易でしょう。これなくしてはあり得ない。イーブン中国も日本と立ち位置はほとんど変わりません。これだけの十四億近い人口をどのようにして安定した国民の生活に持っていくか。彼らの今の資源の使い方からいえば、日本以上に平和と自由貿易が国是になるはずです。彼らもいずれ気が付くでしょう。
 というのがこれからの世界の立ち位置で、全ての議論はその立脚点に立って物を考えていく必要があるという。難しいことは分かります。しかしながら、それをやっていくのが政治の仕事です。軍人の仕事とか経済界の仕事ではない。その国の姿勢を、基本をどのように維持していくかを考えるのが私は政治の仕事だと思っているんです。
 ということで、グローバリゼーションは日本の国是というのは、まさに今、私が申し上げた点でお分かりいただけるだろうと思いますが、中国の一番の経済的な問題は水です。
 これは、人口は世界の大体五人に一人、中国人です。水はどうだ。世界の大体二〇%を占める人口の国が今、水においては世界の八%です。つまり、それだけ一人当たりの淡水の占有量というのが少ない。一人当たりで見ると百八位。経済的には第二位だ、しかし、人間が使う水の、淡水の一人当たりの占有量というのは八%にすぎない、世界の百八位だということなんです。そして、中国の中で、普通の都市の四割近いところが水で大変に問題があるということです。重化学汚染を受けている可能性がある、あるいは農業の水はどうするかというようなことを考えると、中国においてもグローバリゼーションは避けて通れないだろうということがお分かりいただけると思います。
 それじゃ、二つ目の、こういう中で習近平体制、中国体制、特に日本、アジアにとって中国はどんな存在なんだ。潰れるだろうか、あるいは経済的に波乱が起きるであろうか、起こしてはいけないということなんです。起きるのは勝手ですが、日本の国益を考えなければ、まあ勝手にしたらいいじゃないの、共産党の世界がどうなろうとわしの知ったこっちゃない。しかし、それじゃ済まないから我々は心配をしているわけです。中国の経済が崩壊したら日本の経済も崩壊すると思います。それほど中国の経済の位置は大変に強いし、中国の力自身が大変に今や強いということなんですね。
 それはどういうことかと申しますと、あるいは軍事力においても、経済力においても、あるいは科学者の数においても、留学生の数においても、貿易の総額においても世界第二位以上の地位を占めている。特に軍事力においては、一兆七千億ドル世界全体であるとしても、アメリカが三三%、中国は一〇%強、日本は二・五から二・六%です。何倍かの力をもう持っている。
 それから、科学者の数も、最近OECDが調査をして発表しました。去年の夏ですかね、発表しましたが、まず中国のRアンドDの科学者の数は百四十八万人ぐらいいる。アメリカが百二十五万人である、日本は六十六万、ロシアが四十四万、韓国が三十二万というように、科学者の数においてもかなり出ているんです。
 それから、四百四万人という留学生が四十年間で海外に出ている。そのうちの五〇%が中国に戻ってきているということを考えると、我々が今まで思っているように、中国はあほやばかやうそつきだという時代はもう過ぎた。つまり、それだけ教育受けた連中が今や政府の中枢なり国有企業の中枢に入ってきているというふうに考えなくてはいけません。もちろん、中には変なのはいっぱいおります。日本の十倍ばかもいるし賢い人もいるということを考えると、中国は世界第二位だというのは、科学者の数、留学生、あるいは軍事力から見てもそうである。
 経済的にはどうかと。
 ここでちょっと、今日お配りした資料に、先ほどから出ておりますRCEPとASEANというものの国、あるいはアジア二十四か国というのは、どういう国があってどれぐらいのGDPの規模かというのが出ております。
 これを見ていただきますと、中国、日本、インド、韓国、この四か国でアジア二十四か国の九〇%を占めているんです、GDPでは。ということは、あと二十か国で一割しか占めていない。そして、今から三十年前、中国のGDPはここにありますタイの三千九百五十億ドル、〇・四兆ドルぐらいでした。今、十一兆ドルに近い。二十五倍だ。
 日本はその頃どうであったか。日本は、先ほど榊原さんから出ました一九五三年から七三年の第一期の戦後最大の日本の好景気のときですね、日本は経済成長率が九・一%でございました。その頃、中国が〇・四兆ドルの頃、日本は三兆ドルでした。現在は、名目でいいますと、ドルで直しますと、やはり為替にもよりますけれども、二〇一五年ベースにすると大体四兆一千か二千億ドル。僅か一・数倍にしかなっていない。
 ところが、中国は今や十一兆ドル。〇・四が十一兆ドル、二十五倍になっている。貿易総額においても中国が、二〇一六年はかなり落ち込んでおりますけれども、やはり三兆六千か七千億ドルぐらいあるでしょう。そして、世界全体が三十六、七兆ドルになっています。アメリカが第二位です。そういうような状況の中で、中国がいろんな面から見てももう第二位という地位を固めているというふうに思った方がいいと思います。
 アメリカはもう今や世界の警察官ではあり得ないというふうに言っておりますが、トランプの発言を聞いてもその傾向はうかがえます。じゃ、そういう中で日本の外交上の将来はどうなんだということであります。
 これは、私が見る限り、一番大きなものは情報管理です。サイバーアタックです。サイバーアタックについて、日本ほど無防備で弱い国はありません。それはなぜでしょう。これは政治家の皆さんに是非お願いしたい。日本の縦割り組織がこうしているんです。何とか省何とか省で、各々がサイバーアタックを受けていても、全体として、日本のこのサイバーアタックに対する防衛の形は全くと言っていいほどできておりません。それはそういった、今申し上げたような縦割り行政というものがそういうふうにしているということ。
 もう一つは、サイバーアタックを受けた企業が必ず報告の義務付けがなされていない。欧米はされている。ところが、日本の場合には、民間企業にしても、サイバーアタックを受けたことを言うと、あの会社はだらしない、あの会社は情報が盗まれているという。隣を意識したことでなかなか報告が行われていないということは、国としてのサイバーアタックがどの程度あるか皆さん御存じないということでありまして、しかも、漢字の世界は英語に訳さなくても恐らくスパイ行為はかなりイージーにできるだろう。
 そこで申し上げたいのは、一月二十七日に公開されました映画「スノーデン」、覚えておられる方はおられると思うが、元CIAのエドワード・スノーデンの国際情報スパイの実話と言われておりますのが映画になっております。是非御覧いただきたい、政治家の皆さんは。そして、日本の情報管理がいかにいいかげんかをちょっと考えていただく必要がある。
 それから、戦後レジーム体制の刷新というのは、実を言いますと戦勝国中心の戦後のレジーム、英、米、仏、ロシア、中国。どうしてドイツと日本が入らないか、国連の安全保障理事会の常任理事として。もう一つは、G7の中にどうして世界ナンバーツーの中国を入れないんだ。
 つまり、G7じゃなくて、先ほども出たインドも入れればG10にすべきだ。そして、常任理事国にドイツと日本を入れるべきだ。これを動かすのは、ドイツと日本がよく話合いをして、そしてアメリカとかほかの先進国を動かすことです。こうすることによって、インターナショナルバリューを中国なりロシアなりに自覚をさせるという方向でいかないと、軍事対軍事、力対力では世界は解決できないんだということで、取りあえず終わりたいと思いますが、また御質問があればお受けいたします。

発言情報

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発言者: 丹羽宇一郎

speaker_id: 21860

日付: 2017-02-08

院: 参議院

会議名: 国際経済・外交に関する調査会