諸富徹の発言 (資源エネルギーに関する調査会)

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○参考人(諸富徹君) 京都大学の諸富でございます。よろしくお願いいたします。
 私の方からは、再生可能エネルギーの現状と課題と題してお話をさせていただきたいと思います。このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。(資料映写)
 さて、最初ですけれども、私、実は欧州に調査に行ってまいりまして、その話から始めさせていただきたいと思いますが、これ、今スライドに示しておりますように、ノルウェー、それからデンマーク、ドイツ、これらはいずれも再生可能エネルギーの比率がかなり高い国々でありまして、一〇〇%、六〇%、そして三五%という形でかなり大きな比率になっております。
 これらの国々を調査して回って非常に印象的だった一つは、再生可能エネルギーを大量に導入するに当たって非常に大事なことは、系統全体で言わばのみ込む、再生可能エネルギーは確かに変動電源ではございますが、これを系統でのみ込む、つまり電力融通を広域で積極的に行うことを通じて再生可能エネルギーの大量導入を可能にしているということであります。
 それから、もう一つ大変印象的でしたのは、送電会社ですけれども、発送電分離後、日本も二〇年に予定されておりますけれども、以前は再生可能エネルギーに対して非常に消極的ではあったんですけれども、送電会社として自立いたしますと、やっぱり自らの収入を最大化していく上でも再生可能エネルギーを積極的に受け入れて、そしてそれを、送電サービスを実施していくことによって収入を最大化していこうという行動に変わってきているということであります。
 そして、以前は自社の中で電力需給を一致させるようにしていたんですけれども、それよりは、やはりドイツ全土でやる方がより効率的でありますし、それから、現在はさらにENTSO―Eというプロジェクトが動いておりまして、全欧州的な送電会社のネットワーク化、そして系統建設、汎欧州的な電力やり取りをするための系統建設、それからコード、共通コードですね、電力をやり取りするための共通コードのルール形成、こういったところへ突き進んでいるということは非常に印象的でございました。
 ただ一方で、再生可能エネルギーがこれだけ入ってきますと、系統による負荷も掛かってまいります。具体的には系統混雑それからループフローという形でして、ドイツの南に電気を送るために、実はドイツの系統容量がいっぱいになってきておりまして、東欧だとかベルギー、フランスをぐるっと迂回して南ドイツに電気を送るというようなことが起きていて、他国からやはり批判をされているというようなこともございます。こういった辺りから、現在、次のスライドにございますような形で、系統建設を南北でどうやって進めていくかというのがドイツの一大課題になっております。
 こういった課題もありますが、非常にあと印象的だったのは、発送電分離後の送電網については、やはり公益性、公共性、中立性、そしてさらに透明性といったところがキーワードになりまして、既存の電源と新規参入する新しい再エネ電源との機会競争の均等化ということがかなりきっちりとルール化されているということも非常によく分かりました。
 このようなことを見た上で、日本の現在の再エネの課題ということですけれども、一つは、山地先生からも御指摘のあった費用の膨張問題ということが確かにございます。こちらにございますように、再エネというのは、FITが導入以降、大変な勢いで伸びてきている。これは大変すばらしいことでございますが、一方で、このような、スライドにございますように、買取り費用がどんどんと膨らんできている。これは、再エネの増大に伴って必然的に起きてくることではございます。ただ、これをどうしていくかということは大きな課題になっています。ただ、それに伴って急速に再エネの買取り価格については引き下げられてきております。
 他方で、これも山地先生から御説明のあったところですけれども、今、やはり再エネ事業にとって最大の課題は系統容量の制約の問題でございます。公開データにこういうふうにありますように、次々と電力会社において系統容量がもうゼロであると。ここに、例えば事例で赤でくくってあるようなところは系統容量がもうゼロになっていくということを示しているわけですが、こういったところから、接続したくても接続を電力会社に断られる、あるいは接続が可能であるとしても系統増強が必要であり、そのために相当な金額の負担金を求められて、それを負担すると全く事業採算性が見通しが立たなくなってしまうというような事例が相次いでおります。
 私が支援しておりました長野県の飯田市のいわゆる限界集落における小水力発電事業につきましても、ほぼ詳細設計まで来たところで中部電力とやはり接続の協議を行いましたところ、駄目だと、接続できない、系統容量がもういっぱいだというふうに言われまして、仮に設備増強をやる場合には十九億円が必要であると言われました。しかも、その工事に七年間掛かるので接続できるのは八年目からであるということを言われて、ほぼもう事業としては絶望的な状況に陥っているわけでございます。こういったことが全国各地で起きてきております。
 この系統容量ゼロ問題をどう考えるかということなんですけれども、実は私たち京都大学では、京都大学再生可能エネルギー経済学講座という講座を設けておりまして、そこでこの容量問題について調査研究をしようということでやっております。特に、特任教授の安田陽教授を中心に調査をしてまいりました。
 その結果、ちょっと、こちらは公開情報ですけれども、実は空き容量がある、つまり表ではゼロというふうに言っているんですが、実際には空き容量があるということが分かってまいりました。
 例えば、調査対象となった東北電力の系統を図に示しております。例えばここの十和田幹線というところを一つ事例に取ってみましても、ブルーで真ん中の方に線のように書いてあります、これが実際に使っている容量でございまして、空き容量という形で赤で示しているところは実際には利用されていないことを示しております。次のスライドでは大体利用率が何%なのかということを算出しておりますけれども、それで、最大でも一八・二%、一桁のケースも多いということになっております。北海道に関しても調査しましたところ、ほぼ同じような結果が出てまいりました。
 というわけで、実は、系統の容量いっぱいで、もはや再生可能エネルギーの受け入れる余地はないということで全国の再生可能エネ事業者が諦めてきている状況だったわけですけれども、実はそうではないということが判明してまいりました。
 これについては、実は先月末、大きなシンポジウムを東京の大手町で行いましたところ、立ち見の出る盛況でございまして、そこで資源エネルギー庁の新エネ課の山崎課長にも御登壇いただきましたし、それから東北電力、東京電力からも系統の責任者の方々に御登壇をいただきました。その中で議論した結果、やはり何らかの形で解決の方策を見出していく必要があるということでほぼ一致をできたかと思います。その中で、山地先生も御指摘になった日本版コネクト・アンド・マネージというような方向性、これは議論が出てきたことは大変私たちも高く評価をさせていただきたいと思っております。
 また、これまでなぜこのような問題が起きてきたかの根本原因には、先着優先のルールということで、長期的には十年先まで系統を押さえることができるというルールですね。実際には当日使わないことがあっても系統を押さえることができる、こういったルール、系統利用の在り方自体を見直していくこと、これがまず非常に大事なポイントだというふうに思います。
 それからもう一つ、系統増強というふうに書きましたが、それでその系統が、まず日本の状況というのは、ドイツとは異なって、既に空いていることが判明してきた系統をうまく使うことでかなり再生可能エネルギーが入るというふうに思います。
 ただ、それでもいっぱいになってきた場合には、増強投資というものが必要になります。増強投資になった場合に次に問題になってくるのは、その費用負担の在り方でございます。現在のところ、既に先ほど事例のケースで申しましたように、主として再生可能エネルギーが入ってくることに伴って系統の増強工事が必要になった場合は、その費用負担はかなりの程度を再生可能エネルギー事業者の方に負担を求められてくることになります。
 ところが、例えばドイツを中心とする欧州におきましては、一旦送電会社が負担をいたしまして、これは受益者負担ルールと呼ばれておりますけれども、電力の利用者が広く薄く負担をしていく、つまり電力料金に転嫁をされていくということになります。こうすることによって、新規で系統に入ってくる、新たに電気事業に参入してくる事業者と既存事業者の間での費用負担の公平性が図られる、そして競争促進的になるという利点がございます。
 そういう意味で、系統というものをどういうふうにこれから考えていくか、送電網をどのようにして考えていくかということは、これからの電力システム、日本における電力システムの在り方を考える上で決定的に重要なポイントだというふうに考えます。
 電力システム改革が進展しておりますけれども、今お示ししています図にございますように、送電部門、以前、これまでは、あるいは現在も、上にあります電源、発電部門、それから送電部門、配電部門、そして一番下に小売、需要家というふうになっていくわけですけれども、これらが今までは電力会社の中で発電、送電、配電、小売、一体化していたわけですけれども、電力システム改革の精神というのは、このうち送電部門を切り出しまして分離した上で中立化を図っていくということだというふうに思います。
 その意味では、既存電源、ピンクで塗っておりますけれども、それから新規電源、緑で塗っておりますけれども、こういった事業者が送電部門に対して中立的に、また競争条件も均等化をしていく、これがこれから目指されるべき競争ルールだというふうに考えております。そういう意味では、ここに細かく書いておりますが、系統の利用ルールをこういった競争条件の均等化という方向に向けて議論していくことが非常に重要ではないかというふうに思います。
 また、系統容量の計算に当たっても、計画潮流で行うのではなくて、いわゆる実潮流、実際にどれだけの電気を系統が流れているのかというデータをきっちり取った上で、それに基づいて幾ら空き容量があるのかということを見ていく。これは、ほぼ今、国際的なスタンダードになってきております。
 それから、費用負担ルールに関しても、今、繰り返しになりますが、受益者負担原則に基づいて、なるべく受益者負担に基づいて電力利用者が薄く広く負担するという方向へ転換していくことが私は望ましいというふうに考えております。
 なぜそういうふうな方向に向かっていくのが望ましいのかということについて、例えばこれはメリットオーダーということになりますが、やはり再生可能エネルギーを大量に入れていくことというのは、私自身は、国家的に見て非常に重要な課題であり、国益にかなうというふうに考えています。
 ここに緑に書いておりますが、再生可能エネルギーは基本的には燃料費というものが掛かりません。一旦、設備が建ってしまいますと、ほとんど限界費用はゼロで入ってくる電源であります。これを利用しない手はないんではないか。そして、原発のような事故リスクもございませんし、石炭火力のように大量にCO2を排出するわけでもございません。そして、何よりも、国産の資源でありますので、いわゆる所得や富の海外流出というものを防ぐことができる、これも大きな利点でございます。ですので、むしろ再生可能エネルギーを積極的に国家戦略として資源開発していくという姿勢があってもよろしいのではないかなというふうに思います。
 最後に、今のようなお話の言わばバックデータとして、今先行しているドイツでどうなっているかということをお話しして閉じさせていただきたいと思います。
 現在、ドイツにおきましては、再生可能エネルギー比率が二〇一七年実績で三六・一%まで参りました。この実は三五%目標というのは二〇二〇年に達成することを予定されていたものですので、前倒しでドイツは再エネが増えて、目標達成がなされているということであります。
 それから、賦課金。これは現在、日本で大変問題になっているところですが、ドイツは実は、この絵にございますように、賦課金が二〇二三年にピークを打って、その後、賦課金負担というのは減少に転じるということがほぼ明らかになってきております。
 これはなぜこうなるのかということなんですが、再エネ自体はどんどん増えております。しかし、かつて高い買取り価格を適用された電源が徐々に、二十年を経て買取りを終わっていきます。ですので、いわゆる高い負担をもたらす再エネ電源が外れていきますので、再エネが増えても徐々に負担は減っていくというフェーズに入っていくということでございます。
 実は、日本は、これ、今右肩上がりの、負担が右肩上がりの局面にいるので大変だ大変だと言っているんですが、二十年で高いものは切れていきますので、この大変胸突き八丁のような負担の増加のピークを超えていけるかどうか、この時期を、そしてまた国民に対してそういう負担の説得をできるかどうかという辺りに鍵があるのかなというふうに考えております。未来永劫の負担増ではないということでございます。
 その背景には、ここにございますように、非常に大きく低下したやっぱり再エネコストがございます。そして、実は再エネ供給が増えているために、卸電力市場の料金、電力価格というのはどんどん下がってきております。そして、こちら欧州における電力価格ですが、ノードプールといいまして、北欧に次いでドイツは低い水準になっておりますし、何と、ドイツは原発をゼロにしていくと隣のフランスから原発の電気を輸入することになるんだろうと言われていたんですが、実は現在、ネット、純の輸出国、あらゆる領域に対して、国に対して輸出国になっております。
 将来ですけれども、シミュレーションによりますと、ドイツのこの絵は再生可能エネルギーでこれから増やしてやっていった場合のコストから既存電源でやっていった場合のコストを引いたものでございます。再生可能エネルギーが増えると、純粋にコスト増の期間がしばらく続いていきます。ところが、二〇二一年以降、そして特に二〇三一年以降に入りますと、再エネが既存電源を大きく下回ってコストが下がってまいりますので、国民負担は大幅に減少すると。つまり、再エネに依存していく方がかえって国民経済的には有利な状況になっていくということがはっきりしてきております。
 これは再生可能エネルギーの受入れの状況を示しておりまして、再生可能エネルギーが増えた場合には既存電源が出力を絞ることによって再生可能エネルギーを受け入れている状況でございます。
 これは、場合によっては卸電力市場でマイナスの価格が付いているということを示しておりまして、これは必ずしも怖いことでなくて、ある意味でマーケットが非常に柔軟に機能しているということを示しております。
 これで最後の二枚ですが、実は再エネが増えたときにはこうやって価格が、水色になっておりますが、下がっております。このときにどういう状況になっているかというと、実は既存の電源も出力を落としている。これは原発や石炭、その他既存電源で、いわゆるベースロード電源と言われるものも再エネが増えたときには下がるというような調整をして、そして再エネを受け入れているということがございます。
 以上のような形で再生可能エネルギーが増えてきている状況で、こちらに示しておるのはコストが抑えられているということ、それから、電力の停電日数については、一番右上ですけれども、むしろ下がる傾向にある。再エネの増加とともにむしろ電力の安定性は高まっているということが示されているということでございます。
 このような形で、再エネは二〇一一年を境に投資額がむしろ既存の電源を逆転して増えてきているというのが世界の状況でございます。
 最後に、メッセージとしましては、再エネ産業はもう幼稚産業の段階から徐々に成長産業に移りつつある、そして、いずれ電力網のデジタル化というのが進むと思いますし、インダストリー四・〇と言われるものと融合していき新産業が生まれてくるということが見えてきております。そういう意味では、日本の国益という観点からも、こういった再エネの進展を見ながら電力システムの在り方を考えていく必要があるのではないかということで、終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 諸富徹

speaker_id: 14599

日付: 2018-02-14

院: 参議院

会議名: 資源エネルギーに関する調査会