川田龍平の発言 (本会議)
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○川田龍平君 立憲民主党・民友会・希望の会の川田龍平です。
私は、会派を代表し、国有林野の管理経営に関する法律等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論いたします。
国有林野事業は、平成十年の抜本的改革により、林産物の供給に重点を置いたものから公益的機能重視の管理経営へと大きく転換しました。平成二十四年には国有林野事業が一般会計化され、従来の企業的運営から、国有林野の有する公益的機能の発揮のための事業、公益重視という考え方がより顕著になりました。
国有林では、戦後造林された人工林が伐期を迎えています。森林の公益的機能を発揮させながら林業振興を図るということであれば、その方向性について何ら異を唱えるものではありません。木材の自給率が低下し、林業事業体も減少して山元が活気を失う中で、やっと伐期を迎えた国有林を活用して何とか山元を元気にしたいという思いは我が党も同じであります。
しかしながら、本法律案の提出の経緯や内容には問題が多く、本法律案には反対せざるを得ません。
以下、反対の理由を申し述べます。
第一の理由は、この法律案が未来投資会議の提案から始まったものであり、この提出経緯に非常に問題があることです。
林政審議会の施策部会においても法律案の検討がなされましたが、その場において、施策部会長であった土屋俊幸東京農工大学教授は、かなりトップダウンで政策の枠組みが決まってしまったというのが現実にあると発言されています。御案内のとおり、この法律案は、未来投資会議の竹中平蔵氏が主張してきた国有林の民間開放が発端となっています。このことについて土屋教授は、森林や林業や山村の専門の方でない方がかなりこういう突っ込んだ戦略を出してきて、それを受けて我々が、若しくは林野庁、農林水産省が新たな政策を検討しなくてはならないという状況というのは、やはり転倒していると発言されています。
そもそも、この法律案には、国有林野は国民の共通財産であるという視点が欠けています。平成十年の国有林野事業の抜本的改革で、国有林野の管理経営の方針は、林産物の供給に重点を置いたものから公益的機能の重視へと大きく転換しました。公益的機能の維持増進が主で、林産物の供給は従という位置付けです。
国有林野は国民共通の財産です。国民共通の財産を、林業経営者の育成という名の下に、一部の企業のためだけに、もうけ最優先で使うことは許されません。公益的機能の維持を最大限に発揮させながら、産出される木材をどのように使っていくのがいいか、国民全体での議論が必要です。林野庁が考え方、方針を取りまとめ、パブリックコメントなどにより丁寧に国民からの御意見に耳を傾けて法律案を作成していくというプロセスを経ずに本法律案が国会に提出されたことは非常に残念です。
第二の理由は、樹木採取権の存続期間が最大五十年という長期にわたることです。
林野庁は十年を基本として運用するとしていますが、そうであれば、なぜ五十年という長い期間を上限としなければならないのでしょうか。五十年先の経済社会環境の予測は困難であり、そのような超長期間のリスクを取ることは中小規模の林業事業体には不可能です。五十年もの長期間で樹木採取権が設定されれば、手を挙げることができる大企業に独占され、中小の事業体が締め出されるという結果になりかねません。これまで地域の森林を守り、山村を支えてきた中小の事業体は、大変不安に思っています。
また、大企業といえども、五十年もの長期にわたる将来まで正確に見通せるはずがありません。権利設定料、樹木料の算定の基礎となる額は樹木採取権設定の際に決まりますが、五十年先を見越して適正な額を設定することが果たしてできるのでしょうか。五十年の間に木が倒れる、枯れる、生育不良等により、最初の想定どおりに木が育たず、十分に木材が得られないことも起こり得ます。また、大企業自身も、倒産や事業不採算によって伐採や再造林が行えない事態も生じ得ます。そういった不確実性がある中で、五十年というのはやはり長過ぎます。
林業事業体の方からも、十年ならばメリットが大きいという声は聞きますが、五十年を希望する林業事業体の声など聞いたことがありません。なぜ五十年を上限とするのか、委員会の審議においても納得できる答弁は得られませんでした。上限が十年で十分なものを五十年とすることの裏には、特定の企業のみに五十年間の樹木採取権を設定しよう、今後、国有林を民間開放するための第一ステップとしたいという思惑があるのではないか、こうした疑念を拭い去ることができません。
第三の理由は、樹木採取権がみなし物権であり、売買や権利移転が可能であることです。
樹木採取権の権利が移転された場合に、権利を引き継いだ事業体が同様の施業を行うことができるのか、権利の行使に何らかの歯止めがないと心配です。法律案では、権利移転の際には農林水産大臣の許可が必要とされています。仮にこの法律案が成立してしまうのであれば、林野庁には、権利移転に当たって、事業の実施能力、公益的機能の維持、地域産業振興への寄与等についても同様であるか見極め、その後も調査等を行い、施業が適切に行われていない場合には権利を取り消すなど、厳格な運用を求めたいと思います。
最後に、国有林は、木材を供給する機能があると同時に、国土保全、国民にきれいな水や空気を提供すること、生物多様性の保全、そして災害防止という多面的な機能を有しており、これを十分に発揮させることが非常に重要です。
国有林は、全国一律ではなく、生えている木の種類も違えば、斜度、気候条件、地盤等も様々です。切りやすい森林で木材を伐採し、搬出することももちろん必要です。しかしながら、そこに人手を取られて、路網がない森林や急斜面の森林等、条件の悪い森林について、これは広葉樹林化、針広混交林化するということだと思いますが、こういう森林の整備が行われず、放置されてしまうようでは困ります。
条件の悪い森林も、災害が起こらないように整備していく必要があります。木を切るところと広葉樹林化、針広混交林化するところをゾーニングし、それぞれの森林に合った施業を行うこと、こうした施業を実施するため十分な人手を確保するようにすることを政府に強く求めます。
現行の国有林の伐採のルールについても、改善すべき点があります。
現行のルールでは、五ヘクタール以下であれば皆伐も可能とされていますが、五ヘクタールといえばかなりの広さです。皆伐により山がはげ山になるような事態になることや、災害が起こりやすい状態になることは、何としても防がなければなりません。委員会の質疑においては、林業をしっかりと学び、山のことを知り尽くした高篠和憲参考人から、皆伐といっても山頂付近は切らない、伐区を分散させるなど、自然への影響が少ない施業を行っているとの指摘がありました。
森林の公益的機能を維持、発揮させるために、全国一律にルールを適用させるのではなく、地形、傾斜、気候条件等も考慮して、森林の特性に応じた施業が行われるよう、林野庁としてしっかりと計画を作り、指導を行っていく必要があります。
本法律案は、未来投資会議の発案の下、不必要に長い樹木採取権の上限を設定するもので、公益的機能の維持、地元の中小林業事業体の活動等を脅かす危険性のある法律案です。このような法律案には反対せざるを得ないことを申し上げ、私の反対討論といたします。(拍手)