山下雄平の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)
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○山下雄平君 ODA調査派遣第四班について御報告いたします。
当班は、本年一月十五日から二十一日までの七日間、ウズベキスタン共和国に派遣されました。
派遣議員は、大沼みずほ議員、宮沢由佳議員、石井苗子議員、そして団長を務めました私、山下雄平の四人でした。
ウズベキスタンは、天然ガスなどの資源に恵まれており、堅調な経済成長が続いている一方、旧ソビエト連邦時代に建設されたインフラの老朽化、市場経済移行後の産業界を担う人材の不足といった課題があります。また、経済成長に伴い都市部と地方部の経済格差が拡大しており、経済成長の成果が広く国民に波及していないという課題も抱えております。
以下、今回の調査を通じて得られました所見を報告いたします。
第一に、エネルギーインフラについて申し上げます。
ウズベキスタンでは、天然ガスを主なエネルギー源とする火力発電所が全体の約八七%の電力を供給しております。しかし、発電施設の老朽化に加え、人口増加と経済発展により、電力供給能力の向上が課題となっております。我が国は、円借款を通じて複数の火力発電所の改修、新設等を支援しており、今回、その中の一つ、タリマルジャン火力発電所を視察いたしました。
我が国の支援によるガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクルガスタービンの導入により、電力供給能力が向上し、天然ガス消費量及び二酸化炭素排出量が削減されます。さらに、余剰となった天然ガスを化学産業に振り向けることによって雇用機会創出という効果も期待されます。
発電分野における我が国の強みは、設備が高効率で耐久性に優れていること、工期を守ることです。これらの点について、意見交換した複数の要人や視察先関係者から極めて高い評価をいただきました。
この成果を確かなものとするためにも、高効率の設備を長期間にわたり高いパフォーマンスで運営することに更に注力すべきであると考えます。そのためには、メンテナンス及び人材育成が重要です。現在も運用保守を支援する事業が進行しておりますが、より一層支援していくべきではないでしょうか。
第二に、人材育成、教育について申し上げます。
人材育成では、ビジネス教育事業等を実施しているウズベキスタン日本人材開発センター、UJCを視察しました。UJC側からは、これまでの成果としては、ビジネス研修機関としての評価の確立、ビジネスコース修了者による活発な起業活動等が挙げられるとの説明がありました。
教育では、日本語教育機材の提供や日本語教師の派遣を行っているウズベキスタン国立世界言語大学、タシケント国立東洋学大学を視察しました。これらの大学では多くの学生が日本語を学んでおり、日本に対する関心の高さや、学生たちの日本語が相当上達していることが分かりました。大学側は、日本人教員を高く評価するとともに、各種日本語文献の寄附等を要望されました。
このように、人材育成、教育に関する支援が着実に進んでいることは確認できましたが、課題を二点指摘いたします。
一点目は、ウズベキスタンの自由化、市場経済化が進展しているか否かです。意見交換した複数の要人からは、様々な経済改革に努めているとの説明がありましたが、道のりは長いという印象を受けました。経済改革の進展がなければ人材育成支援の効果は限られます。今後、我が国としては、経済改革の動向を注視しつつ、改革を促す支援を行っていく必要があると考えています。
もう一点は、日本語学習者の雇用機会です。ウズベキスタンに進出している日系企業は少なく、在留邦人も二百人に満たない規模です。今後は、日本語学習者が日本に関わる仕事に就くことができる環境を考えていくことが必要だと考えます。
次に、農業改革、地域開発、保健医療について申し上げます。
農業改革では、リンゴ栽培技術の近代化による農家の生計向上事業を実施しているタシケント農業大学を視察いたしました。ウズベキスタンにおいて農業はGDPの約二五%を占める基幹産業であり、果樹も重要産業の一つですが、栽培技術等は旧ソ連時代のままであり、改善が求められております。本事業は講義や実習のほか、我が国への研修員も受け入れており、我が国で学んだ研修員からは、日本の栽培技術に極めて高い評価をいただきました。
他国への出稼ぎが多いウズベキスタンですが、我が国の支援により自国の農業の生産性が上がり、農家の所得が向上することが期待されます。加えて、農業分野の雇用創出に結び付けば、この支援の意義は更に大きくなると感じました。
地域開発では、JICAボランティアが大学での講義や体験交流型ツアーの企画、実施などを行っているサマルカンド経済サービス大学附属観光案内センターを視察しました。大学側からは、観光の質の向上に貢献しているとの説明がありました。
世界遺産を始めとする多くの観光資源を有するウズベキスタンにおいて、観光分野の伸び代は大きいと感じました。
保健医療では、サマルカンド州障害者リハビリテーションセンター、国立がん研究センター、国立小児精神神経病院を訪問し、供与された機材やJICAボランティアの活動を視察しました。視察先関係者からは、機材供与がリハビリ期間の短縮や質の向上、乳がんの早期診断体制の強化に寄与している、JICAボランティアには心から感謝するといった話が聞けました。
このように、保健医療に係る我が国の支援が一般の国民に役に立っていることが確認できましたが、我が国の支援に直接裨益しているウズベキスタン国民はまだまだ少数であるのではないかと思います。広く国民一人一人の生活向上に資するためには、現地ニーズの見極めとともに、ソフト面も重視して支援することも必要だと考えます。特に、機材については、かなり高額な機材が投入されていましたが、現場のニーズとどの程度マッチしているかについては検証が必要です。ベーシックな医療がまだまだ整っていない地域においては、まずは人材育成への支援を強化すべきではないでしょうか。
第四に、戦略的視点の重要性について申し上げます。
すなわち、我が国の対ウズベキスタン支援によるアフガニスタンの安定、中央アジア地域全体の安定という視点です。
アフガニスタンの安定が中央アジア地域全体の安定に結び付くことは明らかです。アフガニスタンの平和達成のためには、アフガニスタンへの支援だけでなく、隣国であるウズベキスタンへの支援も極めて重要です。例えば、我が国からウズベキスタンへの発電インフラ整備支援は、ウズベキスタンからアフガニスタンへの電力支援につながり、アフガニスタンの安定に寄与すると考えられます。また、ウズベキスタンの若者の中で働き場のない人がアフガニスタンなどで過激派に染まっていくという話も聞きました。ウズベキスタンで教育支援することは、彼らが過激な思想に走ることを防ぐことにつながります。
このように、ウズベキスタン支援に取り組むことは、経済的な投資効果といった面だけでなく、国際社会の安定に日本が寄与していくという意義も極めて大きいと考えています。国際テロが拡大している現在、今まで以上にこうした観点を重視する必要があります。
第五に、相互理解と広報活動の重要性について申し上げます。
ウズベキスタンの国民感情は、一般的に親日的です。この背景の一つに、かつての日本人抑留者の存在があると考えられます。
第二次世界大戦の終結後、当時のソビエト連邦に抑留された日本人のうち約二万五千人が極東から旧ソ連ウズベク・ソビエト社会主義共和国に移送され、強制的に重労働に従事させられました。日本人抑留者が携わった有名な建築物として、一九六六年のタシケント大地震の際にも倒壊しなかったナボイ劇場が挙げられます。この劇場の建設を始めとする日本人抑留者の真面目な働きと誠実な態度から、日本人は勤勉で礼儀正しいとの印象を持っているとのことでした。
旧ソ連時代から日本人抑留者の歴史に関心を寄せていたジャリル・スルターノフ氏は、日本人ゆかりの収容所などを回り、貴重な資料や証言を収集、私財を投じて日本人抑留者記念館を開館しました。同館は抑留関係者とウズベキスタンの交流拠点にもなっています。スルターノフ氏のこうした活動は、両国の友好関係発展及び両国の相互理解に大きく貢献していると言えます。
先人の偉業が強固な土台となり、その上にウズベキスタン独立以降の我が国のODAによる様々な支援が積み上げられ、今日の我が国に対する信頼、親近感となっていると考えられます。
その一方、中国のプレゼンスの大きさを随所で感じました。日系企業関係者との意見交換においては、国際競争入札をするとイニシャルコストが安い中国に負ける、中国は活発なトップ外交を行っており日本政府にもトップ外交を望むといった意見が出されました。国際社会として支援が広がることは望ましいことですが、我が国はいかに支援を進めていくのか、我が国の強みを現地の方々によく理解してもらうことが必要だと思います。イニシャルコストの例でいえば、耐久性等を加味したライフサイクルコストを理解してもらうなど、十分な説明や広報活動の一層の促進が求められると思います。
我が国に対する信頼、親近感を今後も維持、発展させていくためにも、広報活動は欠かせません。相手国の国民に日本のODA事業を、そして日本自体のことをより知ってもらう努力を一層行っていくことが重要です。同時に、我が国の国民に対しても、我が国ODAが各国においていかに評価、感謝されているか、どのように国際社会の安定に寄与しているのかをより広く知ってもらう努力が重要だと思います。
最後に、日系企業やJICAボランティアなど現地で活躍されている日本人の方々との意見交換は大変意義深いものでした。しかし、ほとんどが日程の最後の方に組み込まれていたため、要人会見の際に、現地の日本人の方々から伺った声や要望を伝えることができなかったことは極めて遺憾でした。現地で汗をかかれている日本人の思いをその国の政府や議会関係者に伝えることも我々のミッションの大きな役割だと思います。そうしたことができる日程調整を今後は期待します。
以上が、第四班の調査から得られた所見です。今回の調査に御協力いただきました訪問先の皆様、内外の関係機関の皆様に心から感謝申し上げ、報告といたします。
ありがとうございました。