豊田俊郎の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○豊田俊郎君 ODA調査派遣第四班について御報告いたします。
当班は、昨年十二月十日から十八日までの九日間、キューバ共和国及びジャマイカに派遣されました。
派遣議員は、井原巧議員、石井苗子議員、そして私、団長を務めました豊田俊郎の三名でございます。
今回訪問した両国は、参議院ODA調査派遣団として初めての訪問であり、案件の視察や政府関係者との意見交換のほか、JICA専門家やボランティア、日本企業関係者等と意見交換を行いました。
本日は、調査を通じて得られました所見を中心に、その概要を御報告いたします。
まず、キューバ共和国について申し上げます。
キューバは、カリブ地域最大の国土と人口を有する社会主義国家であります。天然資源、人的資源等を有し、今後経済成長を遂げる潜在性があり、また、医療関係者等の派遣を通じて中南米やアフリカの開発途上国に影響力を持つなど、高い外交力を発揮している一方で、米国の経済封鎖等による物資、資金不足により、インフラの老朽化や食料自給率の低さなど、多くの課題を抱えております。
キューバに対するODAは、ソ連崩壊後、経済的な危機に見舞われて以来、専門家派遣や研修員受入れ、技術協力等で実施されてまいりましたが、二〇一五年の岸田外務大臣、二〇一六年の安倍総理のキューバ訪問を踏まえ、二〇一六年から本格的な無償資金協力が開始されたところであります。
最初に、JICA事務所の早期開設の必要性について申し上げたいと思います。
私どもが訪問時、両国間の調整は最終局面であるものの、正式設置には至っておりませんでした。効果的な支援を実施していくために、早期開設、体制整備は重要であり、私ども派遣団からも、政府関係者との意見交換時にその旨の要請をいたしたところです。なお、本年一月四日、JICA事務所開設に向けた手続が終了したとのことであります。
キューバに対する支援の重点分野の一つ、農業開発分野では、キューバ国民の主食である米の増産について、二〇〇三年以来、技術協力や専門家派遣、研修員受入れなどの支援が実施されており、昨年から、五つ目のプロジェクトとして生産農家に対する普及体制を強化する技術協力がスタートし、さらに無償資金協力による農業機材供与も実施されております。
米の収量は年々増加しており、視察した穀物研究所及び農業省副大臣との意見交換において、これまでの技術協力や研修員受入れ等に対する評価は高いことがうかがえました。キューバの米の自給率目標は七〇から八〇%であり、今後も継続的な協力が必要と考えます。
もう一方の持続可能な社会・経済開発分野では、病院で使用する医療機材の保守管理を行う国立医療機器センター、ハバナ市のごみ収集車両の整備を行うごみ収集車両管理センターを視察いたしました。物資や資金不足に直面しているキューバにおいて、今あるものを修理しながら長く使っていくための技術、ノウハウの支援であり、キューバ側のニーズにかなったものとなっております。
今後は、これまでの支援をベースに、例えば医療分野では、医療機器等の製造企業が直接保守管理を行うことで民間の進出を図っていく、環境分野では、分別収集の徹底など我が国のような廃棄物処理システムの構築への支援を組み合わせるなど、より効率的、効果的な支援の方法を検討する必要があると考えます。
JICAの援助調整専門家によると、二〇一六年からの本格的な無償資金協力の実施等により、キューバに対する我が国のODAは、他の二国間や国際機関の援助額と比較しても大きな規模となっているとのことであります。
一方、今後の支援について、国際協力等を所管する外国貿易・外国投資省次官との意見交換では、有償資金協力による支援の可能性について言及がありました。物資や資金不足に直面し、施設の老朽化等による国民生活への影響が懸念されるキューバでは、今後、エネルギー、運輸交通等の分野での協力が期待されております。しかし、有償資金協力の実施には、プロジェクトの内容とともに、キューバの債務負担能力を把握するための財務データが示される必要があり、現状では難しいと考えます。
引き続き、我が国の知見、技術を生かした技術協力や専門家派遣等により、個別のニーズに対して的確な支援を実施していくべきであります。
次に、ジャマイカについて申し上げます。
ジャマイカは、カリブ地域の中心国であり、カリブ共同体においては外交面で主導的役割を果たしております。中所得国として順調に成長してまいりましたが、世界経済や自然災害等の外的要因の影響を受けやすいほか、高い失業率や貧富の差、治安等の社会問題への対策が重要な課題となっております。
有償資金協力で実施したキングストン首都圏上水道整備計画では、地下水による水源開発や今回視察したスパニッシュタウン浄水場を含む浄水・送排水施設の修復、拡張を行うことにより、同地区周辺住民約八万人に対する安定した水の供給が実現しており、施設等の持続的な利用を図るため、維持、管理のためのフォローアップが必要と考えます。
文化無償資金協力による展示・視聴覚機材が供与されたジャマイカ研究所では、年間二万四千人が来館するジャマイカを代表する文化施設であり、博物館、児童館、レクチャーホール、バスによる全土の移動展示等を行う際に供与機材が活用されております。
草の根・人間の安全保障無償資金協力により消防車等の緊急車両を供与したカリブ海事大学では、訓練実施のほか、大学の立地するポートロイヤル地区の緊急救命対応改善のため、地域住民に対し、緊急対応へのボランティア意識の向上を図りながら消防訓練を実施しており、この取組を全土に広げていきたいとのことであります。
いずれも、無償資金協力により供与された資機材の活用がそれぞれの取組の向上、発展に資するものとなっており、引き続き的確に協力を実施していくことが重要であります。
また、ジャマイカでは、青年海外協力隊員、シニアボランティアの皆様と懇談をいたしました。教育、文化、スポーツ、土木、防災、水産等様々な分野での多くの皆様が活動して成果を上げ、中には、ボランティアの任務終了後、再びジャマイカでの活動を継続している方もおられます。各視察先や政府関係者の意見交換でも、ボランティアの皆様の活動に対する評価は高いものでありました。人的交流の推進は両国関係の発展の礎となるものであり、ボランティアの皆様が安心して活動できる環境整備にも配慮する必要があると思います。
今後の支援に関して、政府関係者等との意見交換において、これまでの支援に対する謝意とともに、更に協力関係を拡大したいとの意向が示されました。特に、気候変動、自然災害による被害軽減等の分野で、ジャマイカとの二国間のみならず、同じ島国であるカリブ諸国への協力、支援の期待も示されております。気候変動、防災という分野は、カリブ諸国への支援の重点分野と合致するとともに、我が国の経験、知見を生かした効果的な支援が可能な分野と考えます。
二〇一七年には、無償資金協力による防災デジタル無線通信システム整備、約二十年ぶりに有償資金協力による公共施設の省エネルギー化改修工事等への支援が決定されております。ハリケーンや地震、津波などの自然災害に対する脆弱性を抱えるカリブ諸国に対する支援へのモデルにもなるものであり、着実な協力関係の進展を期待したいと思います。
また、ボランティアや専門家の派遣等を含む技術協力、草の根・人間の安全保障無償協力についても、引き続き、ジャマイカ側の取組を促す、効果的な支援を実施していくことが重要です。加えて、治安悪化が大きな課題であるジャマイカにおいては、社会経済の安定のため、教育、雇用の拡大、人材育成等への協力も必要と考えます。
以上が、第四班の調査を通じて得られた所見でございます。
最後に、今回の調査に当たり、関係する皆様方には多大な御協力をいただきました。改めて心から感謝を申し上げ、御報告といたします。
以上です。