小松正之の発言 (国際経済・外交に関する調査会)
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○参考人(小松正之君) 小松でございます。
何か鯨に特化して話してくれと、こういうことでございますので、鯨の話を中心に申し上げたいと思います。
まず、ちょっと基本的なことなんですけど、百二十四ページに、こちらの参考資料ですね、青いやつですが、鯨の絵があります。皆さんには釈迦に説法かと思いますけど、鯨は絶滅の危機にあるといって、鯨を守れ守れと言う人たちが多いわけですが、つい先頃もBBCが私のところに来まして議論をしたんですけど、私に議論勝つわけがないんですよね。最後はエモーションだと始まったから、もうこれは駄目だと思いまして、エモーションということは要するに理屈はないと、こういうことでございまして、それは世界中に放送されて、小松さん元気ですねというような世界中からまたメールが入りましたんですけど。
下の方にシロナガスクジラというのがございますが、これも絶滅の危機にはありません。ただ、枯渇状態で、今、世界に二千頭ぐらいしかいません。ただ、一時に比べますと随分急速に増えております。
それから、その半分ぐらいの大きさですけど、ナガスクジラというのは、これは世界中におりまして、今、日本の近海の北西太平洋と、それから結構日本海で増えております。
これと漁業資源の関係というのは、ミンククジラとナガスクジラが一番魚類を食べます。ですから、このコントロールというのは非常に重要になると思います。
ホッキョククジラというのは、アメリカのエスキモーの方々が捕りたい、捕りたいと言って、アメリカ政府が、あそこは反捕鯨の国ですけど、あそこはまた有名なダブルスタンダードの国でありまして、ホッキョククジラの捕獲は認めるけど、あとはいかなる捕鯨も認めないということを平然とやってきた国ですね。私は、それを一回、下関の会議のときにブロックしたんですが、二〇〇七年から私の後輩連中が、アメリカの捕獲枠を認めれば日本も認めるはずだという、またナイーブな失敗と泥沼の交渉に入っていって現在に至っているということです。信用しちゃ駄目なんですよね。要するに、こっちからもう爆弾を持っていって、それをプッシュして、向こうが認めざるを得ないような状況にしないと駄目なわけであります。
それから、イワシクジラが、これも日本の近海に今大体三万四千頭おります。これ、油球といって、サンマが食べるあの、サンマも一時は、昔は腹が真っ赤になったんですね。それは、何というんですかね、カイアシ類みたいな脂がたくさんあるものを食べていて、イワシクジラもそれを食べて、もちろん魚も食べますけれども、これも資源が豊富ですね。
それから、マッコウクジラは、この中では珍しいハクジラというやつで、上のやつは全部ヒゲクジラでありまして、ひげでこして食べるんですが、これは歯で捕まえて食べて、深海まで潜るわけですね。ですから、このマッコウクジラの捕獲は、特に科学調査なんかでの捕獲は海域の縦の生態系を解明するのには非常に必要で、今、私が現役のときは、この捕獲調査、マッコウ売れないんですけど、関西の人が唯一、ころといって、私に言わせりゃ、よくあんなまずいものを好きで食べるなと思うんですが、おでんに入れて非常に重宝して食べていまして、そのくらいの需要しかなかったんですが、これも十頭ずつ捕っていたんですけど、なかなか売れないもので今は脱落させていますね。
ザトウクジラも、これはもう今、物すごく増えています。ホエールウオッチングの対象にもなっています。
コククジラは、これは昔は瀬戸内海まで入ってきていて、朝鮮沿岸でも捕れていました。ただ、これは今ちょっと少ないですね。
それから、ニタリというのは、この名前を付けたのが有名な先生ですけど、ニタリというのはナガスに似たりと言うんですけど、もうちょっとハイカラな、昔の日本人はこれをカツオクジラと言っていたんですが、カツオの群れと一緒にいるものですから。学者がこういうへんてこな名前に変えるんですね。学者というのは名前を変えるのを非常に好むところがあります。
それから、ミンククジラというのは、これたくさんいます。世界中に百万頭以上いてということです。
ところで、ここにあるような鯨を大型鯨類といって、それから、右の方に参考で小型鯨類というのがあるんですが、ツチクジラというのは、これ日本の近海、房総だとか伊豆半島のところにたくさんおるんですけど、これ見たら、ツチクジラの方が大きくて、ミンククジラの方が小さくて、ミンクの方が大型鯨類、ツチの方が小型鯨類になっているわけですね。おかしいわけですね。何でこうなったかといったら、国際社会がそう決めたからそうなった。要するに、これ、戦後復興のときにこういう決め方をしたんですが、日本の代表団が条約策定交渉に入れてもらえなかったのでこういうふうになっております。
それから、鯨は、大きいのが大体十三種類、大型鯨類が、で、小型鯨類が約七十種類おって、小型鯨類の大半はイルカ類ですね。イルカ類というのはほとんどハクジラですね。その大型鯨類、イルカと鯨という分類もしますけど、そのイルカの方は大きくなったときの体長が四メーター、鯨の方は四メーター以上を一般的な分類とします。
簡単に言うと、一部、ホッキョククジラだとかコククジラを除いては資源は健全、シロナガスみたいなやつは、資源は健全ではないですけど枯渇の心配はなくて、捕獲禁止をこのまま続けていけばいいと。ですから、あとの鯨は全部健全、要するに増えているということでございまして、簡単に言うと、水産行政の中で鯨を捕らないというオプションはないはずですね。ところが、今その捕らないというオプションの方に限りなく近づいた状況になっているのは、これはいかなる状況によるものかと。こういうことが、皆さんそれから私の命題じゃないかというふうに私は思うわけですね。
何でそういうふうになったかということでありますが、これだけたくさんいる鯨を。鯨は当然魚食べるわけですから、それから鯨間の競合もあるわけですから、このまま漁業資源が枯渇又は乱獲しているときに鯨をほっておいて、それは漁業資源にも悪いですし、それから鯨にも悪いということは、これは明確に分かるわけですね。
ここに至った経緯を簡単にちょっとまとめてみたんですが、パワーポイントで配ってありますけど、去年の十二月の六日に脱退をするといって、七月一日から脱退、今年ですね、脱退の効力が発生したわけでありますが、脱退したことによって、重要なのは、捕鯨を禁止するという商業捕鯨のモラトリアムというのがあるんですが、モラトリアムというのは一時禁止なんですけど、ところが、それが採択されたのは八二年で、ずっと今まで生きているわけですね。それが日本政府は気に入らない、私もずっと気に入らないでやってきたんですけど、気に入らないものですから、脱退すればそれに拘束されないと、これは事実なわけですね。
ところが、委員会からの脱退ではなくて、条約からの脱退なわけですよね。委員会をやめますというのだったら、このモラトリアムが適用されない、それだけで済むんですけど、条約からの脱退になると、条約の規定全部から脱退することになって、要するに国際条約の全く外にいることになったわけですね。
それで、何が要するに大きな損失かというと、後で条文を御紹介しますけれども、条約の第八条に科学調査の条項があるわけです。これは科学調査できるわけですね、条約の中にいれば。そうすると、脱退することによってそれを失ったわけですね。
それは、だから、私がいたときに仕掛けた南氷洋と北太平洋、両方とも仕掛けて、両方で千四百頭ぐらいあったんですが、今二百九十五頭まで、随分下げてもらったものですけど、脱退して自由にやるのかと思ったら、期待に反しまして南極海でも北太平洋でも捕鯨を大幅に縮小していったわけです。
まあ、私の後輩のメンタリティー考えるとよく分かるんですけどね。やっぱり、おずおずして怖くてしようがない、訴訟されたら困るということで、こんな二百海里内の言ってみれば小ぢんまりした捕鯨になっていて、今、でも、だからといって二百海里でやったって、これ非加盟国操業であることには、いわゆるIUU操業であることには変わりないわけですから、いつ訴えられるか分からないと。訴えられたときに、まだ二百海里の方が公海を絡むよりはましだろうという判断ですが、それはやっぱり操業の在り方だとか調査の頑健な設計によるんだろうと思うんですね。
次のページに、私が捕鯨を担当したのが九一年ですけれども、その頃は味方の国が六か国で敵が二十か国、これは資料にも付いておりますけれども、一応こつこつと、サンクチュアリーなんかも取られた中で頑張ってきて、二〇〇二年には下関で会議やって、二十一対二十二のところまで持ってきて、アメリカのダブルスタンダードのエスキモーの原住民生存捕鯨を阻止したんですけれども、これからずっと下り坂になっていくわけですね。
極め付けは、変な妥協をしたわけなんですよ。その妥協というのは、アメリカが実際、日本と事実上の交渉相手になって、IWCの議長、副議長、これは発展途上国とデンマークの議長を立てたんですが、それがこういうことをやったわけです。
それは、真ん中の図の方にこういう色の表があると思うんですが、ちょっとめくっていただければ、ページを書いていませんけれども、要は、今結果的に、これ二〇〇五年に出していて、二〇一〇年には葬り去られるわけですけれども、ミンククジラが南極海で九百三十五頭、ナガス五十頭、ザトウ五十頭が、日本がアメリカと共同で提案したのは、二百頭まで下げると。それで、二百頭だと補助金を大量投入しない限りにおいてはやっていけないわけですから、事実上ゼロ。それから、北太平洋は、鯨類研究所がやっている沖合船団、日新丸で捕っているミンククジラが百頭で、沿岸の沿岸小型捕鯨が捕っているのが百二十頭あったんですが、名前だけ商業捕鯨ということに変えて百二十頭という提案をしたわけですね。ただし、これは同床異夢になっていて、反捕鯨国からすれば商業捕鯨とは言わないと。あとの鯨も入れても、沿岸も三百八十頭が二百二十頭。
それから、これが要するにいまだに尾を引いているんですけど、アイスランドとノルウェーには全然相談しないで、今言っても彼らはかんかんになって怒っているんですが、だから、NAMMCOだとかで今後新しい捕鯨の枠組みをつくるということに関しても、これは政府の今の現役に聞いてみれば分かると思うんですが、全然進まないわけですよね。こういうふうに勝手に彼らの分まで削減していったんですよね。こういう交渉をやっちゃやっぱり駄目なので、多分、鶴保先生、ほかの皆さんもこれ知らされないで役人がやっていて、いや、実は向こうからこう言われましたというようなことじゃないかとは思うんですが。
次のページがもっとひどくて、実は条約上の権利というのがあるんですが、八条は、科学的根拠に基づく調査捕鯨をやっていいという国際捕鯨取締条約上の権利になっているわけですね。これを日本がアメリカと妥協して、議長提案という形で、行使せずと約束しちゃったわけですよ。一役人がこういう、条約というのは国会を経て決めることを、こういうことをやっちゃ駄目なはずなんですよね。
それから、モラトリアム条項があるんですね。日本は、我々も、諸先輩の米澤さんだとか島さんも、これを廃止するために歴代のコミッショナーが汗水流してやってきたことを、十年間延長を認めるという妥協をしたわけです。それから、五条の三項というのは異議申立てですね。この権利も行使しないと、こういう約束をして、南氷洋サンクチュアリーも、これも認めると。それから、ワシントン条約も、IWCの権限外との立場に反するんですけれども、これも是認して条約も規制すると、こういうようなことに合意してしまったというのが、今回の、去年のブラジルの会合で何ぼ言っても聞かない、だから脱退します、脱退した結果どうなったかといったら、結局、この当時のシナリオに沿ったような形で小ぢんまりまとまってしまったと。条約上の権利も、当然やるべきことも、どう見ても放棄したと。
彼らが今こだわっているのは商業という名前の捕鯨なんですが、商業捕鯨というのは、IWCに入っていれば商業捕鯨ですね。脱退したら商業捕鯨とは言わないわけです。それから、二百九十五頭だとか二百二十七頭だとか、こんな頭数で、一頭四トンとして、キロ千円で大体十億なわけです、経費五十億掛かって。アイスランドの、私らが知っているノルウェー人も、こういう日本の捕鯨はコマーシャルホエーリングとは言わない、それは補助金捕鯨だろうと。これは明快でございますけれども。
何で、これだけ世の中が変わってきたときに、世の中が生態系の問題だとか温暖化の問題がますます高じてきたときに、どうして鯨だけの捕獲に、捕鯨だけの実現にこだわるのかということを考えた場合、それはどうもやっぱり大局観の欠如、包括的な思想の欠如じゃないかとも思うんですね。
次、ちょっと古いんですけど、これ、多分二〇二〇年まで横に線が延びていくんですが、漁業資源の減少と鯨の増加と、多分今は横ばいになっていると思いますが、これは現象面では一致しているわけですね。ですから、これの解明が要りますし、それから、次のページには、特に鯨と海洋生態系との関係。資源管理も、漁業だけ見ていても駄目だし、鯨だけ見ていても駄目だし、それぞれ見なくちゃならないし、それから、要するに陸域との関係も見なくちゃならないと。
ですから、次のページをめくっていただければ、(四)として、(三)として、海洋生態系が相当劣化していますから、資源管理をやることは、きちっとやることは、これは根本中の根本ですが、海洋生態系の劣化の解明だとか温暖化だとか海洋酸性化の解明というのは、鯨というものが食性の連鎖のピークに立つものですから、これを通じた、すなわち商業捕鯨より、むしろ、ますます海洋生態系調査の部分というのが非常に重要になってくるんじゃなかろうかというふうに私は考えておりますし、二枚めくってもらって関連条項というのがありますが、特にその八条は、科学調査捕鯨というのは、他の条項のいかんにかかわらず許可を締約国は発給できますし、第二項で、鯨の副産物は肉ですから、これを加工して処理することは疑似商業捕鯨でも何でもないということで、これを淡々とやっていくべきだと思います。
次のページに、十条の(e)項というのが、本当はもうやめなくちゃ、九〇年までには終わっていなくちゃならないんですが、これはもう科学的に見れば失効状態なわけで、これをおかしいんじゃないかという訴訟も起こしていく必要があるんだろうと思うんですね。
ですから、一番最後になりますけれども、やっぱり科学的根拠と持続利用、それから諸外国との信頼関係の構築、それから、やっぱり南氷洋というのは鯨がたくさんいます。それから、太平洋の公海でやっぱり科学調査も併せてやること、ナガスですね。それから、日本海では日韓の共同調査というのも、全体的な両国の関係改善にも私は、彼らもやりたがっていますから役に立つと思いますし、捕獲頭数の目標は、南氷洋の場合は、これ最後の商業捕鯨、このくらいは捕っていいでしょうし、ミンククジラも同様であります。
一応、日経調の提言では、IWCの異議申立てに対して、それに従わないよという条件を付けて戻ってきて、やっぱり国際社会に復帰すべきであるという提言にしております。
以上でございます。