山本香苗の発言 (本会議)

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○山本香苗君 私は、自民・公明を代表し、ただいま議題となりました児童福祉法等改正案につきまして、安倍総理に質問いたします。
 子供たちが巻き込まれる自動車事故や殺傷事件が相次いでいます。改めまして、心からお悔やみを申し上げますとともに、お見舞いを申し上げます。政府におかれましては、なぜこうした事件、事故が起きたのか、その背景を解明するとともに、子供の命を守る対策の一層の強化に取り組んでいただきたい。まず冒頭、強く要望いたします。
 痛ましい児童虐待事件も後を絶ちません。子供たちの命を守るのは私たち全員の責任です。この責任を果たすため、先般、衆議院で与野党が修正協議を重ねた結果、全ての会派が合意し、修正案が取りまとめられました。参議院においては、より充実した審議を通じて責任を果たしてまいりたいと考えておりますが、総理は与野党で修正合意された本改正案をどう評価しておられるのか、また、本改正案によって児童虐待をどう根絶していくお考えか、総理の御決意を伺います。
 お父さんに暴力を受けています、先生、どうにかできませんかという必死の訴えがあったにもかかわらず、千葉県野田市の事件では、子供の最後のとりでである児童相談所も、学校、教育委員会も、市町村等関係者も、リスクを見極めることができず、使える仕組みもチャンスもいっぱいあったにもかかわらず、幼い命を救うことができませんでした。昨年の目黒区の事件も全く同じです。無念でなりません。
 昨年十二月、児童虐待防止対策体制総合強化プランが策定され、児童相談所の人員体制の強化に加え、新たに市区町村における体制強化が盛り込まれました。人員体制の強化は不可欠です。しかし、それ以上に今求められているのは、職員の専門性の確保とその維持体制の確立ではないでしょうか。
 児童相談所の職員が虐待の兆候やリスクを見極めて適切に介入するには、知識だけではなく、五年から十年の経験が必要です。しかし、二〇一八年四月時点で十年以上の勤務経験がある児童福祉司は全体の一六%にとどまり、三年未満が約四割を占めています。
   〔議長退席、副議長着席〕
 厚生労働省では、二〇一七年に児童相談所や市町村職員を対象にした研修の基準を策定しましたが、全国の一般的な職員の異動サイクルは三年から五年程度です。虐待を見抜く力やリスクを的確に判断できる力が身に付く前に異動しています。このままでは、幾ら研修を強化しても、組織としての専門性はいつまでたっても育ちません。
 本改正案と同時に決定された政府の抜本的強化策には、専門性確保のため、一定の経験年数を積んだ職員が確保できるような人事ローテーションへの配慮等が行われるよう要請するとありますが、これでは今までと同じです。幾ら法改正を重ねても、制度改正しても、同じ過ちを防ぐことはできません。
 そこで、総理にたってのお願いです。
 総理のリーダーシップで、知事会、市長会に働きかけて協議の場をつくり、地方公務員である福祉専門職の人事や人材育成の在り方を議論し、実効ある取組としていただけないでしょうか。総理の明快かつ力強い答弁を求めます。
 次に、情報共有の在り方について伺います。
 支援を行っている家庭が他の自治体に転居する際、転居先の自治体を管轄する児童相談所にケースを移管するとともに、当該家庭の転居先やこれまでの対応状況など、必要な情報提供をすることとなっています。
 しかし、児童相談所間の情報共有はいまだに電話、ファクスがメーンです。児童相談所と市町村間は、基本、紙ベースです。ケース移管の書類が転居先に届くまで時間が掛かります。その間の情報共有は主に電話となりますが、複数の自治体の間で情報共有しなければならない場合、電話では限界があります。かつ、電話では正確かつ詳細な情報が伝わりにくく、リスクの認識をうまく共有することができません。
 こうした課題を解消するため、今年度、同一都道府県内の児童相談所と市町村の間の情報共有システムを構築するに当たって国が半額補助する費用が計上されましたが、全都道府県で確実に導入されるのでしょうか。全都道府県で、かつ同一都道府県内のみならず都道府県をまたいでも情報共有できるよう、更なる対策を早期に講じていただきたい。総理の具体的な答弁を求めます。
 次に、虐待の未然防止について伺います。
 虐待は子供の心と体に深い傷を残します。この傷を癒やすのは並大抵のことではありません。だからこそ、虐待を未然に防ぐことが何よりも重要です。
 これまで、生後四か月までに全ての家庭を訪問するこんにちは赤ちゃん事業や、妊娠期から切れ目なく支援する子育て世代包括支援センター事業など、虐待を未然に防ぐ支援策を充実させてきました。他方、無業、貧困、障害や病気、DV等、様々な困難を抱えている家庭では、そのひずみが一番弱い立場の子供に向かう可能性がありますが、こうした家庭に対する支援は十分ではありません。近年、こども宅食や訪問型の子どもの学習・生活支援など、困難を抱えている家庭を世帯丸ごと支援する取組が民間で行われていますが、多くの場合、行政とつながっておりません。
 こうした民間の活動に対し、行政の側から積極的に連携を呼びかけ、困難を抱えている家庭に寄り添う支援策を一層充実させていくことこそが虐待を未然に防ぐ最も重要かつ必要な手だてと考えますが、総理の御所見を伺います。
 最後に、児童養護施設等退所児童の自立支援について伺います。
 今年二月、東京都渋谷区の児童養護施設若草寮の施設長が施設で育った若者に殺害されるという事件が発生しました。虐待等、様々な理由で親と暮らせず、児童養護施設等で生活する子供たちは、通常、十八歳になると施設を出ます。施設を出た途端、家も仕事も自力で何とかしなくてはなりません。失敗は許されないというプレッシャーを常に抱え、悩みがあっても身近に相談できる相手がいません。今回の事件を起こした若者も、施設を出た後、一旦就職しましたが、約一か月半で退職。その後、別の仕事に就いたけれども長続きせず、ネットカフェなどを転々とし、逮捕時の所持金は数百円だったと報じられています。今回の事件で彼がしたことは決して許されることではありません。しかし、なぜ彼がこうした事件を起こしてしまったのか、私たちは深く考えなくてはならないのではないでしょうか。
 こうした若者たちに寄り添い、自立に向けて伴走する仕組みが少しずつ整備されてきましたが、今回の事件で、まだまだ十分ではないという現実が改めて突き付けられました。施設退所後の若者たちがどういう状況にあるのか、何に困っているのか、どういう支援を求めているのか。当事者である若者の意見を聞きながら、その実態を把握し、支援の拡充に取り組むべきと考えますが、総理は今回の事件をどう受け止め、自立支援体制の整備に今後どう取り組んでいくお考えか、若者たちが希望を持てるような答弁をお願いいたします。
 以上の質問につきまして、安倍総理の明快かつ心のこもった答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕

発言情報

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発言者: 山本香苗

speaker_id: 23027

日付: 2019-06-05

院: 参議院

会議名: 本会議