勝部麗子の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(勝部麗子君) それでは、大阪の豊中市の社会福祉協議会から参りました勝部と申します。よろしくお願いいたします。
私は、日々現場で制度のはざまの方々を地域の中から住民の皆さんとともに発見し、そして解決をしていくというコミュニティーソーシャルワーカーという取組、これは平成十六年から動き始めまして、その延長線で、現在、生活困窮者自立支援事業の主任相談員としても活動をさせていただいております。
今日は、私の方からは、今回の法律の一部改正ということで五点ぐらい、現場の意見としてお話をさせていただければというふうに思って参加をさせていただいております。
ちょっとこちらの方の本を御覧いただきたいと思います。漫画の本なんですけれども、この漫画は、実はアルコール依存で地域から排除されていた男性が、地域の住民の皆さんに支えられながら、生活困窮者自立支援事業によって、そして仕事ができるようになり、周りの方たちと一緒に暮らしていくというふうな、いわゆる私たちの目指す取組を実際にかなえたような取組なんですが、実はこの漫画を書いた人が、ちょうど一年三か月前に出会った、二十年引きこもっていた引きこもり経験の女性であります。
二十年ずっと、大学卒業してから社会に行き詰まりを感じて、なかなか出ることができなかった彼女、一年二か月前、二、三か月前ですね、お出会いをしたことで、ちょうど彼女が美大を卒業して、コミックが書けた、そういうことを、親御さんが御相談で来られまして、私たちとすれば、何とか彼女を社会に引き出したいということで、ちょうど、漫画、実はこれ四作目なんですけれども、一作目、二作目、三作目という漫画も、そういう引きこもり経験者の人たちと一緒に作ってきましたが、彼女の書いてくださったことで、彼女は今はお店でお仕事ができるようになっています。
まさに生活困窮者自立支援事業というのは、これまで社会になかなかつながりにくかった人たちをアウトリーチという形で私たちが訪問をしたり、そして今まで諦めかけていたような人たちとつながって、そしてその人たちの得意な分野であったり、できることから社会の中へもう一度戻していく。支えられていた人たちが支え手に変わるということを実現させる大変すばらしい事業だというふうに実感をしております。
今日は、こういう事業の中で私たちはこの五つの点を少しお話をしたいと思います。
まず、今回の生活困窮者自立支援の定義の明確化のところにつきまして、まず一点目、お話をさせていただきたいと思います。
この中に、地域社会との関係ということによって困窮していくというふうな定義が書かれました。まさに我々は、これまで出会いましたごみ屋敷、それから引きこもり、八〇五〇問題、八十代の親に五十歳の無職の娘さんや息子さん。もう今の社会は、八十代の方々というのは、高度経済成長期、一生懸命終身雇用で働いた方たちはある程度年金があって、その前の方もその後の方たちも今経済的に非常に厳しい。特に五十代以下の方たちは、派遣や、それから非正規、多くの方たちがなかなか正規職員として働くことが難しいという時代になっていますが、八〇五〇という社会の問題というのも、これまでは家族の問題、自分の家の親の育て方の問題のように捉えられていましたけれども、こういう方々の問題も、この生活困窮者自立支援事業によって全国の自治体が、ああ、こういう問題が今まで見えなかったんだということを気付くことができたという意味でも大きな意義を感じています。
その中で皆さんがおっしゃっていることが、私の育て方が悪かった、自分が悪いというふうに思っていたが、実際には、そういう思いの中でどんどん社会から孤立をしていき、SOSが上げられない人たちがたくさんいたということであります。
現代の困窮というのは、私たち審議会の話合いの中でも、経済的困窮ということはもちろんですが、人間関係の困窮ですね、人間関係の困窮イコール社会的孤立ということが本人たちをますます追い込んで、本当に自分から助けてと言えない社会にしているんではないかということを議論してまいりました。そういう意味でも、今回の定義が明確になったことというのは大変良かったというふうに思っております。
最近、イギリスでは孤独担当大臣というのができたようにお聞きしています。何かOECDの調査では、日本が孤立しているというのは、家族以外の人と話し相手がないというのが一五・三%ということで、断トツOECDの中で一位。それで、イギリスは五%ですが、五%で年間五兆円ぐらいの経済損失があるというふうに言われています。GDPが日本はイギリスの倍ですので、そして孤立率が三倍ですから、単純に考えると三十兆円ぐらいの損失があるんではないかというふうにも思います。
そういう意味でも、孤立の問題にどう立ち向かっていくかということについては大きな課題だというふうに思っています。
二点目です。今回の自立相談支援事業の利用勧奨の努力義務という、いわゆる高齢者、障害者、様々な機関でつながった人が困窮状態にあれば早く自立相談支援機関につなぎましょうという、こういう努力義務ができたことはとても有り難いと思います。
一昨日、私たちの町で子供食堂がありました。新高校一年生になった女子の学生さんがボランティアとして参加してくれました。彼女は一年半前、私たちの前に現れたときは、お昼御飯の時間になりますと、お弁当がないので廊下に出て、どうしたんだと聞かれると、おなかすいていないと言っていた彼女です。その子が、先生が何度も何度も質問する中でどうもおかしいというふうに気付かれて、私たち相談支援機関につないでくださいました。彼女はそれから、進学も諦めていましたが、学習支援そして子供食堂に来ることを通じて進学がかない、地域の皆さんがそのときに、合格したときお赤飯を炊いてくれたりというふうな、そういう地域の大人、家族以外の大人に支えられて、今、今度は支え手に変わり、ボランティアとして活動しています。
一方、同じような課題でも、八〇五〇、三十年間引きこもっていた息子さんを抱えた八十歳のお父さんからの御相談があって、どうして今まで御相談されなかったのですかということをお聞きしますと、彼は、どこに相談していいか分からなかった、小学校は行けた、中学校の途中から不登校になった、高校は単位制で三日でやめた、そこからはどこにもつながらなかったというふうにおっしゃっています。
もしその御家族が高校中退の際にこういう相談機関のようなところにしっかりつながっていれば彼の三十年の人生は全く違ったものになっていたのではないかというふうに考えますと、こういう早期発見というのがどんなふうにできるかということ、これはとても重要なことですし、大抵の方々が何らかの相談に一度は行っています。でも、そこで自分のところの対応ではないということで帰されたことから、もうどこにも頼ることができないというふうに諦めてしまっています。
そこで、私たち自立相談支援機関は、断らない福祉ということを目指し、どこからもこぼれてきた人、どこにもつながらなかった人たちも全て受け止めるということを趣旨として頑張っていくということを目指していますが、断らないということを決めれば、出口を何とかつくる必要があります。その出口には、住民の中で子供食堂をつくってみたり、また学習支援の場をつくったり、それから、お金がないよということであればフードバンクをつくったり、そして小口の小さな貸付金をつくったりということを、各自治体の相談機関が様々この二年で生み出してまいっております。早期発見の入口と出口をどうつくっていくか、この事業のとても要になることだと思っています。
ただ、この要になる仕事をします専門職の力量が非常にこの事業は問われます。どういう力量でそういう人たちを諦めないで支え切るかという、こういうところが重要なんですが、我々の業界では、実はこういう冗談のようなことがあるんですけれども、三月までは相談員で四月になると対象者に変わる。相談員自体が非正規の人たちが大変多いという現状です。こういう相談者の待遇改善、それから研修体制、これをしっかりできることが重要ということで、この度の改正の中では都道府県レベルでそういうケアする人たちをケアしていけるような体制をしっかりつくっていくということを明記されたことが重要だなというふうに思っています。
四点目です。
実は、私どももいろいろメディアで取り上げていただく機会が多くあります。そうしますと、全国の福祉事務所のない自治体の皆さん方がいろいろと御相談に来られます。電話が掛かったりメールが来たりということがあります。福祉事務所のない自治体は生活困窮者自立支援事業の窓口を持っていません。都道府県などが代わりに実施をするということになっていますので、そういう名前での相談窓口を、実質的には受けておられますけれども、明記されていないということで、私たちの町にはそういう窓口がないというふうな御相談が入ってきたり、あるいは片道車で何時間も掛かって相談窓口まで行かないといけないということになりますと、本当に困窮している人が一日パートを休んでそこまで行くことというのはなかなかできないということになりますので、この度の町村でしっかり窓口ができることの重要性、そして、できれば全ての相談機関がアウトリーチという形で訪問していただきたいなというふうに切に願っております。
最後に、家計支援というのがこの度一体的に、就労支援と家計支援を一体的に行っていくと。これまでは任意事業ということで、やってもやらなくても、それぞれ自治体任せですよということを話していただいておったわけですが、ちょっと今日の資料の中の、お手元の、どの辺かというのは言いにくいんですが、生活困窮者の対象というこのクロスの資料を御覧いただきたいと思います。
一体、生活困窮者というのはどういう人ですかということをよく聞かれておりました。縦軸が緊急度が高い人、低い人、横軸が就労までの距離が遠い人、近い人ということで、このページちょっとお開きいただけますか、真ん中ぐらいなんですけど、ABCDと書いたページです。済みません、ページ数がちょっと打ってなくて、申し訳ないです。
緊急度が高くて就労までの距離が遠い人というのは、高齢者とか障害がある方で、比較的生活保護にすぐつながっていくような方々になります。
緊急度が高くて、現在働いているのにお金の収支が合わない、こういう方。ギャンブル依存であったり多重債務があったり、例えば、一日単位でのお金の計算はできるんですけれども、一か月単位になるとうまくいかない。あるいは、年金が二か月単位でお金が来ると、偶数月の月初めになると必ずお金が足りなくなってしまう。こういう方々は緊急度が高い、今働いているけれどもなかなか生活ができないという、家計支援が必要な方々になります。
こういう家計支援が必要な方々をしっかりと、管理するのではなく、その人がうまく生活が回せるように伴走していくような体制をつくることで多くの人たちがうまく生活が回せるようになっているという事例がたくさん出てきております。そういう意味では、今回の生活困窮者自立支援事業にこの家計支援をしっかりとセットアップしていくと、こういう形ができることが非常に効果が上がるのではないかなというふうに感じております。
最後ですが、生活困窮者自立支援事業、この二年の間に、制度のはざまでこれまでSOS上げられなかった人たちを、私たちの町ではローラー作戦のような形で多く救うことができました。地域から排除されている。ライフラインが止まっています、どうにもなりませんという八十代の女性。実は、生活困窮だということで、みんなですぐに食材を持っておうちの方に運ばせていただきましたが、実は通帳の中にはお金がありました。自分でお金を下ろすことができなくなっていました。こんな方々は御自身でSOSを出すことはなかなかできません。
こんな方々を地域の皆さんの優しい目でどうやって救っていくか、こういう地域づくりをしっかりとやっていくこの事業、とても重要だというふうに考えておりますので、今回の改正、是非、御審議いただき、前向きな議論をいただけると有り難いなというふうに思います。
以上です。ありがとうございました。