藤崎一郎の発言 (国際経済・外交に関する調査会)

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○参考人(藤崎一郎君) 今御紹介いただきました藤崎でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 今日は発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。お手元に一枚の紙をお届けしてございますので、これに従いまして五点についてお話し申し上げたいと思います。
 まず、外務省員の基礎知識向上ということでございますが、私が外務省に入りました一九六九年、横におります河東大使も一緒でございますが、いわゆる外交官試験というものがございまして、この試験科目は、憲法、経済原論、民法、財政学その他のほかに外国語とか一般教養もございました。この試験は国家公務員試験とは別にございまして、かえって特権意識を生むという批判もございまして十五年ほど前に廃止されて、今は国家公務員試験一本になっております。かえって外務省員の質は向上したという議論もございますので、今更この試験が良かったということを申すつもりはございません。
 ただ、現在やや心配なのは、試験科目でございました国際法、外交史というものが、全然かじらなくて外交官になれてしまうようになったことでございます。国際法につきましては、例えば入省後、国際法局に勤務いたしますとある程度実地で勉強できますが、それはほんの一部の省員でございます。また、歴史につきましては、やはり今の国際情勢を把握する意味では、過去百年、第一次大戦以後の百年の歴史をある程度承知しておくことが大事かと思います。にもかかわらず、今の、御承知のとおり、受験では、いにしえの時代に非常に重点が置かれますために、この百年を必ずしも把握しないまま大人になり、司馬遼太郎等で勉強するということが必要になってしまうのが実態でございます。
 国際法や歴史を知りませんと、もし、例えば尖閣、竹島、北方領土等について、立場の異なる方と議論をした際に論破されかねないという危険がございます。そこで、少なくとも、やはりこういう問題は徹底的に入省してから研修した方がいいと。財務省は、法学部出身者が多いために経済理論研修というのをやっておりますが、こういう形での研修をもう少し強化した方がいいのではないだろうかと。
 外務省員は、そのほか、入省後二年程度外国で研修をすることになっております。これは、やはり外国語の習得に重点を置くべきで、資格ではなくて、外国語が二年後には自由に使えるようになっていることが重点と引き続きされるべきではないかと考えております。
 私が若いときに、ある先輩に言われましたことは、国際会議の場あるいは集まりの場で自分の国が侮辱されたと感じたときには、外交官ができることは二つしかないと。一つは反論するか、もう一つは立ち上がってその場を去るか、どちらかであると。黙って聞いていてはいけない、それを認めたことになるということでございました。しかし、必ずしも通訳があるわけではありませんから、聞いていて分からなければ反論も立ち去ることもできません。みんなと一緒に拍手したら大変なことになります。したがって、言葉というものをまず外交官というのは完全に習得しなければいけないということでございます。
 また、研修という意味でいきますと、かつては中間研修と申しまして、課長クラスで一年でございますけれども、外国の大学やシンクタンクに参りまして学者の方と意見交換したりする機会が一年に数人はございました。こういうことは、日常業務から離れまして、ある意味で、広い見地から世の中をもう一回見直すという意味でいい機会だったと思いますが、最近余り行われていないようなので、こういう機会も外交戦略の再構築という観点からはあった方がいいのではないかというふうに思っております。
 以上が、外務省員の基礎知識向上という観点で述べたい点でございます。
 第二点、オールジャパン体制の構築ということでございますが、世界と渡り合っていくためには、外務省だけではなくて、政府全体及び国民の発信能力向上が必要だろうと思っております。そのために、まず語学がやはり必要であろうと思っております。語学も英語でございます。
 私は幾つかの大使館と代表部に勤務させていただきましたが、いろいろ各省から来た方と御一緒に仕事をいたしました。そのときに、各省から来た方の中で、若いときに留学された方とそうでない方との間に明確に語学力の差がございました。若いときにやはりどの役所から行っても研修することが大事だということを痛感したわけでございます。
 今、人事院で総合職で採っておられる方が六百数十人のうち、四分の一以下が外国語研修を人事院研修でされておられます。一般職の場合はもっとはるかにほとんどないんではないかなと思いますが、私は、オールジャパンの発信力強化ということでいけば、外務省だけではなくて、全総合職は二年程度英語研修をする、できればアメリカないしカナダで研修するといったようなことが言葉の観点からは望ましいんじゃないかなと思っております。
 また、発信力の向上ということから申しますと、ちょっと政府の発信力という点からずれて恐縮かもしれませんが、国民の英語力向上をやはりすることが極めて大事であると。
 そのためには、今、小学校低学年から英語を始めるとか、あるいは英語は英語で教えると言っておりますが、実際にはそれをできる教員がそんなにいないんではないかと。それをやるためには、実は簡単な方法がございます。それは、公立学校の英語教員を全員公費で留学してもらうということでございます。
 毎年、四十七都道府県で公立中学で千人の方が英語の教員になられます。この方に全員一年間留学していただく費用は約百億円と承知しております。国家百年の大計を考えますと、こういうことは是非必要な投資ではないかと。今よく大学生をたくさん送り出すのがございますが、一人の先生が一生の間に教える生徒というのは数千人でございます、数百人から。その方がはるかに効果的な投資ではないだろうかと。是非、この公立中学の、あるいは高校の英語の先生の教育ということを考えていただきたい。
 そして、今たくさんJETプログラムといって英語補助教員が外国から来ておりますが、こういう方はむしろ小学校に回して、発音とか聞き取りの教育の補助にしていった方がいいんではないか。受験との関係もございますので、その方が効果的ではないかというふうに私は考えております。
 また、英語ということだけでなく、全体、日本の交渉ということを考えますと、経済交渉の場合、特に国内調整が大事になります。そのためには、この前、TPP交渉のときに非常に効果的でございましたように、場合によっては外務省だけでなく官邸機能を使いながらオールジャパンの体制をつくっていくということが大事ではないかというふうに思います。
 第三点、在外公館の機能強化についてお話し申し上げたいと思います。
 在外公館の数が最近増えているということは大変必要なことであり、これは国会の御理解を得ていることだというふうに考えます。
 他方、一つ私が心配いたしますのは、人数が小さい公館が増えているということでございます。特にアフリカ等の途上国におきましてそうではないだろうかと。私は、実際はどこまで幾つの公館がどうかということは承知する立場にございませんので、御説明はできません。しかし、アフリカ等の小さい公館におきましては、そこに配置された方は自分の存在を確保するためにエネルギーのかなりの部分を使わざるを得ない。具体的には、安全の確保であり、食料であり、水であり、電気でございます。住宅の整備もございます。
 私は実は在外公館のそういう整備の担当の課長をしたことがございますので一端の責はございますが、当時、先進国の公館の調査をいたしまして、先進国の相当の国では、そういう言わば生活、足回りのことは専門の方がいて、現地スタッフを使いながら、後顧の憂いなく自分たちが政治とか経済とか広報の仕事に専心できるような体制をつくっていると。ところが、日本の場合には、かなり自分で自力調達。言ってみますと、こんな例がいいかどうか分かりませんが、帝国陸軍でとにかく行ってこい、あとは自分で何とかしてこいというのと余り違わない発想が私はあるのではないかと思うので、やはり公館をつくる以上は、館長がいて、次席がいて、政務、経済、広報がいて、その下にサポーティングスタッフとして会計、通信、営繕等の担当官がしっかりいてという形の、少なくとも十人近い体制の公館をつくっていかないと、小さい公館では極めて非効果的であるというふうに私は思っております。
 もう一つは、現地職員について二点申し上げます。
 現地職員につきましては、まず一つは、日本人の職員というのを余り増やさないという、法律との関係でそういう方針があると。これは法律解釈の問題だろうと思いますが、できるだけ現地人にしていくという方針がございますけれども、私は、日本語がよくできて、かつ日本国家に対して愛国心のある方が日本国の公館で働くということは非常に効果的ではないだろうかと。ですから、もう少し弾力的な運用をしていくことが必要ではないかというのが一点でございます。
 もう一つは、現地職員の待遇でございます。これは現地人の方でございますが、正直に言って昇進制度というものは完全に整備はされておりません。ですから、給与、肩書その他の待遇におきまして生涯設計をするのが余り希望の持てる形になっておりませんが、これはもちろん外務省の責任もございますし、政府全体の責任もございますけれども、できれば全体としてこういう形で五年後、十年後にはいい人はこういうふうになっていくという形をつくることが、現地の優秀な大学を出ている優秀な方々を得るために、日本国のために働いてもらうために是非必要ではないだろうかというふうに思っております。
 また、在外公館の整備という観点では、在外公館と本省との連絡、あるいは在外公館間でございますが、今でも基本的には電報、公電と言われるものと、あるいはメールを若干使っておりますかもしれませんが、そういうことでやっております。今の時代、民間会社も皆、テレビ電話を使っていろいろ会議をしたりしております。こういうことはほとんど行われていないと私は承知しております。何とかもう少しケーブルテレビ網をつくりまして、実際に離れていてもしょっちゅう会議ができるようなことをしていくことが日本全体としての国益、秘匿装置が付いた形でございますけど、もちろん、ではないかと思います。
 もう一つは、在外公館で一番指摘されるのは、日本の事情に疎くなるということでございます。これにつきまして特に私が気になりますのは、こういう国会での議論というのは、例えば国会で議論されているものは、私ども、NHKがもし放送していなくても、有線ケーブルで霞が関の各省では見ることができるシステムがございます。
 国会で議論されているということは、まさに国民の代表である国会議員の方々が政府とどういう関心事項であるかということを議論するわけですから、こういうものを在外公館においてやはり常に把握できる体制をつくっておくということが必要ではないか。
 そのためには、もちろん有線ケーブル網がいいんですけれども、それができない場合にはDVDでもいいから、そういうものは常に見られる形にして、公館長や政務担当官は、どういうことが今国会で議論され、どういう関心があるのかということを把握しながら情報収集をするというふうなことをもう少しきちんとやっていかないといけないんではないかというふうに思っております。
 次に、発信力強化でございますが、これは三つございまして、日本の政府の職員が発信することが第一点、もう一つは、現地の有識者を使って、この方々にインプットして間接的に広報することが第二点、第三点は文化外交、日本への、親日派を増やすという、この三つのエレメントがございます。
 第一点につきましては、いろいろ今やってはいると思いますが、私が必要ではないかと思いますのは、例えば官房長官あるいは各閣僚、外務報道官等が連日、日に何回も会見をされると。この会見を直ちに翻訳するシステムをつくるべきではないだろうかと。
 これは、二十四時間の翻訳サービスセンターを日本だけでなくてロンドンかニューヨークにつくっておけば、ある意味で時差がございますから簡単にできる話でございます。そういうものを持ちながら、常にトランスクリプトが流れていくと。アメリカやなんかでは直ちにトランスクリプトを流すようにしておりますが、これは英語でございますから簡単でございます、そのとおり撮って流せばいい。日本語の場合には翻訳が必要でございますので、その翻訳をしていくということが、官房長官会見等をやっていけばすぐ流れて、それがすぐ引用されるという形になるので、こういうことが必要であろうという感じを持っております。そして、ユーチューブやケーブルテレビをもっと活用していくということではないか。
 次に、現地の有識者でございますが、これについては最も効果的でございます。
 私どもが説明するよりも、現地人のお名前、お顔でテレビで話していただき、新聞に投稿していただくのが一番有益でございます。その観点からは、材料を彼らに与えていくと。限定的な方に、新聞に流れている以上にもう少し突っ込んだこと、もちろん秘であってはいけないわけでございますが、その解説等を流していくということによって彼らがもっと投稿してくれるようにすることをシステマティックにやっていく。あるいは、招待外交についても、一回こっきりではなくて、議員スタッフにしても新聞記者にしても繰り返しやっていくようにして、壁の上塗りをしていくということが必要ではないだろうか。
 三番目の文化外交でございますが、これについては、一番効果的なのは、やはり日本のアニメですとか和食とかそういうものは非常にすっと受け入れられる。それは、政府が前に出るのではなくて、民間のそういうものを後から支援する、後ろから支援する形、何とかジャパンであるといって打ち出す形でない方が私は効果的ではないかなと思っております。
 その意味では、例えばNHKの朝ドラでやりました「おしん」、もう三十年前でございますが、もっと前かもしれません、今でも非常に評価が高い。その後も何十もすばらしいドラマが、朝ドラやっております。こういうものをどんどん翻訳することを支援しながら外国のテレビ網に乗っけていくことの支援をすると。自分の映画を作ったりするんではなくて、そういう形がいいんではないかというのが私は文化外交についての意見でございます。
 最後に、国際機関について述べます。
 国際機関については、ここに今日は川端参考人がいらっしゃるのでちょっと僣越でございますが、私の考えを申したいと思います。
 私は、国際機関の代表部の大使を三年ほど務めさせていただきました。そのときに代表部員によく申しておりましたのは、国際機関というのは我々に指示を与えるところではない、私たちがどう使うかを考えるところだと。予算は日本政府が出す、そして執行をいろいろ理事会等で監督していく。言ってみれば、国会の関係に近い形でございます。国会が政府に予算を付け、そしてその執行を監督していく、そういうものだと考え、決して国際機関が上にあるわけではないんだということをよく代表部員に言って、どうやって使っていくかを考えようじゃないかということを言っておりました。
 国際機関の職員につきましては、より多くの日本人職員が入ることは望ましいというふうに思っております。ただ、人数の問題ではなくて、意思決定できるレベルにできるだけ多くの人を入れるかということでございます。そのためには、一定のキャリアを持った方々の方がある意味ではそこに到達しやすいということを頭に入れておく必要があるということが一つございます。
 それからもう一つは、私どもが出している拠出金との関係でございます。
 時々、私どもがおりましたときに、国会議員の方々等から、日本はこんな金を出しているのに国際機関の職員が少ないじゃないかというお話を聞いたことがございます。私は意見が違う。私はどうして違うかと申しますと、金を出しているから雇えという議論をいたしますと、例えば、東京都が一番日本政府に対しては貢献が大きいと、だから中央政府は東京都出身者をたくさん雇うべきだという議論に通ずるわけでございます。そうではなくて、日本政府はこんないい人がたくさんいるんだと、だから、国際機関が効率的に働くためには、こんなにいい人がいるから、こんないい人を使ってくださいというふうにすべきではないだろうかと。
 国際機関だって、できた以上はそこが一番効率的に働く義務がございます。そのためにはやはり、日本におきまして、国際機関でどのような需要がこれから出てきそうか、数年間常に予測し情報を得ておく。そして、政府の天下り等ではなくて、官民のいい人の適材のデータを集めておく。そして、常にマッチングができるようにして送り込むようにするということ。このリストを常に整備しておくこと、これは今でもやっているという議論があるかもしれませんが、ハイレベルではやっていないと思います。その場当たりになっていると思いますので、そういうことが必要ではないかと。
 以上、ちょうど時間でございますが、五点、外務省員の基礎知識向上、オールジャパンの体制の整備、在外公館の機能強化、発信力強化のためにということと国際機関との付き合い方という、この五点についてお話しさせていただきました。貴重な機会をありがとうございました。
 最後に、実はここに、参考ということで、この五点の下にアメリカについて二点書いたものがございます。アメリカは世界に自分一人しかいないかのように利己的に振る舞うとか、あるいは、アメリカの歴史を見ると、外国に対して相当不正と思われるような行為を犯した例はありますと、しかし、自ら直していくというのがその歴史ですと。
 これは、実は最近書かれたものではございません。ちょっと知識をあれするようでございますが、前者は一八四〇年、トクヴィルという人が一年足らずアメリカに行ったときの「アメリカのデモクラシー」という百七十年以上前の本でございます。後者は、幣原喜重郎という総理大臣になった方でございますが、この方が外務省におりましてワシントンの参事官をしていたときに、ブライスというイギリス大使から聞いた話でございます。これは一九一二年頃でございますから、これも百年以上前の話でございます。
 今、私は、アメリカが非常に利己的だとか、アメリカが非常に間違いを犯しそうだということを言おうとしているわけではございませんけれども、歴史は繰り返すということがいろいろございますので、さっき最初に申しました、いろいろ歴史というものを学ぶ機会というのはやはり大事ではないかということを改めて申し上げる意味で、ちょっとここに書かせていただいた次第でございます。
 どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 藤崎一郎

speaker_id: 31024

日付: 2017-02-15

院: 参議院

会議名: 国際経済・外交に関する調査会