礒崎哲史の発言 (本会議)

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○礒崎哲史君 国民民主党・新緑風会の礒崎哲史です。
 私は、会派を代表し、水道法の一部を改正する法律案に関し、反対の立場から討論を行います。
 本年は、豪雨、地震等の大災害が頻発し、甚大な被害がもたらされた年でありました。改めて、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りしますとともに、被災された皆様に対し心からお見舞いを申し上げます。
 大阪府北部地震、七月の豪雨、北海道胆振東部地震における水道管の破裂や断水等は記憶に新しく、とりわけ、七月の豪雨では最大断水日数が三十八日、北海道胆振東部地震では三十四日に及ぶなど、重要な生活インフラの一つである水道はそのたびに甚大な被害を受けました。水道が国民の日常生活や命にも直結する貴重な財産であること、また、水道の基盤強化を図ることの重要性を改めて我々に思い起こさせました。
 その災害復旧の過程では、被災自治体のみならず、全国の自治体における水道関係者が昼夜を問わず一生懸命に作業に当たられ、安心、安全な水を早期に復旧させる原動力となりました。御尽力に心から敬意を表するものであります。
 本法律案では、都道府県が水道基盤強化計画を定めることができるとするなど、水道の基盤強化を前面に押し出しています。水道の老朽化や耐震化対策などを強力に推進していこうという姿勢は理解をいたします。
 その一方で、本法律案には、水道施設の所有権を地方公共団体が有したまま、運営権を民間事業に設定できるコンセッション方式の導入を促進させる規定が設けられており、災害時において復旧対応の責任の所在が、地方公共団体にあるのか、それとも民間事業者にあるのかが不明瞭となるなど、肝腎の災害対応が迅速に実施できなくなるおそれがあります。コンセッション方式の導入によって十分な災害対応が行えるという保証はあるのでしょうか。法律を変えようとする政府の責任は十分なのでしょうか。
 政府は、本法律案は、水道民営化を推進するものではなく、官民連携の一類型であるコンセッション方式を推進するものであるとの説明を繰り返してきています。国民向けに水道民営化という言葉を使うことが刺激的過ぎるため、コンセッション方式であるとか、PFIであるとか、PPPであるとか、様々な言い方を使って何とか民営化という言葉を和らげたいと考えているのかもしれませんが、間違いなく政府が積極的に水道事業の民営化を推し進めていく姿勢であると受け止められます。
 実質的な民営化であることを前提とし、水メジャーと呼ばれる外資系などの水道関連企業は、コンセッション方式の導入によって参入しやすくなった水道事業で利益を得ようと狙っています。水道関連企業が運営権を得ることになれば、これまで国民が享受してきた水の安心、安全という無形の財産が、役員報酬や株主配当に簡単に変わっていきます。そればかりか、健全な経営を維持しようとすれば、企業収入を増やすために水道料金を引き上げることも容易に想像できます。コンセッション方式が導入されることにより、日本がこれまで築き上げてきた世界に誇る水道事業が世界に売られてしまうおそれのある、このような法律案に我々は断固反対いたします。
 また、参考人質疑においては、本法律案に賛成する参考人の方、反対する参考人の方、いずれも、コンセッション方式の導入に際し、水道事業を適切にモニタリングする機関を創設しなければならないということを指摘しておられました。
 コンセッション方式を導入する最大の目的は、民間のノウハウや技術を活用して事業の効率化を図り、結果として事業コストを削減することにあるはずなのに、水道事業において、新たなモニタリング機関のような事業を監視する仕組みが必要となるのであれば、当然新たな経費を要することとなり、それこそ本末転倒と言わざるを得ません。
 そして、このコンセッション方式は、水道を所管し、現場を知る厚生労働省が推進してきたものではなく、大規模事業者に焦点を当てて小規模事業者への配慮がないまま、官邸が強力に推し進めてきた政策であるとしか思えません。
 平成二十七年に厚生労働省が全国の水道事業者に行ったコンセッション事業に関するアンケートの結果によれば、当時のコンセッション事業導入検討の可能性について、約一六%が検討対象にならない、約七八%が分からないと回答し、コンセッションが検討対象になるとの回答は僅か四%でした。
 このように、水道事業へのコンセッション方式の導入に慎重な意見が大多数を占めていたにもかかわらず、政府はそのまさに一年後に、骨太の方針二〇一六等において、コンセッション事業の推進を閣議決定しています。水道事業者の大多数がリスク面での不安や水道事業の継続性確保への懸念を掲げる中で、コンセッション方式の推進という方針が決められてしまったわけです。
 委員会審査では、海外において民営化した、若しくはコンセッション方式を導入した水道事業において、再び公営化に戻してしまう事例が近年増加しているにもかかわらず、そういった最新事例が本法案の検討過程において全く考慮されていないことが明らかとなっています。
 十分な海外事例の調査も行わないままに、多くの水道事業者が必要のないと考えているコンセッション方式を推し進めるのは一体何のためでしょうか。麻生副総理は、平成二十五年四月、ワシントンDCにおいて、日本の水道は全て民営化する旨の発言をされました。つまり、官邸の意向は、五年前から水道民営化ありきだったのではないでしょうか。官邸の強い意向により水道法改正案が作成されたのだとすれば、厚生労働省自身が諸外国の水道民営化に関する失敗事例の分析、調査をほとんど行っていない理由についても、つじつまが合うわけであります。
 国民や自治体の不安や懸念をよそに、結論ありきで突き進んでいく。安倍政権発足以来、このような姿勢を国民は一体何度見せ付けられればよいのでしょうか。
 立法府たる国会は、政府から提出された法律案について、ただ漫然と質疑時間を積み重ね、しかるべきときが来たら賛否の結論を出せばよいわけではありません。国会は、政府から提出された法律案について、立法事実は何か、法律案に問題点はないか、改善点はないか、今後想定される課題は何かなどについて、国民の代表である国会議員が、与野党問わず政府に対してただしていくことで議論を深め、結論を出していく場所であります。
 しかしながら、今般の本法律案における委員会審査は、そこから余りにも懸け離れたものでした。委員会審査における根本厚生労働大臣の答弁は質問と全くかみ合っておらず、コンセッション事業を導入するに当たっての自治体への支援策についてただしても、コンセッション方式の許可に当たって事前の審査をしっかりやると言うだけで、何ら具体性のない答弁に終始していました。
 仮に本法律案が成立することになれば国民の生活に極めて重大な変化がもたらされるのに、十分な説明責任が果たされないままとなっているほか、参考人質疑を経て更に議論を深めるべき点が掘り起こされたにもかかわらず、審議も十分に尽くそうとせず、水道民営化をごり押ししようとする姿勢は、到底許されるべきものではありません。
 水はまさに命の源であります。そして、水道はその命を支える重要な生活基盤であります。国民民主党は、生活者の立場から、これからも命と生活の根幹を支える水の安全、安心を守り抜いていくことをお誓い申し上げ、私の反対討論を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 119715254X00820181205_008

発言者: 礒崎哲史

speaker_id: 26665

日付: 2018-12-05

院: 参議院

会議名: 本会議