岸田文雄の発言 (本会議)
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○国務大臣(岸田文雄君) まず、本条約第五条の犯罪化義務と予備罪との関係、そして同条の留保に関する平成十五年当時の国会審議の内容、そして同条の義務を履行するために必要な国内法の内容、以上三点につきましてお尋ねがありました。
まず、第五条と予備罪との関係ですが、本条約第五条1(a)の(1)は、重大な犯罪の合意そのものを処罰の対象とすることを義務付けた上で、国内法において合意の内容を推進するための行為を伴うとの要件を付すことを認めております。
予備罪に関する御指摘の考え方は、いわゆる推進行為の要件に対応するものとして予備罪の予備行為を規定することで同条1(a)の(1)の義務を履行しようとするものと考えられますが、予備行為の概念について、裁判例に見られる客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合といった考え方を前提にすれば、そのような危険性の認められる程度の準備がなされなければ処罰できないということになり、さきに述べたような同条(a)の(1)の趣旨に反するおそれが高いものと考えております。
そして、条約審議時における議論ですが、平成十五年当時、政府は本条約を留保を付さずに締結することについて国会にお諮りし、御承認を得ました。また、その際の国会審議において、本条約第五条を留保することは可能かとの質問に対し、同条は条約の中心的な規定であり、同条について留保をするということは適当ではない、このような答弁を行っております。
そして、御指摘の本条約の事務局であります国連薬物犯罪事務所、UNODCからの口上書においては、本条約第五条1の(a)について、本規定の本質が義務的であることは変わりはない、締約国は共謀のオプション又は犯罪の結社のオプションのいずれかを選択しなければならない、このようにされております。
しかし、我が国には、現行法上、参加罪は存在しない上、重大な犯罪の合意罪に相当する罪もごく一部しか存在しません。したがって、我が国の国内法では本条約の義務を履行できていないため、新たな立法措置が必要であり、テロ等準備罪を新設しなければ本条約を締結できないと考えております。
次に、テロ等準備罪において採用している条約上のオプションについてお尋ねがありました。
御指摘のとおり、衆議院での審議に際しましては参考人から種々の陳述があったところですが、テロ等準備罪の立案に当たっては、過去の国会審議等において受けた様々な御指摘を踏まえて、一般の方々が処罰の対象とならないことを明確にするとの観点から、本条約が認めるオプションを活用した次第であります。
すなわち、第一に、合意の内容を推進するための行為を伴うとの要件に係るオプションを活用して、計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときとの要件を新たに付すことにより、計画に加え、計画をした犯罪を実行するための準備行為があったときに初めて処罰の対象になることといたしました。
第二に、組織的な犯罪集団が関与するとの要件に係るオプションを活用して、法文上、犯罪主体が組織的犯罪集団に限られることを明記した上で、対象犯罪についても、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される重大な犯罪二百七十七個に限定することといたしました。
OECD加盟国において、この二つのオプションの双方を採用して厳格な要件を定めている締約国はないものと承知をしており、国際的に見ても、テロ等準備罪は人権に十分配慮したものになっていると考えております。
最後に、国連人権理事会プライバシーの権利特別報告者から発出された公開書簡についてお尋ねがありました。
特別報告者とは、特定の国の状況又は特定の人権に関するテーマに関し調査報告を行うために、人権理事会から個人の資格で任命された独立の専門家であり、同専門家の見解は国連の立場を反映するものではありません。
この点について、G7タオルミーナ・サミットの際に安倍総理と懇談したグテーレス国連事務総長も、人権理事会の特別報告者は国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない、このように述べております。
いずれにしましても、国連の立場は、累次の国連総会の決議や安保理決議において繰り返し表明されているとおり、我が国を含む数少ない未締結国に対し、国際組織犯罪防止条約の早期締結と実施を求めております。
そもそも、テロ等準備罪処罰法案においては、過去の国会審議における様々な御指摘を踏まえ、先ほど申し上げたオプションを活用して十分に厳格な要件を定めており、国際人権法の規範、基準に照らしても、プライバシーの権利や表現の自由を不当に制約するなどの指摘は当たらないと考えます。
政府としましては、今後とも、本法案に対する正確な理解を内外に広げていくため、適切な形で情報提供に努めてまいりたいと考えます。(拍手)
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