北側一雄の発言 (憲法審査会)
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○北側委員 公明党の北側一雄です。
海外調査の概要は、森英介団長から御報告のあったとおりでございます。
私は、ドイツのベルリン、ウクライナのキエフでの憲法調査に参加をいたしました。
ドイツ、そしてウクライナも、二十世紀は幾度もの悲惨な戦争を経験した国であり、また、ウクライナでは今も、ロシアによるクリミア併合や東部ドンバス紛争など、ロシアとの緊張関係に直面しています。
こうした歴史や背景のある中、ドイツの憲法に当たるドイツ連邦共和国基本法、またウクライナ憲法が、民主主義や基本的人権、そして国家の存立などをどう憲法保障しているのか、関心を持って参加をいたしました。
以下、私の感じたところを若干述べさせていただきます。
ドイツでは、戦後これまで六十三回の基本法改正がなされています。
直近の改正はことしの三月。その内容は、学校のデジタルインフラの強化や社会的弱者のための住宅建設に関し、連邦から州への財政支援を可能とすることでございます。連邦制をとっているがゆえの改正でしょうが、我が国では恐らく予算措置だけでできることを憲法改正という手続をとっていることになります。
なぜ六十三回もの改正がなされているのか。フンボルト大学のクリストフ・メラース教授は次の二点を挙げておりました。
一つは、ドイツは連邦制をとっており、連邦の権限と各州の権限との配分が基本法に細かく規定されているため、それを変更するたびに基本法改正が必要で、その多くは技術的改正だと話されていました。
もう一つは、政治的対立のある基本法改正の場合も、CDU、キリスト教民主・社会同盟と、SPD、社会民主党の二大政党が、自分たちがつくり上げてきた基本法という共通認識があり、どのように基本法を改正するかについても、政治的妥協をしても共同して合意を形成していこうという雰囲気が醸成されていると話されていました。
自分たちのつくり上げた憲法、妥協しても合意を形成するとの言葉は、私どももそうありたいと感じます。
一方で、メラース教授は、多くの国では法律でできるような事項まで基本法に取り込み過ぎていて、そのため改正が多くなっている、基本法になじまない事項を基本法に規定し過ぎ、憲法の安定性に欠けるとの批判が少なくないとも話されておられました。
日本国憲法は憲法の規律密度が低いとよく言われますが、日本国憲法では基本的な理念、規範を明示し、この憲法規定に基づいて、国会法、内閣法、裁判所法、地方自治法、公職選挙法、皇室典範、財政法、教育基本法、労働基準法など、いわば準憲法的性格を有する重要な法律が制定され、これまで何度も改正されてきました。
国によっては、ドイツのように、手続的、技術的な規定が憲法に多く書き込まれてしまっているため、憲法改正が多いという実情があるように思われます。
日本国憲法はいわゆる硬性憲法であり、憲法改正のハードルは高い。一方で、ドイツでは、基本法改正にそもそも国民投票も要らないという違いもあります。
いずれにしても、その国の憲法の内容、性格、改正手続等を別にして、憲法改正の実施回数だけを取り上げてこれを比較することにさほど大きな意味はないと思われます。
次に、ドイツ基本法、ウクライナ憲法にも緊急事態条項が定められています。
特にドイツ基本法では、緊急事態の類型ごとに極めて詳細な規定が設けられています。また、緊急事態類型の一つである防衛事態には、連邦議会議員の任期延長と議会の解散禁止規定が明記されていることも注目されます。
ウクライナの憲法裁判所のペルヴォマイスキー裁判官からは、緊急事態に対処するための措置に関する条項はどんな国家でも必ず必要だが、ウクライナのように憲法で規定するか、憲法では規定せずに法律レベルで規定するかは国によってそれぞれで、憲法に規定しないといけないということではないとの指摘がありました。
我が国においては、法律レベルでさまざまな危機管理法制が整備されています。
災害対策基本法を始めとする災害対処法制、武力攻撃事態等対処法、国民保護法を始めとする有事法制、治安上の事態対処のための自衛隊法、警察法などです。いずれにしても、危機管理法制はその類型ごとに詳細な規定が必要で、憲法に全て書き込むことは不可能であり、各法律でその類型に応じた要件、手続、効果、政府の権限、制限される権利等を規定していくことになります。
一方、ウクライナ憲法には、戒厳、非常事態の布告が発せられた場合には、招集を待たず、議会は二日以内に開かなければならず、さらに、議会の会期は、戒厳、非常事態が終了した後に選挙された新しい議会の最初の会期の最初の会議まで延長されると規定されています。議会の会期及び議員任期の延長規定を定めたものと理解されます。
また、ウクライナ憲法では、緊急事態には期限付で権利、自由に対する特別な制限をすることができると規定していますが、一方で、緊急事態であっても制約してはならない権利と自由を憲法上明記しています。さらに、戒厳、非常事態における憲法改正は禁じられています。
こうしたウクライナ憲法の緊急事態条項は、今後の我が国の憲法論議にも参考になると考えます。
日本国憲法では、国会議員の任期について、憲法上、衆議院議員の任期は原則四年、参議院議員は六年と定められ、衆議院解散から四十日以内に総選挙を行うことと具体的に定められているため、特別法、特例法の制定によって、国会議員の任期の延長や国政選挙の選挙期日の延期はできません。
阪神・淡路大震災や東日本大震災のような大規模災害時などの場合には、少なくとも被災地では相当期間選挙が実施できないことが想定されます。国会議員の任期満了直前や衆議院解散直後の大規模災害時などに、国会議員の任期を延長し、国政選挙の選挙期日を延期しようとするならば、憲法改正が必要となってまいります。
国難ともいうべき緊急事態に際し、国会が政府の危機対応を監視、補完し、また、場合によっては緊急に特別法等を制定するなどの立法機関の重要な役割を考えると、今後、憲法論議を進めるべき課題と考えます。
ただし、憲法上定められた国会議員の任期は、議会制民主主義の根幹にかかわる事柄であり、当然のことながら慎重な論議が必要です。そもそも、緊急事態とは何か、誰がどのような手続で判断するのか、参議院の緊急集会との関係など、多岐にわたる論点があると思われます。
このほか、フェークニュース問題に関連してインターネット規制のあり方、さらには欧州におけるポピュリズム政党の台頭の背景などについても両国の識者と意見交換してまいりました。
以上、調査団の一員としての御報告とさせていただきます。