岩瀬昇の発言 (資源エネルギーに関する調査会)

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○参考人(岩瀬昇君) 私は、総合商社とその子会社の石油開発会社、延べ四十三年間、エネルギー関連の業務を担当してきていまして、一番長かったのはオイルトレード、売った買ったですね、それと石油開発でございます。サラリーマンを卒業した後はエネルギーアナリストというのを名のって、原油市場、原油価格の動向、それに影響を与える国際情勢の分析、解説等々をやらせていただいております。今日はその立場からお話をさせていただければと思います。
 今お話しすること等全て、結局は我が国のエネルギー政策がいかにあるべきかということに関係をしているというふうに認識をしていることを申し添えさせていただきます。(資料映写)
 最初にお見せしたグラフ、これは、去年の八月から今年の一月までの六か月間、アメリカの代表的な原油でありますWTI原油、これの価格を示したグラフでございます。表題に書きましたようないわゆる地政学リスクの勃発があって、それが価格に影響しているというのが見てお分かりいただけるかと思います。
 もう一つ、このグラフは、石油の時代というのは、日本ですと江戸末期ですけれども、一八五九年にドレーク大佐と言われる人が機械を使って商業生産を開始した、そのときから現代に至るまでの約百六十年間、それの原油価格の推移を示したグラフでございます。濃い緑色というのが名目価格で、薄い緑色が現在価格に折り返したいわゆる実勢価格でございます。これを見ていただいてもお分かりのように、この百六十年間の間にも何度も非常に大きな乱高下を示してきています。
 じゃ、このような石油価格というのはどういう要因で決まるのかと、誰が決めているのかということでございますが、これは、この百六十年間を考えてみますと、大きく分けて四つの時期に分けられるだろうと。
 最初のスタートしてから一九二八年までの間は混乱、混沌の時期で、一九二八年というのは、今の世界の三大石油会社でありますアメリカのエクソンモービル、それからイギリスとオランダを根拠とするロイヤル・ダッチ・シェル、それからイギリスのBP、この三社の祖先に当たる会社の社長さんが集まりまして、イギリスのスコットランドにあるアクナキャリーという場所にある貸し別荘に集まって、市場分割協定、秘密協定を結んだんですね。これは、新しい油田が出てきて、それで価格競争になって値段が下がってしまう、これを抑えるために何とか俺たちでないしょに市場をコントロールしようやということで決めたのがアクナキャリー協定と呼ばれているもので、これが数十年間功を奏して、比較的安定をした形で価格が推移してきた。それが、一九七三年のオイルショックでいわゆる価格決定権がOPECの手に移った、そういう事件が起こったわけであります。
 そのOPECが価格を決定していたんですけれども、一九八六年、ちょうど私がロンドンでオイルトレードやっていた頃ですけれども、逆オイルショックということが起こりまして、これは、極めて短期間の間に三十ドルだった原油価格が十ドル、三分の一になっちゃったんですね。これを機会に価格の決定権は市場に移った、今も原油価格を決めているのは市場だと、こういうふうに認識されております。一九八〇年代に入って先物市場が発展、拡大したと、こういう情勢、事情が背景にはあったわけですけれども、今もなお価格を決めているのは市場だということでございます。
 じゃ、その市場って具体的に何だということですけれども、これは先物市場で、その先物市場に参加している人たちが、これ、いろんな広範な範囲の人がいるわけですけれども、その人たちが売ったり買ったりするときに、将来の需給バランスがどうなる、どう見るかということが決めているんですね。価格を決めているのは、市場参加者が将来の需給バランスをどう見るかだということで、価格を考える場合のキーワードは需給バランスです。需要と供給のバランス、これを見据えておくことが大事だろうと思います。
 これ、二〇二〇年のことが書いてありますけれども、私は、二〇一四年の秋に価格の大暴落始まったわけですけれども、その翌年、二〇一五年から毎年年初に価格予測、原油市場の動向を分析をしまして毎年発表させていただいているんですけれども、二〇二〇年については、ここに書いてあるような要因、供給側の要因、それから需要側の要因、こういったものが考えられる、これを需給動向にどういう影響を与えるかということを考えて予測をするわけですけれども、結局、この最後の新型コロナウイルスというのは一月半ば以降の話ですので、二〇二〇年の価格予測のときには入れていませんけれども、それ以外のことって、簡単に言うと国際情勢なんですよね。国際情勢の中でいろんなことが起こってくるやつがどういうことで影響してくるかということだろうと思います。
 二〇二〇年のその結論だけ申し上げますと、WTI原油、アメリカの代表的な原油であるWTIで五十ドルから六十五ドル、これが恐らくニューノーマルと言っていい状況になったんではないかと。二〇一四年の秋に大暴落が起きて、それから五年間、業界が必死になって構造改革をして、新たな価格水準で対応できるような、つまり百ドル時代と同じような業績を上げられるような体制に変えてきている。
 ちょっと自慢するようですけど、二〇一九年の年初に、私は、WTIは今年は五十ドルから六十五ドルだということを書いて、で、去年一年間を振り返ってみますと、すっぽりそこに収まっているんですね。これは、私は、その構造改革が結果を現してきたことだろうと思っています。
 したがいまして、二〇二〇年も、想定外の地政学リスク勃発、これがあったらもうどうなるか分からないというのは念頭に置かなきゃいけないんですけれども、それがない限り上値が重い展開だろうと、恐らく下押しをする可能性の方が高いのではないかと、そういう予測をさせていただいております。一月半ばから新型コロナウイルス肺炎が蔓延したことによって、昨日も五十ドル割るような展開になっていますけれども、下押しをする動きになっているというのが今の状況だろうと思います。
 エネルギー情勢に国際情勢が非常に大きな影響を与えるというのが基本でございますけれども、その中でもやはり、産油量の多いアメリカ、ロシア、それからサウジ、イランを含む中東、これの動きが大事だろうというふうに思っております。
 今日は、時間が限られているということと、今し方、中東につきましては畑中先生、田中先生から極めて鋭い、役に立つ、有意義な御説明をしていただきましたので、私は今日は、知っているようでいて余り知られていないアメリカのエネルギー事情、アメリカのエネルギー事情についてお話をさせていただきたいと思います。
 ここに、これ中東、サウジ、イラン、私が気になっている項目を書き出してあります。それからロシアでも書き出してありますけれども、これは時間がありませんので、もし後刻質問があるようでしたら、お答えをする形で対応させていただきたいというふうに思います。
 アメリカでございますが、皆さん御存じのように、去年の九月、二〇一九年の九月にアメリカは純輸出国になりました。ニクソン大統領が一九六〇年代以来追求をしてきてまいりまして、その後、民主党政権あるいは共和党政権を問わずにアメリカの代々の大統領がエネルギー政策の中核に据えていたのがエナジーインディペンデンス、エネルギー自立なんですね。それを去年の九月にようやく達成したということで、トランプ大統領は、これから我々は海外のいかなる勢力からの影響も受けずに自分たちだけでエネルギー供給ができるんだと、こういうふうに胸を張ったわけですけれども、これは、半分は当たっているけど、半分は当たっていないんですね。物事はそんな単純ではないということを今日御説明をさせていただきたいと思います。
 ここに書き出していますけれども、アメリカの国産原油というのは簡単に言うと軽いんです。軽質原油なんですね。一方で、アメリカの需要、あるいはその需要を支えている精製設備、これは重質原油を前提として造られております。世界全体で、今、原油の生産量あるいは消費量というのは、一日当たり約一億バレル、一億BD、バレル・パー・デーですけど、一億BDと言われています。そのうちのアメリカは二千万BD、約二割を占めているんですね。ちなみに、日本は石油の総消費量で約四百万BDでございます。
 その二千万BDのアメリカの一番大きい特色は、半分がガソリンなんです。一千万BDがガソリン。普通の重質原油を精製したのでは、ガソリンは半分できないんですね。せいぜい二割か三割ぐらい。そこで、アメリカの石油会社はこれまで長い間相当程度の投資を行って、分解装置あるいは改質装置と言われているものを導入しております。
 原油を精製しますと、下に重い部分、重油ができるんですけれども、その重油をもう一回分解する、もう一回改質すると。それをやることによってガソリンをたくさんつくる。それで五割のガソリン需要を賄うような設備ができている。ここに、原油は軽いけれども需要は重いという、品質のミスマッチが生じているんです。
 後で御説明しますけれども、実はシェール層からの生産というのはアメリカの生産の三分の二を占めているんです。需要はガソリンが半分だということですね。したがって、アメリカはエナジーインディペンデンスを達成したんだけれども、原油も石油製品も大量に輸入をして大量に輸出をしないと経済効率が悪いことになる、国益に合致しないことになるんですね。
 これは、二〇一九年九月にアメリカが純輸出国になったときにアメリカのエネルギー省が発表したデータでございます。濃い緑色が原油、薄い緑色が石油製品、ゼロより上にあるのが輸入、ゼロより下にあるのが輸出でございます。真ん中の黒い折れ線グラフになっているのが、これが輸入量から輸出量を引いた純輸入量の推移。一番右側が二〇一九年九月でして、ゼロより下に行っているんですね。これでもって純輸出国になったと、こういうことなんですけれども。
 見てお分かりのように、原油、これ恐らく七百万から八百万BDぐらい輸入しているんですよね。輸出が下、二百五十万から三百万ぐらいあると。ところが、それを上回るだけの石油製品の輸出があるので、原油と石油製品を足して輸出量、輸入量を計算してみると、輸入量より輸出量が多くなったということで、アメリカは純輸出国になったというふうに言っているわけです。したがって、アメリカは海外からの影響を受けないということは全くない、受けざるを得ない状態にある。
 それからもう一つは、輸出入が自由に行われる自由貿易体制というのを前提に物事を考えているわけですけれども、そうしますと、当然ですが、一物一価、同じものは同じ値段、もちろん若干の運賃ですとかいろんな要素はありますけれど、一物一価だと。ということは、海外で原油なり石油製品の値段が高くなると、当然のことながら、アメリカの値段も高くなるんですよね。価格の面でもやはり海外からの影響を免れることはできないというのがアメリカの実態でございます。
 原油が軽いということをもう少し詳しく御説明しますと、これは二〇一七年から二〇二〇年までの液体燃料、原油以外のものも精製する設備に供給しますので、それの数量は全部入っているわけですけれども、見ていただくと分かるように、二〇一七年の液体総合計というのは一千四百四十万BDでした。これが徐々に増えていって、今年、二〇二〇年には千九百八十四万と、ほぼ二千万BDになる。
 需要の方は、ずっとほとんど二千万BDでございますので、二〇二〇年になってアメリカは純輸出国になるというのは大体読めるところなんですが、中身を見ていただくと、一番上がシェールオイルでございます。シェールオイルが、二〇一七年の四百九十六万から二〇二〇年には八百六十四万に、三百七十万BD、日本全体の消費量に見合うような増産ができているというのが一つですね。
 それから、メキシコ湾の油、それから陸上の今までの原油があって、非在来型のNGLというのがございます。この非在来型というのは、簡単に言うとシェール層からの生産ということです。シェール層というのは今までとは違う技術を使って掘らないと経済的な生産ができないということでやっていますので、これは、振り返ると、第一次、第二次オイルショックの後に、アメリカ政府が非在来型の石油開発を奨励するためにいろんな財政補助をしたんですね。それの効果があっていわゆるシェール革命というのが一九九八年に始まったということなんですけれども。
 そのシェール層からの生産される天然ガス、その天然ガスの副産物なんです。NGL、ナチュラル・ガス・リクイド、日本語で天然ガス液と訳していますけれども、これは高温高圧の地下深いところではガス状なんだけれども、常温常圧の地上に出てくると液体になる、簡単に言うとそういうものでございます。したがって、この非在来型のNGLが、二〇一七年三百二万BDから二〇二〇年に四百四十三万、百四十万BD増産されている。これは、シェールガスの増産に伴って当然増えてくる数字なわけですね。
 したがいまして、二〇二〇年を見てみますと、千九百八十四万BDというのが総合計なんですけれども、シェールオイルとシェール層から生産される非在来型のNGL、これを足すと一千三百万BD、約三分の二がシェール層からの生産なんです。これは何もなければ全然問題ないんですけれども、輸出入をずっとやっていれば何とか経済合理性も保てますのでいいんですけれども、何かあったときには一種のアキレス腱になるのかなという気がしております。
 と申しますのは、今アメリカの大統領選が進んでいます。アイオワでこの間、予備選があって、日本時間の今日午前中、もう結果出ているんだろうと思うんですけれども、ニューハンプシャーで予備選が行われていると。それに出ている民主党側のいわゆる左派候補と呼ばれているバーニー・サンダース、これが今日一位になっているんじゃないかと思いますけれども、それからエリザベス・ウォーレン、この二人は、自分たちが大統領になったら、環境問題を考えて、水圧破砕、フラッキングを全面的に禁止すると、これを公約に掲げているんですね。
 フラッキングというのは、大量の水を高圧で硬い岩石層にぶち込んで人工的に割れ目をつくる、その割れ目を伝ってシェールオイル、シェールガスが生産されるという、そのシェールオイル、シェールガスの生産の技術の核を成すようなことなんですね。それを禁止するということは、三分の二の生産が失われることになるわけです。恐らく、仮に大統領になったとしても、一どきにはできないので段階的な措置はとるんだろうと思うんですけれども、それにしてもやはり影響は考えておく必要があるなと。
 そもそも、恐らくトランプ大統領が勝つだろうとは思うんですけれども、でも、前回トランプ大統領が勝ったときにそう思っていなかったものですから、民主党左派候補が出てくることを完全にゼロに置いてはいけないんだろうなと思って考えると、やはりアメリカが抱えているシェール層からの原油生産が実は三分の二、一千三百万BDを占めているという事実は頭の片隅に置いておく必要があるんではなかろうかと、私はこのように思ってアメリカを注目をしているわけであります。
 ほかにもたくさん申し上げたいことはあるんですけれども、これはもし後刻御質問があれば、その御質問に答える形で話をさせていただこうと思いますので、以上で私からの話とさせていただきます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 岩瀬昇

speaker_id: 26096

日付: 2020-02-12

院: 参議院

会議名: 資源エネルギーに関する調査会