柴田明夫の発言 (資源エネルギーに関する調査会)

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○参考人(柴田明夫君) 柴田でございます。よろしくお願いします。
 私は、お手元資料に沿って報告させていただきます。(資料映写)
 初めでありますけれども、世界が今抱えている十大リスクということで、いろんなところの国際機関、国内でも指摘がありますけれども、この十大リスクについて、これがまた原油のマーケットと絡んで更にこの十大リスクが増幅されるような動きにあるのではないか、こんなふうに見ております。
 具体的には、例えば石油の性格でありますけれども、一つは地政学的なリスクと非常に関連が深いということですね。石油メジャーでありますけれども、エクソンモービル辺りも大体日量二百万バレルぐらいの石油は生産しているわけでありますが、生産した部分については必ず生産分の埋蔵量の確保という格好でリプレースしていく必要があるわけですけれども、それが大きな課題になっているわけです。しかし、従来のように、在来型石油、すなわち液体で濃縮され生産しやすい場所にある安価な石油というのはだんだん減ってきていて、生産の開発の箇所が深海の油田であったり非在来型であったり、非常にまた地政学的なリスクの高いそういう場所にフロンティアが広がっているということによって、それに伴ってますます石油とこの地政学リスクとの関連が強まってきていると。それが世界が抱えた十大リスクとも密接に関わり合うということであります。
 それから、この十年間を振り返ってみると、岩間参考人が御説明されたように、アメリカのシェール革命、アメリカで起こったシェール革命によってアメリカ国内の石油の需給バランスが大きく崩れたというか供給過剰の方向に緩和したと同時に輸入も減っていますから、それがやっぱり国際マーケットがつながっているという格好で世界全体の石油の需給構造が供給過剰の方向に変わったということであります。
 三番目の観点から見ると、気候変動、地球温暖化、これに伴ってやはり二〇一五年末のパリ協定の合意のように化石燃料に対する消費を抑制せざるを得なくなったということで、この結果、埋蔵量は確認されていても、温暖化対応ということで考えてみると、開発したくとも開発ができなくなってくる、まあ座礁資源と最近言われますけれども、資源はあっても利用できないと、こういう資源が増えてきているということであります。その結果、また世界の抱えているリスクと絡み合ってきているなということであります。
 それから、これは先ほども御指摘ありましたように、日本の経済とエネルギーということで見ると、エネルギー政策というのは、上がれば国富が海外に流出する話でありますから、ひいては財政赤字につながってくる。財政赤字と、一方でうまい対策を取れば成長戦略にもつながるということで、財政面と成長戦略の両面から解決をしていく大きな鍵になるかなということであります。
 左のこのグラフというのは、貿易収支、輸出、輸入、貿易収支の部分でありますが、二〇一一年の震災以降、五年連続で貿易収支の赤字が続いたわけですが、これはこの右側の表のように、いわゆる原油、それからLNG等の鉱物性燃料の輸入金額が一気に増えたという影響を受けているわけです。幸い原油価格下がったことによって足下の貿易収支は黒字に転換しておりますけれども、総輸入金額に占める石油の輸入比率も二五%あったものが足下は一〇%切るまで下がってきているということですが、これは安心はしていられないなと、マーケットが非常に不安定化しているというふうに考えております。
 じゃ、どうしたらいいのかということで、後で最後に触れますけれども、四つのレジリエンス戦略というか、したたかな戦略を取っていくべきであると。長期的には、やっぱり脱石油の方向に産業構造を変えていかなければいけないのかなと。企業の対応としては、もう徹底した省エネ、省資源、CO2削減戦略であります。国家としてみれば、やっぱり脱石油とはいえ時間が長期に掛かるわけでありますから、この間で資源の権益、安いときに権益をしっかりと確保していくという、こういうこと。それから、官民学ということであれば、資源関連の情報リテラシー戦略を高めていくと、こういうことが必要なのかなと考えております。
 アベノミクスのエネルギー戦略というのは、長期エネルギー需給見通し、二〇三〇年に自給率を六%から二五%に上げるという、こういうふうな目標を掲げておりますけれども、なかなか現実的には難しいわけで、何とかここを達成する必要があるとは思います。
 それから、もう既に報告がありましたけれども、二〇一一年から二〇一四年の前半まで原油価格というのは百ドル前後で高止まりしていたものが、足下はすっと下がってしまった。均衡点の価格が下方に修正されるというところで見れば、この点線で囲いました六十ドルから八十ドルぐらいのところがすっと素通りして底が抜けた格好になってきていますが、足下は五十ドル台に戻ってきていると。じゃ、この後どうなるのかと、こういうことであります。
 戻った背景は、重複しますと、OPECと非OPEC、OPECであれば八年ぶり、非OPEC併せますと十五年ぶりの協調減産を行ったということで、今のところ九割方の遵守率という格好で守られているので評価したと。評価されている割には価格が反発し切れていないわけですけれども、その背景に一つ、やっぱり中東の不安定化というのがあるかと思います。
 しかも、もう一つ、中東の不安定化の中心というか、一つはサウジの戦略転換ですね、シェア重視から価格重視へと戦略を転換したと。背景には幾つかあると思うんですが、まさに直接的な背景としては、財政が非常に悪化してきて、このままではたまらないと。IMFも、こういった大盤振る舞いの財政である場合、二〇二〇年までに財政が破綻するというふうな警告が出されていたわけであります。
 それから、長期的に見た場合は、ビジョン二〇三〇という格好で脱石油戦略を図っているわけですけれども、その背景は何があるのかというと、二つのオイルピーク論があるのではないかなと考えております。一つは、需要サイドでやっぱり温暖化に対応ということになりますと、緩やかな脱石油戦略ということで、世界経済全体が石油文明からの離脱みたいな方向、方向性としてはそちらの方向に向かう、需要がピークを迎えると。一方で、供給サイドで見ても、私は、フローの生産で見るとなかなか分かりにくいけれども、ストックという埋蔵量で見ると案外埋蔵量が減少してきているのではないかなという気がいたします。
 そして、こういうのに加えて、足下は、中東、北アフリカ情勢の緊迫化ということがまずあるわけであります。このオレンジ色の部分は、トランプ政権が誕生してからまた三つの不安定要因というのが加わってきたなと。三つのI戦略というか、Iが付く親イスラエル、反イラン、そしてIS、イスラム国の壊滅という格好で中東情勢が緊迫化しているということであります。
 一方で、アメリカ国内を見ると、御指摘のように、リグの活動が活発化してきているということで、協調減産はかなりのところ守られてはきているけれども、アメリカは、一方で、このシェールの生産が今度は増えてくるんじゃないか、こういうふうな見方からマーケットで売られて、上値が重くなっているということでありますけれども、実際、じゃ、どこが増えているのかというのを見ると、幾つかのシェールオイルの鉱区で見ると、パーミアンというところが増えている。あとは、実は、でも減少に転じているなということであります。
 そして、ただ、DUCsという、右下の方に、これはOPECのオイルマーケットリポートの中で指摘されたところでありますけれども、アメリカには二〇一五年末で要するに掘削は済んだがまだ未仕上げのいわゆる坑井、井戸が四千二百九十本あると。一本当たり日量七百バレルというようなところで見れば、今大体百本、リグの活動また増えてくれば、これは七万バレルとかというのが六か月後ぐらいには生産増となって現れる。量は大したことはないとは思うんですけれども、方向として増えてくるということになれば、なかなか短期的なマーケットのおもし要因になるのかなと。
 そうなると、実は、今度はアメリカのトランプ政権でありますけれども、まさにこのエネルギー産業の競争力を強化するというところで人事が組まれておりますから、国内のシェールの開発を急ぐということでありますから、考えてみれば、これ供給増になって原油の頭を抑えるんですが、これは、じゃ、アメリカのいわゆるエクソンモービル等のオイルメジャーにとっては余り都合のいい話ではないのかなと。価格が下がるわけです。一番いいのは、価格も上がって、シェール開発もできて、あわよくば輸出も増やせると、こういうことですけれども、ここは、ちょっとうがった見方かもしれませんが、中東情勢が緊迫化すれば原油価格が反動高になる、そうするとその二兎を得ることができるのかなということで、これはロシアにとっても非常に好都合の話であります。こういう格好で、そうなると原油の生産というのがかなりまた増えてくる可能性もあるんですけれども、非在来型を含めて。
 しかし、今後の原油の生産価格をどう見るかというと、意外に生産がもうマイナスというか頭打ち傾向になっているというようなニュースも流れてきているわけであります。二〇二〇年ぐらいまでに生産がやっぱり減少し、価格が反発するのかなというふうに見ております。
 ところが、じゃ、それ、前のピークオイルの話はどうなったのかということですが、左側のグラフというのは、これはいわゆるピークオイル論ですね、キャンベルとかLBST。要するに、埋蔵量の半分を掘ってしまうと生産が急速に減退する、その生産量をたどってみるとこの釣鐘状の経路をたどると、こういう見方でありましたけれども、一方で、オイルメジャーの方は、そんなものはなくて、幾らでも埋蔵量はあるんだと、この右端の見方をしていたわけであります。
 じゃ、IEAは何かと。中立的というか、真ん中辺の見方をしておりました。じゃ、このIEAの中立的なと言われる見方がどの辺、どの程度頼りになるのかなということでありますけれども、先ほどのように、ちょっとその前に、ここの二〇〇八年以降の原油が高騰した際の、いわゆる生産も増えているんですけれども、生産が増えた国はどこなのかと見ると、実に北米での生産が増えているということなんですね。それから、右側の色が付いたグラフは、在来型石油の生産量と、赤い部分はシェールオイルなどの非在来型石油の生産量なんですが、価格が高騰したけれども、生産が増えているのは、在来型は増えていない、ここに非在来型が加わったという形になっています。
 そして、OPEC自体の埋蔵量ということなんですが、これ八六年のところから埋蔵量の変化があったわけですけれども、一気に埋蔵量が増えたという格好になっていますが、これ、サウジアラビアだけでも今の埋蔵量というのは二千六百億バレルという格好で、埋蔵量ですね、世界で最も多いわけでありますが、しかし、サウジの生産量が日量一千万バレルとして見ると、三百六十五倍すると大体年間三十五億バレルぐらいは生産している。それが三十年続いているんですね。そうすると、掛け算すると一千億バレルぐらいはその埋蔵量から消去されていなければいけないのに、相変わらずBP統計で見ると二千六百億バレルという埋蔵量になっています。本当にあるのかなと。それと、二〇三〇年のいわゆるビジョン二〇三〇を考えると、それ自体やっぱり検証する必要があるのかなという気がいたします。オイルの需要のピークと同時に埋蔵量のピークを迎える。
 それで、IMFの話でありますけれども、IEAですね、ここは二〇三〇年代の石油の供給の構図というのを、シナリオを描いているんですけれども、在来型の石油は二〇〇五年をピークに二〇三〇年代になると半分ぐらいに生産量が減りますよ、供給の増える分というのは非在来型で増えますよ、そして、ただ真ん中に未発見のこの在来型がありますよと。これは希望的観測であって、原油が下がってくれば投資がなされないわけでありますから、ここの投資が果たしてなされるのかどうかということなんですね。
 石油会社も結構ここに来て、石油会社の財政も悪化してきているということで、衰退を予測する幾つかの報告が出ております。
 私は、そう見ると、今後、原油価格の低迷、五十ドル台に回復したとはいえ、この状況が続いた場合には、必要な開発投資が減少し、在来型の埋蔵量も同時に、一方で生産も行われるわけですから、埋蔵量が減少して、最終的には埋蔵量危機とか原油価格の反動高につながる可能性があるなというふうに見ています。
 一方で、先進国においては、脱石油文明へという流れですね、再生エネルギー、ビッグデータ、IoT、こういったところへの取組が進むわけでありますが、進めば進むほど、例えばIoTといっても、待機電力含めて電力需要ってかなり上がってしまうし、それからレアメタル等のメタル需要とかいわゆる一次産品の希少性が一段と高まってしまうんじゃないかなと、こんなふうに見ております。それが今、ここの部分の長期シナリオであります。
 したがって、温暖化等を考えれば、CO2削減ということで、いわゆる行動パターンを変えるとか産業構造を変える、CO2を出さない供給システムに変えていくというのが待ったなしでありますが、改めて考えてみると、今まで石油の産油量と石油の消費量と経済成長というのはパラレルで来たものが、やっぱりそろそろ見直す必要があるんじゃないかなと。無限の成長を前提にしてきた新古典派経済学、こういうのも、今までの生産関数の中にこの資源の問題というのがなかったということなんですね。今まで経済学というのは、拡大する、増加する労働力、それから資本も、設備の高度化プラス創意工夫のトータル・ファクター・プロダクティビティーというイノベーションだと、これで成長するんだというけれども、これは地球が無限である限りそうなんでしょうけれども、ここに来て原油が高騰したり金属資源価格が上がったりすると、そろそろこういう考え方を見直す必要があるんじゃないかなと。
 今、問題は、ピコグラムの反乱、これは一兆分の一という微細な部分での問題と、それから十億トンレベルのギガトンの反乱と、ここをどういうふうに制御していくかという大きな課題を突き付けられている。
 今、イノベーションの方向性、新技術頼みになるわけですけれども、四つの提言ということで、私は先ほど、冒頭申し上げましたレジリエンス戦略ですが、日本の抱えている資産というか資源というのは四つあるわけですね。物的な資源、それから人的、人材ですね、それから社会関係資本と言われている道徳とか考え方とか、こういう部分であります。それから自然の資源であります。この四つの抱えている資源をレジリエンスという方向で戦略を練るということが必要かなと思います。
 以上であります。

発言情報

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発言者: 柴田明夫

speaker_id: 33880

日付: 2017-02-22

院: 参議院

会議名: 資源エネルギーに関する調査会