久保元樹の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)
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○参考人(久保元樹君) ただいま御紹介いただきました日東建設の久保と申します。
私からお話しさせていただく内容は、意見というよりかは、民間企業としての目線から、JICAさんの事業を活用しまして海外展開に至った理由ですとか経緯、その内容、感想などについて率直なお話をさせていただこうというふうに思っております。
中小企業といっても、その定義はかなり広くて、規模の大きな会社さんというのもいらっしゃいますが、弊社は北海道の地方にある非常に小さい企業でございます。先ほど民間企業の目線からお話しさせていただくと申し上げましたが、小企業の目線からの話題提供であるということを先に御了承いただければというふうに存じます。
スライドを用意しておりますので、皆様のお手元にもお配りはしておりますが、これに沿ってお話をさせていただきたいというふうに思います。(資料映写)
まずは、弊社の会社の概要となっております。弊社は、北海道、オホーツク海に面した雄武町というところに本社を置く小さな建設会社でございます。資本金は二千万円、従業員数は五十七名というふうになっております。
雄武町は、人口が約四千五百人ほどの小さな町でございまして、漁業ですとか酪農が盛んな町となっております。弊社は、この町で道路建設を始めとしました土木構造物の建設をなりわいとする建設会社でございまして、皆様の安心と安全を守るべく日々の業務を行っておるといった会社でございます。このほかに、二〇〇〇年頃からコンクリート構造物の健全性診断の調査業務というものに進出をいたしまして、二〇〇三年から非破壊検査機器、非破壊検査技術の研究開発ということに取組を開始をいたしまして、現在では各種測定機器のメーカーという立場でもあります。
弊社の主力装置というのをちょっと御紹介するんですが、スライドの右上に映っているコンクリートテスターという機械になります。商標としては、クボハンマーという商標が付いております。この装置は、加速度計、ハンマーの中に加速度計というものが内蔵されておりまして、このハンマーでコンクリートをたたくことによって得られる打撃力の波形というものを採取するんですが、これを分析することで、コンクリートの強さですとか、表面の近くにある浮きですとか剥離など、そういった検出が可能な測定装置というふうになっております。これらの装置の海外展開の一環といたしまして、ODAに関わる制度を用いて活動させていただいております。
弊社が測定器開発に至った経緯とそれから海外展開に至った経緯について軽くお話をさせていただきたいと思います。
弊社が土木工事から測定器ですとか測定技術の研究開発を始めたというそのきっかけは、日本における公共投資の減少ということと、それからインフラの老朽化という喫緊の課題、こちらが背景にございます。要は、雄武町のような小さな町に関しましては、雇用機会が非常に少なくて、建設業が担っているその役割というのは相対的に大きなものになっております。工事、公共投資の減少によって事業縮小を余儀なくされ、余剰人員の解雇ということを恐れた弊社の社長が、異業種分野へ進出することによって地域の雇用を守ろうというふうに考えました。
異業種分野の進出に関しましてはいろいろな方向があったんですが、インフラの老朽化による事故というのが測定機器、測定技術開発への大きな契機というふうになりました。具体的に言うと、一九九九年、新幹線のトンネルでコンクリート片が落下したという事故がございましたが、これがそれに当たります。そういう背景がありまして、二〇〇三年に北海道経済産業局様の補助金を受けて測定器開発を行いました。
開発当初は国内展開のみを対象としておりまして、海外展開というのは頭にはございませんでした。ところが、ある機会から、二〇一〇年にアメリカに販売代理店というものを設置をいたしまして英語版のホームページを立ち上げたところ、世界各国から問合せが入るようになったという経緯がございます。これによって、日本国内だけではなく、全世界的にこういった測定装置の需要があるということを知りました。ただ、弊社は海外展開の経験も知識もないという状態でございましたので、二〇一一年ですかね、ジェトロさんの事業に採択をされまして、これをきっかけに本格的に海外展開へ進むといったことになりました。
この中で、二〇一二年にイギリス・エジンバラで開催された国際学会で弊社の技術を発表したところ、このときにナイジェリア人の技術者とのつながりが生まれました。また、ちょうどこの頃、JICAさんで民間提案型の普及・実証事業というものが始まっておりました、今はちょっと名前が変わっておるんですけれども。弊社は、これを新たな海外展開の一環といたしまして、イギリスで出会ったナイジェリア人技術者とのつながりということを基に、対象国をナイジェリアとして応募をさせていただきまして活動させていただきました。
その後もいろいろ新しい測定技術、測定装置の開発を手掛けながら海外展開を図っております。現在では、タジキスタンということを対象にJICAの案件化調査というものをさせていただいております。
こちらのスライドは、コンクリートテスター、弊社の装置の販売実績となります。海外には五か国に販売店がございます。拠点としては六拠点となるんですけれども、まだまだ少ない数量ではございますが、現在までに六十八台の売上げとなっております。ちなみに、日本国内だけでいくと約七百台という売上げになっております。市場規模からするとまだまだ発展途上かなと思っておりますので、これからますます頑張っていきたいと思っております。
弊社の海外展開の目的と海外展開に対する基本的な姿勢について御説明をいたしたいと思います。
海外展開の目的に関しましては、さきにも御説明させていただきましたが、地域の雇用を守るというのが最大の目的でございます。北海道は道路インフラの整備というのが本州と比較して遅れておりましたが、整備スケジュールというのが具体化いたしまして、今後十年から二十年である程度整備されることとなります。当然のことながら、その時期には公共投資は減少するとともに、新しく物を造るという時代から維持管理をするという時代へ移り変わっていきます。弊社では、測定技術や測定器の開発、製造、販売ということを早い時期から行うことでシェアを確立いたしまして、地域の雇用を創出するということを目標としておりまして、この海外展開というのはこの目標を達成するための事業の一環というふうにして位置付けております。
海外展開の手法といたしましては、先進国とそれから発展途上国、開発途上国と言ったらいいんでしょうか、考えております。先進国につきましては、ある程度自由に民間企業がその国に行って活動できる、国としての仕組みですとかルールというのがしっかり確立されておりますので、この辺に関しては弊社自らにより販路を開拓していくという姿勢を持っております。ただ、発展途上国におきましては、このような国としてのルールですとかシステムというのが未発達であったり矛盾があったり、いろんな難しい問題があると、それから元々の情報量も少ないというところから、ちょっとリスクが我々にとっては大きいというところがございましたので、JICAですとかジェトロといったような公的機関の事業を活用しつつ足掛かりをつくるということを基本的な姿勢としております。
こちらからは、JICAさんで行った普及・実証事業の概要について御説明をさせていただきます。
事業の対象国としてはナイジェリアを選択しているのですが、これは、ナイジェリアの人口が当時で約一億七千万人ほどおりまして、また経済規模が大きいと、アフリカの中でも今は一番ですかね、になっています。なので、潜在的な需要が非常に大きいというのが理由でございます。本心を言うと、ジェトロの事業の一環で出会いましたナイジェリア人技術者とのつながりというのがあった、信頼できるネットワークがあったというのが本音のところでもございます。
また、ナイジェリアでは現在幹線道路の整備拡充が行われているんですが、予算ですとか技術力、資材不足などにより、舗装されている道路、それから舗装されていない道路共に良好に管理されている状況とは言えないと、こういうのも背景にあります。実際に事業で現地の高速道路等を走りましたが、舗装に大きな穴ですとかが空いておりまして、その穴に落ちそうになったことも何度かはありました。
また、橋の防護柵というところですが、車の衝突がしたんでしょうか、破損しているところがあって、それもそのままの状態になっているという危険な状況でした。その橋の下には幹線道路が走っていて、交通量も多いんですけれども、そのコンクリート製の防護柵が落下すると大惨事につながるというような危険な状況もございました。
このような中、橋梁点検に関する実習プログラムというのを構成し、その中で弊社の測定器を活用するといった方策で普及を図ったのがこの事業でございます。弊社の測定器というのは、コンクリートの情報を得るためのハードウエアでありまして、橋梁点検を行って管理するというソフトウエアがあって初めて有効に活用されると考えております。
また、ナイジェリアでは、急ピッチでインフラが整備される中、近い将来、必ず日本と同じく構造物の老朽化という問題に直面することになります。今のうちから維持管理に力を入れる重要性を現地技術者に分かってもらうということが、ナイジェリアのインフラが抱える問題の解決、ひいては弊社製品の普及につながるというふうに考えております。
この事業をやらせていただいて、現地企業との販売店契約を結びまして弊社製品の普及の足掛かりを得られたということがこの事業での成果というふうになっております。
普及・実証事業を実施した後のその後の展開についてなんですけれども、弊社製品というのは測定器という側面を持っておりまして、食材ですとかそういう一般消費財とは異なって、測定原理ですとかそういう専門的な説明が必要な商品となります。このため、現地企業の人材育成が欠かせないというふうに考えておりました。この実証事業の成果で現地企業と販売店契約を結んだんですけれども、この販売店契約を結んだ先の現地の技術者から日本で勉強したいというふうな相談を受けました。これは人材育成のチャンスと捉え、この相談を受けることにしたんですが、実際に受けるに当たってどのような方策がいいかと探していたところ、JICAからABEイニシアティブをやっているという情報をもらいました。この制度を使って人材育成が可能だと判断いたしまして、現在では二名の若手技術者が徳島大学の大学院の修士課程に入りまして、非破壊検査に関する研究を行っております。
弊社は、この二名の若手技術者をインターンシップで受け入れまして、点検ですとか調査業務の知識や、弊社製品を始めとした非破壊検査装置の製造、測定原理の習得、アフリカにおける弊社製品の販売戦略ですとか建設現場の品質管理など、土木に関わる内容について学習をしてもらっています。日本で様々な技術を勉強してもらうということで、将来的に弊社技術のみならず日本の技術をアフリカで普及させるための大きな力になるということを確信をしております。
こちらのスライドは、ABEイニシアティブの経緯ですね。時系列になっております。二〇一六年と二〇一七年にそれぞれ一名ずつ徳島大学の修士課程へ入っております。今年の三月に一名が修士課程を修了する予定でおります。
現在の弊社の活動なんですが、タジキスタンというものを対象にJICAの案件化調査をさせていただいております。ナイジェリアでの経験から人材育成が非常に重要だということを教訓として得ておりましたので、ここでは、タジキスタン工科大学の学生も含めて、何か効果的な事業が展開できないかというところを模索しているところでございます。
最後になりますけれども、弊社の製品は一つのツールでありまして、それ単体で目的を達成できるものではございません。このため、国が進める政策の中にスペックインさせるということが途上国での普及の一番の近道ということになります。ただ、途上国に関しましては、新しく造るということには非常に意欲的ではございますが、これに対しまして維持管理については、現地技術者は非常に重要性を認識しながらも実際にはきちんと行われていないといったような現状があります。この意識を改革していくといった活動が非常に重要と感じています。そのためには、時間が掛かりますが、人材を育て、橋梁点検などのシステムを途上国に定着させていくといったような活動が必要であるというふうに感じております。
また、弊社のような田舎の小さい企業というのは、こういう海外展開に関しまして人材的にも資金的にもかなりぎりぎりの状況で活動を行っています。こういう目標を達成させるには弊社の力だけでは困難なところもございます。今後も、JICAさんですとか、そういった日本が実施する支援策というものを上手に活用しながら海外展開を図っていきたいと考えております。
私からは以上となります。ありがとうございます。