神谷裕の発言 (本会議)
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○神谷裕君 立憲民主党の神谷裕です。
私は、立憲民主党・市民クラブを代表し、漁業法等の一部を改正する等の法律案につきまして質問をさせていただきます。(拍手)
さて、本案は、我が国の歴史ある漁業制度全般を抜本的に変えようとするものであり、我が国の水産業、漁村地域、食料供給、国土保全など、国民生活全体に影響を与える大変に重要な法案であります。
まず、率直に伺いますが、この制度改正は誰のための改正でしょうか。
今回の制度改革は、直接の影響を受ける漁業者からの要請を受けてなされたものとは聞いておりません。
いわゆる官邸主導、安倍総理のもとに置かれている規制改革推進会議の、あえて申し上げれば、漁業については全く素人で構成する水産ワーキング・グループにおいて、昨年九月から観念的な検討がスタートし、水産政策の改革の方向性が提示され、本年六月には、政府の農林水産業・地域の活力創造プランの中に水産政策の改革について位置づけられ、そのわずか五カ月後の十一月六日に、漁業者、漁業現場の声を聞かないまま、本案が国会に提出されたものであります。
まさに、官邸の意向だけをそんたくした拙速な法案と言わざるを得ません。
水産政策審議会など、関係者などの意見を聞く場もあると思いますが、水政審では、その他の項目で若干触れただけで、この改革についてまともな議論もされていないと伺っております。
なぜ決定までにきちんと水産関係者の意向を聞いてこなかったのか、まずは農林水産大臣に伺いたいと思います。
このため水産庁は、本年六月以降、五十カ所以上で五千人に近い漁業関係者に説明をしたと言っております。しかし、結論を決めてからの説明であり、内容がわかるにつれて、各地で働く漁業者は法律改正の犠牲になるのではないか、自分たちが働き、住んでいる浜が奪われるのではないかという不信と不安が高まっております。
漁業者は、今現在も、それぞれの漁場で操業し、毎日生業を営み続けております。その土台が大きく変わるような制度改正は、拙速に行ってよいものとは思われません。
そこで、本案が漁業者の理解と納得を得て出されたものなのか、理解と合意を得る努力と責任について農林水産大臣に伺います。
総理は、さきの所信表明の中で、七十年ぶりに漁業法を抜本的に改正することを表明されました。
現行漁業法は、七十年前の昭和二十四年に制定され、第一条の目的は、その後一度も変えられておりません。
戦前の漁業制度のもとでは、働く漁民の方々は、羽織漁師などと呼ばれる漁業権を持つ資産家、農業でいうと地主と小作という関係の中で働かされ、収奪、搾取されておりました。戦後日本の民主化の中で、漁民の方々の解放運動と当時の水産局の職員が一緒になって、知恵を絞り、汗を拭い、かち取ったのがこの漁業法であり、その精神が第一条に書かれているのであります。
改めてこの第一条を見ますと、漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用によって水面を総合的に利用する、漁業の民主化を図ることが明記されており、漁業者は、ようやくかち取った民主化を大事にして、漁場に近い離島、半島に住み、家族とともに漁村を守り続けてきたのが、この七十年間でありました。
しかし、本案では、この漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整、漁業の民主化という言葉が消え、単に、漁業は国民に対して水産物を供給する使命を有すると、産業としての漁業の位置づけのみが書かれております。
我が国の漁業の役割は、決して水産物供給ばかりではありません。我が国国土の重要な一部である漁村地域を維持し、いわば防人としての国境監視や環境保全といった多面的機能は極めて重要であります。そして、我が国漁業の役割を保持することは、いつの時代にあっても普遍的かつ中核的な政策理念であると考えます。
そこで、現在の日本の漁業、特に沿岸漁業が果たしている役割をどのように認識しておられるのか、また、目的を抜本的に変更した漁業法が施行された後の漁業、漁業者、漁村をどのようなものにしようと考えておられるのか、農林水産大臣のお考えを伺います。
次に、総理は所信表明の中で、漁獲量による資源管理を導入し、船のトン数規制から転換する、大型化を可能とすると述べられました。その考え方が資源管理の基本原則として本法案にも盛り込まれております。
漁獲可能量による水産資源管理を行い、最大持続生産量を持続するという、いわゆるMSYの概念は、専門の科学者によれば、自然界と隔離された金魚鉢の中だけで成り立つ論理であり、自然界での水産資源の増減は、人間が行う漁獲量だけではなく、気象の変動や海況の変動等により大きく影響されるものであります。MSY理論は科学的ではないというのが大方の意見です。
確かに、国連海洋法条約で採用されてはおりますが、これは遠洋の大型漁業を前提としたものであって、我が国のように南北に広がる広大な漁場に生息する多種多様な魚種、そしてこれを緻密に利用している漁業の全体に適用できるような代物では到底ありません。
政府は、日本の漁獲量全体の八割についてMSYによる資源管理を行うなどと説明していますが、科学的論拠の低さ、資源量管理の実効性、漁業現場に及ぼす混乱などを考えれば、MSYによる資源管理を拡大するべきではなく、現在、我が国で行われている資源管理方式をより拡充させることが、水産資源を維持し回復させるためには適切であると考えます。
資源管理をしっかりとやっていくことについては誰もが異論はありません。しかし、科学的に適当でない理論によって資源管理が行われることは大きな問題であります。
また、本案では、船舶等ごとに漁獲割当てを行うとともに、漁獲割当量の譲渡を行うことができる、さらに、一斉更新制度は廃止することとしております。これでは、漁業許可が個人所有的なものへと既得権化し、漁獲割当量が資金力のある経営体に買い上げられ、特定の経営体に集中し、沿岸、沖合等の漁業資源や漁業現場に大きな影響を及ぼすことが必至であると考えます。
我が国の水産資源の実情や漁業秩序に合わない資源管理方式は、これ以上拡大するべきではないと考えます。農林水産大臣のお考えをお聞きします。
次に、漁業権においては、法律で優先順位を定めた現行制度を廃止し、養殖業の新規参入、規模拡大を促進することについて伺います。
現行法にある優先順位の考え方は、働く漁民の生計の維持を基本としており、例えば、今回の改革で廃止することとされている特定区画漁業権は、漁協に優先的に免許されております。技術的、経済的にも取り組みやすい漁業であることから、その構成員である組合員が相互に調整しながら経営する仕組みとなっております。
法律が改正されますと、適切かつ有効にという、極めて裁量範囲の広い判断基準をもって、知事が免許する仕組みに変わることとなります。その結果、従来は組合員が経営していた区画漁業の漁業権が新たな参入企業に与えられたとする場合、この企業は漁協の外側で活動することが可能であり、漁村の秩序に影響を及ぼすことも考えられるわけであります。
したがいまして、企業が新規参入する際には、漁村の中核である漁協の同意や了解を得ることが参入企業の円滑な経営を維持するためにも必要であると考えます。
今回、これまで前浜で漁業者の利害を調整し、合意形成を行ってきた漁協の重要なツールであった特定区画漁業権の漁協への優先的な免許が廃止されることになります。漁業者、漁協など、当事者にとっては大変に不安に思われる部分であると承知しておりますが、なぜ廃止しなければならないのか、農林水産大臣にお考えを伺います。
企業参入に関連して更に伺います。
現行漁業法の中には、漁業権者以外の者が実質上当該漁業権の内容たる漁業の経営を支配している場合には、知事は漁業権を取り消すことができるとの規定があります。
本案では、この規定をわざわざ削除しているようです。すなわち、漁業権者以外の者が実質上当該漁業権の内容たる漁業の経営を支配することを可能とします。また、それは、実質上の支配者が外国資本でも構わないのであって、結果、我が国周辺の水産資源を利用して得た利益が外国に持っていかれることを許容されることになるわけです。
さらに、日本全国にある小さな島々等で、外国資本が実質支配する企業が漁業を行い、その従業員としてその国の外国人を雇うといった事態が生じた場合、これまで地域の漁業、漁村が果たしてきた国境監視機能、国土保全機能といったものが根本から失われる可能性さえあります。
そうした事態を招来するおそれは想定されたのでしょうか。大きく懸念がされるところであります。
さらに、新たな制度であります沿岸漁場管理団体について伺います。
従来、漁場環境の保全活動は地域の漁協が担ってまいりました。しかし、そのための費用の賦課をめぐっていろいろな問題が生じたため、この制度が創設されようとしているのであろうと推察いたします。
こうした考え方に基づきますと、まずは地域の漁協が沿岸漁場管理団体に指定されるものと思うのでありますが、法案は、漁協等のほか、一般社団法人、一般財団法人も指定の対象とされております。
漁協等以外の団体等が指定された場合、天然の水産資源を採捕する漁業や餌飼料を海にまく養殖業は、動物愛護に反し、環境汚染などにつながるなどとの理由をつけて、漁業の発展を阻害することも想定しておかなければなりません。
これまで、シーシェパードなどの過激な団体等の行動が我が国漁業者に被害を与えたことを想起し、沿岸漁場管理団体の指定に当たっては、県議会等の承認を得るなど慎重な手続をとる必要があると思いますが、農林水産大臣の御所見を伺います。
この七十年ぶりの漁業法等の改革は、成長産業化、輸出産業化とは何か、海区漁業調整委員会のあり方、養殖漁業の拡大と既存漁業との調整、これからの漁協の果たすべき役割など、極めて多くの明らかにすべき問題があります。
したがって、国会においては、広く漁業関係者や国民の皆様の意見を聞き、また現場の実情を把握し、慎重に審議しなければ、立法府としての責任は到底果たせないものと考えます。臨時国会の短い会期で決めるべき課題では到底ありません。
水産政策に造詣の深い大島議長を始め、各位の御理解と御協力をお願いして、本案に対する私の質問を終わらせていただきます。
御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕