大野輝之の発言 (経済産業委員会)

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○参考人(大野輝之君) 本日は、参議院経済産業委員会におきまして意見陳述の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の議案は省エネ法改正というものでございますけれども、なぜ自然エネルギーを専門とする財団の常務理事が参考人なのかという疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんので、最初に、省エネとの関わりについて、二点お話をさせていただきます。
 私が常務理事を務めます財団は、自然エネルギーを基盤とした社会を実現するということを目的にしまして、二〇一一年の八月に設立されたものでございます。この目的の実現のために、まず、太陽光発電や風力発電、あるいは水力、地熱など、様々な自然エネルギーの普及拡大が必要でございますので、中心的にはそのために必要な政策研究、調査研究を行っております。
 しかし同時に、エネルギーの使い方を効率化をしまして、社会生活でございますとか経済の発展に必要になるエネルギーを量を減らしていきますと、自然エネルギーを基盤とした社会、究極的には自然エネルギー一〇〇%の社会を実現することもより容易になるということでございます。こうした観点から、私どもの財団では、エネルギーの効率化や省エネルギーに関する政策研究も行っていると、これが第一の理由でございます。
 それからもう一点は、私個人のこれまでの経験に関するものでございまして、この自然エネルギー財団に参加したのが二〇一三年なんですが、それ以前の十五年間、私は東京都で環境・エネルギー政策の担当をしておりました。特に二〇〇三年以降は、企業の省エネ、エネルギー効率化を進めるための施策立案を担当いたしまして、二〇〇八年には、省エネ法の求める以上の対策を進める新しい制度の導入を実現いたしました。
 この制度は温室効果ガスの総量削減義務と排出量取引制度という名前のものでございまして、国の省エネ法が削減の努力義務にとどまりまして、また原単位の改善だけを目指したものであるのに対しまして、総量の削減を義務化をするというものでございます。
 こうした経験を踏まえまして、現在も、エネルギー政策に関する環境省でございますとか東京都の検討会委員などをやっております。これが第二の関わりということでございます。
 前置きはこの程度にいたしまして、本日の議案でございますエネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案について意見を述べたいと思います。
 改正案の主たる内容でございます複数の事業者が一体的に又は連携して省エネ対策を行う制度並びに貨物の荷主の定義の見直しと準荷主の位置付け、この二つにつきましては、事業者の省エネを促進する仕組みとして必要なものでございまして、その意味で妥当な改正であると考えております。特に後者は、今もお話がございましたように、インターネット販売の拡大の規模とテンポを考えますと速やかな改正が必要なものと思って、賛成をいたします。
 ただ一点、複数の事業者が一体的に又は連携して省エネ対策を行う改正については懸念がございます。
 これまで、年間千五百キロリットル以上のエネルギー消費を行う工場は、個別に毎年エネルギー使用状況の報告義務がありました。改正案で、認定管理統括事業者が設置された場合に、定期報告は一括して提出されると、こういうものでございますので、その際に個別工場のエネルギー使用量がこれまでどおり明らかになるものか法律の文面からは分かりません。一体化された合計使用量だけしか報告されないということになりますと、効果的な省エネ対策に必要な個別工場のエネルギー消費量が分からなくなってしまいます。この点は法律改正事項ではないと思いますので、今後、政令や告示において適切な対応をされるものと思いますが、その点を明確にしていく必要があるというふうに考えております。
 ここまでが今回の改正案の条文に即した意見でございます。
 これに加えまして、今回の改正については何点か意見を申し述べたいと思います。
 今回の改正案の提案理由を拝見しますと、徹底した省エネ対策に必要な措置を講ずるためと書かれています。問題は、我が国が現在直面しております課題、徹底した省エネ対策を進めるために、今回の改正案以外にもほかに速やかに導入すべきものがあるのではなかろうかということでございます。
 私の配付資料の一枚目を御覧いただけますでしょうか。一枚目に、図表の一と書かれたものに上段に書いてございますのは、今回の改正の前提となりました国の省エネルギー小委員会の意見の目次の一部でございます。今回の改正案は、このうち三の(四)の複数事業者の連携省エネ、それから四番の運輸部門の省エネ対策の取組強化に関わるものでございます。この省エネルギー小委員会の意見には、このほかにも、(一)の工場等判断基準、(二)の事業者クラス分け評価制度について、現行制度が有効に機能していないという指摘がございます。
 特に重要なのは、この図表一の下段に書きました工場等判断基準に関しまして、経営層を巻き込んだ大規模な省エネ投資を促すには必ずしも至っていない、経営層を巻き込み、現場のエネルギー管理を踏まえた大規模な投資判断を促進する見直しが必要であると、こういう重要な指摘がされていることでございます。
 今回の改正案を見ますと、これらの点については必ずしも対応がされていないと考えます。恐らく、こうしたものについては資源エネルギー庁におかれて順次対応を図っていくということだと思うんですけれども、我が国の省エネ対策も、これを考えますと早急な制度改正が必要ではないかと考えております。
 早急な対応が必要ということを説明するために、幾つかの資料を御用意いたしました。
 図表の二を御覧いただけますでしょうか。図表二は、国のエネルギー白書二〇一七から取ったものでございます。ここには製造業のエネルギー効率の推移が示されております。七〇年代の後半から八〇年代後半には、確かに石油危機の対応がございましてかなりエネルギー効率の改善が進んだということがこれを見て分かります。しかし、問題はその後でございまして、一九八〇年代後半から今日まで、三十年もの間エネルギー効率の改善が見られない、こういう状況でございます。
 図表の三を御覧ください。これは、同じく省エネルギー小委員会の第三回、二〇一四年七月二十四日に開催されたものでございますけれども、ここに一般財団法人省エネセンターから提出された資料でございます。ここでは、設備の老朽化やメンテナンス不足によりエネルギーロスが全部門で増大しているという指摘がございます。
 ここに写真がございますが、これは屋外のパイプ類の断熱材が劣化している例として示されているものです。こうした箇所から熱が漏れまして保温ができないということになりまして、エネルギーの損失が生じていると。その量でございますけれども、これは左下に円グラフがございますが、製造業全体の消費エネルギーの一一%にも当たる非常に大きな量が漏れているということでございます。
 それから、図表の四を、次のページを御覧ください。これは、エネルギー生産性、エネルギー効率を日本とほかの国で比較をしたグラフでございます。この赤い線が日本でございます。図の左端、一九九五年は世界でも二番目に効率が高いという状況だったところでございますが、その後各国の効率の改善が進みまして、右端、二〇一五年で見ますと、もうかなり下の方に行ってしまっている、残念ながらそういう状況でございまして、もはや今日では世界の省エネ大国とはやっぱり言えないというような状況になっているということでございます。
 やっぱり、省エネルギー小委員会の意見にございますように、経営層を巻き込む大規模な投資がなされない、なかなか遅れているという状況の中で、設備の老朽が進み、日本のエネルギー効率は他国に追い越されてしまっているという状況かなと思います。
 実は、私が東京都で省エネ対策を所管していたときにも、同じような省エネ対策の行き詰まりに直面いたしました。東京都では、二〇〇二年から都内の大規模事業所に省エネ対策、これは言葉を換えれば地球温暖化対策でございますので、これを自主的に取り組んでもらう制度を導入していただきましたが、実際に先にはなかなか進みませんでした。工場や事業所のエネルギー管理の現場を都の担当者が訪問しますと、一様に聞かれましたのは、もっと省エネができることは分かっているんだけれども、経営陣の理解がなくてなかなか大規模な省エネ投資ができないという声でございました。
 当時、東京都は新たな温室効果ガスの削減目標を定めまして、当時の国よりも高い、二〇二〇年までに二〇〇〇年比二五%削減という目標を決めていました。この目標の実現のためには、自主的な削減努力にとどまっていたこれまでの東京都の制度、また省エネ法も上回る総量削減を大規模事業所に義務付ける制度が必要であるという結論に至りました。
 図表の五、次のページでございますが、これは当時の東京都環境審議会が出した答申の一部でございます。この中で、総量削減義務と排出量取引制度、いわゆるキャップ・アンド・トレード制度の導入が必要だという中身が書かれています。その目的の一つが、ここに二つ目にございますけれども、温室効果ガスの削減、つまりこれは省エネということですが、省エネを現場レベルの問題から経営者が真剣に考慮すべき課題に変えるということでございました。
 次のページ、図表の六は、この制度の導入の効果を見たものでございます。二〇一〇年度に制度を開始しましてから結果の出ている二〇一六年度まで、二六%という大幅削減が実現をしております。これはCO2排出量と書いてございますが、東京都の場合は排出係数というものを固定をしていますので、これがほぼエネルギー削減率と考えていただいても大丈夫だと思います。
 図表の七は、これを国と比較をしたものでございます。一番上の点線になっているのが全国の産業・業務部門のエネルギー消費量の推移でございまして、一番下が東京都で削減義務の掛かっている大規模事業所のエネルギー消費量、CO2排出量の推移でございます。
 二〇〇五年を一〇〇としてグラフを示しておりますが、都の大規模事業所、削減義務の掛かっている事業所では、全国を上回る削減が進んでいるという状況が見て取れるのではなかろうかと思います。
 図表の八を御覧ください。これは、二〇一四年度に、東京都が削減義務の対象になっている事業所にアンケートを行った結果でございます。CO2削減、すなわち省エネ対策に対する経営者の関心が高まったかという質問に対して、合計七二%の方が大いになった、あるいは、なったという回答をしています。
 右側でございますけれども、設備更新の際に高効率機器の採用に積極的になったかという問いかけに関しても、やはり合計七二%が大いになった、なったと回答をしているということでございます。高効率の機器は、やはり導入に要する初期費用が高うございますので、従来はなかなか導入が進まなかったものです。東京都の総量削減義務制度の導入の目標の一つは、先ほど申し上げましたように、省エネ対策を現場の問題から経営層の関与する問題に変えるということでございますので、そういう意味では意図どおりの効果を発揮したのではなかろうかと思っております。
 国の省エネ小委員会の意見には、先ほど冒頭に言いましたように、経営層を巻き込み、現場のエネルギー管理を踏まえた大規模な投資判断を促進する見直しが必要ということでございまして、東京都の経験は、省エネ対策を自主的な努力義務にとどめるのではなくて、総量での削減義務にすることが、経営層を巻き込んで投資のレベルを引き上げるためにも一つの重要な解決策になり得るということを示したのではなかろうかと思います。
 東京都の制度は、総量削減義務と排出量取引制度を組み合わせております。排出量取引制度は、炭素税とともに、いわゆるカーボンプライシングと呼ばれる制度でございます。図表の九でございますが、図表の九は、世界各地でこのカーボンプライシングが拡大をしている状況を示しております。東京都が十年前に導入をいたしましたこのカーボンプライシング、排出量取引制度は、国ではいまだ本格的には導入されておりません。
 最後、図表の十でございますけれども、これは、このカーボンプライシング制度が導入された国におきまして炭素生産性が改善しまして、日本をしのぐようになっているという状況を示しております。この炭素生産性と申しますのは、先ほど図表四で見ましたエネルギー生産性に近い、パラレルに動くものであると考えております。図表四と同様に、かつての日本は上の方にいたんですが、これが下がってきているという状況です。
 停滞しております日本のエネルギー効率の改善を進めまして、国際的な課題である温室効果ガスの削減を進めるためにも、日本ではカーボンプライシングの導入を急ぐべきではなかろうかと考えております。
 今回の省エネ法の改正の議論の中でもこうした論点が深められることを期待しまして、私の意見表明を終わりたいと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 大野輝之

speaker_id: 18969

日付: 2018-05-31

院: 参議院

会議名: 経済産業委員会