岸田文雄の発言 (本会議)
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○国務大臣(岸田文雄君) まず、国際組織犯罪防止条約とテロとの関係及び本法案の必要性についてお尋ねがありました。
まず、一般論として、国際的な組織犯罪とテロ活動との間には強い関連性があるということが指摘をされています。本条約を採択した二〇〇〇年十一月の国連総会決議においても、国際的な組織犯罪とテロ犯罪との関連が増大しており、本条約がこのような犯罪行為と闘うための有効な手段であることが指摘をされています。さらに、二〇一四年十二月の国連安保理決議、またG7、G8サミットにおいても、テロ防止の観点から、各国に対し本条約の締結が要請をされています。
本条約は、重大な犯罪の合意又は組織的な犯罪集団への参加の犯罪化を義務付け、テロを含む組織犯罪への未然の対処を可能とするとともに、マネーロンダリングの犯罪化も義務付けています。したがって、テロ行為それ自体に対処できるのみならず、テロ組織の資金源となっている犯罪行為にも対処でき、テロの根本を断つことができるものです。
このように、本条約は、テロを含む幅広い国際的な組織犯罪を一層効果的に防止するための枠組みです。本法案は、本条約の義務を履行して本条約を締結するためのものであり、テロを含む組織犯罪対策に資するものであると考えています。
そして、国際組織犯罪防止条約とテロ対策との関係に関する解釈についてお尋ねがありました。
まず、政府として、本条約の解釈は変更はしておりません。国際的な組織犯罪とテロ犯罪との間に関連性があることについては、ただいま述べましたとおり、本条約を採択した二〇〇〇年十一月の国連総会決議などからも明らかであり、我が国もコンセンサスによる採択に加わっています。
また、テロ組織が本条約に言う組織的な犯罪集団に該当する場合には、そのような組織が行う犯罪は本条約の対象となり得るものであって、現に、本条約の締約国の間では、本条約に基づく捜査共助として、例えば、テロ資金犯罪に関する警察記録の提供要請やテロ捜査のための記録の提供要請等が行われています。
このように、本条約は、国際社会においてテロ対策に必要なものとして認識され、かつ、現にそのために活用されているものであって、本条約がテロを含む幅広い国際的な組織犯罪を一層効果的に防止するための重要な枠組みであることは疑いがないところです。
次に、OECD加盟国における国際組織犯罪防止条約締結のための法整備の状況についてお尋ねがありました。
OECD加盟国のうち、本条約の締結に際し、重大な犯罪の合意罪又は参加罪を新たに創設した国は四か国であると承知をしております。これは、他の国においては従前から国内法として重大な犯罪の合意罪又は参加罪の一方又はその双方を有していたため、新たに犯罪化を行う必要がなかったことを示すものにすぎないと考えます。
御指摘の既存の法原則の意味するところが必ずしも明らかではありませんが、一般に、他国が条約を国内で実施するに当たりいかなる立法措置を講じているかについて、我が国として必ずしも網羅的にその詳細を承知しているものではなく、先ほど申し上げた四か国が御指摘の既存の法原則を変更したかどうかについてお答えするのは困難であると考えます。
なお、我が国における自国の国内法の基本原則、本条約第三十四条1にも記載されている自国の国内法の基本原則ですが、これは罪刑法定主義、適正手続の保障等をいうものであると考えており、本法案はこれを変更するものではありません。
いずれにせよ、本条約の事務局である国連薬物犯罪事務所、UNODCからの口上書においては、本規定の本質が義務的であることは変わりはない、締約国は共謀のオプション又は犯罪の結社のオプションのいずれかを選択しなければならないとされており、これらをいずれも犯罪化しないことは許されない、このことが確認をされています。
次に、国際組織犯罪防止条約を締結するための国内法整備の必要性についてお尋ねがありました。
本条約第五条は、締約国に対し、重大な犯罪の合意又は組織的な犯罪集団の活動への参加の少なくとも一方をその未遂又は既遂とは別に犯罪化することを義務付けております。しかし、我が国には、現行法上、参加罪は存在しない上、重大な犯罪の合意罪に相当する罪もごく一部しか存在しません。したがって、我が国の現行の国内法では本条約の義務を履行できていないため、新たな立法措置が必要であり、テロ等準備罪を新設しなければ本条約を締結することはできないと考えております。
この点については、本条約の立法ガイドを作成した国連薬物犯罪事務所、UNODCからの本年四月十一日付けの口上書においても、締約国は重大な犯罪の合意罪又は組織的な犯罪集団の活動への参加の二つのオプションのいずれかを選ぶことができるが、本規定の本質が義務的であることには変わりはなく、締約国はいずれかを選択しなければならない、このようにされております。
次に、現行の国内法のまま国際組織犯罪防止条約を締結することに関する検討についてお尋ねがありました。
先ほど申し上げたとおり、政府としては、我が国の現行の国内法では本条約の義務を履行できていないため、新たな立法措置が必要であり、テロ等準備罪を新設しなければ本条約を締結することはできないと考えております。
その上で申し上げれば、本条約の交渉過程における御指摘の趣旨の主張ですが、これは、その当時の案文において、重大な犯罪の合意罪について、組織的な犯罪集団が関与するものとの要件を付すことが認められておらず、重大な犯罪の範囲も定まっていなかった、このことを前提として行ったものであり、現在の本条約の規定を前提としたものではありません。
重大な犯罪の合意又は組織的な犯罪集団の活動への参加の犯罪化について規定する本条約第五条は、国際的な組織犯罪への効果的な対処を目的とした本条約の中核を成す規定です。したがって、このような規定に留保を付すことは本条約の趣旨及び目的と両立せず、留保を付すことはできないと考えています。また、手続上も、本条約については、政府として留保を付さずに締結することについて国会にお諮りをし、既に平成十五年に国会の御承認を得ていますので、留保を付さずに締結することとしております。
そもそも、我が国としては、締結した条約等を誠実に遵守することを必要とすると規定する日本国憲法第九十八条第二項に従い、本条約の各規定を誠実に履行することができるよう、国内法をしかるべく整備した上で本条約を締結する必要があると考えております。
このように、一貫して、現行の国内法のまま本条約を締結することはできないと考えており、そのようなことを行うことは考えておりません。
最後に、国連人権理事会プライバシーの権利特別報告者の公開書簡への対応についてお尋ねがありました。
特別報告者とは、特定の国の状況又は特定の人権に関するテーマに関し調査報告を行うために、人権理事会から個人の資格で任命された独立の専門家です。この点については、G7タオルミーナ・サミットの機会に安倍総理と懇談したアントニオ・グテーレス国連事務総長も、人権理事会の特別報告者は国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない旨述べております。
そもそも、先般のカンナタチ氏の公開書簡については、法案を作成した当事者である日本国への照会などの機会を持つことなく、公開書簡の形で一方的にその見解を発表した点で不公正かつ不適切であると考えております。また、この書簡に示された懸念や指摘事項が一部の関係者から得た限られた情報のみに基づくものであることがうかがわれ、これまで国会審議等の場において政府が説明してきた内容を踏まえていないものであって、その内容は明らかに不適切であります。そこで、我が国として直ちに抗議をしたものであります。
なお、このような公開書簡でありますが、我が国の取組を国際社会において正確に説明するためにも、同書簡の照会事項については、追ってしっかりと我が国の立場を説明するものをしっかりお返しをしたいと考えております。
いずれにしましても、国連は、累次の国連総会決議や安保理決議において繰り返し表明されているとおり、我が国を含む数少ない未締結国に対し、国際組織犯罪防止条約の早期締結を求めております。また、本年五月二日、本条約の国連における事務局である国連薬物犯罪事務所、フェドートフ事務局長も私に対しまして、日本による同条約の締結に向けた努力が成功し、早期の条約締結につながることを期待する、このように述べたところであります。(拍手)
〔国務大臣松本純君登壇、拍手〕