緑川貴士の発言 (本会議)

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○緑川貴士君 秋田県に住んでいる、国民民主党の緑川貴士です。(拍手)
 私たちは、改革中道政党です。時代の変化に合わせて、枠組みや制度を変えるべき部分は変えていく、いや、しかし、現状を考えて、守っていかなければならない部分はどこまでも守り抜いていく。守り抜いていかなければならない価値が浜の現場にあります。
 この理念に立って、ただいま議題となりました漁業法等の一部を改正する法律案につきまして、国民民主党・無所属クラブを代表して質問をいたします。
 私の地元秋田県には男鹿半島があり、漁場へのアクセスにとても恵まれた地域です。
 波が高く荒れた冬の日本海、雷がとどろき始める初冬、これからの時期に接岸するハタハタは県の魚として親しまれ、このハタハタ漁を中心に各種漁業を組み合わせて営まれてきたのが、秋田伝統の漁業であります。
 そんな浜の暮らしを含め、愛着あふれる地域で汗を流し、みずからのなりわいを必死に守ってきた農林漁業者が向き合わなければならない農林水産行政の波は、真冬の荒れた海のように余りに高く、ひどくしけています。
 攻めの農林水産だ、成長産業化だといって、地域で相互に助け合いながら暮らしを成り立たせてきた人やそのコミュニティー、かけがえのない地域資源を、むき出しの市場原理や競争原理にさらし、生産性がないとか意欲がないなどと決めつけにかかり、非効率とするものを全て合理化の名のもとに一掃するこの向きを否定し切れないのが今の農林水産行政です。
 種子法の廃止で、公に管理されてきた、食の根源である種子の情報を外資に明け渡すことに道を開き、林業においては、私有林の管理について、経営意欲が低いと判断されれば、同意がなくとも経営権を剥奪され、意欲と能力があると認める経営体の参入にその実質的な制限はありません。
 農業、林業と来て、次は漁業、いよいよパターン化されてきている感がありますが、現場の切実な声とはおよそ乖離した官邸主導の安倍農政に対しては厳しい評価が下されました。
 日本農業新聞がきのう報じた意識調査では、安倍内閣の農業政策について、全く評価しないが三三・七%、どちらかといえば評価しないの三九・七%と合わせ、農政を評価していない人が七三%余りに上りました。
 TPP断固反対で選挙に勝利をしながら、舌の根も乾かないうちに交渉参加を表明し、農産物重要五品目は関税撤廃から除外するとした国会決議をほごにして、しかも、農家が再生産できるよう国内対策をするから決議は守られたと、守れなかったことを開き直ってTPPを批准し、それとセットで進めてきた、事実上のFTA交渉でしかあり得ないTAG交渉。TPP水準を超える譲歩はしないといいますが、TPP水準こそ大問題であったはずが、その水準は今や当たり前になってしまいました。
 答弁のごまかし、言葉遊びが繰り返されてきた農政を吉川大臣御自身はどのように評価をし、今回の意識調査結果で示された現場の声をどう受けとめ、政策に反映をされていくのか、まずお答えください。
 その上で、水産業の現状について伺います。
 国内漁業の生産量は、一九八四年の千二百八十二万トンをピークとして、一九九〇年代には急速に減少し、昨年は四百三十万トンと、およそ三分の一に減少しています。
 国内漁業者の数も、それに対応するように減少傾向ではありますが、そこに占める十五歳から三十九歳までの漁業者の数は、ここ十年ではおおむね三万人前後、割合にすれば一八%前後で推移をし、若手漁業者の活躍も目立っているほか、新たに就業した漁業者の数も年間千九百人前後と、こちらもかたく推移していることも見逃せません。
 何より、我が国を取り巻く海洋は、世界的にも恵まれた海洋資源、水産環境であります。世界の漁場と生産量を見れば、生産量の半分を占めるのが太平洋であり、そのうちのおよそ半分が、我が国周辺の海域が含まれる太平洋北西部海域であります。
 漁場は、黒潮や対馬海流といった亜熱帯からの暖流と、親潮やリマン海流といった亜寒帯からの寒流がぶつかって豊富な栄養がもたらされる好立地にあり、多様な種類の魚を始めとする海産物が水揚げされています。
 国内漁業を牽引していく若い担い手の将来性と、世界有数の好漁場、そこに従事する水産関係者それぞれの調和ある発展を考えたとき、我が国を取り巻く現状を踏まえ、日本の水産業を、今後どのように発展していくことが望ましいと考えているのか、大臣の御見解を伺います。
 水産政策の見直しについては、ことし六月に改定された農林水産業・地域の活力創造プランによれば、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させることによって、漁業者の所得の向上と年齢バランスのとれた就業環境を確立することを目指しています。
 そのためには、資源管理を徹底しつつ、遠洋、沖合漁業と養殖、沿岸漁業政策を見直しながら、ICT活用も組み合わせて、水産物の流通、加工までを有機的に連携させることが示されておりますが、現実に、どのようなスピード感でそれを達成していくのかがプランからは読み取ることはできません。
 特に、漁業者の所得の向上について、今の水準と比べ、どの程度の向上を目指しているのか、また、いつまでにそれを達成するおつもりなのか、お考えを伺います。
 本改正案で定める新たな資源管理システムについて伺います。
 資源管理の基本原則によれば、従来のように、船舶のトン数制限、そして各魚種の総漁獲量で制限するほか、資源評価に基づく漁獲可能量、TACによる管理を行い、持続可能な資源水準に維持、回復させることを基本とし、また、漁獲量の管理は、漁獲可能量を漁業者又は船舶ごとに割り当て、その割当て量を超える漁獲を禁止することによって漁獲可能量の管理を行う個別割当て方式、IQを採用し、その準備が整っていない場合は、従来の総漁獲量による管理を行うとしています。
 まず、改正案では、持続可能な資源水準に維持、回復させる方法として、従来から、Bリミットと言われる、乱獲を防ぐための最低ラインを基準とするこの現状の方式から、MSY、最大持続生産量と呼ばれる、漁獲資源量の自然回復力を踏まえた最適な資源量を基準とする方式へ変更するとしていますが、MSYは、現行のTAC法、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律における基本的な考え方であったはずです。
 TAC法がある中で、なぜこれまでMSYを基準とした資源管理を行ってこなかったのでしょうか。逆に言えば、なぜ今MSY方式をとるに至ったのか、その理由をお聞かせください。
 また、TACの対象となる魚種について、漁業の種類別、海区別に準備が整ったものから順次導入していくとしていますが、漁業とは、言うまでもなく、それぞれの海域に特性があり、まさに海洋自然そのものを相手にしたお仕事です。
 秋田では、初冬から始まるハタハタ漁の小型定置網のほか、真冬はタコやヒラメの刺し網、春先にはカレイの刺し網、夏から初秋にかけては採貝採藻、秋にはタイのはえ縄、キスやアマダイのこぎ刺し網、これを組み合わせ、一方、同じシーズンには、サケの小型定置網を操業する方もいたりと、通年の漁業をなりわいとしながら、操業方法の組合せや調整などを通じて、漁業者それぞれがそれぞれに配慮をしながら相互に扶助する仕組みも培われてきました。制度のさじかげん次第では、地域漁業の円滑な操業に制約が出るおそれを否定できません。
 TACの対象魚種の拡大やIQ方式の導入について、政府ではこれまでどのような検討が行われ、漁場環境が地域によって異なる、それぞれの漁業者の理解、納得をどこまで得ているのか、誰のための法案なのか、伺います。
 また、漁獲割当て量を他者に移転する場合、漁獲割当て、IQそれ自体の売買はできず、漁獲割当ての移転は、船舶を譲渡した場合などにしか認められていませんが、当の船舶の譲渡自体には制限がありません。
 例えば、漁獲権を手にするために、高齢で引退を考えている船主から、有利な条件で船の売買を持ちかけて、船舶を不当に買い集められるような多額の資本を持った業者も参入することができるなど、結果として、その地域の漁業権が寡占化していくことも許容される内容です。
 これでは法的な規制が余りにも欠けていると考えますが、大臣の御見解を伺います。
 また、政府は、都道府県が公表する海区漁場計画の策定プロセスを透明化することや、海区漁業調整委員会で、漁協など関係団体との間で調整をすることで、こうした参入に対処していくとしていますが、確かな防波堤、歯どめになるとは言えず、不十分ではないでしょうか。お答えください。
 さらに、本改正案で定める、漁業権を付与する者の決定方法は極めて不明確です。
 沿岸の漁業権の種類について、共同漁業権、定置漁業権、区画漁業権という従来の種類は維持されますが、特定区画漁業権を区画漁業権に一本化し、さらに、定置漁業権、区画漁業権に従来まで設定されていた法定の優先順位は廃止するとしています。
 法定順位の廃止に伴う新たな判断基準に、漁業者が水域を適切かつ有効に活用している場合は、継続利用を優先し、その者に免許を与え、既存の漁業権がない場合には、地域水産業の発展に最も寄与する者に免許を与えるとしています。
 ここで伺いますが、まず、従来の漁業法において優先順位を示した法定制がこれまで果たしてきた役割をどのように考え、また、なぜ今回法定制を廃止したのか、その理由をお聞かせください。
 その上で、今回の改正で、既存の漁業権者が権利を継続する前提にある、漁場を適切かつ有効に活用しているという条文について、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか。
 政府は、この条文の定義について、省令で定めることすらも検討しておらず、現場への技術的助言、つまり通達のみで対応するとしていますが、頼みのその通達でも、適切かつ有効とは、過剰な漁獲を避けて漁業を行いつつ、将来にわたり持続的に漁業生産力を高めるように活用することという文言が想定され、およそ浜の現場に配慮した中身であるとは言えず、これでは白紙同然の法案であると言わざるを得ません。
 何らかの判断基準を国として示すお考えはあるのか、それは具体的にどこまで示すのか、吉川大臣の真摯な御答弁を求めます。
 あわせて、既存の漁業権がない場合などについて、免許の内容たる漁業による漁業生産の拡大並びにこれを通じた漁業所得の向上及び就業機会の確保その他の地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者ともありますが、こちらについても、認められる主体が明らかではありません。具体的な判断基準を明確にするべきであり、このような条文にしたのはなぜでしょうか。明確にお答えください。
 浜で進む人口減少、少子化、それに伴う人手不足、また漁業関連施設の老朽化といった時代の変遷、そのあおりを受けながらも、秋田では、漁業者の年齢やその操業方法、労働の手間に見合う魚種、その漁獲量を資源管理との兼ね合いで最適化し、絶妙に保たれてきたそのバランスは、なりわいとして受け継いできた漁業者自身の経験と浜の暮らしに基づいています。
 民間活力の最大限の活用が大切なことは言うまでもありませんが、漁業権のつけかえの前に、浜に長らく根差してきた地元漁業者が、共同管理で年間計画をつくり、それを幾度も見直すなど、きめ細かい調整をした上で浜全体が有機的にまとまって管理されていく、このことこそが、コミュニティーの維持に欠かせない、持続可能な浜づくり、地域づくりの大前提であることを強く申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

発言情報

speech_id: 119705254X00620181115_017

発言者: 緑川貴士

speaker_id: 21554

日付: 2018-11-15

院: 衆議院

会議名: 本会議