尾藤廣喜の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(尾藤廣喜君) ありがとうございます。
第一点でございますが、生活保護世帯について医療費の一部負担を導入したらどうかという御意見があるというふうにお伺いしていますけれども、私は率直に申し上げて、それは憲法に違反していると思います。なぜかというと、生活保護基準を決めるときに医療費は計算に入っていないわけでございますので、自己負担を強いるということになれば計算に入っていないものをあえて負担するということになります。
償還払いにするということになると、一定の期日後に入るわけですので、その間は最低生活を下回っている生活を強いることになるわけですね。だから、その間は最低生活を保障していないということになるわけですから、たとえ一円であろうが十円であろうが自己負担を強いるということになりますと、これは憲法二十五条に違反して、最低生活の計算上、私は憲法に違反しているというふうに考えます。法的に言うとですね。
それからもう一つは、やっぱり制度を運用し、あるいは新しく変えようというときは、きちっとした事実に基づいてやらなきゃいけないと思うんですけれども、先ほども少し申し上げましたけれども、西成区の医療が非常に問題になっていると。あそこの状況をどうするかということで、当時、橋下市長が西成区を特別扱いにしましょうと。特に、あそこにいろんな形で集中をすることによって西成区というものを底上げしようという発想で、西成特区構想を二〇一二年に検討されたわけですけれども、そのときに、西成における医療扶助を受給している方についての外来の調査、医療費の分析をされたことがございます。それはデータとして既に報告されておりますけれども、橋下市長が御心配になっていたような結果ではなくて、結局、生活保護を利用している方と一般の方との差はそれほどないと、外来の関係ではそれほどないということが出ておりますので、そういう点からも、自己負担がないから過剰診療になっているとか、あるいは乱診乱療が起きるという状況にはなっていないということで、データに基づいて議論をすべきだというふうに思います。
それから、少し時間いただきましたので、余計なことかもしれませんけれども、私、日弁連の一員としてイタリアに調査に行きました。これ、イタリアに調査に行ったというのは、イタリアは、財政事情非常に厳しいですけれども、医療費は全て無料なんですね。
なぜそういう形になっているのかという実態を調査に行ったわけですけれども、担当の健康省の保健局のフランチェスコ・ベーベレという局長さんとお会いをして、なぜイタリアは医療費が財政状況厳しい中で無料になっているんですかというふうにお聞きしましたところ、医療と受益者負担とは本質的に矛盾すると。つまり、医療費が負担できない貧困層こそ医療が必要になってくるわけだから、そういう受益を非常に多くなっている人に負担を求めるということになると、結局、お金のある方は医療にアクセスできるけれども、お金のない方は医療にアクセスできないということになるんだということを言われました。
私は、あえて、そうおっしゃるけれども、乱診乱療の問題とか、自己負担を増やすことによって医療費の無駄な支出というのを抑えるという考え方は取れないんですかと、こういうことを、私の考えとは違いますが、あえて御質問申し上げましたら、鼻でせせら笑われました。
その理由は、自己負担増で受診抑制しようとするのは無能な行政官のやることであると。つまり、その結果どうなるかというと、貧困層が医療から遠ざかるということになるので、自己負担によって受診抑制とかあるいは医療費を抑制するという考え方は、それはある意味で簡単かもしれないけれども、長い年月の中に、国民の健康という面からすると、非常に大きな負担と後退をもたらすことになると。そういうことよりも、自己負担の問題ではなくて、どういう医療があるべきなのかということを国民的に問う。例えば、先ほどの入院ですと、入院の在り方としてどうなのかということを問う。国民の自己決定というのを大事にしながら合意形成をしていく努力をすることこそが行政官の役割で、安易に自己負担によって医療の規制をするべきではないというのがお答えでした。私、感激しました。
その考え方からすれば、生活保護受給者について、自己負担を強いることによって医療から遠ざけるということになりますと、これは明らかに生活保護受給層が医療を受けられないという事態を招くことになりますので、私は、法的な面からしても実態からしても、あるいは諸外国の例からしても、全く反対でございます。
以上です。