上川陽子の発言 (法務委員会)
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○国務大臣(上川陽子君) 三月八日の法務委員会において聴取いただいた私の所信について、再度発言させていただきます。
法務大臣の上川陽子です。改めましてよろしくお願いいたします。
昨年末に政府として初めてとなる再犯防止推進計画が閣議決定されました。本年は、まさに推進計画元年です。また、第十四回国連犯罪防止刑事司法会議、京都コングレスや東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される二〇二〇年まであと二年に迫った年でもあり、本年は法務行政にとって節目ともいうべき重要な一年であると考えています。
こうしたときであるからこそ、法務行政が、国民一人一人の生命、身体、財産を守り、全ての活動の基盤となる安全、安心を、法の支配を貫徹することにより実現する役割を担っていることを、第一線で勤務する職員を含めて、全ての職員が改めて共有する必要があります。昨年八月三日に法務大臣に再任されて以降、機会を見付けては現場の視察に行き、職員から話を聞く機会を設けてきました。こうした経験をも踏まえ、これまで以上に省内の連携を緊密にし、法務行政の諸課題にオール法務省としてスピード感を持って取り組んでまいります。法務省の取組を積極的に広報し、国民の皆様に身近に感じていただくとともに、安全、安心の実現に御協力いただくことが重要と考えています。
そして、職務に当たっては、二〇一五年九月、国連で採択された持続可能な開発目標、SDGsにおいてうたわれている誰一人取り残さない社会を実現するため、着々寸進洋々万里を心に刻んで一歩一歩着実に職務を遂行したいと考えていますので、委員長を始め、委員の皆様の御理解、御協力をよろしくお願い申し上げます。
まず、国民に身近で頼りがいのある司法を実現するため、次の取組を行いたいと考えています。
総合法律支援法の一部を改正する法律の施行により、日本司法支援センター、通称法テラスの業務が拡充され、認知機能が十分でない高齢者や障害者等を対象とした新たな法的支援制度の運用が開始されました。また、法テラスでは、福祉機関等と連携して、高齢者や障害者の潜在的な問題について、総合的な解決を図る司法ソーシャルワークと呼ばれる取組も推進しています。引き続き、法テラスの業務の円滑な実施と体制の充実を図り、地域に寄り添いながら国民生活の法的側面からの支援に努めてまいります。
法的な物の考え方を身に付けるための法教育は、自由で公正な社会の担い手を育成する上で不可欠なものであり、多様性を包摂する共生社会の実現にも資するものです。未来を担う若者への期待が高まる中で、多様な意見を様々な角度から検討し、自ら考える力を身に付けることがこれまで以上に求められていますので、関係機関とも連携しながら、対象世代や現場のニーズに応じた法教育の充実に努めてまいります。
次に、差別や虐待のない人権に配慮した社会を実現するため、次の取組を行いたいと考えています。
インターネットを悪用した名誉毀損、プライバシーの侵害、障害を理由とする差別、虐待、ヘイトスピーチを含む外国人に対する人権侵害、部落差別などの同和問題等の様々な人権問題を解消するため、引き続き、人権啓発、調査救済活動等に丁寧かつ粘り強く取り組んでまいります。また、冒頭申し上げた二〇二〇年に向けて、心のバリアフリーを推進し、誰もがお互いの人権を大切にし、支え合う共生社会を実現するための人権啓発活動を推進してまいります。
親によって出生の届出がされておらず、無戸籍となっている方々について、徹底した実態把握に努めるとともに、全国各地の法務局において常時相談を受け付け、戸籍を作っていただくための丁寧な手続案内をする等の寄り添い型の取組を行っています。今後も引き続き、無戸籍となっている方々への支援、無戸籍状態の解消に全力で取り組んでまいります。
難民問題については、世界的に深刻な状況にあります。我が国で急増する難民認定申請者の中には、就労等を目的として、明らかに難民とは認められないような濫用、誤用的な申請が相当数含まれていることにより、真の難民の迅速な保護に支障が生じる事態となっています。これらの状況を踏まえ、本年一月十五日から、庇護が必要な申請者について早期に安定した在留許可をする等更なる配慮を行うため、難民認定制度の運用を見直し、濫用、誤用的な申請についてはこれまでより厳格な対応を行い、引き続き、我が国における難民認定の迅速適正化を推進し、真に庇護を必要とする方への保護を図ってまいります。
次に、世界一安全な国日本をつくるため、次の取組を行いたいと考えています。
国民の皆様が安全に安心して暮らせる社会を実現するため、関係機関とも連携し、組織犯罪、凶悪犯罪への対策を始めとする治安確保のための対策を万全に講じてまいります。
また、現下の国際テロ情勢を踏まえ、国内外におけるテロ関連動向の把握に努め、関係機関との連携を緊密にしつつ、情報収集・分析機能の強化に努めてまいります。
現在、アレフ及びひかりの輪を中心に活動するオウム真理教については、引き続き、団体規制法に基づく観察処分を適正かつ厳格に実施することにより、地域住民の不安感を解消、緩和するとともに、公共の安全の確保に努めてまいります。
昨年閣議決定された再犯防止推進計画は、五つの基本方針、七つの重点課題について百十五の施策を盛り込んでいる総合的な計画です。関係省庁や地方公共団体との連携を一層推進し、刑事手続のあらゆる段階において、就労、住居の確保や高齢者又は障害のある者への支援、薬物依存を有する者への支援といった犯罪や非行をした者の立ち直りに必要な指導、支援を個々の特性に着目して適切に実施するとともに、立ち直りを支える保護司、更生保護施設、協力雇用主等の民間の方々の活動に対する支援を充実強化してまいります。
昨年成立した性犯罪に対処するための刑法の一部を改正する法律については、その審議において、性犯罪被害者の御負担に関する様々な指摘をいただいており、附帯決議においても、被害者の二次被害の防止や、その心情に配慮することが求められています。
今後も、こうした経緯や犯罪被害者等基本法の理念にのっとり、性犯罪被害者に限らず、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための各種制度を適切に運用し、きめ細やかな対応に努めてまいります。
一昨年成立した新たな刑事司法制度を構築するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律について、その趣旨を踏まえた適正な運用を図るなど、国民の皆様の信頼に応える刑事司法の実現のための検察改革の取組を引き続き実施してまいります。
次に、我が国の領土、領海、領空の警戒警備等について、次の取組を行いたいと考えています。
我が国を取り巻くテロ情勢が非常に厳しい状況にある中、二〇一九年にはG20サミットやラグビーワールドカップ大会が、二〇二〇年には京都コングレスや東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。その一方、観光立国推進に向けた各種取組が進められ、昨年の訪日外国人旅行者数は約二千八百六十九万人と、一昨年に引き続き過去最高を更新しています。
こうした中で、水際対策としてのテロの未然防止を含む厳格な入国管理と観光立国推進に向けた円滑な入国審査を高度な次元で両立させる必要があり、今後も入国審査の更なる高度化の実現に努めてまいります。
度重なる核実験や各種弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮に対しては、今後も人的往来の規制強化措置等を適切に実施していくとともに、核・ミサイル開発の動向、日本人拉致問題を含む北朝鮮の対外動向や国内状況等について関連情報の収集、分析等を進めてまいります。
尖閣諸島関係については、我が国の主権に関わる事案の相次ぐ発生を踏まえ、関係機関と連携し、関連情報の収集、分析に尽力するなど、遺漏のない対応をしてまいります。
次に、国土強靱化、国民の社会経済活動の重要なインフラ整備のため、次の取組を行いたいと考えています。
民事基本法について、国民の意識や社会情勢の変化に対応し、必要な見直しを進めてまいります。
日本人と外国人夫婦の離婚など、国際的な要素を有する家庭に関する事件の適正かつ迅速な解決を図るため、いかなる場合に日本の裁判所で裁判ができるのか等について定める人事訴訟法等の一部を改正する法律案及び、商法の運送・海商関係について、社会経済の変化への対応等を図るとともに、片仮名文語体の表記を現代用語化する商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律案を今国会に再度提出しました。
また、選挙権年齢の引下げ等への対応を図るため、民法が定める成年年齢を二十歳から十八歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律案を今国会に提出しました。
さらに、民法の相続関係については、高齢化の進展等への対応を図るため、配偶者の居住の権利に関する規律を設けること等を内容とする民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案及び自筆証書遺言を法務局において保管すること等を内容とする法務局における遺言書の保管等に関する法律案を今国会に提出しました。
以上の五法案につき、十分に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いします。
近時、所有者を特定することが困難な、いわゆる所有者不明土地の存在が社会問題化しており、その要因の一つとして、相続登記が未了のまま放置されていることが指摘されています。この問題は、相続が繰り返されるにつれ更に深刻化することが懸念され、関係省庁が一体となって対応する必要があります。そこで、法務省では、法定相続情報証明制度等による相続登記の促進及び長期間相続登記が未了の土地の解消に向けた取組を推進してまいります。
また、今後、人口減少に伴い、所有者を特定することが困難な土地が増大することも見据えて、登記制度や土地所有権の在り方等の中長期的課題についても検討を進めてまいります。
東日本大震災からの復興支援については、これまで、登記嘱託事件等の適切かつ迅速な対応に努めるとともに、登記所備付け地図の整備についても積極的に行ってきました。また、法テラスにおいて、被災地に出張所を設置し、無料法律相談を実施するなどの支援を行ってきたほか、人権擁護機関において、風評等に基づく様々な人権問題に対し、仮設住宅等における相談を実施するなど、相談・調査救済活動を行ってきました。
平成二十八年熊本地震からの復興支援についても、倒壊するなどした建物の登記官の職権による滅失登記、地震によって土地が移動している地域の登記所備付け地図の修正作業、被災地の人権擁護委員を中心とした仮設住宅等を訪問しての相談活動を行っています。
今後も、引き続き、震災からの復興を支援するとともに、各種災害からの復旧復興支援に取り組んでまいります。
我が国が本格的な少子高齢・人口減少時代を迎える中、経済社会に活力をもたらす外国人を積極的に受け入れていく必要があります。このため、未来投資戦略等に掲げられた施策の実現により、高度外国人材の更なる受入れの促進等に努めるとともに、本年二月二十日に開催された経済財政諮問会議における内閣総理大臣からの指示を受け、専門的、技術的な外国人受入れの制度の在り方について早急に検討を進めてまいります。その際には、我が国が、人々の多様性を尊重し、そして、多様な人々を我が国社会に包摂していく日本人と外国人の共生社会の実現に向けて、着実に検討を進めてまいります。
このほか、日系四世の若者を受け入れ、日本文化を習得する活動等を通じて日本に理解や関心を深めてもらい、日本と海外の日系人社会との懸け橋になる人材を育成することを目的とした制度の創設に向けて準備をしてまいります。
次に、法の支配を貫徹し、国際分野に至るあらゆる活動に法が適用されるように、司法外交を推進してまいります。
犯罪防止や法制度整備等に関する国際協力については、アジア・アフリカ諸国等の刑事司法実務家に対し、犯罪の防止や犯罪者の処遇等に関する国際研修等を行うとともに、アジアを中心とする開発途上国に対し、基本法令の起草、司法制度整備及び司法関係者の人材育成等の法制度整備支援を行ってまいりました。
これらの国際協力は、根本的な理念として、我が国が尊重してきた法の支配を各国が実現することに貢献するものであり、冒頭申し上げたSDGsの達成にもかなうものであることから、今後も積極的に推進してまいります。
我が国の利害に重大な影響を及ぼす国内外における法的紛争に適切かつ迅速に対応するために、国の利害に関係する訴訟に対する指揮権限をより適切かつ効果的に行使するとともに、国内外の法的紛争を未然に防止するための予防司法機能の充実や、国際訴訟等への対応について外務省等の関係省庁との連携を進めるなどして、訟務機能の充実強化に取り組んでまいります。
二〇二〇年開催予定の京都コングレスでは、SDGs達成に向けた犯罪防止、刑事司法及び法の支配の推進に関し、世界中の司法関係者等による議論が行われます。京都コングレスを司法外交の晴れ舞台とし、参加してくださる方々に、我が国が長年にわたり築き上げた法の支配が浸透した社会を体感していただくとともに、安全、安心な社会の実現や再犯防止、そしてそれらを支える法遵守の文化についての国民的関心を高める機会としたいと考えています。特に、次代を担う若者、ユースの参画を積極的に進めます。今後、関係省庁、関係機関と連携し、十分な準備を進めてまいります。
最後に、司法、法務行政を支える人材、施設等を含む環境整備のため、次の取組を行いたいと考えています。
法曹養成制度については、法曹に対する幅広い社会のニーズを踏まえ、質、量共に豊かな法曹が輩出されるよう、法曹養成制度改革推進会議決定「法曹養成制度改革の更なる推進について」に掲げられた各取組について、文部科学省と連携し、他の関係機関の協力も得ながら、引き続き進めてまいります。
また、司法の中核を成す裁判所の体制の充実強化等を図るため、判事の増員などを内容とする裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を今国会に提出しましたので、十分に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いします。
刑務所などの施設については、現行の耐震基準が定められた昭和五十六年以前に建設された施設が約半数に上るという現状を踏まえ、老朽化の問題を解消するための整備を推進してまいります。
これまでも、全職員が職場や家庭において個性と能力を十分に発揮できるよう各種取組を実施し、男性職員の産休・育休取得率及び女性職員の採用、登用等において成果が現れつつありますが、引き続き、法務省・公安審査委員会・公安調査庁特定事業主行動計画、通称アット・ホウムプランの推進を通じ、より一層働き方改革を進め、男女を問わず活躍できる職場環境の整備と職員のワーク・ライフ・バランスの実現に努めてまいります。
特に、離職率が高い女性刑務官の働き方改革は重要な課題であり、これまで推進してきた女子刑事施設の運営改善に関する総合対策、マーガレットアクションを強化し、更なる働きやすい職場環境の整備に努めてまいります。
委員長を始め、委員の皆様方には、日頃から法務行政の運営に格別の御尽力を賜っております。
今後も、様々な課題に対し全力で取り組んでまいりますので、より一層の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。