紙智子の発言 (本会議)
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○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
会派を代表して、国有林野の管理経営法の一部改正案について、農林水産大臣に質問します。
安倍政権の六年半で、日本の農林漁業が大きく変化させられてきました。
安倍政権は、農林漁業を国際市場に売り渡すTPPなどの貿易自由化政策、国際競争力強化と称する農林漁業の成長産業化、輸出産業化、企業化などを推進する規制緩和を進めてきました。
安倍首相が公言する、企業が一番活躍できる国づくりを具体化するために、多国籍企業の種子支配に道を開く主要農作物種子法を抜き打ち的に廃止したのを始め、自由化、国際化を推進するための農業競争力強化支援法を制定し、卸売市場法の改悪では、中央卸売市場への民間参入を認め、取引ルールの規制も緩和しました。昨年の年末には、漁業者を置き去りにしたまま漁業法の改正を行いました。
現場の受け止めはどうでしょう。日本農業新聞が四月二十五日に発表したモニター調査によると、安倍政権の農政を評価できないという回答が約七割です。その中でも、規制改革推進会議に基づく官邸主導の農政については、八三%が評価できないと答えています。安倍政権の農政がなぜ現場から支持されないのでしょうか、答弁を求めます。
今回の国有林野法改正案も、出発は安倍晋三総理が議長を務める未来投資会議での提案からです。
農林水産省の諮問機関である林政審議会会長の土屋俊幸東京農工大学教授は、衆議院の参考人質疑で、今回の改正案が未来投資会議の提案で始まったことに言及し、トップダウンで行われた、長い複雑な成立経緯と多様な公益的機能を併せ持つ国有林の重要な経営判断は少数の非専門家に委ねるべきではないと不快感を示しました。大臣、林政審議会会長の発言に対する認識をお聞きします。
安倍晋三総理が議長を務める未来投資会議において国有林の見直しを初めて提案したのは、林業をもうけの対象にしようとする竹中平蔵氏ではありませんか、答弁を求めます。
森林・林業基本法第五条は、国民の共有財産である国有林には三つの使命と役割があると言っています。第一は公益的機能を発揮すること、第二に林産物の計画的、持続的供給をすること、第三に地域振興又は住民の福祉の向上に寄与することですが、間違いありませんか。大臣、お答えください。
本改正案は、国有林が持っている三つの役割を損ないかねない問題を持っています。
第一は、地域経済を支え、地域に根を張って活動している中小林業家が淘汰されかねない問題です。
国有林野の立木販売の販売先になっている事業者は、件数、材積共に、地元事業者が八割以上、中小事業者も八割以上を占めています。
大規模な林業経営者を育成するために、農林水産大臣は、樹木採取区を指定します。樹木採取区とは、樹木の採取に適する相当規模の森林資源が存在する一団の国有林の地域であって、国有林と民有林に係る施策を一体的に推進できる区域です。なぜ民有林に隣接する区域なんでしょうか。それは、民有林のみでは利益を上げることができない経営者に、国有林をも提供して利益を上げてもらうためです。
つまり、樹木採取権を取得した大規模林業経営者は、広大な地域において、大型機械を導入し人件費などのコストを抑えることによって利益を最大化できるのです。これでは、地域経済を支えている中小林業家が淘汰されるのではありませんか、明確な答弁を求めます。
しかも、国有林を伐採する権利、樹木採取権は、最大五十年もの間、排他的、独占的に使用し収益を得る権利を与えるものとなっています。バイオマス発電事業者やハウスメーカーなどが五十年もの間、樹木採取権を手に入れることが可能になります。大規模林業経営者や企業に至れり尽くせりの政策ではないでしょうか。長伐期で何度も間伐する自伐型の林業者が排除されるのではありませんか、答弁を求めます。
第二は、国有林が持っている公益機能が損なわれる問題です。
森林には、国土の保全、水源の涵養、地球温暖化、生物多様性の保全など多面的機能があります。日本学術会議は、森林の多面的機能は、貨幣評価できる部分だけでも年間約七十兆円に上るとの答申を出しています。
改正案は、林業経営者に、公益的機能の維持増進を条件に伐採できる権利、樹木採取権を与えていますが、伐採の跡地に植栽する義務が課されていません。これでは、国有林が荒廃するのではありませんか、明確な答弁を求めます。
これだけではありません。国有林を伐採した後に植栽するのであれば、費用は税金で負担すると言います。伐採して利益を上げるのであれば、山が後退しないように植栽して国に返すのが当然ではないでしょうか。利益が上がれば、その利益を国民に還元すべきです。植栽は、伐採した業者が責任を持って行うのが当たり前ではありませんか、答弁を求めます。
国民の共有財産である国有林を、なぜ企業が利益を上げるために提供するのでしょうか。それは、世界的に生物多様性、環境保全を求める動きや持続的な生産体制を自国で育成する動きが進み、輸入材を優先してきた木材の供給が困難になりつつあるからではありませんか。国産材を犠牲にし、輸入偏重で行ってきた政府の林業政策そのものが問われているという認識はありますか。大手木材メーカーや燃料材を求める大規模なバイオマス発電会社が国産材を安く手に入れたいと求めているから、国有林を民間に払い下げようとしているのではありませんか。大臣、お答えください。
昨年、安倍晋三首相は、戦後以来の林政改革に挑戦しますと言って、森林経営管理法を強行しました。これは、素材生産者を初めて森林経営の担い手に位置付け、森林所有者を意欲と能力がないと決め付けて、森林所有者の経営権に介入し、強権的に経営の自由を奪うものでした。企業が利益を上げるためには、林業所有者の経営権に介入する、今度は国有林も提供する、これが安倍内閣が進める戦後以来の林政の大改革ではありませんか。大臣、明確にお答えください。
国有林は、国土面積の二割、森林面積の三割を占め、奥地山岳地帯や水源地帯に広く分布しています。国有林の九割が保安林に指定され、国土保全や環境保全など国民生活にとっても重要な役割を担っています。
歴代自民党政権は、国有林には保安林が多く生産活動が制限されているにもかかわらず、無理な独立採算制を求めたことから、荒廃と借金漬けが続きました。国有林の管理経営責任を果たさずに、一般競争入札などで民間開放を進めました。安倍政権は、この路線を今回の法改正によって加速させ、国有林が果たすべき役割を更に損なおうとしています。
日本共産党は、国有林の持つ役割を確実に実行するためには、技術者を育成確保し、自治体、住民との連携を図り、地域の経済や雇用に配慮をした持続的な管理経営に取り組むことを提案し、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣吉川貴盛君登壇、拍手〕