大塚耕平の発言 (本会議)
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○大塚耕平君 正副議長、議員、閣僚の皆様並びに国民の皆様に改めて御挨拶申し上げます。この度、民進党代表に就任いたしました大塚耕平でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
冒頭、最近の台風や集中豪雨等で亡くなられた方々に哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
それでは、民進党・新緑風会を代表して、所信に関して、総理に質問させていただきます。
総理は所信の冒頭で、二つの国難とも呼ぶべき課題を明示しました。まず、そのうちの一つである緊迫する北朝鮮情勢に関連して、総理の外交姿勢について伺います。
国際社会において、日本が率先して平和を追求する国家であり、諸外国からもそのように一目置かれる姿は、国民共通の願いであると思います。初めに、総理も同様のお考えであるか否かを伺います。
一方、国際社会の現実は、残念ながら恒久平和を実現できず、今日もなお紛争が絶えません。二十世紀の戦争や政治的暴力による犠牲者は、百年間で約一億六千万人に上ったとの推計もあります。愚かな歴史を積み重ねることなく、後世、二十一世紀は徐々に平和の世紀となった、その過程で日本が能動的な役割を果たしたと言われるような国のかじ取りを総理に期待するものであります。
そこで、総理にお伺いします。自国の利益を犠牲にして他国の利益を守る国はない。是非の問題ではなく、それが国際社会の現実だと思います。その現実を踏まえ、日米関係に関する総理の基本認識を伺います。
米国が重要な同盟国であるという事実に異論はありません。その上で総理は、米国もやはり、自国の利益を犠牲にして他国の利益を守ることはないという国際標準の国家と捉えているのか、それとも、自国の利益を犠牲にしてでも、他国の利益、例えば日本の利益を守るという国家と捉えているのか、この点に関する総理の基本認識を伺います。
この質問に対する御答弁の内容は、今後の総理との外交・安全保障に関する全ての議論の基礎となりますので、率直な認識を伺いたいと思います。
北朝鮮の度重なる核実験、弾道ミサイル発射は、日本の安全、極東の平和に対する脅威であり、累次の国連決議に反する暴挙です。かかる状況下、総理には、北朝鮮の情報について可能な限り国民や国会につまびらかに開陳していただくことを求めます。
具体的には、北朝鮮が核兵器搭載可能な長距離弾道ミサイル、大陸間弾道弾の開発、実用化、配備を完了していると認識しているのか否か。また、日本に照準を定めている中距離弾道ミサイル、ノドンは何基程度と把握しているのか。一説には二百基以上とも言われるノドンに対して日本はどのように対応しようとしているのか。お伺いをいたします。
北朝鮮は、九月十五日以降、核実験やミサイル発射を行っていません。総理はこの沈黙をどのように捉えているのか、お伺いします。
総理は、去る九月二十日の国連総会での演説において、必要なのは対話ではない、圧力なのですと明言しました。また、十一月六日の日米首脳共同記者会見では、最大限の圧力を高めることでトランプ大統領と完全に一致したと述べました。
圧力と同時に、北朝鮮に対話を促すメッセージを強く伝えることも一考に値すると考えますが、総理は対話は本当に必要ないと思っているのでしょうか。圧力と対話のバランスを総理はどのように考えているのか、お伺いいたします。
また、トランプ大統領と完全に一致したと述べた最大限の圧力とは、具体的にどのような内容を意味しているのでしょうか。国民並びに国会に対してもう少し分かりやすく説明してください。
総理は、全ての選択肢がテーブルの上にあるとするトランプ大統領の立場を支持するとも表明しました。これは軍事的オプションも含むという理解でよろしいでしょうか、お答えください。
訪日したトランプ大統領は、日本では北朝鮮との対話や接触の必要性に言及しなかった一方、韓国においては、十一月七日の文在寅大統領との共同記者会見において、北朝鮮に対話の席に着くことを促し、取引をするのが道理だと述べ、翌日の韓国国会における演説では、北朝鮮が攻撃をやめ、弾道ミサイルの開発を停止し、非核化をすることによって、話し合う用意があると発言しました。
トランプ大統領が日本と韓国において北朝鮮に対する発言スタンスを使い分けた理由をどのようにお考えですか。米国のどのような戦略に基づくものと捉えていますか。あるいは、それは相手国の首脳、つまり日本の総理、韓国の大統領のスタンスの違いによるものではないでしょうか。総理の御認識を伺います。
この際、総理に、中世ヨーロッパの政治思想家ニッコロ・マキャベリの名言をお伝えしておきます。その大著「フィレンツェ史」の中で、マキャベリは次のように述べています。戦争は、誰かが望んだときに始まるが、誰かが望んだときに終わるものではない。
総理には、慎重な上にも慎重に、かつ思慮深い外交姿勢で職務に当たられることを切望します。決意のほどをお伺いいたします。
次に、内政について伺います。
所信冒頭で言及した国難とも呼ぶべき課題のもう一つは、急速に進む少子高齢化でした。国民の所得が向上すれば、若い世代も所得面の将来不安が軽減され、子供を産み育てる余裕が増すことでしょう。
しかし、アベノミクスが始まって既に五年、実質賃金指数の推移を見ると、安倍政権発足時の二〇一二年第四・四半期は一〇四・七、直近の二〇一七年第二・四半期は一〇〇・五と低下しています。失業率が完全雇用状態に近い水準になっても実質賃金が上がらない、むしろ低下しているという事態は、これまでの経済理論では説明できない何かが起きているということです。
総理に伺います。実質賃金が低下している原因、失業率が低下しても実質賃金が上がらない原因をどのように考えているのでしょうか。
実質賃金が改善しないことを主因に、日本の相対的貧困率の算出基準となる所得の中央値が低下していることも深刻な問題です。
中央値とは、国民のちょうど真ん中の所得水準を指すものです。中央値の半分以下の所得の世帯構成員の割合が相対的貧困率です。直近データとなる二〇一五年の中央値は二百四十五万円であり、ピークの一九九七年の二百九十七万円に比べ、五十二万円も低下しています。つまり、貧しくなっているのです。それでも総理が、景気は改善している、全体としては豊かになっていると主張するのであれば、それは、格差が拡大していると述べているのと同じことであります。
総理に伺います。中央値が低迷している原因をどのようにお考えでしょうか。過去五年のアベノミクスが中央値にどのような影響を与えたと認識しているのでしょうか。お答えください。
格差が社会や成長に与える影響についての認識を伺います。
格差が成長を促進すると考えるのか、あるいは格差が成長を阻害すると考えるのか、両論あるのが現実です。総理は、格差と成長の関係について、どちらの立場に立って経済政策を立案しているのでしょうか。
格差が成長を促進するという考え方は、いわゆるトリクルダウン論と関連します。成長によって大企業や富裕層が潤えば、やがてその恩恵は滴り落ち、中小零細企業や中間層、貧困層にも恩恵が及ぶという主張です。トリクルダウンという言葉を最初に使ったのは、米国レーガン政権で行政管理予算局長官を務めたデビッド・ストックマンという説があります。ストックマン、すなわち株価男がトリクルダウンの生みの親とはでき過ぎの話ですが、成長すれば格差は是正されるのか、格差は成長を阻害するのか、この問題は経済理論的には決着が付いていません。
しかし、二〇一四年から二〇一五年にかけて、OECD、IMFから相次いで後者の立場、すなわち格差は成長を阻害するとの分析結果が発表されるとともに、トマ・ピケティの著書「二十一世紀の資本」によって実証的にその主張が裏付けられました。
総理に改めて伺います。総理は、格差は成長を促進するという立場なのか、格差は成長を阻害するとの立場なのか。仮に格差は成長を阻害するとの立場であれば、過去五年間に相対的貧困率の中央値が低下した事実は、自らの考えを経済政策に反映することに失敗したという理解でよろしいでしょうか。あるいは、やはり総理は、本音では格差は成長を促進するとお考えということでしょうか。お答えください。
この質問に対する御答弁も、今後の総理との経済政策論争の基礎となることから、論理的かつ率直に御認識をお伺いしたいと思います。
いずれにしても、実質賃金が改善せず格差が拡大していることは、所得の面から、若者世代を中心に、出産、子育てに対する不安を高めていると言わざるを得ません。
企業の収益が社員や国民に滴り落ちる、還元されるという考え方に従って過去五年間の経済政策が運営されてきました。しかし、現実にはそうならなかったのですから、総理、そろそろ経済政策の基本的考え方を転換しようではないですか。経済が良くなれば生活が良くなるのではなく、生活が良くなれば経済が良くなる、そのような考え方に転換して経済政策を組み立て直すおつもりはないでしょうか。
国民の所得増加が実現しない一方、アベノミクスの手段として行った異常な金融緩和は、後世に大変なツケを残しつつあります。
驚くべきことに、今回の所信では金融政策や金融緩和には一切言及していません。随分短い所信でしたので、金融緩和に言及する余地は幾らでもあったはずです。今回、金融緩和に触れなかった理由をお聞かせください。
マネタリーベースを二年で二倍にして二%の物価上昇を実現すると豪語した黒田日銀総裁の目標は、五年目に入っても未達成です。マネタリーベースが約四倍に膨張する一方、目標達成時期を六回にわたって先送りしています。
総理に伺います。異常な金融緩和をこれほど行っても物価が上昇しない原因をどのように認識しているのでしょうか。論理的にお答えください。それでもなお、黒田日銀総裁に異常な金融緩和の継続を求めるのでしょうか。あるいは、今回の所信で金融緩和に一切言及していないのは、事の重大さに気付き始めたということでしょうか。お答えください。
日銀は、金融緩和の手段として国債を大量購入することを続けています。これは財政ファイナンスにほかならず、債務を将来世代に付け替えている構図です。安倍総理と黒田総裁の将来世代及び日本経済に対する責任は重大です。
総理に伺います。将来世代及び日本経済に過大な債務を負わせている自らの責任をどのように認識しているのでしょうか。
総理がもはやデフレではないと初めて述べたのは、二〇一四年二月四日の衆議院予算委員会です。それから三年半以上も同じことを言い続け、異常な金融緩和を続けています。そして、今回の所信でも、デフレからの脱却を確実なものとしてまいりますと述べています。
総理に伺います。もはやデフレではなくなって三年半以上もたっているのに、まだデフレ脱却が確実でないのはなぜでしょうか。デフレではないのにデフレ脱却が確実ではないとはどのような状況なのでしょうか。論理的にお答えください。この矛盾した表現が共存する状況は、もはやデフレではないという判断が間違いだったか、その後の政策が失敗したのか、論理的に考えればどちらかであります。
今後の国会論戦のために、次の点についても確認のため是非お答え願います。デフレの定義、デフレの原因、デフレの功罪、金融政策の有効性について、総理としての公式見解をお聞かせください。
異常な金融緩和は、国民に異常な超低金利を強います。家計や企業の金利収入の減少、すなわち逸失金利収入であります。
例えば、事実上のゼロ金利状態入り直前の一九九三年基準で計算すると、日銀の試算によれば、二〇一五年末までの逸失金利収入、つまり国民の皆様が失った金利収入は四百四十一・三兆円です。おおむね一年間に約二十兆円の金利収入のマイナス、つまり消費購買力が奪われています。
もちろん、金融緩和にはプラスもあります。債券、株、土地等の所有者にはキャピタルゲインをもたらしています。
プラスとマイナスが同じ人を対象に生じるならば相殺されます。しかし、現実には、マイナスは低所得者、プラスは高所得者に相対的により大きな影響を与えます。これも相対的貧困率の中央値が低下する原因の一つであります。
日本の家計貯蓄率は、一九七六年に二三・二%のピークを付けた後、徐々に低下。一九九六年に一〇%を切り、二〇一三年には初めてマイナスとなり、二〇一四年はマイナス〇・八%でした。貯蓄率の著しい低下は格差拡大の象徴であります。
改めて総理に伺います。異常な金融緩和に依存することをもうおやめになりませんか。
アベノミクスの第二の矢、大規模財政出動についても伺います。
所信では、景気情勢に言及することはなく、成長軌道を確かなものとすると述べるにとどめています。
総理に伺います。現在の景気情勢をどのように認識しているのでしょうか。景気は良いという認識であれば、災害対策以外の補正予算は必要ないはずです。総理は、十一月一日の閣議で経済政策パッケージ策定と補正予算編成を指示しました。どのような景気の現状認識に基づき経済対策及び補正予算編成を指示されたのでしょうか、お答えください。
第三の矢である成長戦略についても伺います。
所信では、生産性革命、人づくり革命を断行いたします、来月、新しい経済政策パッケージを策定し、速やかに実行に移しますと述べました。
新しい経済政策パッケージの内容について御説明願います。現在策定中ですという御答弁はやめてください。政府は既に平成三十年度予算の概算要求を出しているのであり、本来は概算要求の基礎として骨太の方針等でそうした経済政策パッケージを示し、その上で概算要求をつくるものではないでしょうか。
どのような理由でこの時期に新しい経済政策パッケージをつくるのでしょうか。来年度予算の概算要求は、経済政策の戦略なしで取りまとめたということでしょうか。お答えください。
日本経済の潜在成長率を構成する要素のうち、技術進歩などを表す全要素生産性は過去五年間で低下しています。私たちが政権を総理に引き継ぐ直前の二〇一二年第三・四半期には〇・八九であった全要素生産性は、直近の二〇一七年第二・四半期には〇・三七まで低下しています。
総理に伺います。安倍政権の五年間に全要素生産性が低下し続けている原因をどのようにお考えでしょうか。
所信では、生産性革命に関連して、人工知能、ロボット、IoTに言及し、人手不足等に対応すると述べました。基本的方向は賛成です。
しかし、懸念もあります。二〇一三年、英国オックスフォード大学が、米国労働市場における仕事の四七%がAI若しくはロボットに置き換え可能であるとの推計結果を発表し、世界に衝撃が走りました。二〇一五年には、日本のシンクタンクがオックスフォード大学の推計方法を用いて日本の労働市場について分析したところ、置き換え可能率は四九%と推計されました。
AI、ロボット、IoTを活用する一方、生身の国民の雇用への影響をどのように考え、その対策をどのように行うのでしょうか。新しい経済政策パッケージの中で生産性革命を追求するのであれば、そのパッケージの中にはAI、ロボット、IoT等の普及に伴う雇用対策も含まれるべきと考えます。影響分析を含め、それを含むパッケージを策定することを提案したいと思いますが、いかがでしょうか。
雇用問題に関連して、労働法制について伺います。
政府は、従来の残業代ゼロ法案と時間外労働の上限規制等を束ねた法案を来年の通常国会に提出する予定と聞いています。残業代ゼロ法案には、過重労働につながる高度プロフェッショナル制度の創設や裁量労働制の対象業務の拡大が盛り込まれており、長時間労働を助長する危険性があります。一方、時間外労働の上限規制は長時間労働を是正するものであります。
趣旨が真逆の内容を一つに束ねて審議を要求することは適切とは思えません。両法案を別々に国会に提出することを求めます。総理の方針をお伺いします。
急速に進む少子高齢化の高齢化に関連して伺います。
所信では、二〇二〇年代初頭までに五十万人分の介護の受皿を整備する、介護人材確保への取組を強化します、他の産業との賃金格差をなくしていくため、更なる処遇改善を進めていきますと述べました。全産業平均より約十一万円も低い介護分野の月収を来年度の介護報酬改定でどのように改善するおつもりなのか、総理のお考えを伺います。
民進党は、今年の通常国会に来年度改定での介護報酬引上げを盛り込んだ介護崩壊防止法案を提出しましたが、与党の反対によって否決されました。介護報酬改定に向けた総理のお考えを伺います。
診療報酬も同様です。民主党政権では二回連続で診療報酬を引き上げ、医療崩壊に一定の歯止めを掛けましたが、安倍政権下では診療報酬の引下げによって医療は再び厳しい状況に置かれています。診療報酬改定に向けた総理のお考えを伺います。
所信では憲法改正にも言及していますので、憲法と自衛隊の関係についてお伺いします。
国民の生命と財産を守ることは、国家として当然のことであります。もちろん、私たちも自衛のための自衛隊は合憲の立場です。
総理は、憲法に自衛隊を書き込むことについて度々言及し、五月三日の全国紙のインタビューでは自衛隊を合憲化することが使命と発言しています。
総理に伺います。私たちは、自衛隊は憲法に書いてあろうとなかろうと合憲の立場です。総理は自衛隊を違憲と考えているのでしょうか、お答えください。
仮に現状でも合憲との御認識であれば、合憲の自衛隊を憲法に書き加えることで何が変わるとお考えでしょうか。自衛隊を書き加えることで自衛隊の存在や行動にどのような変化があると考えているのか、御答弁願います。
最後に、保守とリベラルの概念について質問させていただきます。
保守政治家を自任する総理に伺います。保守の定義、保守とは何かということについて、総理の御認識を聞かせてください。
保守のルーツは、英国のコモンローです。先例や伝統に基づく制度や価値を尊重し、現状維持、反改革的な傾向が保守の源流です。しかし、保守も時には改革を否定しません。保守思想の祖と言われるエドマンド・バークは保守するための改革という概念を主張しました。総理にとって、何が守るべきもので、何が改革すべきものとお考えでしょうか、伺います。
格差問題を例に取ります。社会の格差の現実に直面し、一定の範囲内の格差を容認する一方、限度を超える格差是正を守るべき価値と考えるか否か。格差是正が必要とのお立場であれば、限度を超える格差とは何か。総理のお考えをお伺いします。
一方、ジョン・ロックに端を発するリベラルも英国がルーツです。本来の意味は権力からの自由、自己決定権重視の思想です。私的所有権や市場原理を重んじる古典的自由主義につながり、資本主義の基礎を形成しました。
つまり、リベラルの本質は自由主義。個人の自己責任が前提であり、格差是正とは必ずしも相入れない面があります。
しかし、自由主義がルーツの古典的リベラルは進化しました。個人の自由や生存権を重視することから、翻って、時には政府が個人の自由や生存権を守るために介入することを肯定するソーシャルリベラリズムです。日本ではこの概念が俗にリベラルと言われています。一方、古典的リベラルはリバタリアニズムとも呼ばれます。
政府が介入してでも個人の自由や生存権を守るのはどのような場合でしょうか。それが問題です。政府が介入すべき格差とは何か。保守にもリベラルにも共通の問題です。
保守もリベラルも変わりない印象を受けます。それはある意味で当然です。本来、保守とリベラルは対立概念ではないからです。リベラルの観点から政府が介入し過ぎると、他の人の自由や財産権を侵害する現象も発生し、リベラルパラドックスが生じます。
何が是正すべき格差かという問題に一定の回答を提示したのはジョン・ロールズです。誰もがどのような立場で生まれても自己実現を追求できることを重視し、格差や不平等が固定化されないことを重要と考え、そのことを社会的公正と表現しました。
社会的公正とは何か。その定義が、国の社会保障制度や社会福祉、所得再分配等の税制の在り方を決めることになります。
総理にお伺いします。総理は、日本の諸制度が守るべき社会的公正とはどのような定義とお考えでしょうか。
日本では、マスコミも永田町も、保守とリベラルの概念を誤った使い方をしています。必ずしも的確ではない保守とリベラルの対比をやめることが、日本の政策論争を生産的に組み立て直すことになります。
いずれの党の中にも保守とリベラルは混在します。当たり前のことです。
保守は好戦的であり、リベラルは平和的であるとする関連付けも深刻な間違いです。持論を他者や社会に強要し、持論に固執し過ぎるところに争い事が発生します。
では、現在の日本の政治の対立軸は何か。私は、現在の与野党の構図は、民主主義の観点からは比較的明確に整理できると捉えています。
民主主義は、思想ではなく、手続論です。何が正しいか、何が正義かは絶対的には言えません。二千五百年前のソクラテス以来、古今東西の知性がそう諭し続けています。何が正しいかを定めることはできないので、可能な限り議論を尽くすことを求めているのが民主主義であります。
多数意見が必ずしも良い意見とは限らないので、少数意見にも耳を傾けることを求めています。議論を尽くせば尽くすだけ、より良い結論に到達できることを前提としているのが民主主義であります。
だからこそ、戦後の議会の先輩たちは、意見が大きく対立するような法案は、拙速に結論を出すことなく、何国会も議論を重ねることが珍しくなかったのであります。
一九八八年四月五日の参議院予算委員会において、与党の質問時間に関する野末陳平議員の質問に対して、竹下登総理は次のように答弁しておられます。「法律案作成に至りましても、あるいは予算編成に至りましても、政府・与党一体の責任で政調会の各部会等で十分自己の意見を吐き、質疑応答をしていらっしゃるということからして、割愛と申しますか、可能な限り少数意見に耳を傾けると申しますか、野党の皆さん方に時間を差し上げるというのが私どもが教わって今日まで守っておるところでございます。」。
総理、この竹下総理のお考えこそ、国会において守るべき保守思想、保守政治家の矜持ではないでしょうか。総理のお考えをお伺いいたします。
さらに、より意味のある議論を行うために、政府は可能な限り情報公開に努め真摯かつ十分な説明責任を果たすことが民主主義の基本と言えます。
その点に照らせば、総理の姿勢、現在の政府の体質には重大な問題があります。
慣例を覆し、野党の質問時間を削ることを主張する姿勢に、その内面が表れています。民主党が政権をお預かりした際には、時の野党、すなわち自民党の皆さんの主張を受け入れ、一対九まで質問時間を譲ったことを思い出していただきたい。二〇一〇年以降に当選され、当時は現職でなかった議場の各党の皆様には、そのことを御認識いただければ幸いです。
また、森友、加計問題にとどまらず、PKO日報問題を含む多くの懸案に対して、総理の情報公開や説明責任に対する後ろ向きの姿勢、民主主義を破壊するかのごとくの姿勢は目に余るものがあります。その総理が謙虚を度々強調する姿は笑止千万と言わざるを得ません。
私は、民主主義を重んじる勢力と民主主義を軽視する勢力との対立こそ、現在の日本、これからの日本に求められる重要な対立軸であると考えます。
次の総選挙においては、民主主義を重んじる勢力を結集し、国民の皆さんと国会に対し十分な情報公開を行い、十二分な説明責任を果たし、拙速な議論や傍若無人な国会運営をすることのない、より民主主義的な政権を打ち立てるために全力を尽くす所存です。
東日本大震災からの復興、原発問題への取組を始め、国会においては、山積する課題について政府・与党の皆さんと真摯かつ建設的な議論に努めるとともに、民主主義を重んじる勢力の結集のために粉骨砕身努力することを誓いつつ、代表質問とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕