岩井茂樹の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)
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○岩井茂樹君 ODA調査派遣第一班について御報告をいたします。
当班は、昨年九月十一日から十九日までの九日間、カザフスタン共和国及びモンゴル国に派遣されました。
派遣議員は、赤池誠章議員、三宅伸吾議員、大島九州男議員、宮崎勝議員、団長を務めました私、岩井茂樹の五名でございます。
以下、調査を通じて得られた所見につき、両国に共通する課題と国別の課題と分けて御報告をいたします。
初めに、両国に共通する課題について申し上げます。
第一に、産業構造の多角化に向けた中小企業育成支援についてです。
両国は、共に九〇年代初頭から市場経済への移行を進め、各国からの支援と豊富な天然資源を背景に経済成長を遂げてきました。しかし、資源価格の変動の影響を受けやすい両国の経済の安定と発展のためには、製造業を始めとする中小企業の育成による産業の多角化が重要な課題となっております。
今回の訪問では、ビジネス人材育成の拠点である両国の日本人材開発センターを訪れるとともに、カザフスタンでは、日本の専門家の指導の下、建設現場のカイゼンに取り組むインフラ関係企業ストロイクラス社を、モンゴルでは、円借款による低金利のツーステップローンを活用し、質の高い洋菓子店を展開するジュルウル社を視察しましたが、こうした成功事例を増やすとともに、建設現場における安全管理や製造業者への技術支援などにも一層取り組むべきであります。
第二に、日本語学習者等の人的資産の活用についてです。
両国では、日本人材開発センターのビジネスコースや日本語コース等で熱心な取組が行われているほか、我が国への留学を目指す学生など、各訪問先で出会った若者の高い意欲は両国関係の未来に希望を感じさせるものでした。
今後、我が国との貿易や投資、人的交流を活発化し、こうした人的な資産が一層活用されることを期待しますが、そのためにも以下に述べるような国別の課題に取り組む必要がございます。
まず、カザフスタンについて申し上げます。
第一に、援助で培われた我が国の技術への信頼を生かすフォローアップについてです。
ODA被援助国から卒業が間近となっているカザフスタンへの我が国の経済協力は、現在、技術協力と草の根無償資金協力が中心となっていますが、これらの継続や日本企業の進出への期待の声が聞かれました。
二〇一二年に事業が完了したアスタナ上下水道整備計画は、処理施設の能力の向上等に寄与したことが確認されました。一方、旧ソ連時代に造られた配管の更新が課題となっており、先方から配管を破壊せずに点検と改修ができる我が国の技術への関心が示されました。今後は、取り得る支援ツールを活用し、引き続きニーズに応える必要があるものと思われます。
アスタナ第二小児病院では、独立後間もない困難な時期に我が国が供与した医療機器による乳幼児死亡率の低下や、日本製医療機器の品質と使いやすさなどにつき高い評価を受けました。しかし、これらの機材の修理が国内ではできないため、現在では寿命を超えた多くの機器がアフターサービスの行き届いたドイツ製や米国製のものに代わられております。病院側からは、サービスさえ整えばまた日本製の機器を導入したいとの声が聞かれており、アフターサービスの提供方法の工夫により、援助で培われた日本製医療機器への信頼が販路の拡大につながることが期待されます。
第二に、草の根無償の活用と援助機関立ち上げへの支援についてです。
今日、カザフスタンは、国の経済力は高水準にあるものの、都市と地方に格差が生じています。我が国は、草の根無償により地方の学校の改修や医療機器の整備などの支援を行い、目に見える支援として同国の国民から好評を得ております。この支援は、他国の大使館にはない地方とのネットワーク形成への外交ツールとしても機能しており、このような形での協力も戦略的に継続していく必要があります。
また、同国は現在援助国側に移行しつつあり、我が国は同国政府の援助機関の設立やアフガニスタン女性への支援活動にも協力しています。本件の担当者とはODAに対する国民の理解を得るための取組についても意見交換を行いましたが、周辺地域の平和と安定に貢献しようとする、このような取組に引き続き協力することも我が国の重要な役割と考えます。
次に、モンゴルについて申し上げます。
第一に、ガバナンス強化及び我が国との関係強化に資する支援についてです。
我が国はモンゴルに対し、トップドナーとして二〇一五年度までに総額約二千九百億円の援助を行っています。今回訪問した首都ウランバートル市は、地方からの人口流入が進み、人口四十万人規模で計画された同市に百四十万人が住む状況となっていることから、基礎インフラの整備や大気汚染対策が課題となっております。
これらに対応した各案件では着実な取組が見られましたが、全般的な課題として感じられましたことは、モンゴル側国会議員との懇談でも率直に指摘された、官僚機構も含む政治制度がいまだ成熟の途上にあり政策の継続性に欠くことや、公職にある者の倫理観の欠如による不正の存在などです。我が国の協力の効果の発現や、同国への投資の促進のためには、同国のガバナンス強化への取組が欠かせないと考えます。
また、社会資本の整備や産業に係る多岐にわたる支援が必ずしも我が国との貿易拡大につながっていない状況も見受けられ、両国がウイン・ウインの関係を構築できる分野が何かにつき十分検討し、両国の互恵的、相互補完的な関係の強化に資する協力とすべきと思われます。
第二に、IMF支援プログラム実施時の協力についてです。
モンゴルは近年、経済の失速と財政状況の悪化から、二〇一七年から三年間、IMF支援プログラムに基づき総額約五十五億ドルの支援を受けることとなっております。
このうち、我が国は三年間で最大八・五億ドルの財政支援型円借款を行うこととしており、この財政支援を行う間、プロジェクト型円借款については慎重に検討を進める方針であることが明らかになりました。日本企業関係者からは、これまで事前調査を行ってきた案件を他国が扱うことになることへの懸念が示されており、今後とも日本企業による質の高い協力が行われるよう、可能な限り、この事前調査を生かす協力を実施することが期待されます。
第三に、質の高いインフラ整備と人材育成の推進についてです。
今回視察した整備中の案件のうち、新ウランバートル国際空港建設事業は、航空需要の増大に対応して市外の草原に新空港を建設をし、モンゴルの国際空港の信頼性や利便性の向上を図るものです。総額六百五十六億円を円借款で供与する同国へのODA史上最大の事業であり、併せて空港運営に係る人材育成も技術協力で行われています。
日本モンゴル教育病院建設計画は、無償資金協力による同国初の大学附属病院の建設で、病院運営に係る技術協力も併せて実施されています。視察した建設現場では、日本のコンサルタントと建設会社の指導の下、安全第一を旨とした作業員への技術指導が図られていました。
これらの案件での技術指導や質の高い施設の完成を通じ、適切な初期コストの投下によるライフサイクルコストの低減や人材育成の重要性等を一層浸透させる必要があります。
第四に、ウランバートル市の環境改善と一極集中の是正についてです。
同市では、地方からの移住者が市街地の外側に移動式住居、ゲルなどを建てることにより、インフラが未整備なゲル地区が無秩序に拡大しています。今回、JICAが協力するこのゲル地区の再開発や市の大気汚染対策能力強化プロジェクトを視察し、環境改善に向けた地道な取組を確認しましたが、市内の交通渋滞の常態化も含め、同市の抱える諸問題の深刻さを目の当たりにし、根本的には首都への一極集中の流れを変えていく必要性を感じたところです。新空港周辺で予定されている衛星都市の開発や、モンゴルの風土に適した農牧業の支援等により、一極集中の是正や地方の発展を図ることが必要と考えます。
最後になりますが、今回の派遣に当たり御協力いただいた外務省及び在外公館、JICA、現地で活躍される皆様方に心から感謝を申し上げ、報告といたします。
誠にありがとうございました。