野口定久の発言 (国民生活・経済に関する調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(野口定久君) 日本福祉大学の野口でございます。本日は、この調査会に参考人としてお呼びいただき、光栄に存じております。
それでは、私の方からは、地域コミュニティーの充実に向けた方策についてお話をさせていただきます。(資料映写)
御承知のように、今は人口減少時代になっておりますので、その中である程度、経済成長もそう多くは望めないというところでいうと、これからは成熟社会というところでの地域コミュニティーをどう構想するかということを出しました。
それで、人口減少時代の地域コミュニティーの枠組みといたしましては、人口減少時代の特徴は、人口に占める働く人、いわゆる生産年齢人口の割合が下がってくることでありまして、この現象を人口学のところでは人口オーナス、負荷というように呼んでおります。
地域コミュニティーの行財政でありますけれども、今は財政難に苦悩する自治体がその出口の戦略をどうするかというところで悩んでいるわけですけれども、行政の事業や政策決定に住民が参加すること、それから地方財政の情報を住民に公開をする、そしてその上で新たな地域コミュニティーの財源づくり、コミュニティーファンドであるとかソーシャル・インパクト・ボンドの仕組みなど、こういう実践が進められております。
そして、地域コミュニティーのこれからのベクトルとしては、信頼に基づく緩やかな共同体の形成と社会福祉法人の公益的な活動に今着目がされているというところでございます。
そして、この図表一に地域福祉の形というのを示しました。特に、政府、市場、地域、家族というこういう構成要素の中で、マクロ、それからメゾ、ミクロ、特にメゾ、ミクロのところが地域コミュニティー、それから家族であります。ここのところを公助、共助、互助、自助というふうに並べたときに、こういうふうに政府、市場、地域、家族の要素というのは、公助、共助、互助、自助の役割であるというふうに考えております。
社会の安定を保つためには、社会の安心の基盤である社会保障制度や財源の調達が必須であります。現役世代の安心はもちろんですが、次世代の安心をも保障していくものでなければなりません。
これからの地域コミュニティーの形としては、近年では、家族が個人化し、家族構成員個々の問題を家族、世帯として受け止め切れない状況が発しております。問題が地域化、社会化する傾向が出てきております。
そして、公助、共助、互助、自助でございますが、マクロからの公共政策、これは国民国家によるナショナルミニマムに基づくセーフティーネットの基盤形成と、それから市場の中で社会サービスを多元的に供給していくと、こういうことが求められております。
それから、メゾ領域、特に地域コミュニティーのところでは、生活保障のシステムを支える再分配や財源の移譲を図る必要があると。ですから、生活保障システムは今まで公共政策として中央政府の役割とされておりましたけれども、これからは地方自治体、地域の中で生活保障の仕組みをつくっていくということが求められております。
それから、ミクロ領域の家族や世帯、個人では、互助と自助に基づいて生活力を回復をし、生活保障システムをこれによって補完していくということが重要だと考えております。
それで、今イギリスでは、孤独担当相というところが設置されました。もっと深刻な日本ではその対策があるのかどうかということでありますが、イギリスの場合には非常に、この六十五歳以上のうち三百六十万人がテレビが主な友達だというような調査も出てきております。そして、孤独でいるということは、一日にたばこ十五本を吸うのと同じくらい健康に悪いという研究もイギリスの中では出されてきているということで。
世界で孤独な人が増えている理由、これは一つは、高齢化によって一人で暮らす時間が長くなっているということであります。もう一つは、デジタル化が進み、人と人が直接触れ合う機会が減っているということも言えます。
OECDの二十一か国調査によりますと、友達や同僚と過ごす時間が余りないと答えた男性の割合は、日本がOECDの中ではトップであります。女性につきましても、世界で最も孤独な国の一つ、メキシコに次ぐ二位ということであります。
今、私も名古屋の中区という、ほとんどがマンションでございます。そのマンションの中で今孤独死が非常に増えてきているということであります。これは個人の問題にとどまらず、地域全体の重荷にもなり得るということを申し上げたいと思います。
独り暮らし高齢者の人数と割合は年々伸びてきているわけであります。特に、横須賀市などでは、葬儀や埋葬の有償契約を高齢者と交わすエンディングプラン・サポート事業というようなものも立ち上げておりますし、そこに民生委員さんや地域包括支援センターを通して地域ボランティアの方たちが独り暮らし高齢者のところを見守りということで回っております。
これは検視医の方からの話でございますけれども、孤独死の現場というのは、もうドアを開けると強烈な異臭と大量の虫が、遺体は腐敗しているというような非常に悲惨な状況であるということであります。私のマンションでもこういうことが起こったわけなんですけれども、早期に発見されても、故人に身寄りがないと判断されるまでは土地や家屋を行政が処分することはできないので、必然的に空き家の増加につながっていく、長い目で見れば地域が衰退していくというような大きな要因にもなりかねないということで、孤独死については、都市部それから過疎地域を含めてこの問題が出てきているということを申し上げたいと思います。
それで、次は、外国人労働者の受入れと地域コミュニティーの覚悟ということですけれども、現状では実習技能生の労働環境をめぐる様々な問題点が今指摘されているところであります。この状態が繰り返されてくれば、欧州のような、今非常に欧州がこの難民、移民の問題で分断された社会になってきているということでありますけれども、日本の場合も、外国人労働者の受入れというのは、生活者としての外国人を支援するために、行政サービスや医療・保健・福祉サービス、それから住宅、金融・通信サービスなどへのアクセスの確保、それから日本語教育の充実などが必要になってくる。課題は、こうした施策を外国人受入れの経験がまだ浅い自治体、それから地域社会、企業がどうそこに浸透していくかということが求められているというふうに思います。
それで、この図表二は、今非常に問題になっております生活困窮者自立支援事業の中で、制度のはざま問題というのが出てきております。それと、ソーシャルワークの包括的な支援が必要ではないかと。制度のはざま問題というのは、これは、制度がある程度限定されている中においては制度のはざま問題というのは出てくるわけでございます。
そうすると、私は、ここのAダッシュ、Bダッシュ、Cダッシュ、Dダッシュというような、こういうセーフティーネットを地域の中で張っていくためにも、その中で生活困窮者自立支援事業はこのAダッシュからDダッシュまでをカバーしているわけですけれども、特にその中で社会的脆弱層へのソーシャルワーク支援、特にこの、滑落型と呼んでいるんですけれども、ワーキングプアとかネットカフェ難民、孤独死、ニート、ホームレスというような人たちを、この社会的脆弱層のソーシャルワーク支援、特にここでは所得保障と社会サービスと相談支援、こういうソーシャルワーク支援、ここが、これから地域の中でもこういう専門職を地域に配置していくということが必要になってくるということであります。
それで、図表の三は、地域包括ケアの構図として、これはA群、B群、C群でありますが、A群は、これは各機関、施設からサービスを提供するという、これデリバリーシステム、ここは日本は介護保険制度で相当整ってきております。それから、これから必要になってくるのはB群のそれぞれの人たち、例えば八〇五〇と言われているような人たちのところでのソーシャルセーフティーネット、サポートネットワークですね、認知症の人たちを地域で見守ろうというような、こういうような活動であります。それから、もう一つ重要なのは、Cダッシュで、例えば神社や仏閣が、ここに佛子園の雄谷さんも見えますけれども、そこが寺子屋とか子供食堂とか健康体操とかいうことをやっておりますので、このような地域の資源を活用して、地域の中で住民の人たち、それから社会的に困っているような人たちがここで集まってやっていってはどうかと。そういう意味では、地域の資源というのは非常に重要であると考えております。
それから、この図表四のところでいいますと、地域共生社会、今地域共生社会の実現ということがうたわれているわけですけれども、そこのところでいいますと、当事者や家族の会、それから支援者や市民活動、それから地域住民が集まってくる場所、ここで交わっているところですが、ここがコミュニティーカフェであるとか子供食堂であるとか、そういうところでありますが、ここを数多く地域の中で膨らませていく、増やしていくという。ここには拠点施設、そして専門職の配置がどうしても必要になってくると考えております。
そして、これが地域共生社会の実現と総合相談体制の仕組みでありますが、伝統的な地域社会、コミュニティーが非常に今弱くなってきている、町内会の加入率も減ってきているわけですけれども、そこが抱えているものは、医療や福祉や介護や教育という問題を同時に抱えているので、これについては、NPOやボランティア活動など、企業や協同組合なども参画して、伝統的な地域組織と一緒になってこの問題を考えていくという、そういうところが私は緩やかな共同体ではないかというふうに考えております。そして、それを、丸ごと相談室というような総合相談体制の仕組みを持って、専門職がチームになってこれを解決していくというようなことであります。
そして、居住福祉学会というのは、私が所属しておりますけれども、これももう現場主義、現場の中から問題を解決するところを考えていきたいという、そういう学会でございます。
それで、ここでも中古住宅の流通と空き家の地域活用ということ、これも、先ほどの単独世帯が増えてきているということと併せて空き家が非常に増えてきているわけです。それも、今はそういうところで中古住宅を流通させて、空き家を先ほど申し上げたような地域で活用していくというような、こういうことが求められているのではないかと思います。
これで、居住福祉の町づくりというのは、転換期を迎える住宅政策は住宅の使い捨てから住宅を再生、活用していくということ。それから、列島、災害列島になっておりますので、日本は、そこでの居住問題ということ。それから、住まいと町づくりをつないでいくためのコミュニティーカフェや認知症カフェなどの実践は、地域社会から排除されやすい、また孤立しやすい社会的弱者の方たちの様々な居場所を福祉コミュニティーの創造の拠点として新たに位置付け直していく必要があるのではないかということであります。
これが、私が最後に申し上げたい地域コミュニティーの充実というところでは、包容社会ということを御提案申し上げたいと思っています。
分断社会から包容社会、それから緩やかな共同体への愛着ということで、第一層目がサービス、制度の中で期されているサービスでございます。それから、二番目のところが社会貢献型の市場サービス。NPO法人や社会的企業、それから企業などのサービス事業所、こういうところが一のところでは提供できないようなサービスを開発していく。そして、第三層のところでは、自治会活動の助け合いや、それから社会貢献活動、当事者との協働活動とか趣味サロン活動、認知症カフェなど、住民の方たちが社会に参加していくそういう機会を増やしていく。それによって一層、二層、三層を組み合わせたところが私は地域共生社会であると位置付けております。これで、包容社会、そして緩やかな共同体への愛着というところを目指してまいりたいというのが私の考え方でございます。
御清聴どうもありがとうございました。