松下新平の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)

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○松下新平君 ODA調査派遣第二班について御報告いたします。
 当班は、去る二月二十日から三月二日までの十一日間、ブラジル連邦共和国及びチリ共和国に派遣されました。
 派遣議員は、中西祐介議員、礒崎哲史議員、そして私、団長を務めました松下新平の三名でございます。
 本日は、調査を通じて得られました所見を中心に、調査の概要を御報告いたします。
 初めに、調査全体を通じ感じましたことを申し上げますと、我が国のODAが両国の発展に少なからず貢献し、良好な二国間関係の柱の一つとしても有効に機能していること、また、特にブラジルでは、推定百九十万人にも及ぶ世界最大の日系社会が存在し、日系人を通した日本人に対する信頼感の土台の上にODAが複層的に展開され、同国ならではの良い効果が生まれていることを強く感じました。
 一方、今後に向けた課題として、近い将来、ODA卒業国になることも見据え、新しい発想に基づいた支援、二国間協力の在り方について考えなければならない段階にあるとの認識を持った次第であります。
 以下、順次、視察や意見交換等を行った案件等について申し上げます。
 ブラジルにおけるセラード農業開発協力事業につきましては、同国の発展のみならず、世界の食料の需給バランスの安定確保の上においても誠に意義深い取組であったと改めて認識いたしました。今回訪問したブラジル農牧研究公社・セラード農牧研究所では、日本との協力の経験が現在にも大切に受け継がれ、かつてのような協力関係を再開したいとの希望が示されましたが、同国の農業の更なる発展、我が国のプレゼンス拡大の可能性等も見据え、十分検討に値する提案ではないかとの印象を持ちました。
 一方、チリにおいて今回訪問したカトリカ・デル・ノルテ大学浅海養殖センターでは、ホタテ等の養殖技術導入の拠点となった施設でありますが、我が国が供与した施設や機材などが大切に利用されていたほか、地元漁民や大学関係者との意見交換を通じて支援に対する深い感謝の念が言葉の端々から伝わってまいりました。
 これら二つの案件は両国の発展に重要な役割を担った成功事例とされるものですが、いずれも今日までに重要な産業として根付いており、評価できると思われます。
 一方、首都圏州パイネ区では、日本で研修を受けた同区役所の職員が地元のスイカ農家とともに一村一品運動に取り組んでいる現場を視察し、研修の効果を確認することができました。
 次に、防災関係の案件でございます。
 ブラジルにおける統合自然災害リスク管理国家戦略強化プロジェクトは、観測、予警報、リスク評価、都市計画など総合的な能力構築に向けた協力ですが、都市省との意見交換の中で、技術の確かさに加え、それを押し付けるのではなく、相手国の行政システムや慣習を尊重する日本の姿勢が高く評価されていることが印象に残りました。
 また、チリとの間では、同国を拠点に中南米全体で二千人の防災分野の人材育成を展開する中南米防災人材育成拠点化プロジェクト、すなわちKIZUNAプロジェクトの進展を確認することができました。一方、訪問の際には、同国史上最大規模の森林火災が発生しており、我が国からの消火剤の供与等の支援に対し謝意が示されるとともに、災害対応の司令塔である国家緊急対策庁、ONEMIの一層の機能強化への協力に強い期待感が寄せられました。
 また、我が国は、世界津波の日の制定や高知県黒潮町での「世界津波の日」高校生サミットin黒潮の開催、チリを始めとした太平洋沿岸国とのリレー津波防災訓練の実施等に大きな役割を担っております。チリでは高校生を含む関係者と意見交換を行いましたが、こうした取組が防災教育、また防災意識の共有という観点から高く評価できると感じられました。
 次に、その他の分野関連の主な案件について申し上げます。
 ブラジルにおけるサンパウロ州沿岸部衛生改善事業につきましては、日本の支援による下水道施設の拡大や機能強化により、周辺水域の水質向上に効果が上がっていることを確認しましたが、現状では、沿岸の水質が十分良いようには見えず、なお課題があるように思われました。
 また、日本の交番システムを取り入れた地域警察活動普及プロジェクトにつきましては、ブラジル側で犯罪に対する予防措置の必要性を認識し、創意工夫で地域住民と協力し効果も上げております。ただ、治安状況はまだまだ悪く、引き続き協力していくべきであると感じました。
 また、チリにおけるサン・ボルハ病院の視察では、中南米で最高水準とも言われる同国の高い医療技術に我が国の協力が大きく貢献していることが確認できました。一方で、同国の医療サービスの供給網は十分ではなく、我が国による救急車の供与が農村部の医療確保の観点から非常に高い評価を受けていることも印象に残りました。
 次に、三角協力について申し上げます。
 我が国は、両国との間でパートナーシップ・プログラムを締結し、農業、水産養殖、医療、衛生、防災など様々な分野で三角協力を進めております。こうした取組に両国とも非常に意欲的であるとともに、取組を通じ、ドナー国としての意識や能力の向上を促進する効果についても認識いたしました。
 次に、日系社会について申し上げますと、ブラジルにおきましては、入所者の高齢化が進む等、厚生施設の経営環境の変化への対応、若い世代が日本語を学ぶインセンティブの確保や、日本へ出稼ぎ帰国者の子女に対する言語教育などの課題について認識いたしました。日系社会が、日系人としてのアイデンティティーを共有し、現地社会で存在感を維持拡大させつつ、引き続き両国の懸け橋であり続けられるよう、様々な形でサポートしていく重要性を認識いたしました。こうした中で、JICA日系社会ボランティアについては、人数の面でまだ十分とは言えないように感じられました。
 次に、JICA専門家やボランティアにつきましては、その真摯な活動は現地の人々の記憶に深く刻まれていくことを改めて認識いたしました。一方で、青年海外協力隊等JICAボランティアの帰国後の就職問題などがかねてから指摘されておりますが、こうした方々に対する理解が国内企業等の雇用主側に深まるよう、更に広報活動等の強化が必要であると感じられました。
 次に、ODA後をも見据えた今後の課題ということで、感じたことを申し上げます。
 チリにつきましては、本年中にもOECDの援助受取国リストから外れる可能性があり、国内での格差や防災対応等の課題がある中で、今後の我が国との二国間関係や三角協力に影響が及ぶことに懸念があるようでした。やはり、緩和措置的な考え方に基づいて対応を検討する必要があると思われます。
 ブラジルにつきましては、すぐに援助受取国リストから外れる状況ではありませんが、例えば、近年、中国は資源や食料の調達先として大きな期待を掛け、インフラ整備などへの協力とのセットでアプローチを強めております。日本とブラジルには、日系社会の存在やODAを通じた人脈、さらには国民の間での親近感や信頼感が存在しますが、ODAを通じた様々な課題への協力とともに、民間企業の投資を通じた貢献の可能性についても模索していく必要があろうと思われます。しかし、ブラジルコストと呼ばれる複雑な税制、労働、雇用面での過度の保護、治安などの問題が指摘されるなど投資環境は十分に良いとは言えず、対話等を通じた協力、また、こうした問題への対処の負担がより大きい中小企業を適切にサポートする仕組みを考えていくべきではないかと思われます。
 また、日本に魅力を感じ、好意を持つ人々の存在の重要性ということも強く感じました。こうした人々を増やしていく取組をODA卒業後においても継続的に進めていく必要があり、特に、若者を中心に様々な招聘スキームを考え進めていくこと、また、技術、学術、文化等の分野での交流はますます重要性を増していくものと思われます。
 今回、サンパウロにおいて五月に開館しました、当時建設中のジャパン・ハウスを視察しました。ジャパン・ハウスにつきましては、必要性の議論が分かれる指摘もなされてはおりますが、日系社会が集中し、ブラジル経済の中心地から日本の魅力を広く伝える拠点として大いに活用していくべきであるとの感想を持ちました。
 最後になりますが、今回の調査に当たり、視察先の関係者、外務省及び在外公館、JICAに多大な御協力をいただきました。また、JICA専門家や青年海外協力隊員、シニア隊員、日本企業関係者、日系移民の方々からは被援助国の課題や協力活動の実態等について有意義な情報をいただき、意見交換を行うことができました。御協力いただきました皆様方に改めて感謝の意を示したいと存じます。
 以上でございます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 松下新平

speaker_id: 17756

日付: 2017-05-10

院: 参議院

会議名: 政府開発援助等に関する特別委員会