羽田雄一郎の発言 (本会議)

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○羽田雄一郎君 私は、立憲・国民.新緑風会・社民を代表して、日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定の締結について承認を求めるの件及びデジタル貿易に関する日本とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件に対し、反対の立場から討論を行います。
 その前に、一言述べさせていただきます。
 先日の決算本会議の中でも桜を見る会に対する質疑がありましたが、安倍総理は質問に真正面から答えず、逃げの答弁に終始され、数々の疑問は残されたままになっております。廃棄された名簿などは防衛省の日報隠しを思い出させるものであり、モリカケ問題から今日までの安倍総理や政府の姿勢は到底受け入れられず、一刻も早く、総理出席の下、予算委員会を開き、誠実に対応されることを強く望みます。
 それでは、以下、反対の理由を順次申し述べます。
 第一に、今回の交渉で自動車、自動車部品の関税撤廃を米国から勝ち取ることができなかったこと、そして、今後の交渉でも関税撤廃が確約されていない点です。
 政府は、本年九月二十五日、本協定に関する日米交渉が最終合意した直後の発表資料には、米国の譲許表に更なる交渉による関税撤廃が明記されたと説明していました。しかし、実際には、米国附属書に関税撤廃に関して更に交渉すると記述されているのみで、自動車、同部品の関税撤廃について、米国も合意の上で更なる交渉を行っていくことができるのか、そもそも関税撤廃の交渉の対象になるのかさえ、附属書の文言からは分かりません。政府の説明は単なる希望でしかなく、決して受け入れられるものではありません。
 第二に、米国通商拡大法二百三十二条に基づく自動車、同部品に対する追加関税です。
 日本側が最も警戒していたとされる自動車の追加関税について、政府は、日米共同声明の、協定が誠実に履行されている間、両協定及び共同声明の精神に反する行動を取らないとの内容を踏まえ、追加関税が課されないことをトランプ大統領に直接確認したと言い、数量規制等の回避に関しても閣僚間で合意していると繰り返し説明されていますが、首脳間や閣僚間の交渉の経緯や具体的な合意内容について記述された文書は提示されていません。このような重要な合意事項に関しては、口約束ではなく文書で提示されなければ確認もできず、そもそも追加関税や数量規制等を本当に回避できるのか、判断すらできません。
 第三に、WTO協定に違反している可能性がある点です。
 政府は、日米貿易協定における関税撤廃率について、貿易額ベースで日本が八四%、米国が九二%となると発表しました。しかし、米国の九二%は自動車、同部品の関税撤廃を含めて算出された数値であり、今回の交渉では五九%を占める自動車、同部品の関税は撤廃されておりませんから、米国の関税撤廃率は実際には四一%でしかないとの指摘があります。ガット二十四条においては、先進国間の貿易協定において実質上全ての貿易について九割以上の関税を撤廃することを求めており、四一%などという関税撤廃率は自由化したとは到底言えず、明らかにWTO違反です。
 第四に、事実上、TPPを超える農産品の市場開放を約束したことです。
 関税撤廃、削減等を約束した全ての品目について、協定の発効時からTPP11と同等の利益を即座に認めたこと、すなわち発効二年度目の関税率まで米国に対しては一気に引き下げることを合意しました。さらに、牛肉のセーフガードについて、TPP11加盟国からの輸入量と米国からの輸入量を合算した数量がTPPの発動基準数量を上回った場合、TPPのセーフガードが発動するよう協議を行う方針としています。しかし、オーストラリアのマッケンジー農業大臣は日本農業新聞のインタビューで、我々から再協議を求めることはないと発信し、消極的な姿勢を示しています。TPP11加盟国は、協議にそもそも応じるのでしょうか。今後、輸入牛肉の増加に歯止めが掛からず、米国とTPP11加盟国から輸入量がTPPで合意した発動基準数量を上回る可能性を否定できません。
 第五に、日本側の附属書に、米国は将来の交渉において農産品に関する特恵的な待遇を追求することが明記されたことです。
 農家の皆さんは、米国との間で再協議が行われ、米を含む農産品について更なる開放を求められるのではないかと心配しています。政府は、農業は交渉対象として想定していないと説明していますが、この附属書Ⅰに書かれている意図は、農産品再交渉に向けた米国の非常に強い意志を感じます。
 報道によると、米国議会下院貿易小委員会で開催された日米貿易協定に関する公聴会には、米やバター、乳製品などの市場開放を求める意見や、第二段階の交渉を追求するべきとする意見等が出されています。また、トランプ大統領が、来年の大統領選挙を見据え、貿易政策を切り札として日米貿易協定の再協議等に言及する可能性が指摘されています。このような状況の下、協定発効から四か月以内に始まる協議において、米国が農産品の更なる市場開放を求めてくる可能性が高いと思われます。
 第六に、農林水産業への影響試算のやり直しが行われないまま国内対策、支援が検討されていることです。
 政府は、日米貿易協定による日本の農業水産物の生産減少額について、最大約一千百億円との試算を公表しました。しかし、この試算は、国内対策を実施することにより国内の生産量が維持されるという架空の前提の下で行われています。しかも、まだ予算も付いておらず、中身の不明確な国内対策の実施が前提であるなど、非現実的な内容となっています。
 さらには、TPP11や日EU・EPAを含む発効済み全てのEPAによる影響に加え、台風や地震等の自然災害により深刻な被害を受けた農家の事情等の想定されるべき影響が全く加味されていません。農林水産業をめぐる現実の脅威や被災地農家の不安に背を向ける政府に日本の農林水産業の未来を託すことはできません。
 第七に、日米デジタル貿易協定に今後の国内的議論や規制を制約し得る米国型ルールが盛り込まれたことです。
 日米デジタル貿易協定には、TPPの電子商取引章と同等の内容に加え、TPPの内容を強化拡充する米国型のルールが種々整備されました。デジタル分野は急速な進化、変化の著しい領域でありますが、日本においては社会的な合意形成や十分な議論、政策決定がなされているとは言い難い分野であります。そんな中、米国型ルールが先行して導入されたことによって今後の公共政策、規制の選択肢が制約される懸念が生じています。特に、第十八条のSNS等のサービス提供者に対する民事上の責任の制限に関する規定については、日米両国の国内法制に違いがある中導入されたルールであり、規定の実施に当たっては、今後日米間でそごが生じ得る可能性があり、政府の責任は極めて重いと考えます。
 このように、参議院審議を通じ、日米貿易協定が日米双方にとってウイン・ウインの成果物ではなく、日本にとって完全敗北の内容であることは明らかです。そうした実態を必死に隠し続け、内容の検証に絶対不可欠な説明に加え、必要最低限の情報、資料提供さえも拒み続ける政府の姿勢は断じて許されません。
 以上、私の反対討論とさせていただきます。(拍手)

発言情報

speech_id: 120015254X01020191204_004

発言者: 羽田雄一郎

speaker_id: 27533

日付: 2019-12-04

院: 参議院

会議名: 本会議