新藤義孝の発言 (憲法審査会)
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○新藤委員 自民党の新藤義孝でございます。
今回の調査に関しまして、若干の所見を申し述べたいと思います。
まず、ドイツでございますが、ドイツは、ことしの三月に、ドイツの憲法に当たる基本法について六十三回目の改正を実施いたしました。このように改正回数が多いのは、必要があれば随時改正を行うという姿勢が堅持されている、こういうことはもちろんでありますが、一方で、ドイツ基本法には、我が国では法律レベルで規定されていることまで規定されている、そういう構造的な要因もあるということがわかりました。
なお、六十三回目の基本法改正は、教育のデジタル化を推進するための連邦から州への財政援助をテーマとするものでございましたが、このことを題材に、デジタル時代の教育の将来像について、ドイツがどんなことを考えているのか、突っ込んだ意見交換をすることができました。
次に、国民投票でございますが、ドイツには、ナチスの経験もございまして、国民投票制度は存在しません。したがって、国民投票に伴う広告規制も存在しないことになりますが、一方で、一般的なメディア規制については大変関心が高く、インターネットやSNSなどの新しいメディアに対する規制のあり方について意見交換を行いました。
ウクライナでございます。
ウクライナは、独立後、一九九六年に憲法を制定し、現在まで六回の改正を経ています。
憲法改正について、内容面、手続の面から憲法裁判所が審査することは団長の報告にございましたとおりです。七月の総選挙を経て新しい国会が構成されてから、憲法改正論議が活発に行われております。我々が訪問した九月だけで、訪問時点で既に七件の憲法改正案が審査のために憲法裁判所に送付されているということでございました。
このことは、現在のウクライナが大きな改革をしようとしていることのあらわれであり、また、憲法の安定のために憲法裁判所が大きな役割を果たしているということが感じられました。
一方、国民投票制度につきましては、憲法裁判所判決によって国民投票法が違憲無効とされております。現在、国民投票は実施不能となっているところでありますが、総選挙で大統領の与党となった国民奉仕党は、直接民主制的な要素の導入を公約に掲げて選挙に勝った。そうしたことから、直接民主制の拡大が政治的要求となっているそうです。間接民主制と直接民主制のバランスを図ることは大変難しい、こうしたことも感じました。
なお、ウクライナは、自由で民主的な国家を建設するため、旧ソ連からの独立以来の苦難、苦闘の道のりを歩んでおります。自由と民主主義、法のもとでの平等という価値観を共有できる国として、我が国は、ウクライナが発展していくことを期待をして、また、今後も支援していかなければならない、このようなことを感じました。
リトアニアでございます。
リトアニア憲法は、一九九二年の制定以来十回の改正を経ています。しかし、ほとんどは技術的な改正であり、憲法の根本は変わっていないとのことでございました。
また、リトアニアはかなり幅広く国民投票を実施している国ですが、団長報告にございましたように、不成立や否決される例が多く、質問文について曖昧さをなくし、国民に理解される質問にしていく必要があるということでございました。また、国民投票運動において、CMはほとんど行われていないとのことでした。
憲法を始めとする法制度の比較は、表面的ではなく、その国の背景や文化に立ち入ってまで行わなければならない、このことを感じた次第であります。
憲法裁判所につきましては、ジャリマス長官、リトアニア憲法の安定に憲法保障機関としての憲法裁判所が大きく寄与しており、欧州各国では憲法裁判所設置の意義や必要性についてほぼ共通認識となっている、しかし、各国の憲法裁判所は、歴史、伝統を踏まえて少しずつ異なっており、憲法裁判所の設置を検討する際にはこの点に留意が必要だということをおっしゃっておりました。
なお、リトアニアには、ロシアとドイツとの間で翻弄される苦闘の歴史を経ており、このような歴史がその憲法体制や憲法観に色濃く反映されているということを改めて強く感じました。
最後に、エストニアでございます。
エストニア憲法は、一九九二年の制定以来五回の改正が行われていますが、国民投票が行われたのはEU加盟の際の一回のみで、その他の四回は議会の議決による憲法改正だったということです。また、五回の改正のうち、重要な改正は、EU加盟と地方議員の選挙権年齢の引下げの二回のみとのことでありました。
国民投票や選挙の際のCM規制につきましては、主要五政党のうち四党は、規制は不要と考えているとのことでございました。
なお、エストニアに憲法裁判所はなく、我が国と同様、通常の司法裁判所が違憲審査権を持っているということでございます。
また、e―エストニアの推進と到達度については、目を見開かされるものがございました。
今回の海外調査を行い、憲法が国家の基本法であるとともに、その国の成立の歴史や背景が如実にあらわれていること、あわせて、憲法改正は各国それぞれのさまざまな事情に基づいて行われていることが改めてわかりました。各国とも、憲法は国家の骨格をなすものであり、憲法の安定性という点に大変腐心していることが理解できました。
我が国は、七十二年間の運用の中で、憲法の安定性が確保され、それが国家の安定につながっているということが言えます。
しかし、日本国憲法には、施行時に想定されなかった社会情勢の変化に対応するための規定の整備の必要性や、本来独立国として備えておかなければならない要素があるのではないか、このことも考えております。
今回面談したエストニア法務省の幹部から、憲法には明確性が求められており、解釈運用によらず、できるだけ明文の規定整備を心がけているという言葉は、私の耳に深く残っております。
このたびの海外調査により、憲法審査会の一員として、時代や社会情勢の変化に鑑み、我が国の実情を踏まえた憲法改正の議論をしていくことの重要性を改めて痛感したことを申し述べまして、私の発言といたします。
ありがとうございました。