紙智子の発言 (本会議)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
党を代表し、漁業法等改正案について質問します。
総理が所信表明で述べたように、今回の漁業法改正案は七十年ぶりの大改定です。戦後の漁業制度を根本からひっくり返し、漁業、地域経済の形を変えるものにもかかわらず、政府・与党は僅か十時間半の審議で衆議院可決を押し切りました。野党が求めた地方公聴会も拒み、多くの漁業者はその内容をほとんど知らされないままです。
この異常な国民無視の強権発動に対して、怒りを込めて抗議をします。参議院において、こうした横暴を許さず、徹底した審議を行うべきことを冒頭に厳しく求めるものです。
まず、農林水産大臣にお聞きします。
安倍政権は、世界で一番企業が活躍しやすい国にするとして、岩盤規制の打破を掲げて、農協法、種子法、森林経営管理法に続き、漁業の規制緩和を迫りました。
規制改革推進会議水産ワーキング・グループは、二〇一七年九月に水産庁を呼び出し、漁業の成長産業化に障害になっている要素、規制は取り上げたいと圧力を掛けています。ところが、驚いたことに水産庁は、規制改革推進会議が答申を出す前の五月二十四日に、自ら白旗を上げて水産政策の改革案を出したのです。水産審議会で議論されたわけでもなく、漁業者置き去りです。改革案は一体どこで議論したんですか。明確な答弁を求めます。
以下、法案について質問します。
漁業法等改正案の第一の問題は、その目的を変えることです。
現在の漁業制度は、地元に居住し、生活と労働を一体として、自ら海で働く生産者に優先して漁業権を与えています。
なぜこうした制度をつくったのか。それは戦前の反省があります。
漁業法を昭和二十四年に提案したときに、政府は、戦前は、個々の漁業権を中心に漁場の秩序が組み立てられているために、漁業生産力を上げる計画性を持ち得なかった、適当な調整機構を伴わず漁業権を物権としたことの弊害が生まれ、権利者に不当に強い力が与えられたことから、漁場の秩序が漁民の総意によって民主的に運営されなかった、漁業生産力の発展を阻害し、また漁村の封建的な基盤を成していたと説明しています。
つまり、戦前は、羽織漁師といって、都会に住みながら、船に乗らず、出資者として利益を得る漁業者がいたのです。そこで、行き詰まった漁場関係を全面的に変えるために、漁業法の目的に、漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用、漁業の民主化を規定したんです。
改正案では、漁業者を主体とすることも民主化も削除しました。何が不都合だというのでしょうか。
また、新たに国と都道府県に、漁場の使用に関する紛争を防止するために必要な措置を講ずると権限を与えました。漁民の総意に基づいて調整してきた浜の秩序に強権的に介入するのですか。
第二の問題は、漁業権の優先順位を廃止することです。
戦後の漁業制度は、漁業権を漁協に優先的に与えてきました。改正案は、優先順位を廃止し、漁場を適切かつ有効に活用しているという基準に変えるものです。政府が漁業の成長産業化と称して企業による養殖産業の新規参入を掲げている下で、適切かつ有効に活用すると知事が判断すれば、地元で営んできた漁業者のなりわいが維持される保証はないのではありませんか。ましてや、企業が漁業権を手に入れれば、長期的に漁業権を独占することができるのではありませんか。
以上、農林水産大臣、お答えください。
企業が新規参入すればうまくいくということは、既に破綻しています。東日本大震災を受けて、宮城県知事は水産特区を導入し、漁業権を初めて民間企業に与えました。
水産会社の桃浦かき生産者合同会社は、県から漁業権の免許を受けましたが、その後どうなったでしょうか。桃浦湾産のカキを使用することで商標登録していながら、ほかの湾のカキを流用したり、赤字続きで、二〇一六年度最終で約四千万円の赤字になりました。それだけではありません。水産庁からは四千七百六十万円、厚生労働省からは二千七百五万円もの補助金が出ています。これだけ税金を投入しながら流用問題を起こし、赤字続きです。
水産特区は破綻したのではありませんか。復興大臣、農林水産大臣、見解を求めます。
第三の問題は、漁業調整委員の公選制を廃止することです。
漁業調整委員会の公選制は、戦後の民主化の目玉です。魚種が多く、多様な漁業が営まれていることから、漁場の調整は複雑で難しく、その調整をまずは漁協に与え、漁協のボス支配などうまく機能しないときに漁業調整委員会が必要な指示をするという二段階の構えで民主化を図ってきました。今でも、漁業調整がうまく機能しない県では、漁業者の代表が選挙に立候補して当選し、漁業調整に尽力しています。
公選制を廃止し、知事による任命制に変えれば、行政の下請機関になるのではありませんか。漁業者の被選挙権をなぜ奪うのですか。
漁業者主体の目的を変え、漁業権の優先順位を廃止し、漁業調整委員会の公選制も廃止すれば、浜に混乱と対立が生まれるのではありませんか。
第四の問題は、大型船のトン数規制を撤廃することです。
遠洋・沖合漁業は、企業による漁船漁業が中心です。乱獲を防ぐために取られてきた漁船のトン数規制をなくし、大型化を進めれば、沖合漁業と接する沿岸漁業の資源が減少するのではありませんか。また、遠洋、沖合の大型船を誰が監視するのですか。
資源管理、水産資源の管理は重要です。
政府は、漁獲量配分による資源管理を導入すると言います。それ自体は必要ですが、今年導入された太平洋クロマグロへの漁獲規制は、情報公開も不十分なまま、沿岸漁業者の意見も聞かずに強行されました。北海道は、それによってクロマグロ漁の漁獲枠はゼロです。それも六年間も続きます。クロマグロ漁で生活している漁業者は深刻です。漁獲割当ての配分に沿岸漁業者の意見を反映する仕組みは本法案にはありません。これで割当てを強行すれば存続が不可能になる沿岸漁業者が生まれ、沿岸漁業と漁協の衰退を招くのではありませんか。資源にも最もダメージを与える、国が管理する大規模漁業の漁獲量の抑制から進めるべきではありませんか、答弁を求めます。
最後に、家族農業、漁業について聞きます。
国連は、来年からの十年を家族農業の十年と決議し、小規模家族農業、漁業への支援を各国に呼びかけました。また、国連食糧農業機関、FAOの責任ある漁業のための行動規範も、漁獲規制が必要な場合には資源の持続的利用のために、なりわい漁業や沿岸小規模漁業を維持するように求めています。この提起を受けて、日本政府は積極的に推進する立場ですか、お答えください。
以上、農林水産大臣の答弁を求めます。
漁業経営の九割を占める沿岸漁業は、藻場、干潟の保全、海洋ごみの撤去、海難、災害救助など、環境や国土を守る役割を果たしています。
我が党は、浜に混乱と対立を持ち込む漁業法の大改悪を許さず、水産資源を守り、漁業を持続的に発展させるために、徹底審議で本法案を廃案に追い込む決意であることを表明して、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣吉川貴盛君登壇、拍手〕