奥田知志の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(奥田知志君) 皆さん、こんにちは。私は、NPO法人抱樸理事長の奥田知志と申します。
 当法人は、一九八八年から、ホームレス支援を最初に皮切りとして、今年でちょうど三十年の活動になります。現在では、ホームレス、生活困窮、あるいは子供、刑務所出所者、十七部署にわたるNPOとしてはちょっと大きなNPOの活動になっています。
 これまで、ホームレスの方々でいうと、自立された方は三千人を超えました。半年間の自立プログラムで九三%が自立されます。うち、五八%は就労自立であります。生活の継続率も、地域で九割の方々が生活を継続しているという実績です。
 抱樸の特徴は、私たちの活動の特徴は、制度外というのが一つの特徴です。私は、制度が不要だということを言っているわけではありません。この国の制度は個々それぞれ高い専門性がある、そのことは本当にそうだと思います。しかし、若干、なぜか私は、人以上に制度が優先されていく、あるいは制度の枠組みがお断りをする理由になっている、そんなところがやはり出てきたのではないかと、そう思っています。
 しかし、あらゆる制度においても、結局のところ大切なのは、人を大事にできるかということ、人そのものの問題です。
 では、その人とは一体何か。それは、総合的で多様だということです。そのような人を支援するときに、一つの制度や枠組み、分野にとどまっていては、なかなかうまくいかない。例えば、ホームレスというのは一般に家がない人を指しますが、しかし実際にはそう単純ではありません。
 今日、私がお持ちいたしました資料の一を御覧ください。最初のページです。これは、私たちが関わったホームレスの中から五十人の人を無作為に選んで、その要因を調べたものです。生育環境の問題や知的障害、低学歴、不安定就労、多重債務、依存症、犯歴、様々な問題が混在しています。特に、未婚が四割、相談できる知人がいなかった若しくは相談できる親族がいない、特に相談できる人がいなかったは九割を超えています。まあ一言で言うと、孤立ということが非常に大きな要因となります。さらに、生活保護だとか障害手帳など、制度利用がなかった人が五割という結果が出ているんですが、逆に言うと五割は制度につながっていたということです。一言で言うと、制度だけではホームレス化が止められなかった。何が足らないか。やはりそこには人がいなかったという、そのことが大きいと思います。
 ここから見えてくる第一の課題は、一人の人の中に複合的な困難が存在しているということ。第二の課題は、孤立しているということ。第三の課題は、制度や給付だけでは駄目だということです。
 ホームレス支援といいますけれども、ホームレスという人は実際にはいません。山田さんとか田中さんとか、名前の付いた個人がそこには存在するわけでありまして、私たちは人を属性で見ない、人を制度に当てはめて事を始めるという、そういうやり方はしない、個別型のパーソナルなサポートをどうするかと、これが三十年の柱になってきた考え方です。そのような活動の中から、今回の生活困窮者自立支援制度というものについて、私は、割とざくっとした話になってしまいますが、三つのポイント、重点をお話ししたいと思います。
 第一のポイントは、この制度が経済的困窮のみならず、社会的孤立に注目しているということです。
 私たちは、活動の当初から、野宿者に対する支援でありましたけれども、ハウスとホームは違うという、そういう概念に立ってきました。ハウスレスは、家に象徴される経済的困窮、家がない、仕事がない、お金がない、こういうものをハウスレス、経済的困窮と呼んできました。就労支援等、居宅設置して、アパートに入られる。野宿時代とはもう隔世の感があります。お訪ねすると、本当にもう身ぎれいにされていて、就労の方に向かっておられる。本当によかったなと思うんですね。しかし、帰り際、部屋の中に一人ぽつんと座っていらっしゃる姿が、駅の通路でぽつんと一人座っていた日の姿と何が違うんだろうかというのが、実は活動の当初から問われました。自立が孤立に終わっているんじゃないかと、このことが大きな問題でした。畳の上で死にたいと路上で語っていた方が、アパートに入ってこれで安心とはなかなかならない。俺の最期は誰がみとってくれるだろうかという、そういう問題が次に起こります。すなわち、ホームと呼べる家族や知人がいない。彼らはハウスレスであり、ホームレスの状態でありました。
 このハウスを経済的困窮、ホームを社会的孤立という、この二つを同時に解決できる仕組みが必要だとずっと考えてきました。しかも、この両者は相互に連鎖していると私たちは考えています。
 まずは、お金がないということが社会的孤立を進める。まあこれは分かりやすいですね。お金がないと、進学や結婚、ネットを含めた情報取得ができない。社会参加に支障が出ます。経済的困窮が社会的孤立を促進する。金の切れ目が縁の切れ目とよく言ったものです。
 一方、見落とされがちなのは、その逆です。社会的孤立が経済的困窮を生むということです。なぜならば、人は何のために働くかとよく言うんですけれども、実際のところは、人は誰のために働くかというのが実は労働の大きな動機になるからです。他者との関係がなくなることによって生きる意味や労働意欲がなくなるというのは事実です。離婚や家族との離別をホームレスになった理由に掲げている人は少なくありません。縁の切れ目が金の切れ目というわけです。経済的困窮と社会的孤立は相互に連鎖していきます。
 今回の改正案において、尊厳や孤立、連携という言葉が明示されました。これはとってもよかったと思います。第三条の定義においても、関係性が困窮の要因だということが加筆されました。これは重要です。今後、孤立の問題は更に大きくなると思います。
 しかし、課題もあります。この法律ができたときにやはり大きな背景にあったのは、生活保護のその他世帯の増加だったと思います。ですから、どうしても就労や増収が事業評価の柱になっていくという傾向がある。この孤立の問題をやはり重点に置くとするならば、就労、増収も大事なんですけれども、この孤立に対しての評価軸というのはどこに置くかというのは大事です。
 第二のポイントとしては、断らない相談ということを掲げたことです。
 生活困窮とは一体何か。先ほど勝部さんの発言にもありましたけれども、生活困窮者とは誰かと、大分議論になりました、最初の頃。
 改正案では、生活困窮とは、就労の状況や心身の状況、地域社会との関係その他の事情により、現に経済的に困窮しという一連の最初の法案の言葉が続きます。しかし、これは大分私は補充されてよかったと思うんですけれども、正直、だから誰というのが正直なところです。しかし、私は、この曖昧さがこの法案の重要さだと思います。
 従来の制度は対象者を限定してきました。縦割りの制度が対象者を明確化する中で、一方で、それが断る理由となってきました。あるいは制度のはざまというものを生み出してきた。一方、今回のこの制度の持つ豊かな曖昧さというものは断る理由を放棄したという、それがこの制度の一つの特徴だと思います。曖昧さこそが断る理由を失ったという根拠であります。
 資料の二を御覧ください。次のページですね。
 困窮、孤立に加えてほかにも様々な問題があるわけです。これを大きくくくったものが困窮概念でありまして、どれというふうに限定しないということですね。
 断らないということになると、従来の問題解決型の思考では全部解決するのは無理だと。だから引き受けないということにもなりかねない。問題解決は大事です。しかし、一方で、社会的孤立に注目したわけですから、私は、ともかくつながることに意味があるとまず言うべきだと。つまり、この制度においては相談そのものが支援なのだ、これが今回のこの制度が切り開いた大きな支援論の新しい地平だったと思います。第二の危機、第三の危機が起こる不安定な時代になっています。例えば非正規雇用が増加している。一回問題が解決しても、第二、第三の危機が起こるということです。
 次の資料を見てください。
 生活保護が最後のセーフティーネットと言われてきました。私はそうかなと正直思うんです。例えば、ある市においては、年間三千人が生活保護申請をし、千人が受給します。じゃ、残り二千人はどうなったんですかね。最後のセーフティーネットに掛からなかった二千人を引き受けるのは誰なんでしょうか。やはり、その生活保護制度の更に下に困窮者制度があって、漏らさない、断らない、全てを受けると、この覚悟が決まったのが今回の制度、断らないという意味だったと思います。
 課題もあります。社会的孤立とは何かということ自体の検討が必要です。社会的孤立のリスク、経済的損失、それをどう測るのか、あるいは伴走を軸とした支援理念の構築や人材育成も必要です。
 第三のポイントは居住支援の強化です。
 今回の改正において、一時生活支援事業が強化され、地域における訪問や見守りが始まります。一時生活支援事業はホームレス自立支援法から引き継がれた事業でありますので、さきに述べたとおり、多様な問題を持っているホームレス者に対する対応ということは、範疇を選ばなかったということが特徴です。
 その中で、各地にありますホームレス自立支援センターは、センターの中に、アウトリーチ機能、自立相談、就労支援、居住、地域移行、生活保護利用など、もう様々な機能を持っています。ある意味、この生活困窮者制度の総合性を体現しているのが自立支援センターであります。にもかかわらず、センター利用がホームレスに限られているというのはこれはもったいない。ここで縦割りを生んでどうするんだと。これだけ多機能なものをやはり全ての人に開放していくというセンターの多機能化ということが私は更に必要だと思っております。
 資料の四は、自立支援センターの費用対効果です。
 センター利用しないでもし生活保護になった場合、どのようなことになったかというのをセンター利用者との対比で費用対効果を出しました。費用対効果が出るのは明らかでありました。ですので、私は、生活保護が必要な人には当然生活保護なんですけれども、その上でセンターの利用というものがこれから非常に重要になるというふうに考えています。
 最後に、貧困ビジネスの対策と単独居住が困難な人に向けた日常生活支援居住施設の創設、これ私は非常に歓迎すべきことだと思っております。そもそも貧困ビジネスで議論になった無料低額宿泊所は、廉価な居住であって、支援の概念がありませんでした。今回、そこに支援をちゃんと付けるということで、国もこれをサポートするということになります。
 ですから、私はかつてから、こういう民間型の生活支援施設にきちんとしたサポートをするべきだ、制度化するべきだ、高度な技術を持っている一種施設と無低である二種施設、この間の一・五種が必要だと、そんなむちゃくちゃなことを言ってきました。ある意味、今回は、私はその願いがかなったというふうに考えております。
 悪徳なところはきちんと規制すべきです。しかし、いいところはちゃんとサポートしていくというのが大事です。しかし、課題は日常生活支援ということの中身です。現場を踏まえた会議の場が必要です。生活支援に関する委託費の試算はどうするのか。サービス内容の実情を踏まえた額であるべきです。規制の中で住宅扶助費の減額等が議論されていますが、減額された同額を生活費として回すというようなことでは何の解決にもなりません。
 更に大きな問題は、今回のこの施設が、いい施設なんですが、やはり縦割りだということです。なぜか。対象者は生活保護受給者に限られているということです。今後、誰でも入れて、個人にサービスが付いていくような、そういう施設が必要です。そのような施設を、入口を、誰にそのサービスが必要かということを決めていくのは、対象者を絞り込まない生活困窮者自立支援というこの枠組みは非常に有効だと考えております。
 一つ付け足しですが、この間、これらの事業の中で価格競争入札がされているということをよく耳にします。福祉を安売りしてはいけません。私は価格競争入札は禁止すべきだと思います。
 最後に、私は生活困窮者自立支援法が成立したときの感動を今も忘れていません。自己責任論が吹き荒れる中で、絶対に断らない、あなたを一人にしないと私たちは約束した。それは、社会が無化する中でもう一度社会を取り戻す挑戦だったと私は信じます。この改正案は、与党も野党もなく、早期に成立されることを真に望みます。
 以上です。

発言情報

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発言者: 奥田知志

speaker_id: 15213

日付: 2018-05-24

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会