伊藤孝恵の発言 (本会議)
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○伊藤孝恵君 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問させていただきます。
児童虐待を許さない、そう誰かが叫ぶたびに、私は一瞬痛みを感じます。自分だって、子育てをする中で、怒ったりいら立ったり、電車の中で大声で泣く我が子の口を押さえたこともあるからです。児童虐待は人ごとではありません。だからこそ、こんな不完全な私と共に生きる娘たちが、また彼女たちのみならず、この国に生まれた全ての子供たちが愛され、抱き締められて育ってほしいと切に願い、以下、質問させていただきます。
昨年三月、東京都目黒区で、パパ、ママ、もうおねがい、ゆるしてと、覚えたての平仮名で両親に許しを請いながら五歳の短い生涯を閉じた女の子のふびんを思い、多くの官僚や議員が、立法府にいる自分たちに何ができるかを考え、奔走したことがここに至る原動力だったと思います。
我々国民民主党も、一家が転居前に暮らしていた香川県に行き、現地の関係者から話を聞かせていただきました。そこで預かった声を児童福祉法等の改正案としてまとめ、昨年六月、野党共同で提出いたしました。残念ながら、それは審議されることもなく、今年一月には、またしても千葉県野田市で十歳の女の子が虐待により命を絶たれました。いつまでこんな悲劇を繰り返すのか、我々の案をせめて見ていただきたい、大きな焦りと無念を感じてきました。
まず、児童福祉司の増員について安倍総理に伺います。
児童相談所において児童虐待を含めた諸問題に直接的に関わっておられるのが児童福祉司の方々です。香川県で話を伺った際も、とにかくこの児童福祉司が足りないのだと悲痛な声をお寄せいただきました。我々は、まずここに手当てすべきだと考え、野党案にその増員規定を盛り込みました。その後、政府も、児童福祉司の増員に言及した対策プランを決定しました。にもかかわらず、今年三月に提出された政府案には、児童福祉司の増員について触れられてもおりませんでした。なぜですか。
今般、衆議院において、与野党の先生方の御努力の下、本法案が全会一致をもって調えられたことは大変意義深いことです。しかし、なぜこの児童福祉司の増員について明記することは許されなかったのか、理由をお聞かせください。児童福祉司の数を法制化して増やしていくことにどこからどんな異論があったのか、教えてください。
本法案の中に、総合的に勘案して定めると書き込むだけでは、勘案した結果、人数は一・一倍が妥当でしたなどと結論付ける余地を残してしまいます。これでいいのでしょうか。
政府のプランによる対策のみで、どのように現場の声に応え、児童相談所の体制強化を図っていくのか、本当に実効性のあるものになっているのか、プランの具体的な内容と総理の見解をお聞かせください。
次に、中核市及び特別区における児童相談所の設置について伺います。
千葉県野田市を管轄している柏児童相談所は県のものです。柏市は中核市ですが、事件が起きた当時も現時点においても、市の児童相談所は所在しておりません。この柏市のみならず、中核市における児童相談所の設置は一向に進んでおりません。もちろん、それぞれの市が抱える事情はあることは承知しておりますが、それでも、どんな事情があるにせよ、児童虐待防止に取り組まないという選択肢はないはずです。
衆議院厚生労働委員会に参考人として出席した、中核市である明石市の泉市長は、基礎自治体である中核市だからこそ必要、大切なのは腹をくくること、人がいないのであれば育てることだなどと答弁されています。
総理に伺います。
中核市や特別区の児童相談所の必置義務化については、既にその必要性が長年にわたって指摘されているにもかかわらず、本法案にも結局盛り込まれませんでした。なぜですか。自治体からの反対の声があるから、時期尚早だからと説明されましたが、誰からのどんな反対の声ですか。では、一体いつになったら時期尚早ではなくなりますか、お答えください。
児童相談所をつくるお金はないと市長がおっしゃるのであれば、国は何ができるのか考えませんか。児童相談所の設置など必要ないと区長がおっしゃるのであれば、つくる動機付けに奔走しませんか。
政府案には、中核市や特別区が児童相談所を設置できるよう支援を行うとの検討規定が盛り込まれました。どんな支援でしょうか。これまで設置が進まなかった中核市及び特別区に対し、これまでの支援とどこが違っているのか、本法案によってどのくらい設置が促進されると見込んでいるのか、総理の御所見を伺います。
総理は、何よりも子供の命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くすと度々おっしゃいます。であれば、あらゆる事情をのみ込んで、設置を義務化すべきではありませんか。また、五年間という支援期間は余りに長過ぎます。一時保護所の拡充と併せて再考いただけませんか、御答弁ください。
次に、児童が転居した場合の引継ぎについて伺います。
我々は、転居時の引継ぎ強化の重要性を訴えております。今回、修正協議において、その趣旨を御理解いただき、法文に明記していただいたことについては感謝いたします。しかし、野党案では、転居前に当該児童に指導等の措置がとられていた場合、転居後一か月間は措置を解除してはならないとしていた部分、一か月という明確な期限を定め、引継ぎを徹底するところまでは受け入れていただけませんでした。
そこで、総理に伺います。
これまでの事件を教訓に、期間を明確に定めて措置を継続することは不可欠だと考えますが、これを書かない理由について見解を伺います。特に、東京都目黒区、千葉県野田市の事案において、転居時の引継ぎ強化なしに彼女たちの悲鳴を聞きに行けたのか、本法案をもってすれば救えたのか、二人の女の子からの命懸けの問題提起です。御答弁ください。
体罰の禁止についても伺います。
我が国が批准している児童の権利条約にも規定されている内容が盛り込まれたことは、大きな一歩です。今後、この体罰とは何を指すかについて厚生労働省からガイドラインが示されるとのことですが、誰が、いつ、どのように検討するのか、根本厚労大臣、お答えください。
他方、懲戒権の検討について、本法案では、施行後二年を目途に検討することとしております。先日、法制審議会に今月中にも諮問する旨を発表されたと承知しており、大変迅速に動いていただいたのだと思いますが、そうであれば、果たして二年という検討期間は必要なのか。
衆議院厚生労働委員会の附帯決議では、民法の懲戒権の在り方については早急に検討を加えるとされております。
法務大臣に伺います。
懲戒権の規定の在り方について、具体的に、誰が、いつ、どのように検討するのか、既に決まっている内容も含めて、具体的にお答えください。あわせて、本法案の検討規定で定められた二年という期間について、附帯決議にある、早急に検討との時間的整合性についても見解を伺います。
報道に、体罰禁止規定、懲戒権の検討などの文字が躍るたび、友人たちから、お箸の持ち方が違うと手をたたいてしまった私は罰せられることになるのか、宿題をやらなかったからおやつはあげないと言ったら、これも懲戒に当たるのか、そんな素朴な疑問が私の下に寄せられます。
体罰や懲戒の線引きや定義の議論をする過程については、どうか努めてオープンに、慎重に、また、子育て世代の多くの実感や現実を取り入れていただきたく存じます。両大臣の答弁を求めます。
児童虐待をしてしまった保護者に対する再発防止のための支援プログラムについて伺います。
子供の安全をまず何よりも守る、虐待する親と引き離す。それが必要なのは間違いありません。しかし、それだけで子供たちは幸せになれるのか。どんなに虐待されても、子供は目を閉じ、まぶたの母、まぶたの父を求めるといいます。
子供の安全を確保した上で、親には変わるチャンス、宿題を課す。それを乗り越えてきたなら、親子の再統合を試みる。親が親になっていくチャンスを確保しつつ親権制限をしていく仕組みというのが、今の日本にはありません。
本法案には、保護者支援プログラムが野党案の一部を取り入れる形で盛り込まれましたが、努力義務にとどまっております。このようなプログラムを意欲的に受けたいと申し出る保護者は少ないと思われる中、支援が必要な方には確実に受けてもらう必要があるからこそ、野党案では義務化としました。
保護者への指導実施に当たり、本法案でどのような実効性を担保できるというのか、総理の見解を伺います。
最後に、内密出産について伺います。
児童虐待によって亡くなった子供たちは、平成十五年から二十七年度までに六百三十六例、六百七十八人おります。そのうち、ゼロ歳児の割合は四六・二%、中でも、ゼロ歳ゼロか月ゼロ日ゼロ時間、つまり産声を塞がれて命を奪われた赤ちゃんが一八・三%と、虐待死の中で一番多いのです。
我々はもう、家族観や宗教観を超えて議論を始めなければなりません。総理、匿名で出産し、子供は後に出自を知ることができる内密出産について、御所見をお聞かせください。
幾ら子育て支援センターを充実しても、その支援が届かない、窓口に母子手帳を取りに来ることすらできない母親がこの国にはいるのです。たくさんの課題があろうかと思います。議論すら必要ないと言い捨てる議員も数多くおります。しかし、今も生きているはずの命がそこにあります。御答弁をお願いします。
我々国民民主党は、これからも児童虐待防止に圧倒的当事者意識を持って取り組むことをお約束し、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕