玄葉光一郎の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○玄葉光一郎君 玄葉光一郎です。
共同会派を代表して質問をいたします。(拍手)
台風十九号による甚大な被害の発生から二週間がたちます。
先ほど議長からもございましたけれども、改めて、お亡くなりになられた方々の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
私の地元福島県でも大きな被害が出ており、発災以来、現場を歩く毎日です。
事の緊急性に鑑みて、冒頭、災害対策について幾つかの質問をさせていただくことをお許しいただきたいと思います。
被災者の声で最も返答に窮したのは、玄葉さん、私たちは、水没したこの家を修繕して、このままここに住んでいて大丈夫なのですかという問いです。
温暖化型の集中豪雨や流域型洪水によって、全国各地で従来の想定を大きく超える災害が生じています。雨の降り方、降る量が大きく変わる中で、想定の見直しによる堤防強化は必須だとしても、一方で、その限界もあると思います。堤防強化とその限界、今後の治水、防災のあり方についての総理のお考えをお伺いいたします。
住宅の再建に当たって、公的支援の柱となっているのが被災者生活再建支援制度です。しかし、現行では、支給対象が全壊と大規模半壊に限られています。災害時の国民生活の安定と安心をより担保する制度とするため、支援対象を半壊まで拡大すべきと考えますが、いかがでしょうか。答弁を求めます。
東日本大震災の際に創設をし、大きな効果を発揮したグループ補助金は、このたびの台風十九号の被災地の地域経済の再建にも大きな役割を果たすはずです。その実施を強く求めたいと考えますが、総理の御見解を求めます。
また、被災した事業所の雇用を守るため、雇用調整助成金の特例措置、例えば、助成率の引上げや支給日数の延長、労働者の継続雇用期間の条件の緩和などの措置が必要と考えますが、厚労大臣の見解を伺います。
農業の被害も深刻です。多くの農業用ハウスが大破しています。トラクターなどの農機具も水没して使用できなくなり、農家が再生産する意欲を失いかねない危機的な状況です。被災した農業用ハウスの撤去及び再建に向けた特段の措置、農業用機械等の再導入に向けた特段の措置が必要です。次期作に必要な種子、種苗の確保策も含め、農水大臣の見解を求めます。
以上のことを申し上げた上で、日米貿易協定の質問に移ります。
今回の日米貿易協定は、当面の追加関税等は見送られたものの、日本にとって、とても手放しで喜べるような内容にはなっておりません。重要な問題点を内包し、かつ、大きな対立点を先送りしております。
まず、米国にTPPへの復帰を求めるという日本としての本来戦略はどこへ行ったのでしょうか。日米というバイの二国間交渉より、マルチの多国間交渉の方が、他国を味方につけながら交渉できる分、日本にとって有利という判断から、あくまで米国にTPP復帰を求めていくというのが日本の戦略的判断であったはずです。結局のところ、次に来る第二段階の交渉も含めて、本来避けようとしていた本格的な二国間交渉に引きずり込まれているのではないでしょうか。答弁を求めます。
TPPは、車と農産品のパッケージ合意でありました。つまり、日本側は牛肉などの農産物関税を引き下げ、米国側は車の関税を撤廃するというものでした。しかし、本協定では、日本側の農産物関税は、米国側の要望どおり、TPP参加国並みに引き下げる。しかも、一気にであります。一方、日本側が求めた自動車及び関連部品の撤廃については、継続協議となりました。TPPでは、将来の撤廃が時期も含めて約束されていたはずです。車関税についてTPP並みにかち取れなかったのですから、農産物関税をTPP水準まで引き下げる必要はなかったのではないですか。トランプ大統領への選挙向けのプレゼントでしょうか。
政府は、自動車及び自動車部品についての関税撤廃について今後交渉するとしていますが、果たしてその関税撤廃の実現について日本政府として何らかの確証があるのでしょうか。確証があるとすれば、何をもってそう言えるのでしょうか。さらに、撤廃時期の目途についてもお答えください。
WTOには、最恵国待遇、つまりは全ての加盟国に同じルールを適用するという原則があります。RTA、すなわち自由貿易地域やFTAなどは、いわばこの最恵国待遇の例外として扱われるのであります。ただし、その際には条件が課されています。それは、実質上全ての貿易について、原則として十年以内に関税等を撤廃することというものです。
実質上全てのの範囲は、おおよそ九〇%以上と言われています。つまり、今回の日米貿易協定がWTO整合的であるためには、九割以上の自由化率でなければならないのです。しかし、今般の合意では、自動車及び関連部品の関税撤廃は確約されておらず、それらを除けば、米国側の自由化率は六割にも満たない。今回の協定は果たしてWTO整合的であると言えるのかどうか、違和感を拭えません。WTOと整合的であるというなら、その根拠も含めて答弁を求めます。
今申し上げた論点に鑑みれば、次のように指摘することもできます。つまり、九割以上の自由化率がなければWTOに整合的でないということは、日本側にとっての交渉上のいわば切り札だったはずです。それにもかかわらず、米国側から車の関税撤廃についての確約を取り付けることができなかったということであります。このままではWTO違反を指摘されてしまうから、車についての関税撤廃を約束してほしいと米側に強く迫ったことは、想像にかたくありません。それでも、結局のところ、車関税をかち取れなかったわけです。
九月二十五日の日米共同声明には、協定が誠実に履行されている間、両協定及び本協定の精神に反する行動をとらないとの記載があります。このことについて、追加関税や数量制限、輸出自主規制を課すものではないことを確認したということですが、仮にこの首脳間、閣僚間の口頭での確認を信じたとしても、あくまで、協定が誠実に履行されている間という期限付の条件が付されているのです。その意味においては、米国は追加関税カードを完全に手放したわけではないとも言えます。そこで、お尋ねします。
協定が誠実に履行されている間とありますが、誠実な履行でない場合とはどのような場合を想定しているのでしょうか。また、両協定及び本協定の精神とは何を指すのか、わかりやすく御説明ください。
更に気がかりなことがあります。
昨年九月の日米共同声明第五項には、「米国としては自動車について、市場アクセスの交渉結果が米国の自動車産業の製造及び雇用の増加を目指すものであること。」と明記されています。今後、追加関税や数量規制等を課すことをちらつかせながら、日本側に対して米国における直接投資、現地生産を迫ってくるのではないかという懸念があります。この懸念は杞憂ですか。答弁を求めます。
今後の交渉について、日米共同声明では、四カ月以内に交渉対象を決め、関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、その他の課題について交渉を開始する意図であるとしています。ここにおいて、交渉を開始するとせずに、交渉を開始する意図としているのはなぜですか。お答えください。
さらに、今後の交渉について、総理は、協定を結ぶか否かも含め、予断を持って申し上げることは差し控えたいと述べています。日本政府としては、次の日米二国間のさらなる交渉のテーブルにはできれば着きたくないということなのでしょうか。それとも、むしろ積極的な姿勢で向き合うつもりなのでしょうか。お尋ねをいたします。
政府は、農産物についてはTPPの範囲内と言いますが、牛肉についてはTPP以下です。つまりは、TPPよりもさらなる譲歩を強いられています。結果として、緊急輸入制限、セーフガードの発動基準数量が実質的に緩和をされています。米国が離脱したTPP11でのセーフガード発動基準数量が、米国抜きのそれに修正されていないのです。このままだと、米国以外の豪州、ニュージーランド、カナダなどからの輸入牛肉に対してセーフガード措置がききにくくなります。このことについての農水大臣の見解を求めます。今後の畜産業の国内対策の具体策とあわせてお答えください。
政府は、十月十八日、日米貿易協定の経済効果の試算を公表しましたが、車関税の撤廃を前提としたものだけとなっており、驚きを禁じ得ません。当然ながら、車関税が二・五%にとどまった場合の試算も公表すべきと考えます。答弁を求めます。
以上申し述べたように、本協定は重要な問題点をはらんでいます。特に、GDP一位の米国とGDP三位の日本による貿易協定に対してWTO整合性の点で疑義が生じているということは、大きな問題であります。
自国第一主義がはびこる中、日本は、国際秩序形成、国際ルール形成において、自由貿易や法の支配、人間の安全保障、あるいは平和といった分野においては特に主要な役割を果たしていくべきだと考えます。
WTO体制を発展させるべき立場にある日本とWTOをこれまでリードしてきた米国が結んだ貿易協定、そこにおいてWTO整合性に関して疑問の目が向けられている、この点が私は残念で仕方がありません。何とか米国を説得して、疑問の余地のない協定にしてほしかった。自由貿易の旗手となると所信表明で述べた安倍総理、この日米貿易協定がWTO体制の終わりの始まりを演出したなどと将来言われることがないようにしていただきたいと考えます。
最後に、慎重かつ十分な議論が行われるための審議時間の確保、さらには、米通商拡大法二百三十二条による追加関税は課さないとの首脳間で行われたという口頭確認についての議事録を含めた必要な情報の公開を強く求め、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕