田村智子の発言 (本会議)
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○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案、いわゆるTPP11整備法案に反対の討論を行います。
本法案の成立は、TPP11を批准する条件となります。うそつかない、ぶれない、TPP断固反対と自民党もポスターに掲げたはずのTPP協定。このTPPの関税撤廃、非関税障壁の緩和水準は、そのままTPP11に受け継がれています。凍結事項は極めて限定的であり、食の安全、ISDSなど、二〇一六年の国会審議で焦点となった問題点は何ら解決されていません。
また、国会決議で関税撤廃の交渉から除外することを求めた、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の重要五品目のうち、無傷のものは一つもなく、TPP11批准もまた明白な国会決議違反です。
多国籍企業の利益のために我が国の経済主権や食料主権を侵害するというTPPの本質は何ら変わるものではなく、TPP11批准には断固反対です。
以下、法案審議で明らかとなった問題点にも触れて、具体的に反対の理由を述べます。
第一に、TPP11によって、TPP協定よりも深刻なダメージが日本の農業にもたらされる危険性があることです。
TPP11では、アメリカが抜けた状態にもかかわらず、日本の乳製品等の低関税輸入枠も、牛肉、豚肉等の輸入急増への対策であるセーフガード発動の基準も、TPPで合意された輸入量のままになっています。かつて、BSEが発生し、アメリカからの牛肉輸入が禁止された際、その直後からオーストラリアからの牛肉輸入が急増しました。今回も、アメリカ抜きのTPP11協定の合意によって、カナダ、ニュージーランドなどが既に対日輸出の大幅増を見込んでいます。一方、トランプ大統領は貿易赤字を重大視しており、TPP枠の外でアメリカもまた日本への輸出増を要求することは明らかです。
内閣委員会と農水委員会との連合審査会で我が党の紙智子議員が、カナダが農林水産物の大幅な対日輸出増を見込んでいることを示してただすと、茂木大臣は、カナダの試算が正しいという根拠をお持ちでしたら是非御質問くださいという、傲岸不遜、失礼千万の答弁までしたのです。これを批判すると、今度は、アメリカの動向によってセーフガードの基準の見直しを要求する、自分は共同議長まで務めたが、議長の立場を離れての発言を行ったのだから各国の理解を得ているという答弁を長々と繰り返しました。しかし、茂木大臣が具体的にどういう発言をしたのか、その発言に対して各国がどういう意見を示したのか確認できる文書の提出を求めると、議事録は作成していないと言う。日本側の記録があるでしょうと何度ただしても、メモの存否すら明らかにしませんでした。
そもそも、TPP11は秘密会議ではありません。閣僚級会議で共同議長も務めた茂木大臣が議事録作成を主張しなかったことは重大であり、大臣が、私が発言したから大丈夫とどんなに強弁しても、それでは何の担保にもなりません。TPPの枠組みの維持を最優先させ、TPP11合意を急ぐために、他国の見直し要求、凍結要求を抑え込み、当然交渉すべきセーフガード発動基準さえそのままにしたことは、余りにも無責任だと言わなければなりません。
このように、TPPの枠組みにしがみついたまま日米交渉を進めればどうなるか。日本政府は、ミニマムアクセスの外枠でアメリカから五万トンの米輸入をTPP協定で合意しました。農水省は、アメリカがTPPを批准しない限りアメリカ枠の輸入を認めることはない、また、TPPの牛肉、豚肉の低関税もアメリカには適用しないと説明しました。ところが、委員会質疑では、これらをアメリカとの二国間協議の交渉事項とすることを拒否するのかという私の問いに、茂木大臣は、何を協議事項とするかは協議中である、予断を与えることは言えないと答弁したのです。
また、TPPの日米サイドレターでは、対日投資を行うに当たり、外国投資家や利害関係者から意見提言を求め、それを規制改革会議に付託するとの約束がありますが、規制改革推進会議には次々とアメリカ資本の多国籍企業や米国医薬品業界の代表が参加し、発言を行っています。発効もしていないTPPにしがみついて日米二国間協議に突入すれば、TPP合意は最低ラインとなり、更に対日要求に応えることになりかねません。
反対の理由の第二に、法案による国内農業支援策が、長年にわたる厳しい価格競争の押し付けを前提としていることです。
農水省が示しているTPP11の影響評価は、あらゆる農林水産物の品目について、影響ゼロ、生産量は減らないとしました。関税の引下げで、より低価格となる輸入品に引きずられて国産品の価格も下がる。そのため、生産額は、例えば牛肉で約二百から三百九十九億円減少する。しかし、価格競争に耐えられるように、大規模化、機械化等でコスト削減を行うので、国産品の消費が輸入品に置き換わることはない。だから、生産量も自給率も減らないというのです。
こんな説明で農家の方々が納得できるでしょうか。関税の引下げは十年以上掛けて徐々に進んでいくので、支援策がその間に行き渡ると言いますが、それは価格競争が十年以上にわたって強いられ続けるということではありませんか。
示された支援策は、意欲ある生産者との前提付きであり、その多くは、新たな、そして大規模な設備投資が条件となっています。
参考人質疑で北海道の小麦農家である山川秀正北海道農民連代表は、例えば畜産業では億単位の負債を抱えることになると指摘し、大規模化一辺倒の支援策でよいのか、様々な形態の農業経営が生き残ってこそ地域社会、地域経済の発展だと思うと意見陳述しました。
畜産など、二十四時間三百六十五日、牛や豚などの管理が必要な農家で、過重負担の軽減や休息を取るために機械化を行うということはあるでしょう。また、農地を広げて経営しようという方もおられるでしょう。それぞれの事情、それぞれの経営スタイル、それぞれの規模があってよいはずです。元々価格の安い輸入品との更なる価格競争を国策によって農家に強いる、価格競争に耐え続ける農家は支援する、このような政策はおよそまともな農業支援とは言えません。
参考人質疑では、そもそも国土も環境も国によって全く異なる農業は自由貿易の対象とすべきではないとの指摘もありました。豊かな農地を大切に受け継ぎ、品種改良や収穫率を上げる努力を繰り返し、四季折々の作物を豊かに収穫できる日本で、なぜ自給率が四割を切っているのか。自動車などの輸出を増やすために輸入農作物を大量に受け入れ、過酷な価格競争に日本の農業をさらしてきたからにほかなりません。
日本の農林水産業を第一次産業にふさわしく位置付け、何よりも、農家の方々が望んできた価格保障、所得補償を進めて、自給率を大幅に引き上げることこそ急務です。食料自給率が四割を切る国で、輸出を進めて稼ぐ農業を推進するなど、本末転倒ではありませんか。
TPP11交渉では、多くの国が凍結事項を主張しました。今月訪日したマレーシアのマハティール首相は、貧しい国と富める国との自由貿易とはどうあるべきか、正しい自由貿易とは何かと問題提起し、TPP11の再協議に言及しました。これらは、多国籍企業の利益追求から国内産業や自国民を守るためにほかなりません。
各国の経済主権、食料主権を尊重しながら、国際的な経済関係を築く新たなルールの構築にかじを切ることを求め、討論を終わります。(拍手)