日比野克彦の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○参考人(日比野克彦君) 日比野です。よろしくお願いいたします。
 私の方は、今日、幾つか画像を用意させていただきました。あらゆる立場の人々が参画できる社会の構築、文化芸術を通した社会参加の在り方ということで話させていただきます。(資料映写)
 私は、現在、東京藝大美術学部で学部長をしながら作家活動もしております。元々は、私はデザインを勉強して、社会の中で商業的なスペースでポスターを作ったり商品開発したりというのは二十代の頃やっておりました。その頃に同時に、個展で自分の作品もギャラリーで展示したりとか、海外で展示したりしていたんですけれども、時代とともにアートの、そしてデザインの社会の中での役割が随分変わってきています。
 ちょっと一番最初に、皆様と情報を共有というかイメージ共有するために、いわゆる美術というと、このような大画、名作が美術館に展示してあり、それを鑑賞しに行くというのが美術の一番の我々が持っているイメージかと思います。美術館に行くということが美術と接すること、日頃見られないような、例えばヨーロッパでのあの名画、名品が上野の美術館にやってくる、そしてそれを見に行こう、絵画と接する、名品と接することによって美術の知識を深めるというのが一番の王道の美術かと思います。
 でも、これが少しずつまた枠が広がってきました。いわゆる美術館の中だけで美術と接するのではなく、館、美術館の外に飛び出していこうという動きが二〇〇〇年辺りから日本では見られました。
 それで、次の画像になります。これは新潟の十日町にある大地の芸術祭という芸術祭です。二〇〇〇年から始まりました。それまで、美術館の中で日常とは違った価値観に接するということから、今度は、大地の持っている場の力、これは新潟の山の中の風景、そこにも美があるのではないか、そこにも日常とは異なる価値観に気付くことがあるのではないかということで、美術館の中だけで名画、名品に接することだけがアートではなくて、こういう地域の持っている場の力、自然の力に足を我々が運んでいって、そこでアート作品にも接する。
 これ、フレームの中にカーテンがひらひらひらと動いていますけれども、いわゆるちょっと前の絵ですと、額縁の中に絵が飾ってあって、そこに向こうの風景、過去の王様の功績であったりとか行ったことがない風景というのが絵画で描かれているわけですけれども、この大地の芸術祭では、フレームだけがあって、そこに自然の風が吹いて、そしてその日の天気、季節折々の風景を見る、一つこのフレームがアート作品、そしてそれを構成しているのが大地の自然という、そしてそれを、イメージを編集するのが鑑賞者の頭の中で編集されていって、自分のアートがそこに生まれてきます。
 こういうのが二〇〇〇年以降、日本各地で行われてきました。瀬戸内国際芸術祭ですとか、もう今では日本中、横浜も愛知もそして大分などなども、各地域、自治体が一緒になってアートを取り入れてやっています。
 これの背景には、やはり限界集落とか地域おこしとか町おこし、過疎化になった村に人をどうやって呼んだらいいのかというものが背景にはあります。そういうところにアーティストを招いて、誰も見向きもしなくなった廃屋、廃校、誰も来なくなった地域にアーティストが入り込んで、いや、ここにはこんなすてきな風景があるじゃないか、この廃屋も見方によってはなかなかいいものになるよというところで、アーティストが既存の価値観とは違う価値観をそこに見出していく。アーティストのそれは特性です。いかに異なるものを見付けていくか、既存の価値観を変えていくかというのがアートの特性であり、アーティストの職能であります。
 これを使って、この職能、アートの特性を使って、次はこの空間、場、いわゆる地域、マイノリティーな地域から次に展開しようとするのが今日ちょっと話していきたいポイントになります。
 ちょっと表にまとめてみました。一番左、鑑賞場所、鑑賞形態、内容、効果、実際の主なプロジェクトとありますけれども、一番左の列、それ以前というのが一番最初にお見せした美術館での鑑賞方法になります。場所は美術館、鑑賞形態としては見る、内容としては作品が展示されてあるということですね。効果としては美術の知識を深めるということになります。
 そして、二枚目の写真でお見せした近年、二〇〇〇年代から始まった地域アート。これは、鑑賞場所としては各地域にあるマイノリティーな場所、いわゆる山の中とか瀬戸内の島々とかいう場所になります。余り人が行かなくなって、人口も少なくなり、学校は廃校になり、病院もなくなり、教育、医療の施設がなくなっていったというマイノリティーの地域が場所になります。そして、鑑賞方法としては、見るだけではなく、そこで五感を全て使って体感する、そして参加するという、地域の人たちと一緒になって参加するという鑑賞形態にもなっております。内容としては、アーティストがその土地へ赴き、地域の人たちと地域らしさを発見し、そして発信していくということになります。そして、効果としては、地域を活性化していくという効果が見られます。主なプロジェクトとしては、今お見せした大地の芸術祭、そして瀬戸内国際芸術祭などがあります。
 そして、近年、近年というかもっと、二〇一五年以降、これからお見せするTURNというプロジェクトのものなんですけれども、この表でいくと、そのマイノリティーの地域ではなく、今度はマイノリティーのコミュニティー、人々を対象にした展開に移行しようとしております。鑑賞形態としては、地域で行われているアートと同じく、五感を駆使して見るだけではなく一緒になって参加するもの。そして、内容としては、今述べたことですね、地域のマイノリティーから人のマイノリティーへ移行していきます。アーティストがその人々と交流して展開し、マイノリティーの持っている魅力を多様な社会参加にして展開していこうと、多様性を認め合うアートのルールを適用して活用して展開していこうとしております。その効果としては、今社会の中で求められている多様性を広める効果がここにはあると考えております。
 そして、TURNというものをちょっと説明させていただきます。
 このTURNというものは、二〇一四年から始まりました。まずは、アートの中で同じような志を持っている者たちが集まって、いかにしてその地域というものから今度は人というものに移行していこうかということをまずは障害者アートのプログラムとして考え始めたのが二〇一四年です。そのような考え方が、二〇一五年から、オリンピック・パラリンピックの文化プログラムのリーディングプログラムとして東京都の支援を受けて動くようになりました。TURNが目指すところは、障害者、健常者という関わりではなく、その人らしさというものを尊重することによって個の出会いを生み出していくアートプロジェクトになります。
 これまでの施設の行い方というのは、福祉施設で社会に復帰できるように、そして社会の中の機能にちゃんと自分が行えるように職業訓練であったり、就労施設でいわゆる自分が行えないことを、そこを補っていくというものが福祉の考え方だったかと思うんですけれども、TURNが行おうとしているものは、逆に、福祉施設、障害を持った方々からアーティストが学び取っていく。先ほどの大地の芸術祭等でいくと、例えば田畑、何もないよね、この田舎は、この地域はというところから、アーティストが、いや、そこにはすばらしいものがあるんだというものを見付け出していくという、そういうまなざしでマイノリティーのコミュニティーの中にアーティストが滞在し交流しながらそこにいる人のらしさを見付けていく、それを社会の中に発信していくというのがTURNの目指すところです。
 現在TURNが行っているのは、交流という、施設にアーティストが入り込んで交流していくもの、そしてそこで得たもの、生まれたものをフェスとして発表していく、社会の中で発表していくという二つの柱があります。
 まずは、交流の様子をちょっと御紹介いたします。
 これは、東京都町田にあるクラフト工房LaManoという就労施設になります。この就労施設では藍染め、徳島の藍を使って染物をしております。今の季節だとこいのぼりがすごく今は生産中で、とても人気の商品になっております。そこに、今この右手に写っている五十嵐さんというアーティストが交流を始めました。今でも交流しております。そこに行って、まずは一緒になって染物の作業を行っていきます。その中からアーティストが、このLaManoの一人一人の個性であったり、障害者じゃないと行えないような染物の作業というものを見付けていきます。
 そしてまた、別な交流場所、これは静岡の浜松のクリエイティブサポートレッツという施設です。そこに中崎君というアーティストが交流しております。本当、ここのレッツというのはとても全国でも珍しい施設で、今日はちょっと十分に話す時間はないんですけれども、就労施設なんですけれども、いわゆる、さっきLaManoであったような、染物を染めているというようなそういう生産的なものではなくて、一人一人の障害者の個性、例えば、すぐ人が来ると声を掛けたくなる利用者の人、すごくゆっくり階段を上る人、それをその人の作業として認めているというとても特徴のある施設になっております。そんなところにアーティストが滞在したりしております。
 そして、このように幾つか、これは東京都にあるハーモニーというところにジェームス・ジャックというカナダ人のアーティストが写真をテーマとして交流したりしております。
 そして、それを集めたのがTURNフェスというので、つい先月、東京都美術館で二回目のTURNフェスを行いました。一回目は、ちょうど一年前の三月に同じく東京都美術館で行いました。そこに、次の写真、先ほどのLaManoで行った五十嵐君の作業の様子です。その作業を来館者、美術館に来た人たちに見てもらおうということで、より多くの人に参加できる織物の装置を工夫して、そして利用者、LaManoの利用者の人たち、そして来館した一般の人たちと一緒に共同して行えるようなワークショップを開発しました。
 そのほかにも、これはハーモニーという先ほどの施設、そこに、そこの方々と一緒に今これは来館者が絵を描いているところです。もう音を聞きながら絵を描くとか、ちょっと急ぎますが、その次、これは大田区の障がい者総合サポートセンターですけれども、そこに、藝大の音楽学部を卒業した、作曲を卒業した角銅さんが障害者の人たちと一緒に音楽を作りました。その音楽を、枕の中にスピーカーが仕込んであって、障害者の人たちはすぐ疲れるんですね。疲れるとすぐ横になる。これ、美術館の中は大体横になっちゃいけないんですけれども、ファーを作って、寝ていいよと。枕に耳を近づけると自分たちが作曲した音が流れている。来館者も一般の人たちも一緒になって横になって寝ているという、そういう空間になります。
 ちょっと急ぎます。もうこういう幾つかの障害者の特性を生かしたものをアーティストがそれを増幅したり、より特徴が見えるような細工をしたりして、美術館の中で展開していきました。
 このような国内の取組と、もう一つ、昨年、リオのオリンピックのときに、このTURNというのは東京都のリーディングプロジェクトとして行っていますので、東京都、オリンピックに向かってこのような取組をしていますよという紹介も兼ねてブラジルでも展開していきました。
 ブラジルでは、四人のアーティストが四つの福祉施設で展開しました。これは、PIPAという自閉症の子たちの障害者施設に、江戸の組みひも、さっき五十嵐君というLaManoの染色のアーティストが、今度は日本の文化ももう一個、そこ、コンテンツとして取り入れて、江戸の組みひもとアーティストとそして自閉症の障害者の施設の人たちと一緒になって物を作っていく。これは、ジュン・ナカオという日系三世のアーティストが憩の園という日系一世の人たちの高齢者施設で行った制作になります。ブラジルに伝わるセスタリーアという籠編みの技術を持ち込んで、その施設の人たちと物を作っていきました。これ、江戸つまみを高齢者施設に、そして東北のきりこですね、東北の三陸に伝わっているきりこ、神社の奉納するきりこをモンチアズールという障害者施設の人たちと一緒に作っていきました。
 これを集めて、ブラジル・リオでTURN・イン・ブラジルというフェスを行っていきました。施設で行っていたものを美術館の中でワークショップ形式で発表して、来場者とともに制作をしていく、ブラジルの人たちが日本の文化を知る、ブラジルの障害者施設のことを知るという交流の場になっていきました。これがブラジルでの様子になります。
 そして、このようなアーティストの人材を育成するプログラムが今年の春から東京藝術大学で始めました。DOOR、ドアというプログラムになります。DoA、ダイバーシティー・オン・ジ・アーツ・プロジェクト、通称ドア、DoAを略してドアという言い方をしております。芸術と福祉のコラボレーションにより、社会的包摂に寄与する人材の育成、輩出、多様な人々が共生できる社会環境の整備を目指すというものになります。これが今、東京藝大が行おうとしているところで、社会人が今年の春から五十名ほど藝大に来て、そして学生も二十名ほど入って、先ほどのTURNで活躍できるような人材を育成しようとしております。
 いわゆる福祉施設というものが、先ほど、一番最初の美術館の写真、そして二枚目の大地の芸術祭という自然の中での様子、そういう、価値を変えていく、日常じゃない、日常にない価値を気付かせてくれるというところが美術館でありました。それが大地の芸術祭のような自然の中でありました。今度は、日常の中にない新しい価値観を発見する場所として、いわゆるマイノリティーの人たちが集まる福祉のような施設にアーティストが入り込んで、福祉施設を文化施設に読み替えていくというような試みを今しようとしております。そうすることによって、福祉施設に通所している方々を表現者として見立てていく、日常の中に多様性があることに気付かせてくれる文化施設として生かしていくということをしようとしております。
 これがちょっと最後の写真に、最後の二枚になりますけれども、これは、きょうされんというリサイクル洗びんセンターになります。そこの作業所に、TURNフェスにここも参加しているんですけれども、彼らが、洗びんセンターで働いている人たちをカメラマンが撮って、それをTURNフェスに展示したんですけれども、その後、その写真を洗びんセンターの作業場に、一画に展示しています。reTurnfesということで、洗びんセンターの人たちが自分の作業所を展示スペースにしました。
 このようにして今後は、いわゆるTURNフェスというのを美術館でやるのではなく、各地域にある福祉施設とかこのような就労施設をTURNのプログラムとして、そこに彼らの作品、アーティストが一緒に入って作っていった作品であったり、ワークショップを行う拠点とすることによって、地域の人たちが、日頃は余り縁のなかった福祉施設とかこういう就労センターにも、美術館に行くように、同じように、違う価値観、多様性な価値観と出会う場として展開していくような試みをこれから行っていこうと思っております。
 済みません、ちょっと時間が延びました。どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 日比野克彦

speaker_id: 4502

日付: 2017-04-19

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会