尾藤廣喜の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(尾藤廣喜君) 弁護士の尾藤と申します。
 私は、現在、一九九五年、平成七年の十月に設立されました、生活保護の裁判を担当している弁護士等がお互いに協力するためにつくった団体であります全国生活保護裁判連絡会の代表委員をやっております。それから、生活保護を始め社会保障を良くするための運動団体であります生活保護問題対策全国会議の代表幹事をやっておりまして、日本弁護士連合会では貧困問題対策本部の副本部長を拝命いたしております。
 それから、これは過去の経歴になりますけれども、一九七〇年の四月に厚生省に入省いたしまして、一年半保険局の企画課において医療保険を担当し、その後、一九七一年十月から社会局の保護課で生活保護を担当した経験を持っております。
 今回、生活困窮者自立支援法等の一部改正法案の審議に当たり、生活保護法に関連する問題について意見を述べさせていただきたいと思います。
 一番本当は大きな問題は、この法案の中身には入っていないわけですけれども、厚生労働省が今年の十月から三年間で平均一・八%、最大五%の基準引下げを予定しているということでございます。
 この問題については、私の方でお配りをしています資料で少し図になったものがございますが、資料の三枚目でございますけど、日弁連で作りました図でございますけれども、このように、二〇〇四年から今回の引下げに至るまで、実は次から次へと引下げが行われている。先ほど岩永参考人も言われましたけれども、ここずっと引下げが続いているということでございます。夫婦二人世帯でいいますと一〇・九%の引下げ、それから、老齢加算が引下げ、削除されました二〇〇四年からいいますと、単身の高齢世帯については実に二四・五%も引き下げられているという実態があるわけです。これが一番私としては問題ではないかというふうに思います。
 今回の引下げの一番の問題点は、実は、そこの資料にありますけれども、所得の下位一〇%の層との比較、均衡で基準を決めているということでございます。先ほど岩永参考人も話ありましたけれども、水準均衡方式というのは少しずつ変わってまいりまして、今回のやり方というのは本来の当初の水準均衡方式とははるかに離れた問題になっています。
 下位の一〇%の層と比べるということになりますと、日本で、先ほど議論になっています、生活保護を本来利用できるはずの人で利用している割合が大体二〇%を切るんじゃないかというふうに言われておりますので、本来ですと、生活保護を受けている世帯の層の基準と生活保護世帯の状況を比べてみるということになるわけで、言わば低い層同士で比べてみる。本来であれば生活保護を受けられた層と比較をするということになってしまうわけでありまして、そこが一番の問題ではないか、これでは際限なく下がっていくんではないかということであります。
 それからもう一つは、実は二〇一三年の引下げのときは一般の低所得世帯の消費水準と生活保護基準の比較をしただけではなくて、当時の審議をされていました部会の結論とは別に、デフレによって物価が下がっているんだということで厚労省の独自のCPI、つまり消費者物価指数を用いまして引下げを行ったということがあります。それで最大で一〇%、平均六・五%と引下げがなされたわけですけれども、ところが、今回は不思議なことに、本来、物価の変動を考えますと、基準部会に出された資料によると、上がるはずのところが、それが全く検討されずに、結論的にその部分は全く使われずにこういう結論になっていると。いささか方針というか計算式に一貫性を欠くのではないかというふうに思っております。基準の問題で申し上げますと、それが一番大きい問題ではないかなというふうに思っております。
 それから次に、生活保護法の改正案の関係で、私どもが所属しております日弁連では、これも私が配っておりますけれども、資料で後ろの方に法六十三条に関する非免責債権化と天引き徴収についてこれに反対をするという意見を、会長名、日弁連として意見書を出させていただきました。私も同意見であります。
 ここで少しちょっと技術的になってしまうんですけれども、今回の改正案は、法六十三条、つまり生活保護費を受け取り過ぎた場合の調整、不当利得という、法律的に言うと不当利得なんですけど、受け取り過ぎた場合の調整の問題と七十八条の債権、これはいわゆる不正受給、不法行為によって取った債権ということになりますけれども、その両者を一緒に取り扱おうということでございます。この点につきましては、法の六十三条の性格というものをもう少し考えなければならないんじゃないかなと思うわけです。
 先ほど申しましたけれども、私が厚生省におりまして生活保護を担当していた時期に、ちょうど私の資料に出しておりますけれども、通達、後ろの方に裁判例、裁決例、通知の内容ということで表にしておりますが、昭和四十七年の十二月五日に通達をお出ししました。この通達はくしくも私が起案をして、当時の係長であります河出英治、後に総務省の事務次官になられました河出さん、それから厚生労働省でその人ありと知られる中野課長と三人で法制局と協議した上で出した通達でございますが、この考え方は、法の六十三条というのは、まず債権として確実になったときから返還の対象とするということ。それから、何としても自立の助長ということを考えなければいけない。自立の助長を考えて六十三条の返還を定めなければならないということを基本的な考え方として、これ法制局と協議して通達で出させていただいたわけです。これは、生活保護を受けている人たちが、例えばお金が入った場合にこれを全額収入認定してしまえば今後の自立に対するスプリングボードがなくなるわけですね。多額入った場合にはそれを収入認定せずにゼロ円決定、六十三条の返還を求めずに保護を廃止、つまり自立してもらうという機能も持たせるということでありまして、ある意味で自立の助長というのは非常に重要な問題なわけです。
 ところが、今回の場合には、その六十三条、つまり、目的も違うし債権の性格も違うものを七十八条と同じ形で破産した場合も非免責債権にすると、それから天引き徴収を可能にするということになっておりますので、これはちょっといかがかというふうに思います。日弁連の意見書にあるとおりでございます。
 むしろ六十三条の返還の決定に当たっては、私どもが当初出しました通達のように、自立のために必要な経費を控除できるということを御存じない利用者の方もいらっしゃいますから、それも控除できるんだということで自立の手助けをしながら、そして控除額を決定すべきではないかというふうに思います。そういう判決はたくさん出ておりますので、その判決も出しておきました。
 それからもう一つ申し上げたいのは、ジェネリック、後発医薬品に対する給付を原則とするということの問題でございます。
 前回の法改正では、ジェネリックについて、可能な限りその給付を行うよう努めるものとすると、まあ努力目標であったわけですけれども、今回は原則として後発医薬品によりその給付を行うものという形になって、原則規定としたわけですね。
 御承知のとおり、一九八一年の世界医師会総会で、患者の権利に関するリスボン宣言がございまして、医療についての自己決定権が非常に重要であると。それから、国際人権規約の十二条では、到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利というものが認められているわけです。
 こういうふうに、国際人権規約とかリスボン宣言という前に、私が担当していたときの医療に対する考え方ですけれども、健康保険の給付と生活保護の給付というものは全く同じにすべきであるという考え方で貫いていました。つまり、命と健康はお金のあるなしにかかわらず平等なんだというのが一つの哲学だったわけですね。今回はこの考え方を根本的に崩すものであるので、これは日本の医療保障、特に貧困者に対する医療保障については重大な問題ではないかというふうに思っております。
 それから最後にもう一つ申し上げますが、今回の改正案で大学進学のための費用の支給制度が認められたというのは非常に大きな一歩であるというふうに思います。しかし、率直に申し上げてそれだけでは不十分でございまして、大学に進学した場合に、その方は世帯を分離されて、生活保護費の支給はされない。つまり、大学の進学の費用と自分の費用というものを賄わないと大学に行けないという状況になっているわけでございますので、やっぱりそういう形の保障を是非とも検討していただきたい。今回無理であれば、厚労省が生活保護世帯出身の大学生の生活実態全国調査をされて、そのデータが既に三月頃に届いていると聞いておりますので、その内容もしっかり分析していただいた上で、何が大学進学のために必要なのか、これで十分なのかどうなのかということをしっかり検討していただきたいというふうに思います。
 私が申し上げたいことは、生活保護制度というのは市民の岩盤、いざというときにどういう給付がなされるかということで、岩盤を支える非常に重要な制度でございます。若い人も、高齢の方も、障害のある人も含めて、いざというときに生活保護の利用ができるということが本当の意味で希望を支えるという制度でございますので、その点を十分理解していただきまして、いい制度にしていただきたいと。
 先ほど岩永参考人も言われましたけれども、今回の改正案では、残念ながら、そういう根本的な改善、制度の改正、例えば資産の保有の問題、先ほどの預貯金の問題をどうするのか、自動車の保有の問題をどうするのかという問題とか、あるいは先進諸国の中で一番厳しいと言われておる扶養の問題をどうするのか。あるいは生活保護法という名前でいいのか。お隣の韓国では国民生活基礎保障法というように名前を変えていますですね。ドイツでは、社会扶助という言葉では受けにくいでしょうからということで、稼働年齢層が受けやすいように、失業手当Ⅱ、第二の失業手当という形で名前を変えておられます。もっともっと受けやすいような形にすべきだと思いますし、生活保護がなかなか理解されていない状況の中で、きちっと申請すれば利用できるんだということをもっともっと広める必要があるのではないかということでございます。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 尾藤廣喜

speaker_id: 10259

日付: 2018-05-24

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会