難波奨二の発言 (本会議)
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○難波奨二君 立憲民主党・民友会の難波奨二でございます。
私は、ただいま議題となりました厚生労働大臣加藤勝信君問責決議案に対し、会派を代表し、賛成の立場から討論を行います。
加藤厚生労働大臣は、安倍総理が働き方改革と位置付ける今国会において、最も重大な責務を負っている大臣であります。
加藤大臣は、昨年十一月三十日の本委員会における所信表明において、厚生労働行政の幅広さや責任の重さを改めて実感し、国民の生活を生涯にわたって支える厚生労働省の長として、国民の皆様の安全、安心の確保に万全を期すとともに、我が国の経済社会の発展に寄与すべく、厚生労働行政の諸課題に全力で取り組むと述べられました。厚生労働行政とは、揺り籠から墓場まで国民の命と安全を守り、人生の各ライフステージにおいて全ての国民が光り輝くためのものでありましょう。
また、働き方改革担当大臣でもある加藤大臣は、働き方改革は、一人一人の意思や能力、置かれた事情に応じた多様な働き方の選択を可能とするため、働く方の視点に立って行う改革と述べておられます。ところが、働き方改革関連法案は、労働基準法、労働契約法、労働者派遣法など八本もの法案の束ね法案として規制強化と規制緩和が混在したものであり、さらには、高度プロフェッショナル制度の導入及び裁量労働制の適用拡大がもくろまれていたように、働く者の視点に立っている法案とは到底言えず、法案の責任者である加藤大臣の責任は免れません。
本来、労働法制は弱い立場にある労働者を保護していくためのものであります。企業にとって都合のいい働かせ方を強要し、そのことによって日本経済を成長させ、世界で一番企業が活躍しやすい我が国をつくるために企業優先の政策を推進するなどということは、労働行政には無縁のものでなくてはなりません。
本決議案に賛成する理由の第一は、現在厚生労働委員会で審議の働き方改革関連法案の正当性についてであります。
法案提出前から、法案の根拠である労働時間の調査データに異常値が次々と見付かり、裁量労働制拡大については断念を余儀なくされました。加えて、厚労省がそれまでの三年間にわたって虚偽の資料によって立法府や労政審の審議を欺き続けた責任は重大であります。
裁量労働制で働く労働者は一般労働者よりも労働時間が短いかのように虚偽答弁を行っていた安倍総理は、撤回とおわびに追い込まれ、裁量労働制拡大は幸いにして撤回されました。ところが、加藤大臣は、その異常値などを除去して再計算した結果を、統計上の意味はあると強弁し、現在に至っても撤回していないのであります。
更に問題なのは、現行の裁量労働制の適用労働者に過労死や深刻な健康被害が次々と発生しているにもかかわらず、健康確保措置の拡充や、使用者が具体的な指示をしない時間配分の決定に始業及び終業の時刻の決定が含まれることを明確化することなど、適正化、規制強化を図る本当に必要な改正部分まで法案から削除してしまったことは、労働者の命と安全を軽んじたものと言わざるを得ません。
今回の労働時間法制改革の議論の基礎とされたデータが意味を成さなくなった以上、立法事実は失われており、法案自体を一旦撤回し、労政審で議論をやり直すことは当然であります。
賛成の理由の第二は、高度プロフェッショナル制度の導入についてであります。
裁量労働制と同じように、労働時間を管理せず、定額働かせ放題、残業代ゼロ制度などと言われる高度プロフェッショナル制度が、過労死を促進してしまうなどの各界からの反対や懸念にもかかわらず、本法案に含まれていることであります。この一事をもってしても、安倍総理の言う働く人の立場に立った法案とは言えません。
労働者が労働時間や勤務場所にとらわれずに自由な働き方が実践でき、労働者の自己実現や満足度の向上が図られると同時に、成果への評価が正しく賃金に反映され、勤務時間も減少するという高度プロフェッショナル制度であるならば、働き方改革にふさわしい制度と言えましょう。
ところが、審議を通じて明らかになってきたことは、高プロは企業にとってのコストダウンにすぎず、どんなに残業させても、過労死が起きても、実労働時間の把握ができないことから、労災認定が困難な制度であるということであります。このように、企業にとって何よりも使い勝手のいい制度と言え、本来何よりも優先されるべき労働者保護などは二の次となっているのです。
そもそも、政府は、本制度の導入根拠について、時間に縛られない自由な働き方を望んでいる労働者がいるからとの答弁を繰り返してきましたが、実際にこの制度を提案したのは、労働側の代表ではなく産業競争力会議の経営者メンバーであり、当初の立法過程においても一切労働者の調査はしていなかったことが明らかになっています。
また、この制度は、時間ではなく成果で評価されるとの説明とは裏腹に、法案には全くそのような根拠規定はなく、年収要件の一千七十五万についても、現在に至るまで金額の妥当性が明らかになっておりません。むしろ、通勤手当、家族手当などの諸手当が含まれており、基本給では年収八百万円程度でも適用可能である疑惑まで生じているのであります。
加えて、健康確保措置の実効性確保に問題があること、労使委員会における決議違反に対する法的効果が不明確であり、不同意の労働者に不利益取扱いをしたり、同意の撤回手続に違反しても使用者が処罰されることはないことなど、まさに法案の根幹部分の深刻な問題において数多くの制度上の欠陥が明らかになっています。
万が一、法案がこのまま採決され、施行されるようなことになれば、心ない経営者によって濫用、悪用され、多くの国民が心配しているとおりの過労死促進、定額働かせ放題、残業代ゼロ制度になってしまうことは火を見るよりも明らかでありましょう。
賛成の理由の第三は、本法案の中で、本来は積極的に評価すべきである残業時間の上限規制についても、特例水準が過労死ラインを許容する水準である問題に加え、それが安易に導入され、フルに上限時間まで運用されれば、四週間で百六十時間という過労死水準を優に超えるレベルの残業を行うことが合法的に可能になってしまう問題が明らかになっている点であります。
この法案が過労死を撲滅するためのものであるというならば、長時間労働を効果的に抑止するための勤務間インターバル制度の義務化や、一日当たり、一週間当たりの残業時間の上限水準を政省令等に明記することなど、実効性ある対策を講じることが必要不可欠であるはずですが、加藤大臣は、最後まで対策を約束することはありませんでした。これでは、せっかく残業時間の上限規制を設けても、その実効性はなく、労働者保護の観点からは遠く及ばないと指摘せざるを得ません。
以上、中心的な三点の問題に絞って、本問責決議案における加藤大臣の責任について述べてまいりました。
本来の会期であれば、法案は既に廃案であります。しかも、衆議院における不当な強行採決によって、働き方改革国会の目玉である本法案が労働法制制定から七十年ぶりの大改革であると自ら述べるのならば、政府・与党が我々の強い反対を押し切って会期を大幅に延長した以上、十分な審議時間を確保することは当然のことでありましょう。
良識の府、再考の府と言われる本院の歴史と伝統を守るためにも、今後とも慎重かつ丁寧な審議が必要でありますが、以上申し述べた理由によって、残念ながら、法案の責任者である加藤厚生大臣の下では充実した審議は望めないのであります。
是非とも御賛同いただき、真に働く者のための法案を与野党で改めて議論し、作り上げていこうと訴え、本問責決議案に対する私の賛成討論を終わります。(拍手)