岩井茂樹の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)
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○岩井茂樹君 ODA調査派遣第一班について御報告をいたします。
当班は、本年一月六日から一月十二日までの七日間、ベトナム社会主義共和国及びラオス人民民主共和国に派遣されました。
派遣議員は、大野泰正議員、秋野公造議員、斎藤嘉隆議員、矢田わか子議員、そして団長を務めました私、岩井茂樹の五名でございます。
まず、当班の調査の方針について申し上げます。
ODAの歴史は既に六十年を超え、初期の案件が更新されていく中、諸外国の支援の特性を比較し、評価を行うべき時期が来ております。今回の派遣で本特別委員会理事会により与えられた自由で開かれたインド太平洋戦略、質の高いインフラ輸出、日本の技術を生かした支援とのテーマに加え、当班は、近時、中国や韓国がインフラ整備における存在感を増す中で、我が国のODA支援の優位性を探るという視点を加味し、案件を選定いたしました。
ベトナムは、我が国が最大のODA供与国ですが、近時、公的債務抑制策の下に、ODAに関わる政策方針の決定、変更がなされ、我が国のホーチミン市都市鉄道整備事業を含む支払遅延等、様々な執行上の問題が生じております。さらに、我が国とは留学生、技能実習生派遣等の人材交流が活発な中、日本滞在中の失踪等の問題も生じ、新制度導入に向け問題状況を整理、解消する必要があります。
ラオスは、目覚ましい成長を遂げておりますが、なおASEANでは最も貧しい国で、インフラ整備も途上です。ODAの枠組みでは最大の支援国は我が国ですが、公的支援と直接投資の筆頭は、一帯一路構想の下、各国のインフラ整備に積極的に関与する中国です。当班は、中国と我が国の関わりの相違点を実地に調査すべく、国際的にも注目をされる大型案件、ラオス・中国高速鉄道を現地で視察することとしました。
ラオスの経済は水力発電による電力の輸出に支えられていますが、その先駆けとなったナムグムダムは、日本人技術者の尽力、日本の拠出に支えられ、建設されました。数十年を経てなお主力であるこのダムは、当時と同じ企業の技術者により、拡張のための高度な改修が進められています。一方で、ラオスは、昨年七月に韓国等の合弁企業が手掛けるダムが決壊をし大きな被害が生じ、原因究明及び復興の途上にあることから、ダムに関わる比較の観点も取り入れ、調査することといたしました。
両国では、これらの案件を中心に、現地視察、複数の所管大臣との面談、受注事業者との忌憚のない意見交換等、様々な角度から調査を重ねました。その結果得られた所見を三点御報告いたします。
第一に、日本の支援の優位性をPRする必要性であります。我が国のインフラ整備は高品質だが費用が高く工期も長いと言われますが、質の高さ、長期期間使用可能なこと、現地における雇用、最先端の専門技術と安全管理のノウハウの継承という利点を持つことから、費用対効果を考えると他国の支援よりもはるかに優れていることを積極的にアピールしていくべきです。
まず、質の高さですが、今回、ベトナムで、他国が整備し、開通して間もないハイフォン―ハノイ間の高速道路を通行しました。料金所やサービスエリアまで完備し、外観は日本と変わらないものの、走行中、衝撃にも近い大きな振動を何度も感じました。道路には早くも不等沈下が生じていたのです。地盤改良工事による工期の遅れと経費の増加を避け、早さと安さを優先した結果、質が伴っていないことは明らかでした。
これに対し、我が国の円借款利用のSTEP案件であるホーチミン市都市鉄道では、地盤の構造を詳細に検討、トンネルによる周囲への影響をあらゆる角度から検討し、その時点での最善、最上の対策を講じ、アフターケア管理にまで細心の注意が払われておりました。見えないところまで気を配り、その後の管理も欠かさない。ラオスのナムグムダムも同様の思想に支えられ、完成から五十年を経てなお活用されております。長期間使用できる、長期的なライフサイクルを見て質と安全性が確保されている、これこそが日本支援の真髄です。
次に、我が国は、インフラそのものにとどまらず、現地における雇用を通じて最先端の専門技術、知見及び安全管理のノウハウをも供与していることもアピールすべきです。
我が国は、現地採用の技術者、労働者に対し、OJT等を通じ、専門技術を惜しみなく伝授しております。安全管理教育は、現地進出歴が長い帝国通信工業を始め、全ての現場で徹底されておりました。日越大学やパスツール研究所では、我が国の最高レベルの知見をベトナム、ラオスの発展につなげようとの意気込みに心打たれました。都市鉄道視察の際には、ベトナムの技術継承、現地採用スタッフの育成に注ぐ担当者の情熱に驚くばかりでした。また、ハイフォンのラックフェン国際港では、ニャッタン橋事業で雇用されていた現地技術者等の活躍ぶりにも接しました。日本のみへの利益還元にこだわらず、多くの現地雇用を生み出し、主要資材も現地で調達。まさに利他の精神が具現化されておりました。
これに対し、ラオス・中国高速鉄道では、資材の供給もコントラクターもほぼ中国企業が独占し、ラオス企業は僅かに下請に入るのみです。しかも、報道によると、整備後の一等地となる路線周辺の両側五十メートルの土地等について、中国が無償の永年使用権を与えられ、ラオスは開発に関わる利益にはあずかれないとのことであります。
なお、鉄道の運営事業体はラオスと中国の合同出資ですが、ラオス政府出資の多くは、鉱物資源等を担保に中国の金融機関から借り入れられているとも聞いております。山に囲まれた、他国との交通手段が限られてきたラオスは、悲願の鉄道建設のために子孫代々まで借金漬けになるのではないかと危惧します。
付言しますと、ハイフォンの高速道路は閑散としておりました。高利の借入金を通行料金で返済していくため、非常に高額な通行料金が設定され、利用が進まないのです。巨額の借金で見た目は立派な施設がすぐに手に入るが、質を伴わず、国民の利用も進まず、残るのは借金だけとなりかねません。
円借款も相手国にとっては借金です。長く借金を抱えることになる相手国には、競合国の売り込みが激しい今こそ、長く使える施設とともに国を支える技術も伝え、将来の国民も含めて幸福にするという日本のインフラ整備、援助の真価を積極的にアピールする必要があると考えます。
第二に、多角的な調査の必要性について申し上げます。
案件を絞り、様々な角度から調査した結果、特に複数の省庁が関わる案件についてはそれぞれから話を聞く必要があると痛感しました。
ベトナムでは、公的債務を管理する財政大臣、ODAを誘致する立場にある計画投資大臣、そして教育訓練副大臣と都市鉄道未払問題、ハイフォンでの個人所得税減税問題、日越大学の財務問題、VAT未払問題、巡視船建造問題等について意見を交わしましたが、管轄、責任の範囲も含め、発言のニュアンスが微妙に食い違うところもあり、問題の根深さ、複雑さを痛感しました。
ラオスでは、ラオス・中国高速鉄道及びダム決壊事故について、それぞれ所管大臣と個別に懇談した後、さらに場を改め、両大臣及び国民議会委員長と忌憚なく意見を交換する機会を得ました。それぞれの立場により、受け止め方が異なり、見える構図が変わってくることも実感しました。
相手国政府全体としての方向性をしっかり見極めていくためにも、今後とも多角的な調査を実施する姿勢が必要であることは強く申し上げたいと思います。
第三に、参議院ODA派遣を戦略的に使える環境を整備する必要性について申し上げます。
今回の調査に際しては、事前に問題意識を持って勉強した上で案件を選択し、現地に臨みました。そして、行政のレベルでは相手方の対応方針がはっきりせずに膠着状態に陥っていた執行中の案件について、国民の代表として、自らの言葉で大臣等の責任者に直接ただし、事態の解明、前進に貢献できたものと自負しております。ベトナムODA案件を受注する建設会社等からは、今回の派遣を心から歓迎し感謝する旨が表明されるとともに、今後も定期的なフォローアップをしてほしいとの強い希望が出されました。
このようなバックアップはODA派遣の大きな意義ですが、それには、リアルタイムの情報と、大使館、JICA、現地事業者等の密接な連携が不可欠です。今回訪問したベトナムのJICA事務所は日本語による情報発信にも熱心であり、また、都市鉄道に関わる大使の動きは海外メディアでも取り上げられましたが、例外的なケースかと思います。
ODA派遣をより活用すべく、執行過程で発生した問題の解決を参議院として後押しする体制、すなわち、行政レベルでの解決が困難という事態が生じたら、早い時点で参議院に向け何らかのSOSを発信でき、参議院側もこれを受け止め、派遣につなげていく枠組みを考えてもよいのではないでしょうか。さらに、我々が踏み込んで議論できるように、関係機関においては、冒頭でも申し上げましたが、各国の支援の状況について、供用後の経過も含めて比較、評価した上で、我が国の優位性をアピールできるような資料を積極的に整え、提供していただきたいと思います。
最後になりますが、今回の調査に当たって多大な御協力をいただきました視察先の関係者、外務省及び在外公館、JICAを始め、JICAボランティア及び専門家、日本企業関係者の方々に改めて感謝を申し上げます。
以上でございます。ありがとうございました。